【シニア向け】プラチナNISAとは?仕組みやリスクなど始める前に知っておきたいこと
- ちょっと得する知識
- 公開日:2025年11月10日
65歳以上のシニア層向けに「プラチナNISA」が2026年に開始される予定です。現行の新NISAとどのように違うのでしょうか。今回はプラチナNISAの概要から新NISAとの違い、メリット・デメリットなどを解説いたします。運用しながら資産を取り崩す賢い方法もご紹介しますので、定年後の資産に不安がある人はぜひお読みください。
この記事の目次
プラチナNISAとは
プラチナNISAとは65歳以上の年金受給者層を対象とした、新たなNISAの制度です。2025年4月23日に岸田前首相が会長を務める資産運用立国議員連盟が提言を行なったことで、2026年度の税制改正に向けて動き出すとされています。
65歳以降を対象としたプラチナNISAの狙いとして、高齢者の資産活用・高齢者のニーズへの対応・NISA制度の普及が挙げられます。高齢化が進んでいる現代では、日本の金融資産の6割を60歳以上の高齢者が預貯金という形で保有しています。
しかし、預貯金だけでは国の経済が停滞する可能性もあるため、資産運用を行なって経済の活性化を狙うというのが1つの目的です。また、プラチナNISAは定年退職後に、投資をしながら少しずつ資産を増やしたいというニーズを叶えられる可能性がある制度です。
高齢者はNISAを含め、資産運用に対する興味関心が薄い傾向にあります。今回の高齢者専用制度の用意によって、関心を高めてNISAの制度全体の普及を図る目的もあるでしょう。
プラチナNISAと新NISAの違い
プラチナNISAと現行の新NISAには、明確な違いが2点あります。どのような違いがあるのか、以下で具体的に解説します。
対象年齢
プラチナNISAと新NISAは、資産運用を行う人の対象年齢が異なります。プラチナNISAは65歳以上の高齢者が対象の制度です。一方、新NISAは18歳以上から投資が行え、年齢の上限は設けられていません。
プラチナNISAは年金を受け取りながら、資産運用をしたい高齢者のための制度です。新NISAの方がより広い人を対象にしており、20代や30代の資産形成に向いています。
毎月分配型
プラチナNISAと新NISAの違いのもう1つは、毎月分配型の投資信託が買える点です。現在、新NISAでは毎月分配型の投資信託は購入できません。
新NISAの目的は長期的な資産形成の支援ですが、毎月分配型の投資信託は分配金の一部が払い戻されるため運用益を再投資できず、複利の効果を得にくいという特徴があります。この特徴が新NISAの目的に合わないとして、対象商品から除外されていました。
しかし、年金収入に頼って生活している高齢者にとって、毎月の生活費を補填できる毎月分配型投資信託は魅力的な商品です。資産を保有しながら安定した分配金を受け取れる毎月分配型投資信託は、高齢者のニーズに即していることからプラチナNISAでは導入される方向で進んでいます。
投資信託における分配金について

そもそも投資信託における分配金とは、どういうものか知らない人も多いでしょう。
分配金とは決算の際に、投資信託の運用で得た利益を投資家に分配するお金です。分配金は金額が決められているわけではなく、運用状況によって増減します。分配金が支払われると手元の現金が増えますが、支払われた分配金の分だけ運用資産は減少し、投資信託の値段である基準価額も下がる仕組みです。
必ず支払われるわけではなく、決算の状況によっては支払われない場合もあります。また、運用益以外から分配金が支払われるケースもあります。そんな分配金の種類は、普通分配金と元本払戻金の2つです。
普通分配金
普通分配金とは、運用によって得られた利益を投資家に支払うタイプの分配金です。決算までの間に、元本+100万円の運用益が出た場合、100万円の運用益が分配金として支払われます。元本を上回った分が支払われるので、元本が減ることはありません。分配されたお金は投資家の利益となるため、課税の対象になります。
元本払戻金
元本払戻金は運用によって出た利益だけではなく、元本の一部と一緒に投資家に戻す仕組みです。分配金として支払う金額が100万円となっているが、運用益が50万円だった場合、残りの50万円を元本から取り崩し、投資家に払い戻すという仕組みです。元本払戻金は元本の一部が戻ってきたという認識になるため、課税対象にはなりません。
プラチナNISAで話題の毎月分配型投資信託は、元本払戻金となる可能性が高くなります。毎月決まった金額を分配するので、利益が十分であれば元本は減りませんが、運用成果がいまいちの時は元本を取り崩して分配を行うためです。
プラチナNISAのメリット
65歳以上を対象としたプラチナNISAには、どのようなメリットがあるのか、以下では2つご紹介いたします。
定期的な収入を得られる
プラチナNISAは毎月分配型投資信託となるため、定期的に分配を受け取れる点がメリットです。定年退職後は年金以外にまとまった収入はなく、人によっては年金だけでは生活費が足りない可能性もあります。
毎月分配型の投資信託であれば、毎月決まった額が入ってくるので生活費の補填ができます。また、資産を売却しなくても、まとまった分配金が得られるという特徴もあります。年金以外にまとまった収入があるのは、メリットと言えるでしょう。
資産運用をしているという実感が持てる
毎月分配型投資信託の場合、定期的に分配金が入ってくるため、投資をしているという実感を得やすいです。分配金のない投資信託や配当金のない株式投資の場合、ただお金を払っているだけで運用している効果を実感できない人が多くいます。
