「65歳定年制」とは?定年延長が義務化するのはいつから?
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2019年12月 6日
- 最終更新日:2020年5月12日
少子高齢化や人手不足を背景に、高齢者の雇用を継続しようという動きが目立つ昨今。定年延長に向けた法改正も進み、長く働ける社会へと変化しつつあります。ここでは、定年延長の内容や現状について、民間企業だけでなく公務員についてもご紹介します。
この記事の目次
定年延長の現状
2013年の法改正から6年、民間企業における定年延長の現状はどのようなものでしょうか。あらためて改正の内容を確認し、具体的に「65歳定年制」について見ていきましょう。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改定内容は?
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、2013年4月から施行されています。「改正高年齢者雇用安定法」とも呼ばれ、この改正により、希望すれば65歳まで働き続けることが可能な世の中となりました(全企業で適用されるのは2025年から)。
改正の背景には、厚生年金の支給開始年齢の引き上げがあります。支給開始年齢が段階的に60歳から65歳へ引き上げられることとなり、これにより高年齢者が賃金も年金も受け取れない「収入の空白」期間が生まれることを防ぐ措置が必要となったのです。
高年齢者の安定的な雇用確保のために、同法律では、企業は以下のいずれかの制度を導入するよう求めています。
(1) 定年制の廃止
(2) 定年の引き上げ
(3) 継続雇用制度(再雇用など)の導入
これまで多くの企業が(3)の「継続雇用制度の導入」を選択してきましたが、労使協定で対象者を限定できるなど、不十分なものでした。改正ではこの仕組みを廃止。対象者の限定が禁じられたことで、雇用の継続を希望すれば全員が65歳まで再雇用される仕組みが生まれました。なお、継続雇用先については、当該企業とその子会社だけでなく、関連会社まで広げられています。
定年65歳までの引き上げとなるのはいつから?
民間企業で働く人がもらう厚生年金の受給開始年齢は、2013年4月から3年ごとに1歳ずつ引き上げられており、男性は2025 年4月以降から65歳になります。継続雇用が義務付けられる年齢は、この受給開始年齢の変化にぴったり対応するように定められているので、同じく2025年には65歳に引き上げられることになります。
具体的には、2013年4月には 61 歳まで、その後3年ごとに1歳ずつ引き上げていき、2025 年4月以降に65歳に至ります。2025年には、継続雇用制度による「65歳定年」の形が整うというわけです。
「65歳定年制」とは?
「65歳定年制」とは、従業員が希望すれば65歳までの雇用を企業に求めることができる制度のことです。人手不足で就職しやすい時代と言われますが、求職活動を敬遠する高年齢者は多いもの。同じ職場で継続して働くことができれば、体力的にも精神的にもありがたいことでしょう。
この「65歳定年制」を実現するための企業における選択肢は、上述の通り「定年の廃止 」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかとなっていますが、2017年に厚生労働省が行った調査によると、実施状況は次のような内訳となっています。
定年制の撤廃
「定年制の廃止」を講じている企業は2.6%とわずかですが、少しずつ増えていることも事実です。深刻な人手不足の中で、年齢に関係なく元気なうちは働き続けてほしいと考える経営者も増えているということでしょう。
ただし、実施している会社の多くでは、仕事の成果に応じて給料を支払う形をとっていることがポイントです。年功序列型賃金では、高齢者ほど人件費がかさむことになりますが、この仕組みでは年齢に関係なく給与を定めることができるためです。
定年の引き上げ
定年の引き上げを実施している企業も増えてきましたが、60歳から65歳の間で定年を選べる「選択定年制度」を導入している企業も増加傾向にあります。
増加しているのは60歳から65歳の間で何歳まで働くかを自身で選択できるケース。60歳以降は賃金が低減することが一般的ではありますが、自分の将来を自分で決められるため、高いモチベーションを保つことができると注目されています。
継続雇用制度の導入
定年延長を取り入れる企業が増えてきているとはいえ、最も多くの企業が導入している65歳まで働ける制度は、継続雇用制度。そして、継続雇用制度のなかで最も利用されているのが、一旦定年退職した従業員を再び雇用する「再雇用制度」です。人事院の調査(平成30年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要)によると継続雇用制度を整えている企業の91%が再雇用制度のみという結果でした。
再雇用制度で注意すべき点は、これまでと同じ仕事内容、そして勤務条件が継続されるとは限らないということです。これまで正社員で働いていたとしても、一度退職した後に再度雇用されるため雇用形態が変更となるケースが一般的で、多くの場合正社員以外の嘱託・契約社員・パートなどとして働くこととなります。
非正規雇用での再雇用となれば、1年毎の契約更新が必要になったり、給与が減額になることがあります。職務内容が変わるのみならず、評価の対象外となることもあり、モチベーションを落としてしまうことも少なくありません。継続雇用制度を導入する企業で働く人は、このような変化を予測して、定年前からキャリアプランを考えておくことが重要といえるでしょう。
政府は公務員の定年延長も検討
民間企業に対し、公務員についてはどのような動きがあるのでしょうか。政府が進める65歳定年に向けた法改正の内容を中心に、現状や欧米諸国との比較も合わせて見ていきましょう。
公務員定年延長の背景
政府は、社会保障制度改革の一環として「生涯現役社会」を掲げ、高齢でも意欲さえあれば働ける社会を目指しています。そのため、国家公務員の定年を段階的に65歳まで延長し、地方公務員や民間にも広げていく動きがあります。
従来、定年の60歳を超えた国家公務員については、年金受給年齢までに無収入期間が発生しないよう、「再任用制度」が用意されていました。しかし、検討された法改正では、この再任用制度を廃止し、定年そのものを65歳まで延長することを目指しています。
2018年の人事院による定年引き上げに向けた提言を契機に、政府は関連法案の作成を進めてきました。結果、2019年の通常国会への提出を見送ることになりましたが、2020年5月に関連法案が提出されました。
関連法案の中身は、国家公務員の定年年齢を2022年度から2年毎に1歳ずつ引き上げていき、2030年度に65歳定年とする内容。さらに、60歳に達した職員を管理職から原則外す役職定年制も併せて導入が予定されています。
一体で提出された検察庁法改正案が話題となっていますが、この法案の動向には注目が集まっています。
欧米諸国との比較
欧米の国家公務員制度では、定年の引き上げや定年制の廃止が日本よりも大きく進んでいます。ドイツとフランスはすでに65歳定年で、今後はさらに段階的に上げていき67歳にする予定です。米国、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、定年制は廃止されています。
これをみても、公務員の定年年齢上昇は世界的な流れといえるでしょう。
まとめ
年金支給が遅れる見込みであることから、無給期間が存在しないように設定された定年延長制度ではありますが、長く働いていたい、という人が多いのも事実です。
しかし、「条件が悪くなるのであれば、違う会社に勤めたい」「長く勤めたのだから、これからは新しい仕事をしてみたい」という人も。そういった場合は、シニア層からでも利用しやすいマイナビミドルシニアなどの求人サイトを利用してみるとよいでしょう。
長く働ける社会になったことをポジティブに捉え、自分にメリットとなるような情報を取り入れていきましょう。