退職金の使い道は慎重に!退職金の主な使い道や定番の失敗パターンを紹介
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2025年4月15日

これからの長い老後生活のために、退職金を活用した資産運用を検討している人もいるでしょう。退職金の使い方はあらかじめ決めておかないと、失敗するリスクもあります。今回は、退職金の主な使い道から定番の失敗パターン3つ、失敗しないための方法をご紹介します。
退職金の主な使い道
貯金
退職金の使い道として、ほとんどの人が挙げるのが貯金です。老後の生活費やもしもの時のために、貯金をして備えたいと考える人が多いでしょう。
生活費
その次に多く挙げられるのが、生活費です。老後の生活で必要な費用は、最低でも月額で平均23.2万円です。しかし、年金の支給平均額は月額で14.9万円となっており、生活するには月9万円ほど足りません。不足する生活費の補填のために、退職金を使う人が多くいることがわかります。
ライフイベント費
住宅ローンの返済や介護費用などのライフイベントに備えておく人、定年退職して時間とお金に余裕があるからこそ、現役時代にはできなかった旅行や趣味のためにお金を使う人もいます。
退職金の定番の失敗パターン
退職金は大きな収入だからこそ、あらかじめ使い道を決めておかないと失敗する可能性があります。今回は退職金の使い道でよくある、失敗パターンを3つご紹介します。
勧められた投資商品をそのまま買う
退職金を受け取ると、金融機関から投資商品の案内が多く届くでしょう。退職金の投資は、成功すれば老後の長い生活を安定して送れます。しかし、担当者や知人から勧められたからという理由で商品を買うのは失敗の元です。
よく知らないままハイリスクな商品を購入してしまい気づいたら大損していた、といった話もよくあります。周囲からの意見を鵜呑みにせず、本当に自分に合っているか、リスクは何かを確かめてから購入しましょう。
退職金を全額投資する
退職金を少しでも増やそうと、全額を投資に回すのも定番の失敗の1つです。退職金のような大きな金額を一括で投資に回すとリターンが大きくなりますが、その分リスクも大きくなります。特に、1つの商品のみを購入した場合は、少しの価格変動に振り回されるようになるでしょう。
運良く相場の良い時期に利益を受け取れればいいですが、相場の悪化によって元本割れを起こし、損失額が膨大になる可能性もあります。ハイリターンを狙った大きな投資よりも、堅実な少額投資の方が失敗を避けられるでしょう。
安易に行動する
現役時代であれば働いて収入を得られますが、定年退職後は収入が一気に減少します。計画性のない大きな買い物をしてしまうと、将来の生活費が足りなくなる可能性も。老後の生活が苦しくならないよう、本当に必要な買い物であるか、将来の生活に影響を与えないかを考えたうえで計画的にお金を使う必要があります。
退職金の使い道で失敗しないためには
退職金の使い道で失敗しないためには、事前に計画を立て知識を身につけておく必要があります。今回は、失敗を防ぐために必要な4つの方法をご紹介します。
家計の見直しをする
退職金の使い道を決める前に、現在の家計状況を見直しましょう。収入や支出、貯蓄額などをすべて把握します。無駄な出費をしていないか、貯蓄を増やす方法はないかを確かめましょう。特に、保険やスマホの料金プランの見直し、利用していないサービスの解約など、固定費の削減は節約効果が高くなります。
将来に必要なお金を試算する
現在の家計状況を把握できたら、将来の生活に必要なお金を試算しましょう。試算するのは、受け取れる予定の年金額から退職金の金額、生活費やリフォームで必要になるお金などです。月々のお金を計算し、不足していないか退職金はいつまで保ちそうかを把握します。
また、退職金を含めた自分のお金の色分けを行うと、老後のライフプランが明確になるでしょう。色分けは、以下の3つがあります。
1. 日々の生活費
食費や家賃などの生活費と、万が一の治療費などのお金を3ヶ月〜1年分確保しておきます。
2. 2〜3年以内の近い将来使う予定のお金
住宅ローンの返済や家のリフォーム、老後の生活のためのお金などです。
3. 使い道が未定のお金や予定のないお金
自分の資産から生活費と近い将来に使うお金を引いて残ったのが、使い道が未定のお金や予定のないお金となります。投資を行う場合は、この使い道が未定のお金から使いましょう。生活費までも投資に回してしまうと、毎日の生活に困窮してしまいます。
買い物やイベントは慎重に
車やリフォーム、豪華な旅行など退職金を使って、大きな買い物やイベントをする際は慎重に検討しましょう。お金が手元にあるという安心感でつい気が大きくなり、必要以上のプランで購入する可能性があります。また、販売側に退職金があると伝わると、高額な内容を提案される場合もあるでしょう。
しかし、リフォームや車は購入後にもメンテナンスが必要となり、長期的な費用負担が発生します。一気にお金を使いたくなる気持ちを抑えて、買い物の前に将来の生活に影響がない範囲の金額を確かめましょう。定年退職後は安定した収入を得るのが難しくなるため、今までよりも一層慎重にお金の使い道を決めましょう。
余裕があるなら年金を繰り下げ受給にする
もし、定年退職後の生活を貯蓄や退職金だけで賄えそうな場合は、年金の繰り下げ受給も検討してみましょう。年金の繰り下げ受給を選択すると、1ヶ月遅らせるごとに受給額は0.7%増額します。
