高年齢求職者給付金とは?受給方法と支給額について【社労士監修】
- ちょっと得する知識
- 公開日:2019年6月13日
「失業保険」には、65歳未満の人が受け取れる「基本手当」と、65歳以上の人が受け取れる「高年齢求職者給付金」があることはご存知でしょうか。どんな方が受給できるのか、その場合の申請方法や支給額の計算方法についてお届けしていきます。
この記事の目次
高年齢求職者給付金とは?
65歳以上の失業者に支給される「高年齢求職者給付金」は、定年後も働き続けたいという意欲のあるシニアにとって心強い制度です。受給条件や2017年に改正された内容について解説します。
高年齢求職者給付金とはどんなもの?
雇用保険の被保険者が会社を退職したときに受け取れる「失業保険」。しかし、同じ雇用保険の被保険者でも、65歳以上と65歳未満では、支給される額や年金との併給ができるかが異なるのです。
つまり高年齢求職者給付金とは、65歳を過ぎた被保険者が受け取れる失業保険を意味します。
受給するためには、公共職業安定所(ハローワーク)で求職の申し込みをするなど求職活動をすることが条件となります。ハローワークでの手続き後、認定されるまでの待機期間中にパートやアルバイトをしてしまうと、受給されなくなるので注意が必要です。
高年齢求職者給付金の受給資格
高年齢求職者給付金の受給資格は、以下の3要件を満たしていることが条件です。
・65歳以上の雇用保険被保険者であること
・失業した日(退職日)直前の1年間に、雇用保険に加入していた期間が合計で6カ月以上あること
・現在、失業中であること。働く意思があり、求職活動を行なえること
上記の要件を満たしたうえで、「失業後にハローワークへ離職票を提出」していることが必要です。
同じ会社に再雇用された場合でも受給資格が生まれる?
また、65歳の定年退職後、同じ会社に再び雇用された場合でも、条件によりますが支給が可能となります。その条件とは下記の通りです。
・労働時間が週20時間未満であること
労働時間が1週間につき20時間以上ある場合は、引き続き雇用保険に加入することになります。この場合は失業とはみなされないため、高年齢求職者給付金は支給されません。雇用保険に加入する必要がない「週20時間未満」という働き方をすることが条件となります。
・週20時間以上の仕事に対する求職活動をすること
高年齢求職者給付金の受給には、働く意欲があり、かつ週20時間以上の仕事を探すことが条件です。
つまり、同じ会社で再び雇用された場合でも、「週20時間未満の仕事に就きながら、週20時間以上の仕事を探している」場合は受給資格が発生することとなります。
2017年に支給の回数制限が撤廃!
これまでは、満65歳以上の人が新たに就業する場合、雇用保険の新規加入は不可となっていました。
しかし、2017年1月の雇用保険法改正によって、雇用保険の被保険者の年齢制限はなくなりました。つまり、70歳や80歳になっても、雇用保険の加入は可能になったのです。(31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上勤務することが要件)
また、失業した際の給付金の支給制限も撤廃されました。改正前までは「高年齢求職者給付金」の支給は一回限りでした。
しかし、現在は失業しても、6か月以上の雇用保険加入期間(通算でも可)という条件を満たしていれば、その都度「高年齢求職者給付金」を受給することができます。
失業手当(基本手当)との違いとは?
高年齢求職者給付金と一般的な失業手当。どのような違いがあるのでしょうか?
失業した後の求職活動中に、一定期間給付金が支給される制度が「基本手当(以下、失業手当)」ですが、この基本手当とは雇用保険の「一般被保険者」に対する給付です。
しかし、一般被保険者の年齢が65歳以上になると、「高年齢継続被保険者」と変わります。つまり、高年齢求職者給付金とは、高年齢継続被保険者が失業した際に、失業手当の代わりに支給される給付のことです。
大きな違いは2点。「年金との併給ができるか」と「支給される額」についてです。
年金を受けながらでも受給できるの?
基本手当は年金との併給は不可となっていますが、高年齢求職者給付金は一時金となるため年金を受け取りながら受給できます。
「60歳から繰り上げで年金受給をしている場合はもらえないの?」という疑問が湧くかもしれませんが、その懸念の通り、失業手当の支給を受けている間は、年金の支給が停止されてしまいます。
支給される額はいくらくらい?
失業手当の場合は、90日~330日分を28日分ずつ支給されますが、高年齢求職者給付金は一時金として一括で支払われます。
被保険者期間が1年未満であった場合は30日分を、1年以上であった場合は50日分を、一括で受け取ることができます。
高年齢再就職給付金との違いとは?
