定年退職後のキャリア、再就職はした方が良い?
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2020年1月16日
定年退職後の過ごし方は人それぞれですが、人生100年時代、働けるかぎりは働き続けたいと考える人が多くなりました。経済的にも、年金だけに頼っているわけにはいきません。ここでは、定年と年金の知識をおさえた上で、再就職のための情報をご紹介します。
この記事の目次
定年退職と年金受給の関係
定年が60歳から65歳に引き上げられることになった背景には、年金の受給年齢の引き上げが大きく関わっています。定年と年金受給のタイミングや退職金の概算金額を知ることで、退職後の収入をイメージしてみましょう。
定年退職の年齢は何歳?
2013年に高年齢者雇用安定法の一部が改正され、2025年までに従業員の雇用を65歳まで確保する措置が企業に義務付けられました。さらに70歳まで働けるように環境整備を進めるとのニュースも聞こえています。
また、公務員についても、国家公務員の定年を65歳まで延長することが検討されています。先日、法案提出が見送られた人事院の案では、2021年から段階的に定年を引上げ、2033年には65歳定年となることが予定されていました。このように定年延長は全体的な流れとして進んでいるのです。
年金はいつから支給される?
厚生年金の支給開始年齢は、現在、段階的に60歳から65歳へと引き上げられているところです。2013年4月に61歳となり、その後3年ごとに1歳ずつ引き上げられ、男性は2025 年4月以降から65歳になります。女性の場合には、引き上げ時期がそれぞれ5年遅れとなるので注意が必要です。
このように厚生年金の支給開始年齢が引き上げられると、定年が60歳のままでは、賃金も年金も受け取れない「収入の空白」期間ができてしまうことになります。これを防ぐために、法改正による定年延長の措置がとられたわけです。
定年退職金の平均額
ここで、退職後のプランを考える上で重要な、退職金の金額について見ておきましょう。下の表は、退職給付(一時金・年金)制度がある企業で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の1人平均退職給付額を示したものです。学歴別、退職事由別に、平成29年1年間の数字を確認することができます。
空白期間の収入源を考える
厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたことにより、定年退職後に収入の空白期間ができてしまう可能性が出てきました。退職後も安心して暮らせるように、個人単位で収入源を考えておく必要があります。
雇用延長制度を利用する
現在多くの企業が60歳定年制を採用していますが、継続雇用制度を導入し、定年後に再雇用する形で社員の65歳までの雇用を維持しています。65歳まで働いて収入を得たいと希望するなら、この制度を利用するのが最も現実的かもしれません。
年金繰上げ請求制度を使う
年金繰上げ請求制度を利用するのも一つの方法です。受給開始年齢が引き上げられた年金ですが、手続きにより、年金受給を最大60歳まで早めることが可能です。ただし、この場合には、年金受給額が減額されることを把握することが必要です。1ヶ月繰り上げるごとに0.5%減額され、5年繰上げると30%(0.5%×60ヶ月)の減額になってしまいます。
失業保険を申請する
定年退職後であっても、条件を満たせば失業保険を受け取ることができます。失業保険には、65歳未満の人が受け取れる「基本手当」と、65歳以上の人が受け取れる「高年齢求職者給付金」の2種類があります。
「基本手当」は、一般に「失業手当」と呼ばれている手当のこと。雇用保険の一般被保険者に対する給付で、65歳未満の人が対象となります。65歳以上になると、失業手当の代わりに「高年齢求職者給付金」が支給されます。支給額に差がありますので、退職の時期は慎重に決めるべきでしょう。
高年齢者雇用安定法とは?
定年後の働き方を左右する法律として、高年齢者雇用安定法の内容について詳しく知っておきましょう。2013年に法改正がありましたので、変更点をおさえながらご説明します。
高年齢者雇用安定法が改正
2013年4月、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正・施行されました。この改正により、高年齢者が希望すれば、少なくとも年金受給開始年齢までは働き続けることができるようになりました。
法律では、 (1)定年の廃止 (2)定年の引き上げ (3)継続雇用制度の導入 のいずれかを企業が選択するよう求めていますが、改正ではさらに、大半の企業が導入する「継続雇用制度」について、その対象者を選別することを禁じました。これにより、雇用の継続の希望者は全員、65歳まで再雇用されることになったのです。
再雇用制度とは?
継続雇用制度には、「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2タイプがあります。再雇用制度は、定年を迎えた時点で希望すれば、定年まで働いていた企業・子会社・関連会社のいずれかに再雇用される制度です。働く人の立場からすると、再就職のための求職活動や手続きなどの負担を避けることができるメリットがあります。
ただし多くの場合、正社員以外の嘱託・契約社員・パートとしての再雇用であるため、1年毎の契約更新が必要になったり、賃金が引き下げられたりすることも知っておきたいものです。
勤務延長制度とは?
一方の勤務延長制度では、定年到達後も退職することなく、継続して正社員として働くことができます。再雇用制度のように雇用関係の中断はありません。同じ仕事を同等の条件で継続できると考えて良いでしょう。
定年退職後の仕事にはどんなものがある?
定年退職後の過ごし方として、仕事を持ち、働けるかぎりは働き続けたいという声は少なくありません。仕事は、収入をもたらしてくれるだけでなく、生きがいにもなりうるのです。定年後に人気の仕事をご紹介しましょう。
マンション・ビル管理人
定年後の仕事の定番にもなっているマンション管理人。マンションには幅広い年齢や多様な家族構成の住民が住んでいるため、社会経験豊富なシニアはむしろ歓迎される傾向にあります。実際にシニア向けの求人が多く、無資格、未経験でも応募可能なものがほとんどです。
ビル管理人についてもほぼ同様ですが、条件の良いところを狙うなら、関連する資格を持っていると採用されやすいようです。いずれも雇用形態は契約社員やパート・アルバイトが主流で、70歳前後まで働けるところもあります。
清掃員
体を動かしながら働けることから、シニアの仕事として人気を集めているのが清掃員の仕事。必要な資格がないことや、ビルや公園など幅広い需要があることなどが、シニアでも始めやすい仕事の理由です。
警備員
警備員も人気の高い仕事です。初めての場合には、仕事に関連する法律を学ぶ基本教育と実務研修をそれぞれ15時間ずつ受ける必要がありますが、基本的にはこれだけで警備員として働くことができます。求人も多いので、採用される可能性も高めです。
シルバー人材センター
シルバー人材センターとは、市区町村単位に置かれている組織で、高齢者が自分のスキルや知識・経験に合わせた仕事を紹介してもらえる場です。一定の収入の保証はありませんが、地域とのつながりを大切にしながら、仕事を生きがいに続けていきたい人にはおすすめです。なお、仕事の紹介を受けるためには会員登録が必要です。
まとめ
経済的なニーズからも、生きがいをもって心豊かに過ごすためにも、定年退職後に再就職をして仕事を持つことは当たり前になりつつあります。再就職のための環境も整ってきています。必要な情報を賢く集めて、自分らしいセカンドキャリアを見つけられるとよいですね。