扶養内のパート。社会保険で損しないために【社労士監修】

  • ちょっと得する知識
扶養内のパート。社会保険で損しないために【社労士監修】

社会保険というと、パートは関係ないのでは?と考える人も少なくないはず。でも、勤務条件がある一定のラインに達すると、社会保険への加入が必要になります。今回はパートでも社会保険に加入する必要があるケースについて解説します。

この記事の目次

    パートは社会保険に加入しなきゃいけないの?

    pixta_40541537_M.png

    社会保険は「年金」「健康保険」と大きく2つに分けられます。一つが65歳以上になると受け取れる老齢年金などがある「年金」、もう一つが病院の診察や治療が3割負担で受けられる「健康保険」です。配偶者の扶養に入っている時は意識することが少なかった社会保険ですが、どういった場合に加入しないとならないのでしょうか。

    パートでも社会保険に加入しなければいけない場合

    パート年収が130万円以下であれば、配偶者の被扶養者となるため、社会保険に加入する必要はありません。逆に130万円を超えると、社会保険に加入し、社会保険料を負担する必要が出てきます。

    ただし、平成28年10月1日から社会保険加入の適用範囲が、大きく拡大し、年収が106万円を超え、以下の条件すべてを満たしている場合にも適用されることになりました。

    ・週の所定労働時間が20時間以上あること
    ・賃金が月額8.8万円(年収106万)以上であること
    ・勤務期間が1年以上見込まれること
    ・従業員501人以上の企業で働いていること
    ※学生は適用外
    【出典】「短時間労働に対する被用者保険の適用拡大」

    さらに平成29年4月1日からは適用範囲がさらに拡大され、上記条件に加え「従業員規模500人以下の企業」でも、労使との合意に基づいて会社単位で社会保険に加入することができるようになったのです。

    参考記事

    パートの勤め先の規模によっては加入対象から外れることがある

    社会保険加入の適用範囲は広くなりましたが、それでもパートの勤め先の会社によっては、適用範囲から外れることもあります。

    本人の労働時間が正社員の3/4以上ある場合には、社会保険に加入しなければなりませんが、労働時間が正社員の3/4未満の方で、従業員501人以上の企業に勤めている場合は106万円から、従業員501人以下の企業(労使の合意をしていない企業)場合は130万円から社会保険に加入し、社会保険料を負担する必要があります。つまり、同じ106万円の年収の場合でも、会社の規模によって「加入しなければならない」「加入しなくていい」が分かれるのです。

    こちらの記事も参考になります。

    「パートは扶養内で働くのが賢いの? 知っておきたい扶養の基本ルール」

    社会保険料を負担する年収の目安

    pixta_40548575_M.png

    労働時間や年収が増えると、社会保険に加入する必要があることがわかりました。それでは、どのくらいの年収があると、加入しなければならなくなるのでしょうか。

    週の労働時間が20時間以上で年収106万円以上となる場合

    年収106万円以上になると、勤務先企業の規模や労使の合意があるかどうかによって、社会保険(厚生年金、企業の健康保険料)への加入義務が発生します。ただし、所定労働時間が「週20時間以上」「雇用期間1年以上」「学生以外」「月額収入が8万8,000円以上」に一つでも該当しないものがある場合は適用されません。これが一般的に言われる「106万円の壁」と言われるものです。

    年収130万円以上となる場合

    年収130万円以上となると、本人で「健康保険制度」と「年金制度」に加入しなければなりません。パートタイム勤務の勤務先において、労働時間が正社員の3/4以上であれば、会社の社会保険(健康保険、厚生年金)に加入し、週の労働時間が20時間未満であれば、居住している自治体の国民健康保険、国民年金に加入しなければなりません。(労働時間が20時間以上30時間未満の場合には、勤務先企業の規模や労使合意があるかないかで会社の社会保険に加入するかどうかが決まります。)
    これが一般的に言われる「130万円の壁」です。

    いずれも、負担する社会保険料は、収入の約14%程度になります。収入が増えたと思いきや、社会保険料を天引きされ、収入アップの実感がわかないという声も聞かれますが、将来受け取れる年金額が増えるなどのメリットも忘れないようにしたいものです。

    社会保険の手続き方法

    pixta_20861797_M.png

    自分の勤務条件や収入が国民健康保険料・国民年金を支払わなくてはならない額であったとしたら、どうやって手続きをすればいいのでしょうか。

    例えば、2018年の途中からパート勤務を始めるとします。2018年の年収は130万円以下になるとしても、2019年に入り、収入が130万円以上になると予想された時点で申告をします(見込み年収の確認)。

