老後不安に陥らないためにも、シニア世代は再就職をすべき!?
- ちょっと得する知識
- 公開日:2024年3月25日
老後資金に必要とされるお金は2,000万円、3,000万円…と様々な数字が並び、あらゆる見識者によって囁かれています。人生100年時代は、いかに長く健康で働き続けられるかがポイントになるでしょう。本日は、シニア世代の再就職について触れていきます。
この記事の目次
老後資金の備えは、一体いくらあれば充分?
人生100年時代になり、私たちの関心の多くは健康とお金になりました。寿命が伸びたことにより、これまでの蓄えと公的年金では老後資金の不安を感じずにはいられなくなったのです。
さて、そんな老後の資金は一体どのくらい必要なのでしょうか。
総務省によると、世帯主が65歳以上の夫婦世帯における毎月の支出はおよそ24万円。その内訳は、娯楽などを除き、食費や住居費、光熱費などそのほとんどは生活を維持するために必要な支出です。
また、収入は公的年金などを含めておよそ22万円。数字だけ見ても、毎月赤字になってしまうことがわかります。そこで、足りない分は貯蓄やその他の収入で補わなければなりません。その金額を補っていくのが、いわゆる「老後資金2,000万円問題」や「老後資金3,000万円問題」です。
昨今の日本では平均寿命が男女ともに伸びており、男性はおよそ81歳、女性はおよそ87歳と、平均寿命は年々右肩上がりで上昇しています。今後も平均寿命は延びることが予測されており、65歳になって年金を受け取るようになってから、およそ20〜30年分の生活費が必要だということになります。
また、せっかく人生は一回きりなのですから、ただ生きるだけではなく、趣味や友人と語らうためのお金も必要になるでしょう。それに、老後資金2,000万円とは必要最小限の老後資金を言いますから、病気や急な出費を考えるとより多くの財源を確保し、備えなくてはならないことが明確でしょう。
お金を貯めておかなければならないとはわかっていても、老後資金の準備を十分にできる人ばかりではありません。子育てにかかる教育費や住宅費なども重なり、老後の資金を準備し始められるのはミドルシニアになってからという人も大多数いらっしゃいます。
それでも、ミドルシニアになって焦って準備をしてもうまくはいきません。そこで重要になってくるのは、健康でいかに長く働けるかということです。退職後も働き続け、多少でも日々の収入を確保することが老後資金づくりのポイントとなるでしょう。
データ元:総務省統計局「5.高齢者の家計」
シニア世代は、再就職で賢く給付金を活用すべし!
定年後に再就職を考える人は、求人媒体やハローワークなどを利用する人が多いようです。近年は人手不足の業界も多く、健康かつ時間にゆとりのあるシニア層を活用しようと企業側も努力をしています。
厚生労働省によれば、世の中にはおよそ17,000種類の職種が存在するとされており、健康であれば定年後も未経験の仕事に就くことも、これまでのキャリアを活かした仕事に就くこともできるため、人生のやりがいや楽しみの一つに繋がるでしょう。
そのためには、セカンドキャリアを考え始めるのに早くて損なことはありません。反対に焦ってしまい、むやみやたらに企業への応募だけが増えていく負のループに陥っているシニア層も少なくありません。セカンドキャリア見据え、どのような仕事やサービスがあるのかを早いうちに調べておくことが焦らずに老後を過ごすヒントになります。
政府や自治体主導では現在、アクティブシニア層を活用しようと再就職で給付金を設けるなど制度を拡充させています。では、シニア世代が再就職する際にはどのような給付金があるのでしょうか。代表的な2つをご紹介します。
高年齢求職者給付金とは
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の求職者を対象とした失業保険(雇用保険)での給付を指します。通常の失業保険は65歳未満を対象としており、65歳以上の人は受給できません。つまり、高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が生活を維持しながら安心して再就職を目指すために設けられた手当です。
審査が通ると、該当金額は一括で支給されます。また、受給期限は離職日の翌日から1年と決められています。受給のための申請が遅れると、給付金額の満額を受け取れない恐れがあるため、なるべく早めに手続きを行う必要があります。
高年齢求職者給付金を受給できる条件
・離職時に雇用保険に加入しており、65歳以上である
・離職日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上ある
・失業の状態にある
高年齢求職者給付金の対象外となる条件
・専業主婦(主夫)の方
・学業に専念している方
・次の就職が決まっている方
・自身で事業を営んでいる方
・会社の役員などに就任している方
・パート、アルバイト中の方(※ただし規定あり)
高年齢求職者給付金は通常の失業保険と同じように、仕事を退職した後にハローワークで受給の申請手続きを行います。受給金額は保険加入期間によって異なり、被保険者期間が1年未満の場合は30日分、被保険者期間が1年以上の場合は50日分の受給が可能となります。
給付金額は【基本手当日額×支給日数】で計算します。
「基本手当日額」は【退職前6カ月の賃金合計÷180(日)】で求められるので、ご自身が退職してから再就職をするまでにどのくらいの給付金をもらえるのかを前もって調べておくと良いでしょう。
データ元:厚生労働省「事業所を離職された満65歳以上の高年齢者の皆さんへ 高年齢求職者給付金はこんな制度です!」
高年齢求職者給付金、こんなときどうする?
ここでは高年齢求職者給付金にまつわる疑問点をまとめていきます。
Q.高年齢求職者給付金に税金はかかるの?
