老後は大丈夫?肩車型社会へ進む中で、未来のためにできること

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老後は大丈夫?肩車型社会へ進む中で、未来のためにできること

未曽有の人口減少と高齢化が進む日本。これから本格的に老後について考えなくてはならないミドルシニアの中には、公的年金や医療など日本の社会保障制度を不安視する人も少なくありません。今後、日本が直面する「肩車型社会」の問題点や、今からできる対策についてご紹介します。

この記事の目次

    時代のキーワード、肩車型社会とは?

    少子高齢化の進行により高齢者が増えるにもかかわらず、それを支える現役世代は減少する一方です。そのため、現役世代の負担は年々重くなり、30年後にはほぼ1人が1人の高齢者を支える「肩車型社会」に突入するとも言われています。肩車型社会の問題点や対応策についてご紹介します。

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    現役1.3人で高齢者1人を支える社会が到来

    厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、出生率の改善が進まない場合、2053年には日本の人口が1億人を切ると予測されています。

    特に減少が顕著なのが、15~64歳の生産年齢人口(生産活動に就いている中核の労働力となる年齢の人口)です。2015年では7728万人でしたが、50年後には4529万人にまで減ってしまうという計算に。

    反面、公的年金を受給する65歳以上の高齢者人口は、3387万人から3381万人と大きな変化はありません。そのため、4,529万人の現役世代が、3,381万人の高齢者を支える社会に。つまり、現役世代1.3人で、高齢者1人を支える社会というのが、現実的なものとなってきています。

    「胴上げ型社会」から「騎馬戦型社会」へ

    では、これまでの日本ではどのような状況だったのでしょうか。高度経済成長期の1965年は、65歳以上の高齢者1人を、20~64歳の現役世代が9.1人で支えるという形でした。10人近い現役世代で1人の高齢者を支えることから、「胴上げ型」と呼ばれ安定した社会を形成していました。

    しかし、徐々に少子高齢化が進み、現役世代の人数が減り始めます。そうして2012年になると、高齢者1人を支える現役世代が2.4人にまで減少し、「騎馬戦型」と呼ばれるように。少子高齢化の問題が顕在化しているにもかかわらず、歯止めをかけることができなかった結果「肩車型」になると予測されているのです。

    肩車型社会で想定される社会問題とは?

    肩車型社会で問題とされるのは、社会保障費の急激な増加です。財務省の計算によると、現在の年金や医療・介護のサービス水準を維持するためには、税金の投入を毎年1兆円以上増加させる必要があると言われており、その財源の確保は主に現役世代が担います。

    しかし、その財源を支える現役世代が社会サービスの恩恵を受けているか、と言われると疑問符がつきます。都市部における保育所不足による待機児童問題、地方の医師不足における医療問題など、多くの問題が山積しています。

    それに加えて、現役世代は「自分たちが高齢者になったときに同じ水準のサービスを受けられない」という不安と不満を抱えながら財源を支えています。

    こうして「社会保障の恩恵を受けられる高齢者」と「社会保障を支えるけれど、自分はどうなるかわからない現役世代」というアンバランスさ、そして不満が生まれてしまっているのです。その不満を解消をするために、政府は全世代向けの保障を充実させる方向で政策を検討するとされています。

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    みんなに影響!肩車型社会の不安要素は?

    現役世代が抱える不安で大きなものは、「将来、年金は支給されるのだろうか」ということ。特に若い世代は年金制度に対する不信感が強く、「どうせ払っても年金はもらえない」と考える人も少なくないようです。

    このような不安があることは国はしっかりと把握しており、その上で「国民年金の老齢基礎年金は、1/2が国庫負担(税金)で賄われており、年金保険料で足りなくなった場合は税金で補う」「若い世代でも、将来受け取る年金額は、納めた額以上に受け取ることができる(厚生労働省の試算による)」などアピールしています。

