働けるうちは働く時代のキャリアシナリオ選択とは?|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.07
- 木村勝のキャリアの教科書
- 公開日:2018年2月 5日
中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村です。前号までは、ミドルシニアの皆様が一度立ち止まって自らのキャリアを振り返り、今までのキャリアを「見える化」するためのキャリアの棚卸に関して説明させて頂きました。
この記事の目次
今までのキャリアを振り返り「目指すべき方向性」を見極めるためのツールである「ライフライン」、キャリアを鳥の目で俯瞰する「家族キャリアマップ」、そして、2つのツールで行ったキャリアの振返り結果を受けとめる「キャリアのプラットホーム」の役割を果たす「キャリア棚卸シート」の3つのツールを、読者の皆様は作成されてみましたでしょうか?
現代は終身雇用というレールに乗り続けられない
今回から、ミドルシニアの皆さんが冷静にキャリアチェンジを考えるために、今後の皆さんが取りうるキャリアの選択肢について考えていきたいと思います。
高度成長からつい最近までは、日本のビジネスパーソンは自らキャリアを考える必要性は高くありませんでした。それは「国と企業が敷いた終身雇用というレールに乗り続ける」ことこそがベストの選択だったからです。そのため日本のビジネスパーソンは、会社という電車から途中下車しないように(させられないように)、会社に忠誠を誓い(少なくとも見かけ上は)、社内営業にもいそしんできたのです。
一方、会社側もできる限り「乗り合わせた乗客を途中下車させない」ように様々な工夫を講じてきました。社員優待割引切符を発行(福利厚生制度の充実、勤続を積むほど有利になる退職金カーブ等)したり、他社の電車に乗ることを禁止するルール(兼業・副業の禁止)を適用するなどの工夫です。従来は、お互いのニーズが合致しており、そのことが会社の事業運営に大きなメリットとなっていたのです。
働けるうちは働く時代が到来
ところが現在、多くの会社はシニアという乗客に対して、従来と同じ条件では電車に乗せてくれなくなりました。途中で電車を降りてもらおうか、あるいはグリーン車から普通車に乗り移ってもらおうか、幹線ではなくローカル線に乗り換えてもらおうか、電車からバスに乗り換えてもらおうか等、様々な対応を検討しています。
一方、ミドルシニアとしては、結婚晩婚化に伴う(人生の三大費用の一つと言われる)教育費負担の後ろ倒し化、あるいは年金支給年齢の後ろ倒し化などにより、乗車継続ニーズ(=働けるうちは働きたい気持)は、ますます強くなっています。
毎日新聞朝刊(2017年12月21日付)に埼玉大学との共同による世論調査結果が掲載されました。この調査は、「何歳まで働く予定か、または働いていたいか」に関して、全国の有権者2400人(うち回答は1353人)に具体的な数字(就労希望年齢)を調べたものです。その結果は、「70歳以上」の年齢を挙げた人が約4割という結果でした。また、(年明けの新聞でも報道されましたが)政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択次第で70歳超に先送りできる制度の検討に入りました。
まさに「働けるうちは働く時代」の到来です。
働き続けることは決して保障されていない
しかし、働きつづけることに関しては、上の世代のように安泰という訳ではありません。つまり、会社としては「増える一方のミドルシニアの労務費増をどうにかしたい」という思いがある一方、ビジネスパーソンとしては「定年あるいは定年再雇用年限の65歳以降も働きたい」という希望がある。そこに大きなギャップが出始めていることを、ミドルシニアの皆さんは十分認識する必要があります。
そのギャップについては、国も企業に対して更なる乗車延長(雇用延長)を求めていますが、国や企業に対し過度な期待を持つことは危険です。これから企業内では、50歳以上のシニア層が社内に占める割合がどんどん大きくなっていきます。何の策も講じないと間違いなく労務費アップになることが確実視されており、そこに危機感を感じている企業が多くを占めるためです。
この状態を解消するために企業は、「従来の年功賃金の大幅な見直し」、「シニア層の積極的な社外転出促進」、あるいは「シニア層に対して現役時代以上の成果発揮を期待」。これらのいずれの策、あるいは3つの策の合わせ技で対応していくしか対策はありません。
つまり、これからのミドルシニアは、国や企業の施策を待っていては遅いのです。今後起こりうる想定内・想定外の様々なキャリアイベントに対応しうる正確な知識を獲得しながら、自らしたたかに自身のキャリアのシナリオ選択の準備を進めていく必要があります。
想定されるキャリアのシナリオ
それでは、今後ミドルシニアが描き得るキャリアのシナリオにはどのようなものがあるでしょうか。それは極めてシンプルです。
シナリオ1【今の会社に勤め続ける】
シナリオ2【転職する】
シナリオ3【出向する】
シナリオ4【独立起業する】
これら4つのシナリオです。(「出向する」ことは「転職する」ことの一部とも考えられますが、ミドルシニア独自の重大なキャリアイベントの一つですので、あえて別にしています。)
また、一部の恵まれたビジネスパーソンに当てはまる「会社を辞めて悠々自適な生活を送る」という例外的なシナリオもありますが、ミドルシニアからのキャリアは、仕事だけでなく家族、地域社会といったもう少し幅を広げたライフキャリアの観点からも考える必要があります。悠々自適な生活が送れる恵まれたビジネスパーソンも、ぜひ生涯を通じてのライフキャリアという観点からぜひこのコラムをお読みください。
どの選択肢が良いか悪いか、ということは問題ではありません。それぞれのシナリオを冷静に自ら分析の上、流されることなく「自分の意思を持って選択し実行」することが重要です。自ら選択し、実行したことに後悔は生まれません。
男女とも平均寿命が延び、「人生90年・100年時代」と言われるこれからは、「定年60歳・定年後再雇用65歳」といった国や会社が"設定した区切りから先が長い"のです。
「意思あるキャリア選択と躊躇なき行動」により、「働けるうちはいつまでも働ける」人生を実現すること。これが本コラムにて皆様にお伝えしたいメッセージです。次回は、それぞれのシナリオについて説明していきたいと思います。