定年は何歳まで?60歳定年と65歳定年でもらえるお金はどう変わる?
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2020年5月 7日
近年の法改正により、定年年齢が実質的に引き上げられています。60歳を過ぎても働き続けることが一般的となりましたが、退職する年齢によって失業保険や年金などに差が出ることをご存じでしょうか。65歳まで働くために知っておきたいことをご紹介します。
この記事の目次
定年って何歳まで働くこと?
2013年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正され、希望すれば全員が、原則65歳まで継続して働けるようになりました。これとは別に「定年」については、定年制をとる企業のうち、定年を60歳とする企業が79.3%、65歳とする企業が16.4%という状況です。(厚生労働省「就労条件総合調査」平成29年より)
また、国家公務員の定年は現在60歳ですが、段階的に65歳まで延長される予定です。まず国家公務員の定年を延長し、地方公務員や民間にも広げていく狙いがあります。延長の実現までは、年金支給年齢までの間に無収入期間が発生しないように「再任用制度」が用意されており、希望すれば官職に再任用されます。
外資系企業の状況はさまざまですが、本国が日本より定年の引上げや定年制の廃止が進んでいる場合、それを反映した制度になっていることが多いようです。ちなみに、ドイツとフランスは現在65歳定年で、さらに67歳に引き上げ予定。米国、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは、定年制は廃止されています。
「65歳定年制」ってどういうこと?
「65歳定年制」とは、高年齢者が希望すれば、企業に65歳までの雇用を求めることができる制度です。これを実現するために、高年齢者雇用安定法によって、企業には(1)定年の廃止 (2)定年の引き上げ (3)継続雇用制度の導入 のいずれかの措置の実施が義務づけられています。
(1) 定年制の廃止
定年制を廃止している企業はまだわずかですが、年齢に関係なく元気なうちは働き続けてほしいと考える企業は徐々に増えています。仕事の成果に応じて給料が支払われる形をとっている企業に多い傾向があります。
(2) 定年の引き上げ
定年年齢を引き上げる選択をする企業も増加傾向です。65歳定年の制度を整備している企業の内訳を見ると、300人未満の中小企業が高い傾向があります。
(3) 継続雇用制度の導入
継続雇用制度は、約8割の企業が採用している措置です。雇用している高年齢者を、本人の希望によって定年後も引き続き雇用する制度で、「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2タイプがあります。
「再雇用制度」は、定年でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ制度です。定年時点で希望すれば、定年まで働いていた企業・子会社・関連会社のいずれかで、多くの場合は正社員以外の嘱託・契約社員・パートなどとして再雇用されます。
「勤務延長制度」では、定年到達後も退職することなく、継続して正社員として雇用されます。「再雇用制度」のように雇用契約の中断はありません。
企業の立場からすると、継続雇用制度の導入により、人件費が増えるなど負担が大きくなることも確かです。その一方で、人手不足が深刻化する中、経験や能力のあるシニア人材を活用することができるというメリットもあります。
60歳定年と65歳定年でもらえるお金はどう変わる?
定年退職する年齢によって、年金や失業保険など、給付されるお金は変わってきます。
在職老齢年金制度
まず知っておきたいのは、「在職老齢年金制度」です。
これは60歳以降、厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金のことですが、働いて一定の収入を得ると、老齢厚生年金の一部もしくは全部が減額されてしまいます。
現行では、65歳未満の方は月収と基本月額(老齢厚生年金を12で割った額)の合計が「28万円」を超えた場合に、65歳以降の方は、月収と基本月額合計が「47万円」を超えた場合に、年金額が減額されます。
収入によっては年金が減額されるため、一定の収入額を超えて働くことをためらう方もいるかもしれません。また、厚生年金の被保険者として保険料を納めなければならないため手取りが下がりますが、65歳以降の年金額が増えるメリットも生まれます。
失業保険
失業保険については、65歳を区切りにして、65歳未満の人が受け取れる「基本手当」(一般的な失業保険)と、65歳以上の人が受け取れる「高年齢求職者給付金」に分かれます。支給額に差がありますので注意しておきたいところです。
「高年齢求職者給付金」は、基本手当のように4週に1度支給されるものではなく、一括で一時金として支給されます。支給金額は基本手当日額の30日分から50日分で、雇用保険の加入期間により異なります。65歳未満の人が受け取れる「基本手当(失業保険)」が90日分から360日分であることに対して見劣りすることは否めません。
関連記事:高年齢求職者給付金とは?受給方法と支給額について【社労士監修】
65歳まで働くことのメリット・デメリット
法律により65歳まで雇用が確保され、希望すれば誰でも65歳までは働き続けることができるようになりました。人生100年時代、老後の長さを考えると、年金だけに頼っていては心細いもの。65歳まで安定した収入源があるということは、大きな安心につながることでしょう。
金銭面だけでなく、心や体を健やかに保つためにも、適度な仕事を持つことは有効です。退職後、趣味やボランティア活動などで生き生きと過ごす人もいますが、暇を持て余してしまう人も少なくありません。仕事があれば、社会参加の継続もでき、生きがいにもつながります。
定年を過ぎて働き続ける場合は、定年前よりも給与水準が下がる可能性や、老齢厚生年金の支給額が減額されることを把握し、早い段階から働き方について計画を立てておきたいものです。
まとめ
60歳以降も働き続ける場合は、給与などの収入に加えて、年金への影響や失業保険などのお金に関わることをクリアにしておきましょう。必要な情報を集め、関係する制度を知り、自分らしく後悔のない働き方を目指しましょう。