【2020年・2022年の法改正をそれぞれ解説】扶養の条件や収入基準は?変更ポイントまで詳しく紹介
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- 公開日:2023年3月 7日
扶養とセットでよく聞くのが「106万円の壁」「150万円の壁」といった“〇〇の壁”という言葉。その金額以上で働くと損するというイメージは持っていても、どういう制度が関わっているのか、分かりづらいところがありますよね。そこで今回は、扶養控除とは何か?という基本的なところから、仕組み、改正されたポイントなどもお伝えしていきます。
この記事の目次
そもそも扶養とは?
「扶養」とは、経済的に自立していない者を養うという意味の言葉であり、民法877条に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定されています。
直系血族とは自分から見た祖父母や夫婦、子、孫のことであり、この関係性にある者同士は一般的に扶養義務があると言われています。つまり、この関係性上であれば「扶養に入る」ことが可能となるのです。
扶養に入るとは?
「扶養に入る」とは、色んなものを支払わなくて良くなる、というイメージがあるかと思いますがそれはまさにその通りです。
日本国民は、18歳以上になると様々な税金や年金を納める必要がありますが、扶養に入ることでそれらを納める必要が無くなります。これを「扶養控除」と呼びます。
扶養控除の手続き
扶養控除の手続きはいたって簡単で、皆さんも馴染みのある「年末調整」で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類に記入し、勤務先に提出をするだけです。
よって、扶養から外れる際も、まずは勤務先に申告を行う必要があります。
税法上の控除を受ける条件や収入基準は?
税法上、夫婦関係にある場合は扶養控除ではなく「配偶者控除」が適用されます。
配偶者控除
「配偶者控除」とは、所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられることを指します。そのため内縁関係の人は該当しないことをご留意ください。
控除額は以下の通りです。
納税者の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
配偶者が70歳以上で、合計所得金額が900万円以下の場合は48万円の控除額になります。また、障害者の場合には、配偶者控除の他に障害者控除として27万円が控除できるケースがあります。
納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられないほか、納税者と生計を一にしていることも条件となります。
配偶者に給料所得以外の所得(不動産所得、事業所得など)がある場合、それらの合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)でなければ、控除は受けられません。
給与のみの場合は、給与収入が103万円以内という規定となっています。
「103万の壁」:この配偶者控除の規定から来たもので、103万円以上稼ぐと所得税が給料から天引きされることからそう呼ばれています
配偶者特別控除
配偶者控除の条件には該当していなくても、一定の条件を満たしている場合に受けられるのが「配偶者特別控除」です。主に配偶者の合計所得金額によって控除の金額が変わります。
配偶者に給料所得以外の所得(不動産所得、事業所得など)がある場合、それらの合計所得金額が48万円以上133万円以下であれば、配偶者特別控除を受けられます。
配偶者控除より該当範囲が広くなっている配偶者特別控除ですが、納税者の合計所得金額が1,000万円以下、かつ納税者と生計を一にしていること、といった条件は同じです。
扶養控除
「扶養控除」とは、扶養関係にある親族がいる場合は受けられる控除のことです。
民法では直系血族と書かれていますが、税法上は配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)、または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人が該当します。
一般の控除対象扶養親族(16歳以上) | 38万円 |
---|---|
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 |
老人扶養親族(70歳以上) 同居老親等以外の者 |
48万円 |
老人扶養親族(70歳以上) 同居老親等 |
58万円 |
配偶者控除と同じく、給料所得以外の所得(不動産所得、事業所得など)がある場合、それらの合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)、給与のみの場合は給与収入が103万円以内でなければ、控除は受けられません。また、納税者と生計を一にしていることが条件です。
社会保険上の扶養控除を受ける条件や収入基準は?
