扶養内のパート。社会保険で損しないために【社労士監修】

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扶養内のパート。社会保険で損しないために【社労士監修】

社会保険というと、パートは関係ないのでは?と考える人も少なくないはず。でも、勤務条件がある一定のラインに達すると、社会保険への加入が必要になります。今回はパートでも社会保険に加入する必要があるケースについて解説します。

この記事の目次

パートは社会保険に加入しなきゃいけないの?

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社会保険は「年金」「健康保険」と大きく2つに分けられます。一つが65歳以上になると受け取れる老齢年金などがある「年金」、もう一つが病院の診察や治療が3割負担で受けられる「健康保険」です。配偶者の扶養に入っている時は意識することが少なかった社会保険ですが、どういった場合に加入しないとならないのでしょうか。

パートでも社会保険に加入しなければいけない場合

パート年収が130万円以下であれば、配偶者の被扶養者となるため、社会保険に加入する必要はありません。逆に130万円を超えると、社会保険に加入し、社会保険料を負担する必要が出てきます。

ただし、平成28年10月1日から社会保険加入の適用範囲が、大きく拡大し、年収が106万円を超え、以下の条件すべてを満たしている場合にも適用されることになりました。

・週の所定労働時間が20時間以上あること
・賃金が月額8.8万円(年収106万)以上であること
・勤務期間が1年以上見込まれること
・従業員501人以上の企業で働いていること
※学生は適用外
【出典】「短時間労働に対する被用者保険の適用拡大」

さらに平成29年4月1日からは適用範囲がさらに拡大され、上記条件に加え「従業員規模500人以下の企業」でも、労使との合意に基づいて会社単位で社会保険に加入することができるようになったのです。

参考記事

パートの勤め先の規模によっては加入対象から外れることがある

社会保険加入の適用範囲は広くなりましたが、それでもパートの勤め先の会社によっては、適用範囲から外れることもあります。

本人の労働時間が正社員の3/4以上ある場合には、社会保険に加入しなければなりませんが、労働時間が正社員の3/4未満の方で、従業員501人以上の企業に勤めている場合は106万円から、従業員501人以下の企業(労使の合意をしていない企業)場合は130万円から社会保険に加入し、社会保険料を負担する必要があります。つまり、同じ106万円の年収の場合でも、会社の規模によって「加入しなければならない」「加入しなくていい」が分かれるのです。

こちらの記事も参考になります。

「パートは扶養内で働くのが賢いの? 知っておきたい扶養の基本ルール」

社会保険料を負担する年収の目安

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労働時間や年収が増えると、社会保険に加入する必要があることがわかりました。それでは、どのくらいの年収があると、加入しなければならなくなるのでしょうか。

週の労働時間が20時間以上で年収106万円以上となる場合

年収106万円以上になると、勤務先企業の規模や労使の合意があるかどうかによって、社会保険(厚生年金、企業の健康保険料)への加入義務が発生します。ただし、所定労働時間が「週20時間以上」「雇用期間1年以上」「学生以外」「月額収入が8万8,000円以上」に一つでも該当しないものがある場合は適用されません。これが一般的に言われる「106万円の壁」と言われるものです。

年収130万円以上となる場合

年収130万円以上となると、本人で「健康保険制度」と「年金制度」に加入しなければなりません。パートタイム勤務の勤務先において、労働時間が正社員の3/4以上であれば、会社の社会保険(健康保険、厚生年金)に加入し、週の労働時間が20時間未満であれば、居住している自治体の国民健康保険、国民年金に加入しなければなりません。(労働時間が20時間以上30時間未満の場合には、勤務先企業の規模や労使合意があるかないかで会社の社会保険に加入するかどうかが決まります。)
これが一般的に言われる「130万円の壁」です。

いずれも、負担する社会保険料は、収入の約14%程度になります。収入が増えたと思いきや、社会保険料を天引きされ、収入アップの実感がわかないという声も聞かれますが、将来受け取れる年金額が増えるなどのメリットも忘れないようにしたいものです。

社会保険の手続き方法

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自分の勤務条件や収入が国民健康保険料・国民年金を支払わなくてはならない額であったとしたら、どうやって手続きをすればいいのでしょうか。

例えば、2018年の途中からパート勤務を始めるとします。2018年の年収は130万円以下になるとしても、2019年に入り、収入が130万円以上になると予想された時点で申告をします(見込み年収の確認)。

気を付けなくてはならないのは、特にひと月あたりの収入が10万8,333円以上(130万÷12ヶ月)になるケースです。居住する自治体への加入手続きは収入が130万円以上となると予想された日(入社日)から14日以内に行う必要があります。短い期間なので、うっかり忘れないように気を付けましょう。

配偶者からの扶養から外れ、自身で国民健康保険・国民年金に加入する場合、まず、配偶者が会社の健康保険などに扶養を取り消す書類を提出し、「資格喪失証明書」を受け取ります。その後、必要事項を記載した申請書類を居住している自治体の役所に提出します。

まとめ:社会保険加入によるメリットもある

パートでも社会保険に加入しなければならないとなると、手取りが減ってしまうと躊躇する人もいるかもしれません。でも長い目で見ると、社会保険に加入することによって、将来受け取れる年金が増えたり、医療保険の給付も充実するなどメリットもあります。

長くコンスタントに年収106万円(または130万円)以上を稼ぐ予定であれば、「壁」を意識せず働き、社会保険料を払うという選択を考えてみてもいいかもしれませんね。

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