【社労士監修】定年退職でも失業保険は受け取れる?失業保険の豆知識
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- 公開日:2018年1月25日
失業保険(正式名称は雇用保険)の失業給付金(正式名称は基本手当)は、職を失った人が再就職するまでのサポートですから、定年退職では失業保険の対象にならないと思いがちです。しかし、定年退職であっても条件を満たせば、失業給付金を受け取ることができます。ここでは、60歳で定年退職を迎えた場合の失業給付金についてご紹介しましょう。
この記事の目次
失業保険の基礎知識を知る
失業保険は、さまざまな理由で失業した人が、再就職するまでの生活をサポートするものです。失業保険の適用事業所で雇用され、31日以上、且つ週20時間以上雇用される場合は、労働者の失業保険加入が義務付けられていますから、アルバイトやパートタイム労働者も失業保険の対象となります。
失業給付金を受給するためには、一定の条件があります。また、失業時の状況などによって、給付額や給付期間が異なります。条件によって複雑な規定が定められていますが、まずは根幹となる知識をご紹介します。
失業給付金の受給条件
失業給付金を受け取るには、以下の条件に合致している必要があります。
・離職日以前の2年間に失業保険の被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること
・積極的に就職しようとする意思があること
・いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
・積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと
つまり「被保険者期間が要件を満たし、就職する意思も健康で働ける状況もあるにもかかわらず、仕事に就いていない」人であれば受給の資格は発生します。「離職の理由」は、会社都合であろうと自己都合であろうと、問題ありません(会社都合による退職で「特定受給資格者」と認定された場合や、病気や介護など正当な理由のある自己都合退職で「特定理由離職者」と認定された場合は、被保険者期間が通算して6ヵ月以上でも受給対象となります)。
なお、失業給付金は65歳未満が対象ですが、離職時の年齢が65歳以上の場合でも高年齢求職者給付金を受給できます。ただし、給付日数は30日分または50日分とだいぶ少なくなります。
失業給付金の受給手続き
まず、失業給付金をもらうための書類を準備します。離職した会社から発行される「雇用保険被保険者離職票」「マイナンバーカード」などの身元確認書類、「証明写真(2枚)」「ハンコ(スタンプ印不可)」「本人名義の預金通帳またはキャッシュカード」です。
書類を準備したら、管轄のハローワークで申請を行い、ハローワークでは「求職申込み」「離職票等必要書類の提出」を行います。
求職申込みは、再就職の意思を示すものです。離職票を提出する際には、ハローワークの担当者から記載されている離職理由が自分の認識と相違ないかを確認されます。確認等が済むと受給資格が決定し、「雇用保険説明会」の日時を案内されます。
雇用保険説明会は1週間の待期期間を経て行われ、説明会で指示された「失業認定日」まで求職活動をします。そして、認定日に「失業認定報告書」を提出して、問題がなければ給付金が振り込まれます。なお、自己都合退職の場合は、1週間の待期期間に加え3ヵ月の給付制限があります。
給付金額は離職時の給与がベース
給付金額は、離職前6ヵ月間の給与の平均値の45~80%のあいだで調整されます。給料が高かった人は給付率が低く、低かった人は給付率が高く設定されます。
給付金額は「基本手当日額」とよばれ、下限は1,976円、上限は離職時の年齢によって区分され、60歳以上65歳未満の場合は7,042円とされています(2017年8月1日現在)。この範囲内で基本手当日額が決定され、およそ28日分が4週間ごとに振り込まれることになります。
<年齢別基本手当日額上限金額>
30歳未満 | 6,710円 |
30歳以上45歳未満 | 7,455円 |
45歳以上60歳未満 | 8,205円 |
60歳以上65歳未満 | 7,042円 |
※2017年8月1日現在(毎年8月1日に更新予定)
給付期間は離職理由で変化する
離職の理由は、人によってさまざまです。自己都合で退職する人もいれば、会社が突然倒産して、路頭に迷うこともあるでしょう。
ハローワークでは、離職時の状況により、失業給付金の対象者をおもに「一般の離職者」と「特定受給資格者」及び「特定理由離職者」に分類しています。自己都合退職など多くの人が分類される一般の離職者は、勤続年数によって給付日数に差があり、最長でも150日となります。
一方、会社の倒産などで離職せざるをえなかった人は、特定受給資格者とされます。こちらも勤続年数に応じて給付期間の長短が決められます。ですが、特定受給資格者の場合は、一般の離職者よりも給付日数は多く、しかも3ヵ月の給付制限期間がありません。
