40代50代の採用が今、着目されている理由とは | 中高年採用のススメvol.1
- 中高年採用のススメ
- 公開日:2018年3月 8日
この数年で「中高年者の採用」がメディアなどでもクローズアップされるようになりました。「再就職できない中高年にならないための本: 42歳以上のためのキャリア構築術」の著作を始め、多くの執筆活動を展開されている谷所健一郎氏から、その理由についてお届けいたします。
この記事の目次
多様な経験とキャリアを求めるニーズの現れ
企業が中高年者の採用を行う理由としては大きく二つ上げられます。
一つは「多様な経験とキャリアを積んだ人材を求める」という、即戦力を求める動きです。森下仁丹株式会社が行った40・50代のビジネスパーソンを対象に行った「第四新卒」などはその最たる例といえるでしょう。
しかし、これは厳密な意味では「年齢・性別を問わない即戦力人材」の募集です。これまで主に中小企業では、大企業から貴重な経験を持った経営を推進できる人材の受け入れを「顧問」などの形で行っていました。
そのマッチングのプロセスは、主にヘッドハンターや一部のエージェントが行っていたためあまり公にはなっていませんでしたが、これからは多くの人材紹介会社や一般公募という形でも広がっていくことが考えられます。
つまり、これまでクローズな形で行われていた「即戦力人材」の採用が、徐々にオープンになってきている、という側面で語ることができるといえます。
人口動態的に確実視される、将来的な人材不足への懸念
みなさんは「2030年問題」という言葉をご存知でしょうか。人口減が進み少子高齢化に偏っている日本において、様々な問題が顕在化するのが2030年と言われています。
2015年の日本の人口は1億2,709万人。そのうち65歳以上の高齢者は3,386万人で、高齢者比率は26.6%と世界でも最も高い割合となっています。
しかし、高齢化の流れはさらに加速し、国立社会保障・人口問題研究所による人口予測によると、2030年には人口が約1億1,912万人と減少し、65歳以上の高齢者は3,715万人。つまり、国民の三人に一人が65歳以上の高齢者となるのです。
問題とされているのは社会保障の安定運用、経済成長率の鈍化、さらに地方の衰弱化などが上げられていますが、最も問題視されているのが「労働力の減少」です。
若年労働力が少なくなることから新卒者の奪い合いが起き、結果として知名度の高い大手企業が新卒者を独占。そのため、新卒者の確保ができなかった企業においては労働力が不足する状況が確実視されているほか、若い人材を確保できないため社内の年齢構成を平準化することができなくなり、組織構成を見直さなければならないという問題も生まれてくると言われています。
労働力不足を解消するための3つの選択肢
労働不足を解消するための方策とされているのが「女性の活躍推進」、「外国人労働者の受け入れ」、そして「高齢者の雇用促進」です。女性の活躍推進については残業を減らすなどの取り組みで対応を進めている会社も増えていますが、外国人労働者を受け入れるとなるとしっかりしたマニュアル、受け入れ体制を構築できる大手企業ではなければなかなか敷居の高い話となってしまいます。
そのため、現実的に導入のしやすい「高齢者の雇用促進」に目が集まりますが、高齢者となるとこちらもなかなか難しいため40代50代の人材に対する取り組みが検討されている、というのが現状です。
検討を始めている企業はすでに一定数存在している
これはマイナビが2018年に企業に対して行った「55歳から64歳までの人材の活用を雇用戦略の中で検討しているか」という設問のアンケート結果です。
調査名 2017年マイナビ企業人材ニーズ調査
調査期間 2017年11月21日(火)~12月19日(火)
回答数 1,024社(上場 79社・非上場 945社)
各雇用形態別でもっとも多いのは「現状活用していないので、今後も予定はない」という回答ではありますが、2割の企業は「今後検討する」と回答しています。
さらに着目するべきは、現状活用している企業においては「今後の活用に消極的」と答えている企業よりも「今後積極的に活用する」と答えている企業の方が圧倒的に多いこと。契約社員・アルバイトの雇用形態においてはともに20%近く上回っていることから、トライアル的に導入してみた企業においても、今後も継続していくことへのメリットが見えた証左とも言えるでしょう。
早期から導入を検討することのメリットとは
そう言われても「そのような問題が起きると言ってもまだ先のこと。労働力不足が顕在化してから中高年者の採用を検討しはじめてもよいのでは?」という考えをもたれる人事担当者は多いと思います。
それもそのはず、多くの企業は若年労働者を毎年投入していくことをベースに採用計画および人事制度を整えているため、多くの労力をかけてまで早くから取り組むには経営層への働きかけなど、多くのハードルが存在します。であれば、「その問題が顕在化してから取り組む方がスムーズに進めることができる」と考える方が 合理的と思えるかもしれませんが、早くから取り組むことのメリットについて説明します。
中高年採用ノウハウを蓄積していくことのアドバンテージ
労働力不足が顕在化してから制度を検討することも選択肢の一つではありますが、その頃には多くの企業が中高年採用を導入している可能性はあります。そうなればまた人材の奪い合いが発生し、良い人材を確保することが難しい状況が生まれます。
しかし、早くから中高年採用に着手しておけば、パフォーマンスを向上させるための研修の内容、面接における見極めのポイント、離職に至った人材の傾向などを把握することができ、「どのような人材を採用すれば組織に貢献するか」というノウハウを蓄積することができます。
顕在化するまでに人事制度を浸透させることができる
さらに人事制度が社内に浸透し、企業の文化となるには時間がかかります。そのような未来がわかっているのであれば、先に中高年採用に積極的ではなくとも舵を切り、事例を集めましょう。人事制度の構築はトライアンドエラーの繰り返しです。
成功事例を生むには時間がかかります。そのためにも、年に2・3人からでもよいので徐々に中高年者の採用をはじめていくことが、将来に向けて「会社の財産となる」と言えるでしょう。
まとめ
次回は中高年労働者のデメリットと魅力についてご説明いたします。