エイジレスに働いていくための基本コンセプト|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.02
- 木村勝のキャリアの教科書
- 公開日:2017年12月12日
「働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書」の著作をはじめ、様々な執筆活動もされている木村勝氏のコラム連載第2回目。「年齢にかかわりなく働き続けられるエイジレスな働き方」を目指すためにはどのような考え方を持つべきでしょうか?今回は、ミドルシニアの働き方戦略の基本コンセプトについてお伝えしていきます。
この記事の目次
人生100年時代において、納得のいくキャリアを歩んでいくためには?
中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村です。
先月ある団体が主催する『自律的キャリア開発と人材』をテーマとするシンポジウムに登壇しました。法政大学キャリアデザイン学部教授の宮城まり子先生が全体をコーディネートし、3人のシンポジストがそれぞれの立場でテーマについて語りました。
お一人は、女性活躍推進を中心としたダイバーシティを推進する立場。もう一人は、企業でキャリア開発支援を行う立場。最後は50代で実際にキャリアチェンジを行ったシニアの立場(ここが私の立ち位置です)からのレポートです。
結果的にいずれのシンポジストにも共通した意見は、「これから人生100年時代、会社のひいたレールに乗った他力頼みのキャリアを歩んでいくことはリスク。変化の激しい労働環境にうまく適応しながら自分の力を最大限に発揮し、納得のいくキャリアを歩むためには、属している一つの会社内だけを見るのではなく、長い人生を展望し自律的にキャリアを考え、今後の自分を活かす働き方や生き方を積極的にデザインしていくことが重要」というものでした。
前回も書きましたが、60歳定年が単なる通過点となり、ミドルシニアにとって自らのキャリアを立ち止まって考える制度的なタイミングが無くなっています。人生100年時代を迎えミドルシニア層は、「自分はいつまで働けるのだろう」「会社はいつまで雇ってくれるのだろう」という不安で一杯です。
こうした時代こそ、自分のキャリアの目標・ゴールを意識的に設け、自分が決めたマイルストーン(節目)にそって自分のキャリアをチェックし軌道修正をしていく必要があります。まさにシンポジウムのテーマである「自律的キャリア開発」です。
これからのミドルシニアは、「先行き不安なエンドレスな働き方」から「年齢にかかわりなく働き続けられるエイジレスな働き方」を目指す必要があります。
今回は、今後ミドルシニアがご自身のキャリアを考えていく際にポイントとなる部分についてお話したいと思います。当然若手層とミドルシニア層では、キャリアを考える際のポイントは異なってくるため、まずは働き方戦略のコンセプトについて考えていきましょう。
細く、長く、エイジレスに働く
ミドルシニア(特にシニア層)からのキャリアチェンジにおいて、「一攫千金」「一旗あげる」といったコンセプトは危険です。収入も一時的な高さを求めるのではなく、「長く働き続けることで、最終的に収支が取れればいい」という考え方が重要です。
当たり前ですが、人は必ず年を取ります。肌や見た目はアンチエイジングの化粧品などで若々しく見せることができるかもしれませんが、頭の回転や仕事におけるパフォーマンスは加齢とともに低下していきます。そのため、いずれ訪れる老化を見据えたうえで将来を考えることはリスクヘッジとなります。
このように長いスパンでキャリアを考えておくことで、キャリアチェンジの際に一時的には給与が下がるという選択肢も自信を持って選ぶことが出来るようになります。この戦略を持つことで選びうる選択肢が格段に広がります。
経験こそ商品であると捉える
今まで長年培ってきた経験・スキルこそがミドルシニアの財産です。この資産を活用することで若手との差別化を図りましょう。
経験・スキルというと、人事・経理・営業など職種という要素だけを頭に浮かべがちですが、それだけではありません。人柄、対人折衝能力(話しやすさ、聞き上手など)、教える力(やり方をわかりやすく標準化する力、根気よく丁寧に対応する力など)など、長年の社会人生活で獲得したこうした職種に限らない横断的な経験・スキルこそが商品です。
最近、ある中小企業の役員の方とお話していたところ、求める人材として「一に人柄、二に人柄、三・四がなくて、五に人柄」とおっしゃっていました。これは極端な例ですが、今後のRPA(ロボティク・プロセス・オートメーション=業務の自動化)やAI化の進展により、職種固有の知識・スキルよりは、人間関係構築力のような要素がより重視されるようになる可能性は高いです。
「数値的に表せないスキルや経験は売りにならない」ということはありません。いわゆる「ヒューマンスキル」はまだまだ企業から求められる要素なのです。
複線化したキャリアを検討する
内閣も働き方改革の一環で兼業・副業を後押ししています。企業が参考としているモデル就業規則から副業・兼業禁止規定をなくし、現在の「原則禁止」から「原則容認」に転換する方針を打ち出していることもその一環です。
これからのミドルシニアのキャリアは、一か所に依存することなく、複数の企業・関与先と仕事をしていくことも検討すべきです。そのために現在の兼業・副業禁止緩和の流れは追い風です。また、一か所に依存しない働き方は、精神的にもストレスフリーです。
また、人生100年時代には、最終的には地元に根を張った働き方、生き方が必要になります。今のうちから、社会参加活動を実践することや、パートあるいはボランティア的にでも自宅近くで働くきっかけを作っておくことで、65歳以降の高齢者となっても継続可能なキャリアが実現します。
雇用形態にこだわらずに、多様な雇用ポートフォリオを実現する
総務省統計局「労働力調査」の中に就業者編成の推移データがあります。就業者編成とは、就業者のうちで、「雇用者」(いわゆるサラリーマン)「自営業主」「家族従業者」の割合を調査したデータです。調査開始の1953年(昭和28年)には、雇用者は40%強でしかなく、逆に自営業主は25%程度、家族従業者は30%強もいました。
それが今や80%以上が雇用者となっており、現代の日本人の意識の中には、「働くこと=雇われる」という構図が当たり前のこととして埋め込まれています。
しかしながら、これからのミドルシニアの働き方としては、「雇用」だけにこだわることなく、業務委託、請負、派遣などあらゆる働き方を組み合わせて、目標とする収入ややりがいを達成していくこともポイントになります。
常に経済が伸び続けていた高度成長期には「一社で一生働き続ける」いわば「就社」的なキャリア戦略がもっとも収支がプラスとなる計算であったため正解と呼べたかもしれません。しかし、これからの時代は、一つの働き方に限定することなく、多様な働き方ポートフォリオを自ら組み合わせていくこともポイントです。私自身も非常勤的に雇用されて働く場面もあれば、業務委託契約で自営業主として働く場面もあります。
また、たとえ雇用されている場合でも、気持ちは自営業主として会社と契約して働いているという意識を持つことも重要です。「会社への従属」から「対等の立場」へのマインドセットです。
まとめ
以上、ミドルシニアの働き方戦略の基本方針を説明させて頂きましたが、いかがだったでしょうか。
ぜひ自ら意識的に立ち止まってご自身のキャリアを考えることをおススメします。
そのタイミングは、45歳、50歳、55歳? どこがベストでしょうか?
答えは簡単。それは今です!