世界の定年年齢も上昇傾向!?長く働くのは日本だけではない!

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世界の定年年齢も上昇傾向!?長く働くのは日本だけではない!

「日本は高齢化が進んだせいで、年金の支給も遅れ、この歳になっても働かなければいけない……」とこぼすこともあるかもしれません。しかし、その流れは世界共通のもの。じつは、日本よりも定年年齢が長く設定されている国もあるのです。

この記事の目次

    各国の定年水準は徐々に上がってきている

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    世界の定年年齢は、国によって違いがあります。アメリカやイギリスは定年制度が原則的に禁止されていて、一定の職業を除いては制限を作らない仕組みです。ドイツやフランスは日本に準じた扱いとされていて、年金支給が始まるタイミングと定年年齢を合わせるスタイルがとられてきました。現在は年金の支給開始を67歳まで引き上げていく過渡期にあって、65歳くらいで定年するのが平均的な水準とされています。

    アジア圏は国によってばらつきが大きく、法定年齢が決まっていない国も多いようです。明確な基準を設けている国をざっとあげると、韓国やタイ、マレーシアで60歳、シンガポールが62歳、フィリピンで65歳とされています。各国の定年年齢詳細は、下記の表を参照ください。

    国名定年制度注釈
    アメリカ 定年制無し 航空管制官や外交官など特定職種で定めあり
    イギリス 定年制無し 2010年4月から定年制は廃止
    ドイツ 65歳 2012年から2029年にかけて段階的に67歳に引き上げ
    フランス 65歳 2016年から2023年にかけて段階的に67歳に引き上げ
    日本 60歳 2013年から希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入が義務化
    韓国 60歳 一般的に45歳/53歳定年だったが、2016年以降60歳定年制が義務化
    中国 男性60歳
    女性55歳
    男女で定年年齢は異なる
    インドネシア 56歳 2016年から56歳に引き上げ
    タイ 60歳 2017年から60歳に引き上げ(以前は55歳が一般的)
    マレーシア 60歳 一般的に55歳定年だったが、2013年7月に60歳定年制が義務化
    シンガポール 62歳 希望者は65歳まで再雇用
    フィリピン 65歳 法的には65歳だが、60歳で希望があれば定年退職とすることは可能

    一覧で眺めると、日本だけが働き過ぎという状況にあるわけではないことがわかるでしょう。身体が元気なうちは働くのが良いという見解が世界的にも広まっていて、60代でも現役であり続けることが一般的になりつつある時代です。

    定年制度がない!?アメリカの例

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    定年制度がないアメリカでは、どのようにリタイアのタイミングを決めるのでしょうか。定年年齢を定めることが「年齢による差別」と扱われている以上、航空管制官や外交官などの特定職種で例外が定められているもの以外は、従業員個人の意思で何歳まで働くかを決定することになります。

    1990年代では57歳くらいだったものが老後不安を受けて高齢化し、現時点で就労している労働者にいたっては66歳を希望する方が多いようです。この風潮は、平均寿命の延びや年金満額受給開始年齢の引き上げに起因するとも言われています。貯蓄に意欲的に取り組む動きも出始めていると指摘する調査もあって、日本によく似た社会構造になりつつあると言えるでしょう。

    アメリカばかりが特別なわけではなく、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドでも定年制を禁止、イギリスでも2011年をもって廃止の流れとなっています。世界的には、定年を気にせず労働する権利を守るための社会的な流れがあることを理解しておきましょう。

    日本に次ぐ高齢社会であるドイツの場合は?

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    ドイツは、年金支給開始年齢が段階的に引き上げられている最中で、対応する形で定年も引き上げられる見込みがあります。中でも2016年にドイツ中央銀行が公的年金制度を守るために提言した「69歳定年制度」は世界を驚かせました。

    ドイツの老人比率はヨーロッパ諸国の中で群を抜いた水準で、2050年には32.3%になるとも言われています。今の段階でも福祉に関する税金が高い国にあたりますが、若者世代の負担がさらに増える可能性も示唆される状況です。

    法律での定年はないけど、年金受給が70歳から設定されているオーストラリア

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    オーストラリアは法律上の定年がない国ですが、公的年金受給開始が70歳とされています。公的年金の受給がなされるまで生計を維持する手段がないことにより、60代でのリタイアは難しい状況とも言えるでしょう。

    オーストラリアで公的年金受給開始を70歳とする方針が出された2014年のタイミングでは「今後30年間で65歳以上の人口は2倍に増加、全人口の約22%を占めるようになる」という見込みが出ていたようです。日本における65歳以上の人口割合は2045年推測値で37.7%とされていて、当時のオーストラリアより明らかに深刻な状況であることがわかります。

    高齢化には無縁のフィリピンも65歳定年制度

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    先進国では、年金支給開始年齢と定年年齢を合わせるために両者を引き上げる動きが顕著ですが、日本や韓国以外のアジア諸国ではやや事情が変わってきます。2017年現在の老人人口率が4.49%と、高齢化社会とはほど遠い水準のフィリピンですが、65歳定年制が原則です。この背景には、経済発展には欠かせない国内労働力を確保する公算が関係します。

    雇用者と従業員で合意すれば65歳を迎える前に退職することも可能ですが、例外的な扱いです。国の考えとして、高度な経験・知識を有する60代の活躍を期待する意向が読み取れます。企業としても、人件費負担が増加してもなお60代に働き続けてほしいとの考えが強く、政府の取り組みに賛同した結果です。

    日本だけではなく、各国もそれぞれの問題を抱えている

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    ヨーロッパ諸国の一部の国、オーストラリアのように高齢化社会を抱えて年金受給開始年齢を引き上げ、定年年齢も横並びとする動きがある一方で、フィリピンのように労働力問題を解決するための施策として対策に乗り出す国もあります。世界にはいろいろな国があって、それぞれの抱える問題に対する対応策として、定年制度が変わっていく事情を理解しましょう。

    日本は働き過ぎと言われることもありますが、世界の国々の実情を知ると考え方は変わってきます。抱えている問題が異なるにしても、世界的に定年後ろ倒しの動きが出ていて、日本よりも高年齢まで働くのが一般的になりつつある国も多いというのが実情です。労働力が社会や経済の調整弁として機能する特性がある以上、今の段階での年金や定年の仕組みがご自身の退職を迎えるタイミングまで維持されるとは限りません。

    社会的な事情を理解して、いざ自分の身に関係することとなった時にどのように立ち回るかという身の振り方を考えていく必要があります。日本で働く私たちだけではなく、世界中の労働者が直面している大きな課題と言えそうです。

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