iDeCo(イデコ)はミドルシニアからでも間に合う!老後資金を上手につくろう
- ちょっと得する知識
- 公開日:2024年5月 2日
長期積立が前提となるiDeCoは、20・30代向けの制度と考えている人もいるでしょう。しかし、40代以降からiDeCoを始めても節税効果などのメリットを十分に受けられます。今回はiDeCoの概要からメリット・デメリット、老後資金がいくら必要になるのか解説します。
この記事の目次
老後に必要な資金はいくらなのか
40代以降で気になるのは、老後の生活にかかる費用です。老後の生活を夫婦2人で送る際、必要最低限の生活費の平均は月額23.2万円となっています。ゆとりのある生活を送るには、月額35〜40万円ほどの費用がかかります。
しかし、平均的な会社員の公的年金の支給額は22.1万円です。年金だけで、ゆとりのある生活を送るのは難しいと言えるでしょう。公的年金だけでは賄えない部分については、自身で用意した私的年金や貯蓄などを活用する必要があります。
老後資金を準備するポイント
ゆとりのある生活を送るためにも、老後資金の準備は大切です。40代から老後資金を作るためには、人生設計にあった資産のポートフォリオを作成してみましょう。ポートフォリオとは、保有資産の組み合わせを指します。
40代でポートフォリオを組む際は、「収入」と「老後資金の備え」が重要です。iDeCoの受取が開始されるまでの20〜35年までの間に収入が増えるのか、iDeCo以外の老後資金の備えはできるかを考えます。
もし、iDeCoの支給までに収入が見込める場合は、リスクがやや高めでリターンが大きい商品を検討してみるのも良いでしょう。反対に支給までに収入増が見込めない場合は、リスクを回避して元本確保型の商品が最適です。まずは、現在の収入とiDeCoが受給できるようになるまでの間の収入予定について、しっかりと見直しをします。
iDeCo(イデコ)の概要
そもそもiDeCoとはどのような商品なのでしょうか。
iDeCoは個人型確定拠出年金と呼ばれ、自分で掛金を決めて商品の決定から運用までを行います。積み立てた資産は60歳以降に一括または分割、一括と分割の混合での受け取りが可能です。
iDeCoの加入条件は公的年金の被保険者であり、満20〜65歳の人です。iDeCoの掛金の受取は60歳以降となっており、60歳以降に加入した場合は加入から5年以上経過した日からになります。60歳以降に加入できるのは、第2号被保険者に該当する会社員または公務員、国民年金に任意加入している人のみです。
ただし、以下の条件に当てはまる人は、iDeCoの加入はできません。
• 農業者年金に加入している人
• 企業型DCのマッチング拠出を利用している人
• 国民年金保険料を支払っていない人
iDeCoは毎月5,000円から始められ、1,000円単位で掛金を変えられます。iDeCoの掛金には上限が決まっているため、誰でもいくらでもiDeCoで商品を購入できるわけではありません。条件によって異なる月額の限度額は、以下の通りです。
加入者の状況 | 掛金の上限額 |
---|---|
自営業者など | 月額6.8万円/年額81.6万円 |
会社に企業年金がない会社員 | 月額2.3万円/年額27.6万円 |
企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 月額2.0万円 (※1月額5.5万円-各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額、ただし月額2万円が上限) |
確定給付企業年金と企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 月額1.2万円 (※2月額2.75万円-各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額、ただし月額1.2万円が上限) |
確定給付企業年金のみに加入している会社員 | 月額1.2万円/年額14.4万円 |
公務員 | 月額1.2万円/年額14.4万円 |
専業主婦(夫) | 月額2.3万円/年額27.6万円 |
引用元:iDeCo公式サイト
なお、運用商品は元本確保商品と投資信託の2つとなっています。元本確保商品は定期預金や保険商品など、投資信託は国内債券型と国内株式型などの商品があります。運用の結果次第では元本割れする可能性もあるため、運用には知識が重要です。
40代からiDeCoを始めるのは遅くない
40歳以降からiDeCoに加入をすると、受取が可能となる60歳までの期間が短くなるため、20・30代と比較すると不利になるのではないかと感じる人もいるでしょう。しかし、iDeCoは40代以降から始めても遅くはありません。
40代から始めたらいくら受け取れるのか
40代からiDeCoを始めた場合、どの程度の資産を作れるのかを考えてみます。
例
• 40歳の会社員で子どもが2人いる家庭
• 年収500万円かつ月の上限額が2.3万円
• 利回りが3.0%の場合
積立元本は5,520,000円+運用益1,997,652円=運用結果7,517,652円
あくまでシミュレーションのため、確実に利益が出るわけではありません。しかし、運用結果によっては、上記のように公的年金以外の十分な資金を用意できる可能性があります。なお、iDeCoの掛金は全額所得控除となるため、住民税と所得税の負担も軽減されます。
40代からiDeCoに加入するメリット・デメリット
iDeCoを利用すると、まとまった資金を準備できる可能性があるとわかりました。しかし、制度のメリット・デメリットが気になる人も多いでしょう。以下では、iDeCoのメリット・デメリットについてもご紹介します。
iDeCoに加入するメリット
iDeCoに加入するメリットとしては、税制優遇が大きい点です。掛金に対してのほか、運用益や受取時にも税制優遇が受けられます。それぞれのタイミングでの優遇について、以下でご紹介します。
掛金が全額所得控除となる
