定年後、どのように生活する?子どもの扶養に入るメリットと働き方について
- ちょっと得する知識
- 公開日:2023年4月 3日
「年金だけでは金銭面で不安…」と感じるミドルシニアの方も多いのではないでしょうか。そんなときに考えたいのが“子どもの扶養に入る”という選択肢。今回は、年金をもらいながら子どもの扶養に入ることはできるのか?扶養に入りながら働くことはできるのか?といった疑問や、扶養に入るメリットやデメリット、扶養に入るための手続き方法を解説します。
この記事の目次
【子どもの扶養に入る前に】扶養には「税法上の扶養」と「健康保健上の扶養」がある
年金をもらっていても子どもの扶養に入ることは可能です。そして扶養には「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類があります。
子どもの扶養に入る前に、この2つの扶養の概要と加入要件を確認しておきましょう。
税法上の扶養と加入要件
まずは「税法上の扶養」の概要と、加入要件について解説していきます。
ご存知の通り、仕事などで所得を得た場合は、その所得の額に応じた所得税や住民税を支払わなければなりません。しかし、家族を扶養に入れることで、その家族の人数に応じた扶養控除を受けることができる、というのが税法上の扶養です。
税法上の扶養へ加入する要件は以下の通りです。
【税法上の扶養へ加入する要件】
・扶養に入れてもらう子どもと生計を一にしていること
・自分が青色申告者の事業専従者として、年間を通じて給与の支払いを受けていないこと
・自分が白色申告者の事業専従者ではないこと
・自分の年間取得金額が48万円以下であること
"生計を一にしていること"という要件は、同居している必要はなく、子どもに経済的に支えてもらっているのであれば問題ありません。
年間取得金額が48万円以下であることについては、後ほど解説します。
健康保険上の扶養と加入要件
続いては「健康保険上の扶養」の概要と、加入要件について解説していきます。
子どもが会社員で社会保険に加入している場合、下記に説明する条件を満たすことで、あなた(被扶養者)の社会保険料の支払いが免除される、というのが健康保険上の扶養です。子どもがフリーランスや自営業などで国民健康保険に加入している場合は、健康保険上の扶養に入ることができません。
健康保険上の扶養へ加入する要件は以下の通りです。
【健康保険上の扶養へ加入する要件】
・自分の年齢が75歳未満であること
・扶養に入れてもらう子どもと生計を一にしていること
・同居している場合
- 60歳未満:年収130万円未満、収入が子ども(被保険者)の収入の半分未満であること
- 65歳以上もしくは障害年金を受給している:年収180万円未満であること
・別居している場合
- 60歳未満:年収130万円未満、収入が子ども(被保険者)からの援助額未満であること
- 65歳以上もしくは障害年金を受給している:年収180万円未満であること
加入要件となっている"年収"には、年金だけでなく給与所得や不動産所得、事業所所得なども含まれています。
子どもの扶養に入るメリット
続いては、子どもの扶養に入るメリットについて解説していきます。「税法上の扶養に入る場合のメリット」と「健康保険上の扶養に入る場合のメリット」と、それぞれ見ていきましょう。
税法上の扶養に入る場合のメリット
子どもの扶養に入ることで、子ども自身の税金が安くなります。具体的には、所得税と住民税の控除を受けられるようになります。
▼税法上の扶養に入ることで受けられる「所得税」と「住民税」の控除額(扶養家族1人あたり)
区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | 33万円 |
老人扶養親族(同居老親等以外) | 48万円 | 38万円 |
老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 | 45万円 |
69歳までは「一般の控除対象扶養親族」、70歳以上は「老人扶養親族」という区分になります。ここで覚えておきたいのは、実際の控除額は上記通りではなく、課税所得に対する税率によって決まるということです。
健康保険上の扶養に入る場合のメリット
税法上の扶養は子どもに対してメリットがありましたが、健康保険上の扶養では親であるあなたにメリットがあります。
それは、保険料を支払わずに子どもの健康保険に加入できる、ということ。加えて、医療費が高額になった場合、世帯合算が可能なため医療費を抑えられるというメリットもあります。
子どもの扶養に入るデメリットや注意点
子どもの扶養に入ることのメリットについてお伝えしてきました。しかし、メリットだけでなくデメリットや注意点もあります。ここでは「税法上の扶養に入る場合のデメリットや注意点」と「健康保険上の扶養に入る場合のデメリット」について解説していきます。
税法上の扶養に入る場合のデメリットや注意点
実は、子どもの税法上の扶養に入るデメリットや注意点はありません。税法上の扶養はメリットしかないため、先述した要件を満たす場合は入ることを検討するのも良いでしょう。
健康保険上の扶養に入る場合のデメリットや注意点
子どもの健康保険上の扶養に入ることで、高額医療費の世帯合算が可能になるとお伝えしました。しかし、高額医療費の自己負担限度額が高くなる可能性があります。これは、子どもの所得によって自己負担限度額が決定されるためです。
また、介護費用も高くなる可能性があります。こちらも同様に、子どもの所得によって限度額が決定される仕組みになっており、低所得者ほど費用が安くなります。このように、健康保険上の扶養に入ることで、子どもの負担が大きくなるというデメリットもある、ということを覚えておいてください。
子どもの扶養に入りながら働くことはできる?
