転職できる年齢の限界は上昇中!労働市場から見るその理由とは?
- 自分の相場を知る
- 公開日:2017年11月 6日
今の仕事をどうしても続けられないと悩んでいる人は多いのではないでしょうか。日本では「35歳の壁」があるといわれ、転職には年齢の限界が存在するかのようにささやかれていましたが、企業側が若年層の採用で苦戦する現代では、一体どのように変化しているのでしょうか。ここではシニア世代も必見の転職の年齢事情について解説していきます。
この記事の目次
ミドルシニア層の採用を後押しする、バブル期以降最大の有効求人倍率
日頃生活していてなかなか気づくことはありませんが、数字の上では空前の人手不足が起きています。
厚生労働省によると、2017年5月の有効求人倍率は、1.49倍(季節による変動要因を除く)。これは1974年以来の高水準であり、バブル経済期の最高値を上回るほどです。
そして、都市部ではその傾向がさらに高まっており、東京の有効求人倍率は、なんと2.07倍(2017年7月時点)。しかも、正社員のみに限った求人倍率も1.26倍と、過去最高を更新しています。
これまでも人手不足感が強まることはありましたが、その内訳は非正規の求人が圧倒的でした。しかし、現在では、「待遇が悪ければ人が採用できない」ことを企業側が理解しており、正社員の求人も増加していることが特徴といえます。
人手不足感は中堅・中小企業でより高まっている
2016年に財務局より発表された「人手不足の現状及びその対応策」を見ると、企業が抱える人手不足の現状がより見えてきます。
全産業の63.2%が人手不足感を感じていると回答。内訳をみると、規模が小さくなればなるほど人手不足の傾向は強まることが見て取れます。
人手不足の要因についても見ていくと、製造業においては「事業の拡大に対して人員が不足」との理由が高止まりはしていますが、製造業・非製造業においてももっとも高い理由は「募集をしても人が集まらない」こと。
つまり、人を雇おうとする意欲はあるけれど、集まってこないことが大きな理由を占めていることがわかります。
さらに問題なのは、1年前と比較してみると人手不足感が「とても強くなった」「強くなった」と答えている企業は3割を超えており、中小企業においては38.9%と高い割合を占めています。
「人手不足なので、なんとかして新たに人を採用したい。でも、求める人材が集まってこない。そのため、昨年よりも人手不足感が強まっている。。」そんな事情が見て取れると思います。
人手不足の負の循環を断ち切る「ミドルシニア」の労働力!
人手不足感が強いため、採用に意欲的な企業が増えているのは事実です。しかし、もちろんですが「人手が足りれば誰でもよい」というわけではありません。
・スキルや経験は求めたい。
・だけど、求めるスキルや経験を持っている人は市場に少ない
(もしくは持っていても条件が高くてマッチングしない。。)
・ならば、ポテンシャルがあり、長く働いてくれる期待のできる若い人を採用したい
(だけど、若い人が少ない。。)
・人が採れないので人手不足が解消されない
・そのため働く環境が改善されない
・働く環境が改善されないので、さらに人が辞めていく。。
というループを企業側も辿っています。そのため、解決策として注目を集めているのが、経験とスキルを多く持っているミドルシニア層を採用するという選択なのです。
年齢別に見る、転職者数の割合
「そうは言っても転職は若者がするものじゃないの?周りで転職した人はそんなにいないし」と思う方もいるかもしれません。そこで総務省発表の「2017年労働力調査」をみていきましょう。
2016年の総転職者数を見ていくと全年代で306万人であり、過去5年で最多を記録しています。ここから転職自体が活況ということが読み取れます。
転職者数を年齢別に見ていくと、25~34歳のいわゆる「若手の転職者」が77万人でもっとも多く存在。しかし、35~44歳が60万人、45~54歳が50万人と一定の転職者が存在しています。この数字を見ても、転職に事実上のリミットがあるとされる、いわゆる「35歳の壁」は現在においては当てはまらないことが理解できるでしょう。
未経験の職種・業種への転職も可能なの?
ミドルシニア層を採用する企業が期待しているのは、「これまでの経験やスキル」を発揮してもらうこと。代表的といえる例は、森下仁丹株式会社がはじめた「第四新卒」です。
「年齢や性別に関係なくキャリアアップに挑戦する人材を採用する」ことを森下仁丹では「第四新卒採用」と名付け、様々な分野での豊富な実績を持った人材を広く募集し話題を集めました。
そして、現在ではこのような経験者に魅力を感じ、即戦力として期待できるミドルシニア層を採用する企業は確実に増えています。このような企業ニーズを受けて、シニア層が短時間で顧問として派遣するサービスなども生まれており、このような流れは加速すると見られています。
「でも、このようなサービスで転職できるのは企業の第一線で活躍してきた人だけでしょ?」という疑問を持たれる方もいるかもしれません。しかし、企業が求める経験やスキルは必ずしもこれまでの仕事と直結したものだけを求めるわけではありません。
例えばこれまで総務で培った働く社員への配慮や部下へのマネジメント、実務能力は様々な人と触れ合う施設管理の仕事などで活かせますし、営業で身につけた数字の管理や交渉力などは飲食業界や小売業界の店長やSV職でも活かせます。
未経験の職に就く際の重要なポイントは、企業研究に基づいた求める人物像を想定したうえで、志望動機を明確に説明できること。きっちりと準備をして、今までの経歴を活かせることをしっかりと伝えられれば、成功の可能性はグッと上がるはずです。
パート・アルバイトという選択肢も検討してみる
ミドルシニア層のキャリアチェンジで、近年パートやアルバイトを選択するケースも増えてきています。これは短時間で働きたいという求職者側のニーズと、労働力を求める企業側のニーズが合致してきているためであり、女性だけではなく男性においてもアルバイトを選択する傾向は増してきています。
特に外食においては、積極的な主婦の採用を行うマクドナルドや、「モス爺」などの言葉にもなっているモスバーガーなどのファーストフードが代表的です。このような大きなチェーン店ではマニュアルも整備されているため、入社してからの教育もしっかりしていることが特徴です。
特に学生アルバイトがなかなか勤務できない平日の昼間などは、シニア世代の店員が多く活躍しています。このことからもわかるように正社員だけではなくパートやアルバイトにも、基本的には年齢の壁はないといえます。接客業や飲食店で働いた経験がある人は、飲食業界では即戦力として重宝される可能性もあります。アクティブシニアと呼ばれる元気な退職者も増えているため、今後もますます飲食業界でのシニア採用は増えていくことでしょう。
まとめ:採用されるかどうかは、本人の経歴と準備次第!
いまだに年功序列や新卒を中心に採用している企業が多いことは事実ですが、だからといって年齢を理由に転職というキャリアチェンジの機会を閉ざしてしまう必要はありません。
応募者を採用する人事の側からすると、年齢が若いかどうかよりも優先するべきは、戦力として活躍してくれるかどうか。そして、自社に利益をもたらしてくれる可能性を感じられるかです。その点をしっかりと把握し、自身の価値をアピールできれば、結果は自ずとついてくるものです。そのためにも、自身のこれまでの経歴の整理を行い、自己分析に取り組み、準備を整えましょう。
転職は今後の人生を大きく変える、重要な決断です。そのため悩んだりためらったりすることは自然なことです。しかし、少しでも転職という選択肢に今後の可能性を感じるのであれば、まずは自分が輝けそうな仕事を探すところから初めてみてはいかがでしょうか。