iDeCoでは積み立てた掛金が、全額所得控除の対象です。通常、稼いだお金には所得税がかかり、それを基準に住民税も決定します。しかし、iDeCoに加入すると毎月の掛金は所得控除の対象となるため、その分の所得税と住民税の負担が減ります。控除額は積立額や年収によって異なりますが、積立期間中はずっと控除の恩恵を受けられます。
運用益が非課税になる
iDeCoでは、運用で得た利益も非課税になります。通常、投資信託などの資産運用で得た利益は、20.315%の税金が課税されます。例えば、40歳から年利4%で毎月1.2万円を積立した場合は、以下の通りです。
• 元本:216万円
• 運用益:79万円
• 合計:295万円
通常は運用益の79万円に対して、20.315%がかけられるため、約16万円の税金を収める必要があります。しかし、iDeCoの場合は非課税となるため、このお金は発生しません。節税効果も大きく、資金を別の資産運用にも利用できるため、60歳以降も効率的にお金を貯められるでしょう。
受取時にも税制優遇を受けられる
iDeCoは掛金や運用益のほか、受取をする際にも税制優遇が用意されています。iDeCoは受け取る際、一時金方式と分割する年金方式、両方を組み合わせた方式を選択可能です。どの方式を選択しても、一定額までは非課税となります。
■一時金として受け取る場合
「退職所得控除」が適用されます。一時金の場合は、ほかの退職所得と合わせて800万円までが非課税です。
■年金方式で受け取る場合
「公的年金等控除」が適用されます。控除額は受け取る時の年齢によってが変わります。65歳未満で受け取る際は年間60万円まで、65歳以上で受け取る場合は年間110万円までが非課税になります。
iDeCoに加入するデメリット
加入したら60歳まで引き出せない
iDeCoは満20〜65歳まで、いつでも好きなタイミングで加入が可能です。しかし、一度加入したら60歳を超えるまで、積み立てた金額や運用益を引き出せません。あくまでもiDeCoは老後の資金を形成する商品のため、老後の資金が必要となるタイミングまでは運用を続ける仕組みです。
運用の途中でまとまったお金が必要となった場合は、iDeCo以外の資産運用などからお金を用意しなければなりません。また、運用途中での解約もできません。どうしても掛金の積立が難しい場合は、休止の手続きを行いましょう。
運用時に手数料が発生する
iDeCoは積み立てた掛金や運用益、受取の際には税制優遇が受けられ、節税効果を得られます。しかし、運用時に発生する手数料は支払いが必要です。投資の期間が長くなるほど、運用時にかかる手数料は大きくなります。40代で投資を始めた場合は、20年近く手数料が発生します。
手数料は以下の通りです。また、金融機関などによって費用が変わるため、iDeCoを始める際には手数料についても事前に確認しましょう。
手数料の種類 | 金額 |
---|---|
加入時にかかる手数料 | 2,829円 |
加入者手数料 | 掛金納付の都度105円 |
還付手数料 | その都度1,048円 |
運用中に発生する費用 | 金融機関によって異なる |
信託報酬 | 投資信託ごとに異なる |
iDeCoを40代で始める際の注意点
iDeCoを40代で始める場合、いくつか気をつけておきたい点があります。どのような内容に気を付けるべきか、今回は3つをご紹介します。
他の資産運用と組み合わせる
老後資金を作るためには、iDeCoを始める以外に他の商品とも組み合わせて資産運用を活用しましょう。特に40代から始める場合、目標額や現在の資産状況によっては、iDeCoのみを運用しても老後に間に合わない可能性があるためです。
また、iDeCoは長期投資ができる商品です。分散や積立でリスクを抑えた運用もできます。リスクを抑えた投資、非課税を利用した融資を活用しつつ、他の運用によって必要な資金を用意しましょう。
公的年金の受け取り額を確認する
自身の老後生活にはどの程度の資産が必要なのか、しっかりと把握している人は少ないでしょう。まずはiDeCoでどの程度のお金を用意する必要があるか確認するためにも、公的年金の受け取り額をご確認ください。
ねんきんネットを活用すると、自身の公的年金の受け取り額を確認可能です。あくまで試算のため、正確な金額ではありません。しかし、おおよその金額を把握しておくと、具体的な目標額も見えてきます。
家計の見直しを定期的に行う
40歳以降に老後資金を確保するためには、生活にも少なからず影響が出てきます。少しでも負担を軽減させつつ、老後の資金を作るためにも、定期的に家計の見直しを行いましょう。保険料や車の維持費など、現在の生活に見合っているか、本当に無駄とならないかなどを検討しましょう。
状況に応じて休止手続きも考える
iDeCoは一度加入をすると、途中での解約はできません。毎月、掛金の積立が必要となります。しかし、状況によってはiDeCoに積み立てる余裕がない時もあるでしょう。特に子どもの教育資金や、住宅に関する資金が必要な時はまとまった資金が必要です。
そういった際は、休止や減額の手続きをご検討ください。手続きをする際は、以下の書類を提出するのみで完了します。掛金の減額は1年に1回のみできるため、必要な時に行いましょう。また、休止の手続きを取った後、加入者に戻る時は新規の時と同じ手続きが必要です。
• 加入者掛金額変更届(変更)
• 加入者資格喪失届(停止)
まとめ
40代からiDeCoを始める人に向けて、老後資金やiDeCoの概要などをご紹介しました。iDeCoは老後資金を作るための商品のため、若いうちに始める方が有利となるでしょう。しかし、40代から始めても遅くはありません。40歳から運用を始めても、十分に老後資金を用意できる可能性があります。
iDeCoは税制優遇が受けられるため、運用益や掛金をそのまま活用可能です。しかし、中途解約ができない、60歳まで引き出しができないなどのデメリットもあります。老後までの資金計画や休止や減額の手続きなどを活用して、老後資金を形成しましょう。