フリーランスのお金事情! 自分の身は自分で守るべし!
- 独立・起業
- 公開日:2023年11月27日
個人事業主やフリーランスとして活躍する人が増えた今、その本人たちの悩みの多くは、お金事情にあるようです。今回は、独立後のお金事情についてまとめていきます。
この記事の目次
体を壊せば、収入がゼロに。「こんはなずでは...」に備える準備を。
会社員であれば社会保険に加入しているため、ケガや病気などを患ってしまい、会社を休まざるを得なくなっても、ある程度は保証があります。しかし、フリーランスや個人事業主はそうはいきません。個人で保険などに加入していれば別ですが、全くの無加入だった場合は収入が途絶えてしまいます。
働き方改革が進み、流動的な働き方ができるようになった今、フリーランスとして働く人は現在ではおよそ1600万人とも言われ、その数は年々増えています。しかし、一方でフリーランスとしてやっていけずに会社員に戻ったり、休業してしまったりする人もいるのが現状です。
組織に縛られずに働けるはずの個人事業主やフリーランスですが、意外にもうつ病を発症する人も少なくありません。人と関わる時間が減り孤独に陥る場合や、オンとオフの切り替えが上手くできずオーバーワークになってしまい、暴飲暴食や、煙草の量が増え...体を壊すなんて場合も。
健やかに働き、フリーランスとして長くつづけていくためには"まさかの時"の備えが大切です。
データ元:ランサーズ「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」
会社員との保障の違いとは?
では、ここで会社員とフリーランスでの"まさか"の場合が起こってしまったときの保障の違いを見ていきましょう。
労災保険
会社員の場合、業務が原因で起きたケガや病気で休業する場合は、労災保険を活用することができます。治療費だけではなく、休業補償や障碍者給付等もあり、手厚く保障してもらえます。労災保険は加入が義務付けられているため、会社側が保険料を負担してくれます。
傷病手当金
病気やケガで働けなくなってしまったときに、その本人や家族の生活を保障する制度です。会社員の場合、休業しなくてはならないときなどは減額された給与の差額分を補填してくれるため、被保険者は治療に専念することができます。
フリーランスが加入している国民健康保険では傷病手当金による補償はないため、療養中の生活費は全て自己負担で賄わないといけません。
どのような"備え"が必要なのか。
フリーランスとして安心して仕事を続けるためには、どのようなことに留意し、備えれば良いのでしょうか?
小規模企業共済制度の活用
フリーランスは退職金などもないため、万が一に備えて日頃からきちんと積み立てておく必要があります。小規模企業共済制度は小規模企業の経営者や役員、フリーランスを対象とした積み立てによる退職金制度です。
全国でおよそ160万人が加入しており、毎月1,000円~70,000円の範囲で自由に掛け金を設定できます。また、掛金は全額所得控除できるため、節税対策にも効果があります。廃業時や退職時に共済金を受け取ることができるため、会社員でなくても老後への備えにすることができます。
ただし、加入期間が20年未満の場合、解約返戻金は元本割れしてしまいます。長期的に、きちんと掛け金を払っていかないと意味がなくなってしまうことを頭に入れておいてください。
iDeCoへの加入
iDeCoとは個人型確定拠出年金のことです。最近では巷でも「イデコ」と耳にする方も多いのではないでしょうか。任意で加入することができる私的年金制度のことで、運用方法を選んで掛金を設定します。その掛金と運用益との合計額を将来、給付額として受け取ることができます。
フリーランスの多くは会社員や公務員とは異なり、国民年金のみの受け取りになってしまうため、老後の資金として「iDeCo」に加入する人が増えています。さらに、掛金は全額所得控除されるため、節税対策にもつながります。運用益が非課税である点も「iDeCo」の嬉しいメリットの一つでしょう。
ただし、60歳までは原則として解約や引き出しはできないため、掛金は無理のない金額に設定しておかなくてはなりません。また、運用はあくまで自己責任です。元本割れしてしまったときには損をしてしまうことも。その点をしっかり押さえて加入するようにしましょう。
積み立てNISAで資産形成
積み立てNISAを利用することで、資産運用や老後の資金確保を行うことができます。60歳まで資金を引き出すことができない「iDeCo」と比べると積み立てNISAは流動的に老後の資金を確保できる制度だと言えます。
また、2024年1月からは新しいNISAの導入され、より幅広く運用できるようになります。現行の積み立てNISAでは非課税保有期間は「20年」という縛りがありましたが、新NISAの非課税保有期間は「無期限」に。さらに、一般NISAであれば「120万円」、つみたてNISAであれば「40万円」という年間投資枠がありましたが、税制改正によって最大で年間360万円の投資が可能となります。
これにより、老後の資産形成がよりフレキシブルに行えるようになっただけではなく、収入の安定しないフリーランスにとっては運用したいタイミングで資金を運用することができるようになるのです。
国民年金基金への加入
国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者が国民年金に上乗せできる公的な年金制度です。掛金は全額社会保険料控除となり、確定申告で税金が軽減される点も、フリーランスにとってはメリットになるでしょう。また、受け取る年金も公的年金等控除の対象となります。
