パートに所定労働時間はある?社会保険の加入要件はどこから?【社労士監修】
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- 公開日:2018年11月22日
- 最終更新日:2019年7月25日
主婦がパートを始めるとき、仕事内容や時給とともに重視するのは労働時間ではないでしょうか。働く時間が一定以上になった場合、社会保険に加入する必要があると聞いた人もいるかもしれません。法律ではどのように定められているのか解説します。
この記事の目次
パートの所定労働時間は?
正社員とパートの違いというと、よくあることとして賞与が支給されないことなどが挙げられますが、労働時間についても気になるところですね。正社員は「週40時間、1日8時間」が多いですが、パートにもこの時間は当てはまるのでしょうか。
パートの労働時間の上限は正社員と一緒
パートタイムというと、短時間勤務というイメージが強いのではないでしょうか。「できるだけ稼ぎたいのだけど、パートだと何時間まで働けるのだろう」と心配になる人もいるかもしれませんね、
労働基準法では、正社員・パート・アルバイト・派遣社員など名称に関わらず、雇われて働く人は原則として「労働者」と定義されています。そのため、労働時間の上限は、パートでも正社員と変わりません。労働基準法では、「休憩時間を除き1週間について40時間、1日について8時間を越えて労働させてはならない」と定められています。この制限を超える部分は原則として時間外労働になるのです。
労働時間の上限は、1週間では40時間ですが、1カ月ではどうなるのでしょうか。1カ月が31日の場合、「31日÷7日×40時間」という計算式となり、法定労働時間は177時間になります。同様に1カ月が30日の場合は171時間、28日の場合は160時間です。うるう年の2月は29日なので、166時間となります。
有給や休憩をとる権利も社員と同様
労働時間の上限は、パートも正社員も同じということがわかりましたが、その他にも正社員と同じように利用できる制度はあるのでしょうか。
労働基準法では、正社員・パート・アルバイトなどすべての労働者の休憩時間について、「労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分の休憩をとらせる必要がある」「労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩をとらせる必要がある」と定められています。
労働基準法は原則として強行法規。雇用する側は、1日6時間以上働くパートタイマーに休憩をとらせる必要があります。パートとして雇われる側も、6時間を超える勤務時間になった場合、休憩時間を要求する権利があるのです。
また、休憩と同様に、パート・アルバイトでも一定の要件を満たしている場合、有給休暇を取得することができます。条件にあてはまる人は、勤務を始めてから6カ月間継続して働いていて、出勤しなければいけない日数の8割以上出勤している人です。
この二つの条件を満たし、1週間の所定労働時間が30時間以上、または所定労働日数が週5日のフルタイム契約の場合、正社員と同じ10日分の有給が付与されます。
短時間パートでも有給の取得は可能
これより労働時間が少ない、週4日以下のパートでも有給も取得は可能。週4日または年間労働日数「169日~216日」の場合は7日、週3日または年間労働日数「121日~168日」の場合は5日、週2日または年間労働日数「73日~120日の場合は3日、週1日または年間労働日数「48日~72日」の場合は1日取得できます。
取得できる有給休暇の日数は、勤務日数に応じて少なくなりますが、週1日勤務でも有給休暇を取ることができるとは驚きですね。労働者に与えられている権利なのですから、勤め始めて半年以上経ったら有給取得を考えてみてはいかがでしょうか。なかなか取得に応じてもらえない場合は、労働基準監督署に相談するという選択肢もあります。
業務委託の場合は?
中にはパートではなく、業務委託で、1日6時間~8時間業務に携わっている人もいるでしょう。勤務時間は正社員やパートと変わらないとして、業務委託の場合の休憩や有給取得はどうなっているのでしょうか。
会社は、自社で雇っている労働者が1日8時間の法定労働時間を超えたときは、残業代を支払わなくてはなりません。しかし、業務委託は仕事の成果に対していくら支払うという契約であり、自社で雇っている労働者ではありません。
そのため、業務委託先に関しては、勤務時間が1日に6時間を超えても休憩を取らせる必要はなく、8時間を超えて働いたとしても、残業代を払う必要はありません。有給休暇も同様に付与されません。そのため、人件費の削減や労基法の規制などの観点から、社員を雇うのではなく業務委託を結ぶ会社もあります。
しかし、形式的には業務委託として契約を結んでいたとしても、「実態として労働者」という状態であれば、争いになった場合、労働基準法が適用される可能性があります。労働者としてみなされるかどうかについては、
・働く時間や場所を拘束されているか
・仕事の進め方を細かく指示されているか
・指示された仕事を拒否する自由があるか
などで判断されますが、ここで「労働者」とみなされた場合は、休憩時間や有給休暇の取得はもちろん、残業代を支払ってもらえる可能性もあります。
パートが社会保険に加入する要件は?