70歳まで繰り下げをすると、0.7%×60ヶ月で42%の増額です。さらに、75歳まで繰り下げた場合は、0.7%×120ヶ月で84%増額されます。実際にどのくらい増額されるのか、年金月額の平均を元に計算してみましょう。
70歳まで繰り下げた場合
• 男性の場合:14.9万円×142%=21.1万円
• 女性の場合:9.3万円×142%=13.2万円
75歳まで繰り下げた場合
• 男性の場合:14.9万円×184%=27.4万円
• 女性の場合:9.3万円×184%=17.1万円
繰り下げ受給を選択する余裕があれば、退職金で無理な投資はせずに、毎月十分な額の生活費を用意できるでしょう。
退職金の運用方法例
退職金を使って投資をする場合、どういった金融商品を購入するべきか悩む人は多いでしょう。以下では、退職金を使ったおすすめの運用方法についてご紹介しています。
個人向け国債
国債は国が資金調達のために発行する債券で、1万円から購入可能です。元本割れのリスクが基本的にはないため、満期まで保有していると元本と利息を受け取れます。金利は他の金融商品ほど高くありませんが、定期預金よりは高いため、安定して資産を増やしたい人におすすめです。
購入から1年が経過すれば中途換金が可能なため、リフォームなどの費用を用意しておけるでしょう。ただし、中途換金をすると手数料が発生する点は知っておきましょう。
退職金向け定期預金
金融機関には、退職金向けの定期預金が用意されている場合があります。退職金向け定期預金は、元本保証型で通常の定期預金よりも高い優遇金利が適用されているため、受け取れる利息が高くなる点が特徴です。
ただし、退職金向け定期預金を利用するには、金融機関によって条件が設定されている場合があります。例えば、退職から3年以内で新規資金を預ける人、指定したライフプランのコンサルティングを受けることなどです。金利や利用条件も含めて、自分に合ったプランが用意されているかご確認ください。
貯蓄型保険
貯蓄型保険とは、病気や怪我に備えながら満期保険金や解約返戻金が受け取れる保険商品のことです。主に終身保険や養老保険、学資保険、個人年金保険などが貯蓄型保険に分類されます。
掛け捨て型の保険よりも保険料は割高ですが、保障を受けながら資金も用意できるため、将来に対する安心感を得られます。ただし、途中で解約すると、解約返戻金が支払った保険料分を上回らない可能性がある点は知っておきましょう。
自己投資
金融商品への投資とは異なりますが、退職金の使い道として自己投資もおすすめです。充実した老後を過ごすために、新しい趣味を見つける、語学や知識を身につける、行ったことのない場所へ出かけるなどです。運動習慣を身につけて健康を維持できれば、医療にかかる費用を抑えられます。
また、新しいスキルを身につけて仕事にできれば、新たな収入源を作れます。時間に余裕がある時期だからこそ、退職金を使って、自分の知識や健康への投資も検討してみてください。
退職金の投資で大事なポイント
退職金を使った投資で、失敗しないためには大事なポイントがあります。今回は、3つのポイントをご紹介しますので、退職金で投資を検討している人はぜひご確認ください。
投資は余剰資金で行う
退職金を使って投資をする際は、余剰資金で行うようにしましょう。退職金を全て使った投資は、リターンが大きくなる可能性がありますが、リスクも高くなります。生活に必要な資金が無くなる可能性もあるため、まずは老後の生活資金を確保し、余剰分で少しずつお金を増やすようにしましょう。
個人国債や退職金向け定期預金であれば、リスクを抑えて少しずつ資産を増やしていけます。また、リスクの高い株式投資でも、配当金を目当てにした少額の運用であれば、全財産を失うことは避けられるでしょう。
手数料の高いものに注意する
投資をする際は、手数料が高い商品があることを知っておきましょう。特に投資信託やファンドラップなどの投資商品は、少額から始められるものもあり、小さく投資を始めたい人にも向いています。しかし、度重なる取引の手数料によって、対した利益が得られず、投資の効果を得られない場合があるでしょう。投資をする際は、手数料の金額や発生タイミングも調べておきましょう。
長期・分散・積立を意識する
退職金に関わらず、投資をする際は長期・分散・積立を意識しましょう。短期間の投資はハイリターンが見込めますが、ハイリスクでもあります。しかし、長期間で投資を続けると結果として、市場変動の振れ幅が小さくなり安定が見込まれます。また、複利の恩恵も受けられるため、結果として安定した利益を得られるでしょう。
同時に、投資先を複数に分散させると価格変動を抑制できるため、安定した利益を狙えます。一方の価格が下がっていても、もう一方が上がっていれば、大きな損失は避けられるでしょう。さらに、投資をする時期も分散させると、より安定した運用が行えます。
そのほか、退職金を一度に使うのではなく、毎月1万円などコツコツと積み立てる方法もおすすめです。一定の金額であれば、価格が安い時は大量に、価格が高い時は少量を購入するため、平均購入額を抑えて運用できます。また、購入時期の分散にもつながります。
まとめ
退職金の使い道と定番の失敗パターン、失敗しないための方法についてご紹介しました。退職金の使い方で失敗をするのは、大きな買い物や全額を使った投資です。知識や将来の計画がないまま使い道を決めると、老後の生活が困窮する可能性があります。
退職金の使い方で失敗しないためにも、老後のライフプランや必要な資金の計算は必須です。そのうえで、余剰資金を使って少額ずつ増やしていけるような投資を検討しましょう。大事な退職金を上手に使って、老後の生活を楽しんでください。