A.高年齢求職者給付金は課税の対象となりません。金額や支給日数などにかかわらず、非課税で受け取れます。また、所得とみなされず、非課税です。そのため確定申告も必要ありません。
Q.同じ会社に再就職する場合はどうなるの?
A.失業認定を受けた後、以前勤めていた会社と同じ会社に再就職する場合でも、原則として高年齢求職者給付金を受け取ることができます。ただし、規定のケースに該当すると判断された場合は、受給できない可能性があるので注意しましょう。
Q.高年齢求職者給付金は年金と併給可能?
A.高年齢求職者給付金と年金は併せて受給できます。そのため、65歳以上で定年退職した人は、高年齢求職者給付金と年金の両方を受け取れます。一方、65歳未満の人を対象としている通常の失業保険の給付は、年金と併給ができません。失業保険の給付を受給すると、年金の支給は停止されます。
Q.高年齢求職者給付金をもらえる回数に上限はある?
A.高年齢求職者給付金は、受給する回数や年齢に上限はありません。そのため、65歳以上で受給要件を満たせば、何度でも受給できます。
高年齢雇用継続給付とは
こちらも高年齢求職者給付金と合わせて覚えておくと、再就職の際に役に立つ給付制度です。高年齢雇用継続給付は大きく分けて「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類存在します。それぞれの特徴を順に解説します。
・高年齢雇用継続基本給付金
失業手当をもらっていない60歳以上65歳未満の方で、60歳時に比べて賃金が75%未満に低下した従業員に支給される給付金です。
高年齢者雇用安定法の改正により、2021年4月からは70歳までの就業機会確保が雇用者側の努力義務になりました。そのため、多くの企業が60歳定年退職後の再雇用という形で従業員を継続雇用したものの、支払う賃金が企業側にとっては大きな負担となりました。
つまり、企業としても再雇用した従業員に現役時代と変わらぬ高い賃金を支払うのは難しいと考えるようになったのです。そのため、雇用を継続した従業員の引き下げられた収入を埋めるために設けられたのがこの給付金です。
高年齢雇用継続基本給付金の支給対象者(下記の条件をすべて満たす従業員)
・失業保険による基本手当や再就職手当を受給していない
・60歳時点と60歳以降の賃金を比較した際に、75%未満に低下している
・60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者である
・雇用保険の被保険者期間が5年以上ある
高年齢雇用継続基本給付金の支給期間
支給期間は【60歳になった月から65歳になる月まで】と定められています。もし、65歳になる月の半ばで退職した場合、該当月は給付金が支給されないため注意が必要です。
高年齢雇用継続基本給付金の支給額
賃金の低下率で支給金額は異なります。
・【低下率が61%以下だった場合の支給額の計算式】
支給額=支給対象月に支払われた賃金の金額×15%
・【低下率が61%を超えて75%未満だったときの支給額の計算式】
支給額=183÷280×支給対象月に支払われた賃金の金額+137.25÷280×賃金月額
ただし、2025年4月から給付率は10%に引き下げられる予定となっています。段階的に縮小し、将来的には廃止されることが決まっています。
高年齢再就職給付金
高年齢再就職給付金は、60歳で定年退職した後に失業給付の基本手当を受給し、その後再就職した場合に支給される給付金です。
高年齢再就職給付金は、再就職後の賃金が【基本手当の基準となった賃金日額×30の75%未満になった場合】に支給されます。高年齢再就職給付金の支給額は、賃金の低下率(60歳到達時と比較してどの程度下がったか)によって異なり、最大で支給月の15%です。
高年齢再就職給付金の支給対象者
・基本手当(失業保険)の算定基礎期間が5年以上であること
・再就職した日の前日時点で基本手当の支給残日数が100日以上であること
・再就職先が1年を超えて継続雇用されることが見込まれる安定した職業であること
高年齢再就職給付金の支給期間
高年齢再就職給付金の支給期間は、失業給付の基本手当の支給残日数によって異なります。
【支給残日数が200日以上の場合:再就職をした日の翌日から2年経過する月まで】
【支給残日数が100日以上200日未満の場合:再就職をした日の翌日から起算して1年を経過する月まで】
支給残日数が100日未満の場合は、高年齢再就職給付金の支給対象外になります。また、同一の再就職先で過去に再就職手当をもらっている場合も、高年齢再就職給付金は支給されません。
データ元:厚生労働省『「高年齢雇用継続基本給付金」 「高年齢再就職給付金」』
高年齢雇用継続給付の注意点とは?
高年齢雇用継続給付を受ける際にいくつか注意点があります。
・老齢厚生年金が減額されてしまう場合がある
65歳より早く老齢厚生年金を受け取れる制度を活用する方が高年齢雇用継続給付を受け取ると、老齢年金の一部が支給停止となることがあります。高年齢雇用継続給付によって支給停止される額は標準報酬月額の0.18%~6%となり、注意しておく必要があります。
・「再就職手当」を受け取ると、受給することはできない
高年齢雇用継続給付と再就職手当の両方をもらうことはできません。どちらか一方の給付金を選ばなくてはいけないので、どちらがご自身のメリットになるかを考えましょう。
まとめ
いかがでしたか?シニア世代になっても生活に不安を感じることなく過ごすために、再就職でもらえる給付金制度を知っておきましょう。