    気を付けなくてはならないのは、特にひと月あたりの収入が10万8,333円以上(130万÷12ヶ月)になるケースです。居住する自治体への加入手続きは収入が130万円以上となると予想された日(入社日)から14日以内に行う必要があります。短い期間なので、うっかり忘れないように気を付けましょう。

    配偶者からの扶養から外れ、自身で国民健康保険・国民年金に加入する場合、まず、配偶者が会社の健康保険などに扶養を取り消す書類を提出し、「資格喪失証明書」を受け取ります。その後、必要事項を記載した申請書類を居住している自治体の役所に提出します。

    社会保険加入によるメリットもある

    パートでも社会保険に加入しなければならないとなると、手取りが減ってしまうと躊躇する人もいるかもしれません。でも長い目で見ると、社会保険に加入することによって、将来受け取れる年金が増えたり、医療保険の給付も充実するなどメリットもあります。長くコンスタントに年収106万円(または130万円)以上を稼ぐ予定であれば、「壁」を意識せず働き、社会保険料を払うという選択を考えてみてもいいかもしれませんね。

    関連求人扶養調整可能な求人を探す

    記事に関する問合せは、ご意見・お問い合わせよりお寄せください。
    ※個別の相談はお受けできかねます。予めご了承ください。

    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)

    関連記事

    「パートは扶養内で働くのが賢いの? 知っておきたい扶養の基本ルール」 パートとアルバイト、社会保険に違いはあるの?【社労士監修】 無理しないで子育てと両立できる!おすすめの仕事とは? パートが雇用保険に加入するメリットとは?【社労士監修】 2歳の子供を持つ女性の仕事選びと働き方

    記事をシェアする

    • Twitter
    • Facebook
    • Line

    あなたへのオススメ記事

    4月〜6月に残業すると社会保険料は高くなる?あわせて知りたい標準報酬月額の知識

    4月〜6月に残業すると社会保険料は高くなる?あわせて知りたい標準報酬月額の知識

    会社員として働いていると「4月・5月・6月は働きすぎると、社会保険料が高くなる」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。今回は社会保険料の概要から、計算方法のほか、社会保険料の計算に大きく関わる標準報酬月額について解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年4月 5日
    確定申告に間違いがあった場合は修正可能?やり方や注意点などを紹介

    確定申告に間違いがあった場合は修正可能?やり方や注意点などを紹介

    今年の確定申告も終わり、ホッとしている方は多くいるのではないでしょうか。しかし、申告期限が終了した後に、申告内容の誤りに気付くこともあります。今回は、確定申告で間違いがあった場合の対処法をご紹介。各方法の注意点や、訂正の進め方も解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年4月 3日
    老後不安に陥らないためにも、シニア世代は再就職をすべき!?

    老後不安に陥らないためにも、シニア世代は再就職をすべき!?

    老後資金に必要とされるお金は2,000万円、3,000万円…と様々な数字が並び、あらゆる見識者によって囁かれています。人生100年時代は、いかに長く健康で働き続けられるかがポイントになるでしょう。本日は、シニア世代の再就職について触れていきます。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年3月25日
    パートの時給アップは可能?交渉術と注意点を紹介

    パートの時給アップは可能?交渉術と注意点を紹介

    社会の流れでは年明けの時期から春闘が始まり、正社員の労働条件に関する労働運動が行われます。それに伴い、非正規雇用の時給が上がる可能性もあるでしょう。今回はパート先の時給アップを望む人に向けて、ポイントや交渉のコツなどをご紹介。また、パートの時給に関する法律や最低賃金についても解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年3月15日
    【2024年施行予定】フリーランス保護新法とは?概要やポイント下請法との違い

    【2024年施行予定】フリーランス保護新法とは?概要やポイント下請法との違い

    フリーランス保護新法は2023年に成立し、2024年中に施行がされます。年々、ミドルシニアやシニア層でもフリーランスとして働く人は多く、今回の法案が関係する人も多いでしょう。なぜフリーランス保護新法が整備されたのか、下請法との違いなどを解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年2月16日
    主婦年金廃止で年15万円の負担増?!検討の背景や家計への影響

    主婦年金廃止で年15万円の負担増?!検討の背景や家計への影響

    2023年10月1日に放送された番組にて、武見厚生労働大臣が「主婦(主夫)年金の見直しの必要性」に触れたため、主婦年金が廃止になるのではないかと話題になっています。今回は改めて主婦年金とはどのようなものか?なぜ廃止が検討されているのか?廃止による影響についてもご紹介します。早ければ2025年にも廃止が決まる可能性があるため、今から影響について把握しましょう。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年2月 5日

    おすすめ・シリーズ記事

    人気記事ランキング

    おすすめの求人はこちら

    活躍中の年代から探す
    雇用形態から探す
    募集条件から探す
    働き方から探す
    福利厚生から探す
    職種から探す
    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)