年末年始にぜひやりたい「キャリア棚卸し」のススメ!|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.03
- 木村勝のキャリアの教科書
- 公開日:2017年12月22日
木村勝氏のコラム連載第3回目。今後のキャリアを考えるために欠かせないのが「キャリアの棚卸し」。これを行うことで自身の経験・スキルを商品にすることができる重要な作業ですが、そのためには資料集めが必要となります。今回は年末年始の時間を利用して行える、具体的な「キャリアの棚卸し」準備についてお伝えしていきます。
この記事の目次
今後を真剣に考えたときに必ずやるべき作業。それがキャリアの棚卸し!
中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村です。前回のコラムで、まずは「自ら意識的に立ち止まってご自身のキャリアを考えること」、そして、そのタイミングは「思い立ったが吉日」のことわざではありませんが、「今がその時」と考え、行動に移すことをオススメしました。
それでは「自ら意識的に立ち止まってご自身のキャリアを考える」ためには、具体的には何をすればよいのでしょうか? それは、ずばりご自身のキャリアの棚卸です。
あなたは、ご自身のキャリアの棚卸をされたことがありますか? 新卒で今の会社に入社し今もその会社に勤務中というビジネスパーソンは、ほとんどされたことがないと思います。なぜか?それは同じ場所に勤めている限り必要が無いものだからです。
私が事務局にてお手伝いしているビューティフルエージング協会(BAA)という一般社団法人があります。2017年で創立25年、「ミドルシニアがその経験および能力を生かして有意義な人生を送る(ビューティフルエージング)ことに関する調査・研究、指導・相談、情報収集・提供等を行うことにより、豊かな国民生活の実現と我が国経済の発展に寄与すること」を目的とした団体です。
BAAでは、毎年6月から7月にかけて「ライフデザイン・アドバイザー養成講座」という研修を開催しています。この講座には、各企業で新たにキャリア開発業務(出向やミドルシニア向け研修)を担当される方々が参加されますが、こういう仕事を担当される方でさえ、ご自身のキャリアの棚卸をしたことがほとんどありません。
職務経歴書を作るためにもキャリアの棚卸しは欠かせない
特に大企業の社員の方ほどその傾向は強くなります。採用する立場で他人の職務経歴書を見たことはあるかもしれませんが、ご自身の職務経歴書を書いたことがあるという方はほとんどいないのです。
「棚卸」を辞書で調べると、「決算時または在庫整理時に、その時点で在庫となっている一切の商品や原材料の種類、数、品質などを調べ、その価格を査定すること」などとありますが、これをキャリアの棚卸に置き換えると次のような内容になります。
「ある時点における自分に身についたスキル、知識、経験、資格、ノウハウ、マネジメント力など、保有する自己資産の種類・数・レベルを確認し、その価格を評価すること」
会社の棚卸と異なるのは、目に見えない無形財産であり定量化しにくいところです。しかし、今までの「暗黙知」の経験・スキルを「形式知」にしてこそ、ミドルシニアのキャリアは商品になります。職務経歴書は、キャリアチェンジのパスポートのようなものですが、そのベースとなるのがキャリアの棚卸です。このプロセスをいい加減にしてはしっかりとしたキャリア戦略が立ち上がりませんので、ここはぜひ時間をかけて取り組んでいく必要があります。
このコラムでは、今回以降ミドルシニアのキャリアチャンジに絶対必要となる、キャリアの棚卸を進める具体的なプロセスを解説していきたいと思います。
資料から紡ぎ出す「自分アーカイブ」
まずはお手元にすべての資料を集めることから始めます。手元に必要資料が集まっていないと無駄な確認作業を要しますので、まずは職場の机、家、実家など資料のありそうな場所から資料を集めることに専念します。その収集が終われば半分以上洗い出しは終わったようなものです。
集めた資料は、今後の転職、出向などの際に必要となる履歴書・職務経歴書、また、独立起業の際に必要となるプロフィール・事業パンフレットを作成する際のベース資料となります。この棚卸データがあなたのキャリアのデータベースとなり、必要に応じてここから情報を取り出し、ニーズにあった形に加工するイメージです。いわば、「キャリアに関するプラットフォーム」というとわかりやすいかと思います。
あなたのキャリアを洗い出すための10の資料集め
①人事記録
会社によっては、毎年入社以来の異動記録をまとめて配布しているところもあります。こういう会社だと楽ですね。
②名刺
今まで所属した部署の正式名称がわかります。また、資格・役職も記載されていますので、その部署にいたときの役割・ポジションがわかります。
③辞令
節目節目で会社から渡された異動辞令、賃金事例などです。これがあると異動年月、所属組織名、役職名、昇格年度などがわかります。
④受賞した「表彰状」
ビジネスパーソンの皆さんは、外部の表彰でないと価値がないと思いがちですが、そんなことはありません。受賞歴と受賞内容、受賞日などはこれでわかります。営業成果、提案、小集団活動、安全衛生、防災活動、スポーツなど全てあなたがこれまで活躍してきたことの証です。
⑤資格認定証
保有する資格すべてです。これも「国家資格でないから価値がない」「簡単な試験だから」「誰でも取れる資格だから」とご自身の思い込みの基準で取捨選択しがちですが、社内外を問わず、あなたの実力を証明する貴重な資料です。
⑥免許証
交付日、更新状況がわかります。仮に今は利用していなくとも今後の活用可能性も十分あります。
⑦日記帳
個人のプライベートの日記帳、社用日記帳。最近少なくなりましたが、少し前までは社員手帳を全社員に配布していた会社もありましたね。
⑧社史
忘れかけている時代を客観的に振り返ることのできる貴重な資料です。総務部キャビネットなどに眠っていることがあります。また、所属する工業会などに寄付しているケースもありますので、団体事務局に行くと閲覧できる場合もあります。
⑨過去のアルバム
写真は記憶を呼び起こします。個人のアルバムを押入れから引っ張り出してみてはいかがでしょうか。ビジュアルな資料は、今までのご自身の活動を一目で知らしめる強力なPRツールとなります。日経新聞の「私の履歴書」などでも、若い時代の仕事ぶりを紹介する写真が掲載されますが、言葉で説明されるよりも圧倒的な説得力を持ちます。
⑩論文、執筆原稿
業界雑誌での投稿、社内報への投稿・社内掲載記事なども有益な資料です。
年末年始はじっくりと自分のキャリアを見つめ直す大きなチャンス!
こうしたありとあらゆる自分に関する資料をまずは集めることがポイントです。中途半端な資料収集でキャリアの棚卸を始めると「あれはいつだっけ?」とはっきりしない部分が多くなり、やる気を失います。
この年末年始で実家に帰省する方も多いと思います(入社当初のデータなどは、実家に眠っていることが多いです)。ぜひ、年末年始の機会を利用してまずはご自身に関する資料を集めることから始めることをオススメします。
次回以降は、集めた資料の活用法です。「家族キャリアマップ」「ライフライン」の作成など、ステップを踏んで着実にご自身のキャリアを「鳥の目」で具体的に俯瞰できる方法をご紹介したいと思います。ご期待下さい。
本年度は本コラムをお読み頂きありがとうございました。来年も引き続き宜しくお願い申し上げます。