特定理由離職者は、契約更新を希望したのに更新できず離職した場合(特定受給資格者に該当する場合を除く)や、病気や親の介護など正当な理由のある自己都合退職をした人が該当します。給付日数は一般の離職者と同じで(一部は特定受給資格者と同じになる場合あり)、3ヵ月の給付制限期間はありません。
<一般の離職者及び特定理由離職者失業給付金給付日数>
被保険者であった期間 | 全年齢 |
---|---|
1年未満 | - |
1年以上5年未満 | 90日 |
5年以上10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
<特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の失業給付金給付日数>
被保険者 であった期間 | 30歳未満 | 30歳以上 35歳未満 | 35歳以上 45歳未満 | 45歳以上 60歳未満 | 60歳以上 65歳未満 |
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
1年以上 5年未満 |
90日 | 120日 (90日) |
150日 (90日) |
180日 | 150日 |
5年以上 10年未満 |
120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
10年以上 20年未満 |
180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
20年以上 | - | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
※2017年4月1日現在
※離職日が2017年3月31日以前の場合、給付日数は( )内の日数になります。
※特定理由離職者のうち、「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方は、2022年3月31日まで給付日数が特定受給資格者と同様になります。
定年退職時の状況で「一般の離職者」「特定受給資格者」かが決まる
では、定年退職における失業保険の区分は、一般の離職者と特定受給資格者のどちらになるのでしょうか?
日本では「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で、企業は労働者に対して年金給付が始まる65歳まで雇用できるよう、さまざまな措置を講ずることを義務付けました。しかし、定年制度を設けている企業の多くが「60歳定年制」を採用し、本人が希望する場合は継続雇用する形を採っているケースが多いといえます。
このとき、継続希望をしたかしないか、また継続雇用の制度があるかないかなどの状況によって、前項の一般の離職者か特定受給資格者のどちらに分類されるかが決まるのです。
例えば、「本人が継続雇用を希望せず定年退職離職した場合」は一般の離職者に、本人が定年後の継続雇用を希望したが合理的な理由もなく再雇用されずに離職した場合」は特定受給資格者に分類される可能性があります。これは就業規則や労使協定など、事実を確認してハローワークが決定します。
失業保険上の離職者区分が一般の離職者になるか、特定受給資格者になるかによって、給付日数も大きく変わります。退職前に就業規則などを確認し、退職理由に齟齬がないように注意してください。
定年退職後に休養したい場合は?
定年退職を迎えた人の中には、「しばらく骨休めしたい」という人も多いはずです。ですが、失業保険は「求職中だが就職できない」状態をサポートするためのものです。求職活動をしないのであれば、失業保険の対象になりません。
では、退職後すぐに求職活動をしない場合は、失業給付金はもらえなくなってしまうのでしょうか?答えは「NO」です。失業保険には受給期間延長という制度が用意されています。受給期間の延長手続きを行うと、本来の受給期間1年に加え最長1年間延長されます。1年間ゆっくりと心身を休め、延長期間が満了するまえに失業給付金の受給申込みをしましょう。
ただし、受給期間延長の手続きは、離職日の翌日から2ヵ月以内に申請しなくてはなりません。期限を過ぎてしまうと延長はできませんので注意が必要です。
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まとめ:失業保険を利用して充実した第二の人生を探そう
ご紹介したように、60歳以上65歳未満の定年退職であれば、失業給付金の支給対象になる場合があることがわかりました。定年退職後に次の就職先を探すにしても、失業給付金で毎月一定の収入が得られれば、自分の希望に近い仕事を、じっくりと選ぶこともできるでしょう。
失業保険を活用しつつ、自分らしく働ける次のステージを探してください。
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