【2024年施行予定】フリーランス保護新法とは?概要やポイント下請法との違い

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【2024年施行予定】フリーランス保護新法とは?概要やポイント下請法との違い

フリーランス保護新法は2023年に成立し、2024年中に施行がされます。年々、ミドルシニアやシニア層でもフリーランスとして働く人は多く、今回の法案が関係する人も多いでしょう。なぜフリーランス保護新法が整備されたのか、下請法との違いなどを解説します。

この記事の目次

    フリーランス保護新法の概要

    フリーランス保護新法は、正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」です。今後増えていくフリーランスの権利を守る目的で、2023年4月28日に国会で成立しました。施行時期は未定とされていますが、公布から1年6ヶ月以内と決まっているため、遅くても2024年秋には施行される予定です。

    現状フリーランスは原則労働者としての扱いがなく、労働基準法の適用外です。そのため、権利が十分に保護されず、問題が起きた際に泣き寝入りとなるパターンも少なくありません。トラブルを回避し、フリーランスの立場をより強くするための法が、フリーランス保護新法と言えます。

    フリーランス保護新法が整備された背景

    フリーランス保護新法が整備された背景として、フリーランス人口の増加とフリーランスの立場の弱さがあります。フリーランス人口は年々増加傾向にあり、2020年時点では462万人です。その内の39.2%は、依頼者から納得できない行為を直近3年間の内に受けた経験があると回答しており、何かしらのトラブルが発生していることが分かっています。

    さらに、取引条件や業務内容が示されていない、不十分と感じている人は全体の4割を超えています。こういった不明瞭な取引条件や、業務内容によってトラブルが発生しないよう、今回の新法が制定されました。

    参考:「フリーランス新法の概要と施行に向けた準備の状況について」

    フリーランス保護新法で決められた内容

    フリーランス保護新法では、報酬面や取引条件の明示などが決められました。主な内容は、フリーランスとの取引を結ぶ際に、企業側が取るべき対応です。

    • 業務委託時の取引条件の明示
    • 60日以内に報酬を支払う
    • 募集情報を正確に表示する
    • ハラスメント対策に努める
    • 出産・育児・介護に関する配慮に努める
    • 禁止事項を守る
    • 契約不更新・中途契約する場合は事前予告する

    フリーランス保護新法と下請法との違いや関連性

    フリーランス保護新法と下請法との違いや、関連性も気になる点です。そもそも下請法は発注元企業が下請事業者に発注した商品などに対し、代金の支払遅延や減額など、下請事業者に不利益を与える行為を禁止する法律です。

    下請法の保護対象は資本金が1,000万円以下の下請け業者、規制対象は資本金が1,000万円以上の事業者であるため、フリーランスに適用されるケースはあまりありません。また、下請法は独占禁止法の中の特則です。

    しかし、フリーランス保護新法は独立した法規制となり、独占禁止法や下請法とは異なる位置付けです。つまり、下請法では対象とならなかったフリーランスも、フリーランス保護法では資本金の大小にかかわらず保護も受けられるようになります。

    労働関係法令との関係

    フリーランスの場合は、原則労働基準法などの労働関係法令は適用外です。ただし、場合によっては「労働者」として認めら、労働関係法令が適用されます。もし、労働者として認められた場合は、団体交渉などについて労働組合法における保護を受けられるでしょう。労働者として認められる場合の判断基準などについては、フリーランスガイドラインに詳細が記載されています。

    フリーランス保護新法の保護対象となる人や取引

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    フリーランス保護新法の保護の対象となるのは、その名のとおりフリーランスに該当する人です。フリーランスに該当する人や定義、対象となる取引についてご紹介します。

    フリーランスの定義

    フリーランスは法令上の用語ではなく、定義もさまざまな言葉です。今回のフリーランス保護新法では、フリーランスを「特定受託事業者」と呼んでいます。また、ガイドラインの場合では、以下のような人がフリーランスとされています。

    • 実店舗がない
    • 雇人もいない一人社長
    • 自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る

    業種による縛りはなく、カメラマンやデザイナー、ジムのインストラクターなどフリーランスであれば誰でも対象です。

    対象となる取引

    フリーランス保護新法の規制対象はすべての事業者です。従業員を雇っている個人事業主や法人が、フリーランスに物品の製造や情報成果物の作成の提供を委託した場合、フリーランス保護新法の対象取引となります。

    例えば、フリーランスがほかのフリーランスに業務を依頼する、一般消費者がフリーランスに業務を委託する場合は、フリーランス保護新法の対象外です。

    フリーランス保護新法によって企業が取るべき対応

    フリーランス保護新法によって、特に業務を発注する側である企業の対応が変わってきます。今後どのような対応が必要となるのか、具体的な内容を確認しましょう。

    契約書面の作成

    委託業者はフリーランスに対して業務を委託した場合、成果物の内容や報酬、支払い期日などを書面で明確にしてからでないと発注できません。明示するべき内容は、以下の4つです。