結論からいうと、子どもの扶養に入りながら働くことは可能です。しかし、年金をもらいながら子どもの扶養に入り、かつ働くためには合計所得に気を付けなければなりません。
子どもの扶養内での働き方
もしかすると「年金をもらいながら子どもの扶養に入って働くのは、法律違反じゃないの?」と心配されている方もいるかもしれません。大丈夫です、法律違反ではないので安心してください。
ただ、先述したように合計所得に気を付けなければなりません。税法上の扶養の加入要件のところでお伝えしましたが、合計所得(年間所得金額)が48万円以下ならば問題ありません。
それでは、具体的な例を出して見ていきましょう。
【合計所得48万円以下の例】
65歳以上で、1年間の年金受給額が120万円、パートの年収が80万円の場合。
〈年金〉
65歳以上で、1年間の年金受給額が330万円未満の場合、公的年金等免除は110万円となり、所得として計算されるのは10万円ということになります。公的年金等免除とは、年金による所得を軽減し、税金による負担を減らしてくれる制度のことです。ちなみに、定年後の年金は雑所得扱いです。
1年間の年金受給額
120万円(年金受給額)-110万円(公的年金等控除)=10万円(雑所得)
〈パート〉
年収が162万5000円以下の場合、給与所得控除は55万円となり、今回の例でいうと所得として計算されるのは25万円ということになります。給与所得控除とは、正社員やパート、アルバイトとして給与をもらっている人の税金を軽減してくれる制度のことです。
パートでの年収
80万円(給与所得)-55万円(給与所得控除)=25万円
それでは、1年間の年金受給額とパートでの年収の合計を見てみましょう。
1年間の年金受給額+パートでの年収
10万円(雑所得)+25万円(給与所得)=35万円
このように合計所得が48万円以下となるため、税制上の扶養の対象となります。
補足として「公的年金等控除」と「給与所得控除」の一覧表も参考にしてみてください。
定年後は年金生活を送る?それとも働く?
定年後は年金生活を送るのか、それとも働くのか、これは個人の自由です。ただ、リクルートワークス研究所の調べによると、定年後に働いているシニアの約60%が仕事に満足しているというデータがあります。
なにか夢中になれるような趣味などがあれば、定年後は年金をもらいながら充実した老後を過ごせるかもしれません。しかし、定年退職することで、他人との接点がなくなり、虚しさや寂しさを感じる方も少なくはないでしょう。
近年は「シルバー人材センター」など、シニア向けに仕事を紹介するサービスもあります。働くことで収入を得ることができますし、仕事を通じてできた仲間とのコミュニケーションによって、老後も楽しく元気に過ごすことができます。この機会に、ぜひ働くことも考えてみてはいかがでしょうか。
参考:シルバー人材センターの仕組みとは?どうやって利用するの?
子どもの扶養に入るための手続き
最後に、子どもの扶養に入るための手続きについて解説していきます。「税法上の扶養に入る場合」と「健康保険上の扶養に入る場合」の2つの手続きについて見ていきましょう。
税法上の扶養に入る場合の手続き
子どもの税法上の扶養に入る場合は、子どもが会社員や公務員もしくは自営業によって、手続きの方法が異なります。
子どもが会社員や公務員の場合
年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先へ提出します。
子どもが自営業の場合
確定申告の際に行います。
健康保険上の扶養に入る場合の手続き
子どもの健康保険上の扶養に入る場合は、以下の書類を勤務先へ提出します。
・被扶養者(異動)届
・被扶養者の住民票
・被扶養者の戸籍謄本 など
まとめ
今回は「子どもの扶養に入る」というテーマでお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。扶養には「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類があり、それぞれに加入要件がありましたね。税法上の扶養にはメリットしかありませんが、健康保険上の扶養にはデメリットもあるので注意しましょう。
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