さらに、国民年金基金の場合、65歳から受け取れる年金は終身年金が基本となっているので、老後の生活に備えることができます。なお、条件はありますが本人に万が一何かあった場合は、家族に遺族一時金が支給されます。掛け捨てにならない点も、フリーランスから国民年金基金が選ばれる理由でしょう。
付加年金の活用
意外と知られていない制度に付加年金というものがあります。月々支払っている国民年金保険料に400円を上乗せすることで、将来受け取る年金額を増やす方法です。20〜60歳の間であれば、どのタイミングでも加入でき、住んでいる市区町村役場で申し込むことが可能です。
定額のため、物価スライド(増額や減額)はありません。現在、国民年金基金に加入中の方は、付加保険料を納付できないことに注意しましょう。付加年金では、65歳以降に受け取る国民年金+「200円×付加保険料を納付した月数」に応じた額が加算される仕組みです。
40歳から付加年金に加入した場合の加算額
(納める額)月400円 × 20年(240ヶ月)= 96,000円
(加算される額/1年)月200円 × 20年(240ヶ月)= 48,000円
このように、少しでも将来の備える制度を利用することが大切です。満額で年金を払っていたとして、65歳以降に受け取れる国民年金は月額66,250円です。老後資金として少しでも自身に有利になる運用方法を一度検討してみましょう。
データ元:日本年金機構「付加年金」
年金の繰り下げ受給
フリーランスや個人事業主は自身で仕事を行うため、退職という概念がありません。そのため、健康であれば60歳を超えても仕事を続けることができます。つまり、仕事があるということは年金の受給を遅らせても生活を営めるということです。
現行の年金制度では、66歳以後75歳までの間で繰り下げた場合、増額した年金を受け取ることができます。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。フリーランスとして長く働ける分、年金は繰り下げ受給にすることで、安定した老後の資金確保に繋がるでしょう。
繰下げ受給をした場合の加算額
老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)および老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)に下記の増額率を乗じることにより計算されます。
増額率(最大84%)= 0.7% × 65歳に達した月
しっかりとした健康管理
フリーランスとして働く上で一番大切になるのが、自身の健康です。身体が資本とも言える個人事業主にとって、健康で働き続けられることが何よりもの備えになるでしょう。一度体を壊してしまうと、病院通いや入院費が掛かるため、健康でいることが節約にもつながります。
まずは定期的に健康診断を受けることをおすすめします。忙しさからついつい健康診断が後回しになってしまい、気づけばあっという間に1年が終わっていたなんてことも。病気のリスクを回避し、未病を保つためには健康診断を定期的に受けることが大切です。
座り仕事が多い場合は体を動かすことを習慣にしましょう。さらに個人事業主がこだわるべきなのが"椅子"です。合わない椅子を使っていると、腰痛を引き起こしてしまう場合も。今はオーダーメイドの椅子など体に合わせた設計をしてくれるところもあるため、こだわってみるのも良いでしょう。
また、うつ病を引き起こさないためにも、心の健康にはストレス発散が必要です。フリーランスは仕事があること自体が心の安定に繋がるということもあり、仕事が途切れてしまわないようにしゃかりきに働きがちです。しかし、ワークライフバランスの大切さは何も会社員時代に限ったことではありません。
不安定な世の中だからこそ、日頃からできる努力を。
インボイス制度が2023年10月から開始されました。今後、フリーランスの経済事情は変化が多く、不安定だと言わざるを得ません。しかし、普段から無駄遣いをせずに、将来に備える努力をしておけば、怖がる必要はありません。
フリーランスは仕事が増えた分だけ稼げる職種です。そのため、毎月どのくらい・何にお金を使っているか把握していない方も多いでしょう。まずは仕事にかかる経費や家賃、光熱費、食費などを含めて生活にどのくらいのお金が必要なのかを算出しておくことが重要です。
必要な生活費が把握できれば、どのくらいの貯蓄をしておけば"まさかの時"に備えられるかがわかります。仕事がなくても半年ほどは生活できる金額は貯蓄し、生活防衛費として貯めておくようにしましょう。フリーランスは保障がないからといってマイナスばかりではありません。
収入の天井も自分で決めることが出来る分、多く稼いだときには"いざという時"に備えて貯蓄を多くしておくこともできます。個人事業主は自分がしっかりすれば万が一のときも焦らずに対処することができます。そういった意味でリスクマネージメントまでできて、はじめて真の個人事業主ということができるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。個人事業主やフリーランスは保障がないからこそ、自分の身は自分で守る"備え"を常にしておかなくてはなりません。将来を見据えた働き方をするためにも、まずは自分の健康を一番に考えた環境を用意することが重要です。