定期昇給は平均48.9歳で廃止?!その後のプランの考え方とは?

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定期昇給は平均48.9歳で廃止?!その後のプランの考え方とは?

定期昇給制度といえば終身雇用制度のベースにある考え方ですが、近年では業績・成果報酬の割合を増やす方向で見直しを図る動きがあるようです。平均何歳で実施されることが多いのか、どれくらい年収は下がるのか、賃金制度の変化とその変化における対応法、ベースアップとの違いなどを理解しておきましょう。

この記事の目次

    そもそも定期昇給とはどんなもの? メリットは?

    定期昇給とは、年齢や勤続年数が増えるに連れて給与が上がる制度です。同じ会社で長く働くほど賃金の最低保障が上がる構造にすることにより、長く働くことのメリットを生み出し、人員の安定化を図る狙いがあります。

    日本の多くの企業で第二次大戦前から導入された制度であり、初任給水準が低めに設定されている時代においては、家計をやりくりしながら生計を維持しつつ、一つの企業で長く働き続けることによって安定した生活が得られる、という考えが一般的でした。人材の安定が会社の利益につながって、生産性が向上するという理論です。

    しかし、初任給水準が改善されている近年においては、この定期昇給を取り入れる必要性が薄れているとも考えられますが、2014年に公益財団法人日本生産性本部が発表した調査結果が示すように、今もなお6割以上の会社が、定期昇級制度を採用し続けていることがわかります。

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    成果主義の風潮が強い国外企業から見ると異質ともいわれる仕組みではありますが、国内企業にとっては未だ主流を占めている雇用制度といえるでしょう。

    定期昇給が止まるのは平均で48.9歳!

    定期昇給の仕組みを取り入れているとは言えど、昇給を一定年齢までに制限する企業はたくさんあります。前述のグラフを見ると、定年退職を迎えるまで昇給が続く企業は17.6%程度にとどまっています。加えて、半数の企業では一定年齢になった時点で基本給のアップを廃止していることがわかります。

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    こちらのグラフは「一定年齢まで定期昇給がある」と回答した企業の内訳です。ボリュームとして多いのは「46~50歳」「51~55歳」のゾーンとなり、全体の平均的な昇給停止年齢は48.9歳です。つまり、多くの企業では50歳前後を迎えるあたりで基本給の上昇がひと段落し、機械的な賃金上昇は止まることが多いといえます。

    なお、企業規模別に昇給停止年齢を見ていくと、従業員が1,000~5,000人未満という中規模の企業においては、「36~40 歳まで」とする企業が多く存在しています。従業員数が5000名以上の大企業においては「46~50歳まで」とする率がもっとも高止まりしていますが、注目したいのは従業員規模が1,000名未満と小規模の企業においても「46~50歳まで」とする企業が多いことです。

    つまり、昇給停止年齢は企業規模により異なっており、中規模企業は30代後半で一つの山を迎え、大企業と小規模企業においては50歳前後までと、二極化していることがわかります。

    ベースアップとの違いは?

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    定期昇給同様に年功序列型の賃金構造を支えるあり方として、ベースアップがあげられます。ベースアップとは「一律1%アップ」のように、年齢や賃金水準に関係なく基本給を上げることです。

    25歳で20万円、30歳で22万円、35歳で24万円と定期昇給を制度として取り入れている企業であれば、25歳で202,000円、30歳で222,000円、35歳で242,400円というような待遇向上が見込まれるため、労働者側からすると大きな恩恵となります。そのため、各社の労働組合が先頭に立ち、企業に対してベースアップを求める春闘は毎年の風物詩にもなっています。

    定期昇給はあらかじめ設定された賃金制度を元に行われますが、ベースアップは賃金表自体を変えていく取り組みです。勤続年数など客観的な指標を問わずに全ての社員に対して賃金アップがなされるため、人件費の負担が重くなります。景気が上向いているタイミングでは賃金水準も引き上げて労働者に還元するという経済原則に則ったものではありますが、企業にとっては経営を圧迫しかねない要因となるため大きな経営判断が伴います。

    定期昇給はモチベーション低下の要因にもなりうる

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    現在でも行われている定期昇給の賃金体系ですが、今後については「見直したい」とする意見もあります。上述のグラフで「定期昇給制度がある」と回答した企業が「従業員が創出する付加価値と賃金水準との整合性を図るために必要と考える対応」のTOP5は以下の内容です。

    1.年功的な昇給割合を減らし、貢献や能力を評価する査定昇給の割合を増やす/58.0%

    2.若年層などの一定の年齢層や、一定の職位・職階の従業員を除き、年功的な昇給を廃止し、査定昇給とする/28.5%

    3.現行制度は維持するが、業績が著しくない場合には、昇給の延期・凍結について組合と柔軟に協議し対応していく/27.1%

    4.利益の変動や競争力の変化に応じて、昇給原資を変動させる/22.6%

    5.全従業員を対象に年功的な昇給を廃止し、査定昇給とする/14.7%

    これを見てもわかるように、企業側も現状の制度をこれからも続けるつもりはないことが見て取れます。それは40代や50代になっても機械的な昇給を続けることが惰性を招き、長期的にはモチベーション低下につながるともとられるためです。


    漠然と仕事をこなしているだけでも一定の比率で給与が上がっていく仕組みなら、必要以上にスキルアップを図る必要はないと考えて、ぬるま湯につかる社員が出てくるでしょう。しかも、中間管理職以上の社員がこのような働き方を続ければ、若手社員のモチベーションを下げてしまって、会社全体としての競争力が衰えていくリスクもあります。

    生産性が下がるにもかかわらず人件費コストが増える状態は会社にとって不利益でしかありません。そのため、賃金制度改革によって状況を打破する策がとられるのは摂理に適った決断です。

    成果主義の導入後も活躍するために

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    改革の方向性としては、成果主義に則った努力が報われる昇給制度へと変わっていく可能性が高く、個々のスキルや数値的指標が重要性を増していくものと考えられます。これが実現されれば、20代や30代でも実績に応じて高年収を実現できる反面で、会社への貢献が足りないととられる社員に対しては、たとえ40代や50代であっても周囲より低い基準の基本給が設定される可能性が否めません。

    これまで地道な努力を続けてきた人にとっては大きなチャンスと言えますが、何も考えずにレールの上を歩いてきた人にとっては手痛いしっぺ返しが待っている状況と理解しましょう。年齢が下の社員に収入でも地位でも追い越されて、会社の上下関係が変わっていく可能性は大いにあります。

    成果主義の昇給が本格導入された時にうろたえないためにも、自主的なスキルアップを目的とする前向きな取り組みを始めましょう。会社にとって付加価値が高い人材となれば、しかるべき給与や待遇を受け取る準備が整ったときに、これまで以上にチャンスが広がる環境といえます。年功序列のぬるま湯に浸からず、考え方から一歩先を見越した行動をいち早く始めることが、今後の社会を生き抜くための重要なポイントといえるでしょう。

    こちらの記事も参考になります。

    「「超実務スキル」こそが自律的な人生を拓く鍵となる|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.10」

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