「社会保険」とは、会社などに雇用されて働く労働者など「被用者」を対象とする厚生年金保険や健康保険、社会保険のこと。社員しか加入できないというイメージがありますが、条件によってはパートタイムでも社会保険に加入することができます。その条件についてまとめました。
2017年4月から500人以下の企業も社会保険加入の対象に
社会保険の適用範囲はここ数年広がっています。これまでは、原則的に週30時間以上働く人が社会保険加入の対象でしたが、平成28年10月からは、従業員が501人以上の会社に勤務する人の場合は週20時間以上働く方にも拡大。さらに平成29年4月からは、従業員が500人以下の会社で働くパートタイマーでも、労使合意に基づき、会社単位で社会保険に加入できるよう変更となりました。
勤務期間が1年以上である
また、社会保険加入の条件として、「勤務期間が1年以上である」ことも挙げられます。しかし、1年以上勤務している人しか加入できないわけではありません。勤務日数が1年満たない場合であっても、就業規則や雇用契約書などの書面において、契約が更新される場合が明らかとなっている場合は加入できます。
所定労働時間が週20時間以上
以前は正社員の労働時間の3/4以上の時間を働く人が社会保険に加入することとなっていましたが、現在は決まった労働時間が週20時間以上であることが、社会保険の加入の条件となりました。つまり、パートタイムで週に3日しか出勤していない場合でも、労働時間が週20時間以上あれば、社会保険に入ることができるのです。
賃金が月に88,000円以上である
1カ月あたりの決まった賃金が、88,000円以上であることも条件です。なお、賃金の中には賞与や残業代、通勤手当、皆勤手当などは含まれません。自分が該当するかどうかわからない場合は、計算式で確認してみましょう。「時間給×週の所定労働時間×52週÷12ヶ月」で計算をします。
時給1,000円で週に25時間勤務している場合
1,000円×25時間×52週÷12ヶ月=108,333円
上記の場合、社会保険に加入することが可能です。その他、学生でないことが要件となっています。
パートで効率よく給料を稼ぐには?
社会保険に加入すれば、病気やケガの通院・入院時も安心ですし、将来もらえる年金額もアップ。ケガや病気などで仕事を休んだときには「傷病手当金」をもらうことができます。とても心強い制度ですが、給料から社会保険料が引かれてしまうため、手取りが減ってしまうというデメリットも。「社会保険には入らず、手取り額をアップさせたい」そんな働き方はあるのでしょうか。
休憩時間が発生しない時短パートをする
労働基準法で休憩時間が発生しない「6時間未満」のパートのことを、ここでは「時短パート」と呼びます。時短パートは、休憩時間をとる必要がないため、勤務先に滞在する時間を短縮できるので、時間を効率的に使うことができます。
例えば、時給1000円のパートを1日7時間、週3回入ったとします。その場合の給料は、前項で紹介した計算式(「時間給×週の所定労働時間×52週÷12カ月」)で求めると、91,000円です。この場合の社会保険料は、
健康保険料:5,077円+厚生年金保険料:8,735円+雇用保険:364円
合計14,176円
給料からその分を差し引くと、手取りは76,824円となります。
※健康保険料は協会けんぽの場合。健康保険組合の場合は保険料が異なる。年齢は40歳~65歳、会社の場所は東京都、仕事内容は一般の事業で計算
一方、時短パートとして、時給1,000円のパートを1日6時間、週3回入った場合はどうでしょうか。その場合の給料は、社会保険に加入する必要がない額の78,000円です。同じ時給で1日7時間働き、社会保険に加入した場合よりも手取りが多くなります。
業務委託とパートで掛け持ちをする
業務委託とパートを掛け持ちし、収入を増やすという方法もあります。ただし、業務委託で働くとしても、一定以上の収入があれば国民健康保険などの社会保険に加入する義務もあり、扶養内で働きたい人は年間の収入を一定の額以内に納めなければなりません。さらに業務委託の場合、自分で確定申告をする必要があります(年間の業務委託の収入が20万円以下であれば、確定申告は不要)。
まとめ:パートでも労働条件は保障されている
パートでも正社員と同様に労働時間の上限があり、週に40時間を超えて働くことはできません(超えた時間は残業となります)。6時間以上働く場合は、休憩時間を取ることもでき、さらに6カ月以上働いている場合は、週に1回の勤務でも有給休暇も取得することができます。
パートにも認められている労働条件をしっかりと理解した上で、受けられる権利は活用し、賢く働きたいものですね。
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