中高年採用における給与・雇用形態の設定の仕方| 中高年採用のススメvol.4

  • 中高年採用のススメ
  • 2018年4月11日
  • 中高年採用における給与・雇用形態の設定の仕方| 中高年採用のススメvol.4

    中高年者採用を行うにあたって多くの人事担当者が悩むのが「雇用形態」そして「給与」の設定についてです。逆に、この領域の課題をクリアさえすれば、様々な経験を持った人材の採用へ大きな一歩を踏み出すことが可能です。谷所健一郎氏から、中高年採用を成功させるポイントについてお届けする連載4回目。

    この記事の目次

      どのような雇用形態を設定するべきか

      転職を検討する際、大きな検討要素となる雇用形態。各年代・属性において希望する雇用形態に違いが存在するかを調査した、マイナビのデータを見てみましょう。

      就業を希望する雇用形態を教えてください

      正社員
      男性30代
      正社員
      男性40代
      正社員
      男性50代
      n 105 111 112
      正社員(総合職) 87.6% 93.7% 85.7%
      正社員(地域限定社員等) 29.5% 26.1% 33.9%
      契約社員・嘱託社員 6.7% 8.1% 16.1%
      パート・アルバイト 5.7% 5.4% 1.8%

      <調査概要>
      【調査対象】 関東地方において転職活動を検討している20~60代の男女
      【回答者数】 全2172人(本データは該当項目を抜粋)
      【調査方法】 インターネット調査(調査会社の登録モニター活用)
      【調査期間】 2017年5月10日(水)~5月17日(水)

      やはり、良い人材を採用する近道は正社員登用

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      回答者の属性が正社員という背景はありますが、上記のデータから50代という年代においてもやはり圧倒的に人気なのは正社員であることが見て取れます。

      正社員を希望する理由としては「高水準の待遇」など様々な要因がありますが、通常50代までの求職者が求めるのは「現時点での雇用の安定」、そして「将来における収入の安定」です。

      そのため、仕事内容や採用時の年齢層にもよりますが、良い人材の採用を目指すのであれば中高年採用といえども、やはり正社員登用の道を用意することが質の良い母集団形成につながります。

      「能力を発揮できるかわからない人材を雇用するのが不安」という理由で正社員採用に踏み切れない、という声を聞くこともあります。しかし、考えてみるとそれは若年層についても同様です。むしろ、「30歳の人材を採用したが、入社後に能力が会社の期待に達していないことがわかった」といった場合、定年まで30年近く雇い続けなければならないことを考えると、若年層の方がよりリスクが高いといえます。

      一方で、定年60歳で65歳までの再雇用制度を設けた企業であれば、55歳で採用しても5年後にはいったん定年退職を迎えるため、上記のようなリスクは生まれません。また、5年程度の勤続年数であれば、多額の退職金が発生することもないでしょう。

      こうした点からも、中高年だからこそ正社員雇用を推進することの利点は多く、他社との差別化にも繋げることができるのです。

      工夫さえすれば契約社員制度でも中高年活用はできる

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      しかし、40代ならばともかく、50代の人材を正社員で雇用することは社内的なハードルが高い、という企業も多いでしょう。そうした場合に、契約社員で募集を行う企業が多いですが、良い成功事例はまだ多くありません。

      大きな原因としては、やはり「有期雇用による雇い止めの不安」が挙げられます。雇い止めの不安がつきまとうため、良い母集団がなかなか集まらず、また、良い人材が見つかり内定を出したとしても、条件に同意が得られないため、結局辞退される、といった話をよく聞きます。

      そのため、契約社員での採用を行う際は継続の条件を明示し、「これらを達成している限り雇用は継続される」という安心感を与えることが非常に重要です。

      加えて、契約社員で採用できた場合でも、5年経過すれば無期雇用転換の義務が発生するため、正社員登用へのステップを検討しておくのが望ましいです。総合職としての採用が難しいのであれば、通常の正社員よりも若干待遇を押さえた「限定正社員」「地域限定正社員」などの施策も検討しておくのがよいでしょう。

      給与テーブルの設定において考えるべきこと

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      中高年を正社員として雇う場合、給与テーブル、賞与規定、退職金規定について独自のものを構築する方法もあります。しかし、独自の規程を構築するのは大きな労力がかかるため、年功序列型の給与体系が設計されている企業以外では、既存の給与体系をベースにするのがスムーズな導入方法といえます。

      ポイントは成果報酬型制度(インセンティブ)の導入を行い、結果を出せる人材に報いるというスキームを構築することです。これは新たに雇う人材のみに適用するのではなく、既存社員へも同様に展開するのが望ましいでしょう。

      繰り返しになりますが、「中高年者」だからといって、低い水準の待遇では良い人材は集まりません。買い叩こうとするのであれば、それなりの人材しか集まらないのは若年者の採用と同じです。

      職種や仕事内容により給与規定の設定を検討する

      一般的には中高年採用を行うからといって、必ずしも給与規定を見直す必要はありません。しかし、年齢給のウェイトが高い給与規定を設定している企業であれば、中高年者を採用することによるコストの高止まりが発生してしまうため、別途給与規定を設ける方が導入しやすいケースは多いでしょう。

      「管理職として活躍してもらいたいけど、最初から管理職として採用するのは少し怖いので一定期間様子をみたい。でも、一般職の給与待遇提示だったら条件が良くないから採用できないしなあ...」といった悩みがあれば、1年間など期間を決めた調整給に置き換えて評価する方法もあります(調整給を設ける場合は給与規定に記載する必要は発生します)。