扶養には"社会保険上の扶養"もあります。保険加入者の扶養に入ることで被扶養者は扶養者と同じ社会保険に加入することが可能になり、被扶養者は自分で社会保険料を納める必要がなくなります。
例えば医療保険の場合、子どもの頃に親が勤務する会社で保険証が発行されていたのも、子どもが親の扶養対象であるからです。また、年金保険や介護保険の場合、保険加入者の扶養に入ることで、国民年金の保険料を支払う必要がなくなります。
雇用保険や労災保険については扶養の範囲内とは直接関係なく、勤務時間や雇用形態に準拠しますので、一度ご自身の勤務先でご確認ください。
社会保険:医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つの総称です
対象者は扶養者の配偶者や子ども
社会保険上の扶養対象者は、税制上とは少し異なります。
医療保険の場合、三親等以内の直系尊属(曾祖母、祖母、父母)、ならびに配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人が対象です。
税制上と異なる部分としては、事実上の婚姻関係であれば社会保険上の扶養が適用されること、さらに必ずしも同居している必要がないことがあげられます。
同居して家計を共にしている人であれば範囲はさらに拡がり、いとこといった三親等以内の親族や、事実上の婚姻関係の人の父母および子も適用されます。ただ、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除外されますので注意が必要です。
国民年金の場合、主たる扶養対象は配偶者となります。事実婚の配偶者でも扶養に入ることは可能ですので覚えておきましょう。
収入の基準は年収130万以下または106万円以下
上記を満たしていても、収入が一定以上ある方は対象になりません。まず、年間収入が130万円以上ある場合は、医療保険も国民年金も扶養対象外となります。
後述しますが、2022年より社会保険の適用範囲が拡大され、一定の規模の会社で働き、106万円以上の年収がある方は健康保険と、会社勤めの方が払う厚生年金を支払うことになりました。
上記の支払いにより手取り額は減りますが、国民年金だけでなく、厚生年金も支給されれば老後の安心にもつながります。ぜひ自分のライフプランとともに働き方を検討していきましょう。
【2020年に改正】税法上の控除の変更ポイント
毎年税制改正は行われていますが、特に扶養など家計に関わる控除について大きな変更があったのは2020年です。
給与所得控除の引き下げ
給与所得控除は2020年の改正により、10万円引き下げられました。その結果、給与所得の金額が上がり、増税につながるのではと懸念されていたものの、後述する基礎控除が引き上げられたことで、計算上年収が850万円以下の人には影響がないようなっています。
給与所得控除額:所得税の計算をする際に、給与や賞与などの収入から差し引くことのできる控除のことです
基礎控除の引き上げ
これまで基礎控除は一律38万円だったところ、2,400万円以下の収入の方は48万円と10万円の引き上げとなりました。これにより、一定の収入以下の方には控除は影響が出ないようなっています。
基礎控除:所得税の計算をする際に、総所得金額などから差し引くことができる控除の1つです
所得金額調整控除の創設
上記の改正により、給与等の収入金額が850万円を超える場合は、実質的な増税となっており、それを緩和するため、「所得金額調整控除」が創設されました。
対象者は給与収入が850万円を超える給与所得者で、特別障害者の方や、23歳未満の扶養親族を有する者、また特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族を有する者が対象です。
寡婦(寡夫)控除の見直し
これまでは寡婦控除というシングルマザーへの控除制度がありましたが、性別を限定しない「ひとり親控除」が2020年より始まりました。
基本的な部分は寡婦控除と同じですが、寡婦控除が夫と離婚後に婚姻をせずに子供を養育している、または夫と死別した後に再婚をしていない場合に該当するのに対し、ひとり親控除は結婚や事実婚をしていない独身者(男女を問わない)でも対象となります。
総所得金額48万円以下の子と生計を共にしている場合、35万円の所得控除が受けられますが、合計所得金額が500万円以下であることが要件ですので注意しましょう。
【2022年10月に改正】社会保険上の扶養の変更ポイント
2022年には社会保険制度が改正され、適用対象が拡大されました。
特にパートやアルバイトで勤務されている方、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの方は働き方が大きく変更することになったかと思います。
対象企業
社会保険の適用が拡大されるのは、2022年10月時点では「従業員数101人~500人」の企業です。2024年10月からは「従業員数51人~100人」の企業も対象となります。
対象者の拡大
上記の対象企業で働き、以下4点に該当する方は、厚生年金保険と健康保険への加入が適用されます。
1.週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
2.月額賃金が8.8万円以上
3.2ヶ月を超える雇用の見込みがある
4.学生ではない
年収106万円以上の方は対象
月額賃金8.8万円というのは、年収に換算すると106万円です。つまり、106万円以上稼いだ場合は、厚生年金保険と健康保険に加入することになります。
参考URL
・タックスアンサー(よくある税の質問) 国税庁
・被扶養者とは? 全国健康保険協会
・従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き 日本年金機構
まとめ
今回は扶養控除とは何か?という基本的なところから、扶養控除の仕組み、さらには改正された上での変更ポイントなどもお伝えしてきました。
特に配偶者や親族の扶養に入りながら、パート・アルバイトとして働かれていた方は2022年10月からの改正で大きく働き方が変わったことかと思います。ぜひご自身のライフスタイルやライフプランを考慮して、ご自身にあった働き方を選んでください。