「高年齢求職者給付金」と言葉が似ているため、間違いやすい制度として「高年齢再就職給付金」があります。この制度は、60歳以降に再就職が決まった場合、要件を満たすことで給付金が受け取れるというものです。
60歳で定年退職を迎え、嘱託などで続けて勤務するが賃金が下がった。または、失業手当を受給している最中に就職が決まったものの、前職より賃金が下がった。それぞれのケースで、以前よりも賃金が75%未満になる場合、「高年齢再就職給付金」を受給できる可能性があります。
受給できる条件は下記の通りです。
・60歳以上65歳未満で再就職した一般被保険者であること
・60歳に到達するまで、通算5年以上雇用保険の一般被保険者であったこと
・再就職する前に雇用保険の基本手当等を受給し、その受給期間内に再就職した場合
・再就職した日の前日までの基本手当の支給残日数が100日以上あること
・再就職の際に再就職手当を受給していないこと
失業し、求職しているときに受け取れるのが「高年齢求職者給付金」。
再雇用、再就職が決まったが賃金が低くなった際の補填が「高年齢再就職給付金」。
そう考えるとわかりやすいかもしれません。
高年齢求職者給付金の支給額の計算方法
それでは、高年齢求職給付金の支給額はどのくらいになるのでしょうか。算出のためには「賃金日額」そして「基本手当日額」のそれぞれが必要となります。
賃金日額とは
退職直前の6ヶ月の賃金の合計÷180日
上記の数字が賃金日額となります。なお、賃金とは残業代、通勤手当、役職手当などを含んだ総支給額となります(ボーナス、退職金は含まず)。
基本手当日額とは
賃金日額を基本に、上記の計算式で算定を行います。
具体的なシミュレーション
それでは、
・65歳を超えて1年以上勤務
・週3日勤務で月の賃金が18万円
というケースでの給付額を計算してみましょう。
賃金日額:6,000円
月18万×6ヶ月=108万÷180日=6,000円
基本手当日額:4,544円
(賃金が②のゾーンのため以下計算式)
0.8×6,000円-0.3×{(6,000円-4,970)÷7,240}×6,000円=4,544円
高年齢求職者給付金支給額:227,200円
(被保険者期間が1年以上であるため50日分支給)
4,544円×50日=227,200円
上記が高年齢求職者給付金の支給額となります。
なお、高年齢求職者給付金は所得とはみなされないため、確定申告の必要はありません。
高年齢求職者給付金が支給されるまでの流れ
高年齢求職者給付金を受給するには、ハローワークにて申請を行う必要です。具体的に支給されるまでの流れを解説します。
高年齢求職者給付金の申請方法は?
高年齢求職者給付金を受け取るための手続きは、住居地を管轄するハローワークの窓口で行います。
まず最初に、ハローワークにて離職票の提出・求職の申し込みを行います。
その後、7日間の待機期間がありますが、この期間中にパートやアルバイトをしてしまうと、給付されないので注意しましょう。
待機期間を過ぎ、求職説明会に参加するなどして失業が認定されたら、高年齢求職者給付金が支給されます。
高年齢求職者給付金の受け取りに必要なもの
高年齢求職者給付金の申請に必要な書類は、下記の通りです。
・退職した会社から発行される離職票
・雇用保険被保険者証
・個人番号確認書類(個人番号カード、通知カードなど)
・身分証明書(運転免許証・個人番号カードのどちらか1点、もしくは保険者証、年金手帳の2点)
・証明書用の写真2枚
・印鑑(ネーム印は不可)
・銀行口座の情報
支給日はいつ?
高年齢求職者給付金の支給日は、以下です。
自己都合の場合:3ヶ月間の給付制限後の最初の失業認定日から約5日前後
会社都合の場合:最初の失業認定日の後の約5日前後
なお、給付金を受給できる期間は、「離職の日の翌日から起算して1年間」です。そのため、2019年3月31日で退職した場合は、2019年4月1日から2020年3月31日までとなります。
この期間を過ぎてしまうと給付金を受け取ることができませんので、注意しましょう。
まとめ ―経済的にも安定した状態で求職活動ができる大きなメリット
雇用保険法の改正により、65歳以上でも雇用保険に一定期間加入していれば、何度でも受け取ることができる「高年齢求職者給付金」。年金とも併給が可能なため、経済的にも安定した状態で求職活動を続けることができますね。
退職後、65歳を超えても、まだまだ働き続けたいと考えている場合は、忘れずに申請するようにしましょう。
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