    • 給付の内容
    • 報酬の額
    • 支払い期日
    • 公正取引委員会規則が定めるその他の事項

    メールやPDFなども有効です。なにかしらの形に残して、上記の内容を盛り込んだ契約を交わす必要があります。

    支払い方法の変更

    場合によっては、企業側の支払い方法の変更も必要となるでしょう。フリーランス保護新法では、報酬の支払い期日は納品から60日以内が原則です。

    もし、今の支払いサイクルが「月末締め翌々月末日払い」などで60日を経過する場合は、支払い方法を変更する必要があります。もし、支払い期日を決めなかった場合、業務提供の完了日が支払い期日です。

    禁止事項の遵守

    フリーランス保護新法では、以下のような禁止事項が定められています。

    • フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒絶する
    • フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額する
    • フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行う
    • 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定める
    • 正当な理由がなく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制する
    • 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させる
    • フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付内容を変更させ、またはやり直させる

    フリーランスに不利益を与える内容は原則禁止となるため、しっかりと守りましょう。

    正確な募集情報の作成

    企業はフリーランスを募集する際、正確で最新な情報の提供が求められます。また、虚偽や誤解を招く表現は避けましょう。募集時に利用する媒体の縛りなどはなく、SNSやホームページ、クラウドソーシングなどすべてが対象です。

    また、事業者はフリーランスに対して、仕事内容や報酬を明示する必要があります。もし、募集内容と契約内容が異なる場合はしっかりと説明し、情報の更新を行いましょう。

    就業環境の整備

    フリーランス保護新法では労働者と同じように、ハラスメント対策や出産・育児・介護への配慮なども必要です。具体的な配慮として、納期の変更やスケジュールの調整、リモートワークの許可などがあります。

    そのほか、ハラスメントに対しては相談窓口の周知や、相談に対する迅速な対応が求められます。また、相談を行ったことを理由とした契約解除や、不利益を与えるなどは認められません。長期間の業務委託ではない場合でも、就業環境を整える努力義務が発生します。

    解除予告

    フリーランスとの契約を解消する場合は、労働契約における解雇予告や、解雇理由証明書の請求に準じた規律が設けられています。もし、企業がフリーランスとの契約更新をせず、中途解約をするとなった場合は、少なくとも30日前の予告が必要です。

    突然明日で契約が終了するなどといったものは、違反となります。さらに、契約解除の理由を知りたいとフリーランスに求められた場合は、遅延なく理由を開示するしなければなりません。

    フリーランス保護新法に違反した場合

    上記のような対応を怠り違反をした場合、企業にはどのような影響があるのでしょうか。

    フリーランス保護新法に違反をした場合、国が委託事業者に対して立ち入り検査や、必要な措置を勧告や命令可能です。具体的には公正取引委員会や中小企業庁長官、厚生労働大臣が助言・指導・報告徴収・立入検査・勧告・公表・命令という行政指導を行います。

    もし、命令違反や検査の拒否をした場合は、50万円以下の罰金が科せられます。法人が違反をした場合は、行為者と法人の両方が罰せられる対象です。

    フリーランスが知っておくべき内容

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    フリーランス保護新法の施行に向けて、今のうちから知っておくべき内容や、施行後に気をつけたい部分についてご紹介します。

    契約書の再確認や再検討

    フリーランスの場合、発注をする側の立場の方が強く、受注するフリーランス側の立場は弱い傾向があります。そのため、フリーランスは不利となる契約を結ぶ可能性も高いです。今後は、フリーランス保護新法で禁止とされる内容が盛り込まれていないか、自身での確認が必要です。

    もし、違反する内容が含まれている、疑問がある場合はすぐに取引先へ連絡しましょう。トラブルに巻き込まれないためにも、どのような内容が禁止となっているのか、理解したうえで再確認が必要です。

    依頼内容が独占禁止法や下請法に抵触する内容でないか確認

    フリーランスとして仕事をしている際に、委託事業者から要望がくる場合があります。報酬の変更ややり直しなど、内容はその時によってさまざまです。しかし、これらの内容が独占禁止法や下請法に抵触していないか、確認する必要があります。以下のような事態が発生した場合は、問題となる場合があります。

    • 発注事業者からの支払いが期日を過ぎたのに行われない
    • 契約に基づいた仕様通りに業務をしたが、やり直しを要請された
    • フリーランスの著作権などの権利の扱いを、発注事業者が一方的に決める

    もし、不当な要求をされた場合は、フリーランス保護新法などに抵触していないか確認しましょう。相談をしたい場合は、行政による相談窓口を利用すると安心して仕事を進められるでしょう。

    まとめ

    2024年秋ごろに施行されるフリーランス保護新法は、現状のフリーランスの立場の弱さから起因する、トラブルを防ぐ目的で成立しました。フリーランスとして働く人の約4割が、納得のできない依頼などで、トラブルが発生している背景があります。今回のフリーランス保護新法では、企業側は以下のような対応が必要です。

    • 契約書面の作成
    • 支払い期日の確認や支払い方法の変更
    • 禁止の事項の遵守
    • 正確な募集情報の作成
    • 就業環境の整備
    • 解除の予告

    特に企業側での対応が必要となるフリーランス保護新法ですが、フリーランスとして働く側の人も施行前に確認しましょう。自身が快適に問題なく働くためには、理解を深めておく必要があります。

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