しかし、分配金が毎月振り込まれると、運用している成果を目に見えて感じやすくなります。生活に直結する形になるため、運用していてよかったと感じる機会が増えるでしょう。
プラチナNISAのデメリット
プラチナNISAにはデメリットも存在します。今回は以下の5つのデメリットを解説いたします。
元本取り崩し
毎月分配型投資信託は運用益だけを分配するわけではなく、毎月決めた分配額を用意するために、運用益では足りない分を元本から取り崩す仕組みです。分配金として受け取っていても、実際は払ったお金を受け取っているだけというケースもあります。少しずつ元本を削って運用をしていくため、元本割れを起こすリスクが高まります。
複利の効果が少ない
資産運用で資産を増やしていくには、複利の力が重要です。特に長期的な運用をする際は、徐々に複利の力が強くなるため、大きな利益を得られる可能性も持っています。
しかし、毎月分配型投資信託の場合、利益や元本を定期的に取り崩すので、再投資に回す資金が通常よりも減少します。結果として複利の効果が少なくなり、効果的に資産を増やすのは難しくなります。
高リスクな商品が多い
毎月分配型投資信託では、一定の分配金を保つために高リスクな資産やレバレッジが組み込まれるケースがあります。高い分配金を維持しやすいというメリットはありますが、金利上昇や信用不安などの影響で基準価額が下落しやすいというリスクも持っています。安定した運用を優先したい人には向いていません。
手数料が高い
金融機関によっては、手数料が高めに設定されているケースがあります。購入金額の1〜3%を手数料として、運用しているお金から数万円が引かれる場合もめずらしくありません。
また、資産の保有中に発生する信託報酬も高い傾向にあります。インデックス型などの他の商品と比較すると、年1.5〜2.0%と高めに設定されています。信託報酬は運用の結果に関係なく、投資家が支払う必要のあるお金です。運用状況が悪い時は元本を取り崩しながら高い信託報酬も支払うこともあり、損となる可能性もあるでしょう。
課税口座の場合は税金が発生する
毎月分配型投資信託は、非課税である親NISAでは購入できません。プラチナNISAの運用には課税口座・特定口座・一般口座などで購入する必要があります。元本払戻金の場合は非課税で受け取れますが、普通分配金で受け取った場合は、支払われるごとに20.315%の税金が発生します。
プラチナNISAの注意点

プラチナNISAを運用するか悩んでいる人は、以下の注意点も参考に検討してみてください。
長期投資には不向き
長期投資には複利の力が重要ですが、プラチナNISAは複利の力を得にくい制度です。毎月分配型は毎月一定額を投資家へと分配するため、利益や元本を再投資へ回しにくいという特徴があります。
そのため、資産を効率的に増やすのには向いていません。元本を取り崩すこともあるため、長期的に運用すると元本割れを起こすリスクも高まります。長期的に資産を増やしていきたいと考えている人には、毎月分配型投資信託は不向きです。
分配金に頼った生活をしない
あくまでも分配金は生活費の足しと考え、分配金に頼った生活にならないようにしましょう。毎月分配型投資信託の場合は、運用している元本を取り崩していることもあるため、実質的には資産が目減りしている状態になります。
途中で元本割れが発生し、分配金を受け取れなくなる可能性もあります。安定した生活を送るためにも、プラチナNISAはお小遣い感覚に捉えておくと安心です。
プラチナNISAなどを運用しながら資産を取り崩す賢い方法
プラチナNISAなどの毎月分配型投資信託を運用しながら、資産を取り崩す賢い方法をご紹介いたします。
定額取り崩し
定額取り崩しは、「毎月⚪︎円分取り崩して支払って欲しい」と決めておき、指定金額に当たる分を売却してもらう方法です。毎月の生活費にあと5万円欲しいなら、5万円分を売却して受け取ります。
追加で任意売却もできるため、臨時の出費がある時はその分を追加で売却も可能です。定額取り崩しは生活費の目処を立てやすくなりますが、資産の減りが早くなる点に注意が必要です。
定率取り崩し
定率取り崩しは一定割合を取り崩して売却する方法です。保有資産が値上がりしている時は多めに取り崩し、値下がりしている時は少なめに取り崩しをするので、定額取り崩しよりも資産を長持ちさせやすい点がメリットとなります。
期間指定取り崩し
期間指定取り崩しは受け取る期間を指定し、そこから割り算によって1回当たりの取り崩し口数を計算する方法です。具体的には「5年間、毎月15日に受け取る」と指定すると、指定した投資信託の口数に設定した期間内で均等に分割して売却を行います。運用している資産すべてを、確実に使い切りたいという人に向いている方法です。
毎月分配型投資信託を始める時のチェックポイント
プラチナNISAなど毎月分配型投資信託を始める際は、後悔しないためにも以下の3つについてチェックしておきましょう。
• 分配金は普通分配金か、元本払戻金か
• 分配金の内訳
• 基準価額が長期的に下がっていないか
分配金の支払いや基準価額は、長期的に資産を守っていくためには必要な確認項目です。知らない間に資産を減らさないためには、利回りが高すぎないか、資産全体の価値が減少していないかを確認しましょう。
まとめ
2026年に導入予定のプラチナNISAについてご紹介いたしました。プラチナNISAは65歳以上を対象に資産運用を促す目的で、新たに設けられる予定の制度です。
毎月分配型投資信託での運用となる可能性が高く、毎月の生活費の足しとして利用できるようになるでしょう。しかし、元本割れのリスクが高いなど、注意するべき点もあります。制度が始まる前にメリットやデメリットを確かめて、利用をするか検討してください。