    また、年金の財源には、年金保険料だけでなく消費税も使われています。平成29年度の予算では、年金に充てられた財源のうち消費税は12.1兆円。2019年には消費増税も予定されているため、「年金財源が破綻して年金が受け取れない」というシナリオを防ぐための取り組みは、政府の中でも優先度高く実施されています。

    社会保障がストップした国で起きた悲劇とは

    年金が受け取れないというリスクは低いものの、年金財源破綻の可能性が決してゼロというわけではありません。医療費も膨らむ一方のため、医療制度の破綻についても気になるところでしょう。

    でもどこか、「政府が安心と言っているから大丈夫」と楽観視しているところもないでしょうか。そこで、最悪のシナリオとして、社会保障がストップしてしまった「ソビエト連邦」についてご紹介したいと思います。

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    ソビエト連邦で起きた悲劇に学ぶこと

    1991年に崩壊したソビエト連邦。その後、ロシア連邦が成立しますが、財政難で社会保険が廃止または、大幅にカットされるという状態に。病院では十分な医療が受けられず、急性期医療が必要な病人が命を落としました。

    中でも、40~64歳の男性の死亡率が高く、毎年20万人以上も亡くなっていたとされています。国は違えど、ミドルシニアにとって、他人事とは思えない現実ではないでしょうか。

    また、人工透析を受けている人や、高血圧や糖尿病といった慢性疾患を抱えた患者も多くが犠牲となりました。大人だけでなく、幼少期医療が行き届かなかったため、乳児や幼児も多くが死亡。その結果、1992年には出生数が減り、死亡数が増加するという逆転現象が発生。これらの影響もあり、ソビエト連邦崩壊の数年の間だけで、男性で約7歳、女性で約3歳も平均寿命が短くなりました。

    日本においてこのような悲劇的なシナリオが進むとは思いませんが、進む未婚率の増加や子供の減少、景気の影響などで、思惑通りに進まないことも考えられます。社会保障の財源確保が円滑に進まなければ、破綻のおそれもあるということは、常に意識しておくべきことかもしれません。

    今日からできる、未来への対策

    約30年後には到来するという「肩車型社会」。人生100年時代と言われる中、年金をもらえる年齢に達したとき、その肩車型社会の真っ只中という読者も多いのかもしれません。持続可能な社会保障のために国も対策を講じていますが、個人でできることは、どのようなあるでしょうか。

    健康寿命を伸ばし、自立した生活を続けることの大切さ

    まず、大切なのは「健康寿命」の伸長を心がけること。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことを指します。栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動、健康診断や定期健診といった健康管理など、基本的な生活習慣の改善が重要となります。

    また、「身の回りのことは自分でする」「働けるうちは働き続ける」「社会にかかわり続ける」という意識を持ち続けることも大切です。仕事や社会とのかかわりの中で自分の役割を果たすことで、やりがいや生きがいも生まれるでしょう。適度な労働で体に刺激を与えることは、健康寿命の伸長にもつながります。

    働いて所得が増えれば、趣味にお金を使ったり、交際費に回すゆとりも出てきます。適度な消費活動を続けることで自身には満足が、社会には経済の循環をもたらすことができるでしょう。

    いつまでも働き続ける意識を持つことが未来を育む

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    今は、現役世代数人で高齢者1人を支える「騎馬戦型」の社会ですが、さらに高齢者が増え、労働人口が減少するため、社会保障費を捻出し続けるのはより困難になっていきます。

    そのため、「社会保障を受けられるのは当然の権利」と国の制度の上にあぐらをかくのではなく、少しでも子や孫の世代に負担を残さないよう、日々生活の中で意識していくことが、すべての世代に求められています。

    そのためには、現役世代はもちろん、高齢世代においても「働き続ける」という選択肢こそ重要となります。賃金を得て経済を回すことはもちろん、仕事において適度な刺激を得ることは健康を保ち、老化を防ぐことにも繋がります。

    現役世代も高齢世代も、次の世代の負担を減らし、生き生きした老後を送るためにも、働けるうちは働くという意識を強く持ちたいものですね。

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