      このような形が取れるのであれば、企業にはコストを押さえつつ良い人材が採用できるというメリットが。求職者には所得は下がるけど安定した仕事に就けるというメリットが。お互いにwin-winな関係を築くことが可能です。

      また、職種や仕事内容によっても異なるため、大まかに分類いたします。


      成果が明確に表れる職種(営業・販売など)

      給与規定は原則既存社員と同様で問題ありません。役職級などが給料の多くを占めているのであれば、インセンティブを導入することがもっともシンプルな解決法に繋がります。


      成果を数値で表しにくい職種(管理職、一般事務など)

      ベースの制度において年齢給のウェイトが高い場合、中高年を採用すると若年層と比較をして給与が高くなる可能性があるため、年齢給などの調整が必要になります。

      その場合、給与テーブル(基本給や年齢給)を考える際は、まず現職社員の70%~80%で設定するところからはじめましょう。目標管理、キャリアシート、人事考課を踏まえて加算する制度などがあれば、モチベーションの継続に効果を発揮します。

      管理職採用であれば、役職手当を前倒しで、期間を決めた調整給として支給します。一定期間様子を見た上で能力を発揮できない場合は、調整給をカットするなどの対応が可能です。


      雇用が難しい職種(清掃、ドライバーなど)

      若年層よりも中高年層の方が採用の期待値が高い職種です。しかし、それも待遇次第となるため、良い人材を採用したいのであれば既存社員と同様の給与テーブルで考えるのがよいでしょう。

      退職金は、勤続期間と等級等を兼ねわせて新入社員と同様の扱いをすれば、コストとしては決して高くありません。それでも採用が難しい職種については、退職金や賞与を支給しない契約社員とする代わり、給与を高く設定し採用する方法も考えられます。

      中高年採用を行う際の基本4つの型

      ここまでの話を整理すると、中高年採用の型は以下の4つのパターンに分類できます。

      *パターン1 正社員採用

      60歳までの雇用を原則として正社員として雇用する(65歳までの勤務については既存の規程に従う)ことと、ミドルシニア正社員の給与規定、退職金規定に準ずる採用を行うことをベースとする。

      正社員雇用のメリット

      ・能力のある人材を採用できる。
      ・帰属意識が高い社員を採用できる。
      ・モチベーションが高い。

      正社員雇用のデメリットと対策

      ・契約打ち切りが難しい。
      ⇒60歳定年であれば、若年層と比べ雇用期間が短いのでリスクは低い。さらに、能力評価を明確にすることで、解雇規定に基づき解雇できる。

      ・人件費が高くなる。
      ⇒ミドルシニア採用に基づく給与規定・賞与規定・退職金規定を検討すれば対応可能(中高年で転職する求職者の多くは、賞与・退職金よりも安定した雇用に対する期待が高い)。退職金制度は個人型確定拠出年金などを設ける

      *パターン2 正社員雇用を前提とした契約社員

      契約社員として採用を行い、パフォーマンスをみたうえで1年~3年の期間で正社員登用を行う。その場合は、人事考課、キャリアシートなどから登用条件を明確にしておくことが重要。

      *パターン3 契約社員(嘱託社員・顧問)

      労働条件を緩和(ライフスタイルに合わせた働きやすい環境作り)しての募集となるため、多様なスキル・経験を持った人材を集めやすいことと、社内的な実施ハードルが正社員よりも低い。

      契約社員雇用のメリット

      ・有期雇用のため人材の停滞がない。
      ・人件費を押さえることができる。
      ・フルタイム勤務を希望しない求職者のニーズに叶う。
      ・特殊なスキルを持った人材を採用できる期待値が高め。

      契約社員雇用のデメリット

      ・良い母集団が集まりにくい。
      ・有期雇用のためモチベーションが下がる可能性がある。
      ・帰属意識が弱い。

      *パターン4 業務委託

      業務委託のメリット

      ・雇用関係がないため、契約期間が調整できる。
      ・成果が予測しやすい。

      業務委託のデメリット

      ・経費が社員と比較して高くなることがある。

      目標管理制度(業績評価制度)を整えることの重要性

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      中高年の採用で注意することとして、豊富な人生経験が悪い方向に働く「要領がいいだけの社員」を採用しないようにすることが挙げられます。このような中高年を採用してしまうと、人件費がムダになるばかりか既存社員のモチベーションを下げてしまうことにも繋がります。

      そのため、まず重要なのはこのような人材を採用しないということ(詳細は次回でご説明します)。そして、採用後に発覚しても一定のパフォーマンスを発揮させるための「目標管理」の設定と、それに紐づく「人事考課」が重要になります。

      「目標管理」を設定するには、業務の棚卸しを行ったうえでの具体的な業務範囲、目標、締切を設定し、そのPDCAを定期的に確認することが重要です。目標については「個人目標」と「部署目標」をそれぞれ設定することで、どちらに比重をおくかを個人の自律性に委ねることもできるほか、実現に向けた方法論を自分で考えることができるようになるでしょう。

      「人事考課」については、目標と照らし合わせたうえで設定を行い、半期ごとに達成度合いに応じてインセンティブに反映させるなどがよいでしょう。

      面接でのチェックポイントや問答集については次回で詳しくお伝えいたします。

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