人口構造の変化と人材不足が引き起こす「2030年問題」とは?

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人口構造の変化と人材不足が引き起こす「2030年問題」とは?

人口の変化によって日本の社会や経済に影響を及ぼすとされている、2030年問題。少子高齢化が進み、それによって引き起こされるさまざまな社会問題の総称を指しています。2030年問題では、日本の労働市場の大きな転換点となるとされており、日本で生きる私たちが向き合わなくてはならない課題です。本日は2030年問題をより深堀していきましょう。

この記事の目次

    2030年問題とは、少子高齢化によって引き起こされるさまざまな社会問題

    2030年問題とは、生産年齢人口の減少や少子高齢化などによって浮き彫りになると予想される、さまざまな社会問題のことを指します。また、2030年問題よりも直近には2025年問題があります。2025年問題とは、団塊の世代がすべて75歳以上に達し、その人口が2,180万人まで増加することで引き起こるとされています。

    2,180万人とは全人口のおよそ2割を占めており、日本での高齢化問題のスタートはまさにこの第1次ベビーブームに産まれた団塊の世代が、後期高齢者を迎える75歳に達することから端を発するのです。後期高齢者が人口の2割にのぼるため、医療や介護といった様々な問題を社会全体で考えていかなくてはならないとされています。

    そして、2030年問題は2025年よりもさらに少子高齢化が進み、それによって引き起こされるさまざまな社会問題の総称のことを指します。たとえば、内閣府によれば2030年の高齢化率は30.8%になると推測され、約3人に1人が高齢者になる社会が訪れるといいます。このように、2030年問題は高齢化によるバランスの取れない人口構造を日本全体で考えていかなくてはならないという訳なのです。

    日本ではすでに2021年10月時点で超高齢社会を迎えています。高齢社会が進めば、産業においては労働力不足や人手不足に陥り、医療保険や年金などの社会保障制度の負担は大幅に増大してしまいます。2030年問題では、日本の労働市場の大きな転換点となるとされており、日本で生きる私たちが向き合わなくてはならない課題とも言えるでしょう。

    高齢化率が7%の高齢化社会を超えてから高齢化率14%の高齢社会に達するまでに日本がかかった年数はおよそ25年。他国を見てみても、フランスは115年、スウェーデン85年、アメリカが72年かかっていることを考えると、日本の高齢化率のスピードの速さは異常なものだと言えそうです。

    データ元:内閣府「令和5年版高齢社会白書」

    2030年問題が日本社会に及ぼす影響とは?

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    社会保障制度の負担が増える

    少子高齢化により、労働力の減少によって社会制度の維持が難しくなるとされています。社会保障制度では保険料による支え合いですが、負担が現役世代に集中してしまうため、その財源を税金や借金などで補っている状況です。このうちの多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている実態もあります。

    また、高齢人口の進行に伴い、介護および医療にかかる経費も増加する傾向があり、今後も労働者一人あたりが負担する社会保険料の増加が見込まれています。

    人手不足

    2030年問題では15〜65歳の労働人口減少によって企業の深刻な人材不足に陥るとされています。企業は成長を続けていくために、優れた人材を必要としていますが、その優秀な人材の総数が少なくなっているため、人材不足が深刻化するというわけです。今後、人手不足によって、企業間で優秀な人材の奪い合いも激しくなると考えられています。

    地方の過疎化が進む

    人口減少や地方から都市部へ移り住む若年層が増えることによって、地方の過疎化がますます進むと考えられています。現在、限界集落と呼ばれる地域には65歳以上の高齢者が半数を占め、地域共同体が機能しなくなっているところも。2030年問題では、過疎集落の増加や働き口の減少、それに伴う空き家の増加といった問題も発生してきているのです。

    経済成長が鈍化する

    少子高齢化により、労働力は不足します。そのせいで日本の経済活動は鈍化すると予想されています。具体的には国内の経済成長率やGDPの低迷が起こるとされ、これによって優秀な人材が海外労働市場に流出する傾向が増えるとされているのです。

    人材の流出は技術の流出にも繋がるため、2030年問題における少子高齢化問題をしっかりと考えていかなくては日本の未来は明るくないと言わざるを得ません。

    人手不足が深刻になる業界とは?

    では、どういった分野の仕事で人手不足が深刻となるのでしょうか。

    介護や医療業界

    医療・介護業界は2030年に深刻な人材不足になると懸念されています。現在も医療や介護分野の需要は増加していますが、今後は医師や介護職員、看護師といった医療従事者の不足もより深刻化するとされています。団塊世代の高齢化にともない、医療や介護業界の人材不足は2025年から2030年にピークを迎えると予測されているのです。

    現在でも、介護施設の6割以上が介護士不足に陥っているというデータもあり、今後もますます介護や医療業界の人手不足は重大な局面を迎えるとされています。現在では、政府主導で医学部の定員や看護学校の枠の増加、外国人の採用といった対策が取られているものの、人材不足の根本的な解消になっていないのが実情でしょう。

    航空業界

    航空業界も労働力不足が懸念される業界の一つといわれています。特に、航空業界は専門知識が求められる分野の仕事になります。それにも関わらず、整備士や航空管制官などのスキル人材が不足しており、少子化によってスキルを学ぶ専門学校への入学者も減っているのです。

    一方で、政府は外国人観光客誘致のための施策を進めているため、外国人観光客は増えています。このように、航空業界は需要と供給のバランスが取れていないのです。

    観光業界

    新型コロナウイルスによって打撃を受けた観光業界でしたが、現在は訪日外国人の数はコロナ前の水準に回復し、増加傾向にあります。これにより観光業界全体で人材不足が懸念されています。2030年の政府の目標は訪日客数6,000万人としていますが、団塊世代の退職や離職による労働力不足や若手不足による影響から、将来的な人手不足が懸念されているのです。

    さらに、観光業界でなくてはならない宿泊業と飲食サービス業は、離職率の高さも人材不足の原因となっています。訪日外国人が増えることは日本経済にとって有益かもしれませんが、その担い手不足が心配されているのです。

    IT業界

    IT業界でも従事者の高齢化が進み、労働者不足が深刻となっています。しかし、今後もIoT、AIなどの分野は今後ますます需要が急増する見込みとなっており、IT人材が高齢化していくと今後はより深刻なIT人材不足が予想されています。企業でも早急にIT人材の育成と確保が求められている現状があります。

    建設業界

    建設業界では、専門スキルである建築士や職人といったスキルを持った人材の不足が深刻化しています。そして、2030年問題ではその問題はますます肥大化するとされており、人材確保の急務が各企業に迫られています。

    また、体力が必要な建設業界では離職率も高く、なかなか人材が定着しないのも人手不足の要因となっています。ただ、外国人や女性の雇用を進めることで、建設業の人材不足が解消する可能性もあり、建設業界は幅広い人材の登用が求められているのです。

    運輸業界

    ECサイトの普及に伴い、日本の物流量は年々増加しています。また、新型コロナウイルス感染症の影響も追い風に巣ごもり需要が増えた結果、今後も物流は盛んになるとされています。しかし、それに対応できる人材が不足しているのです。物流業界は低賃金や長時間労働、さらには働き手の高齢化といった問題が徐々に浮き彫りになっている業界の一つでしょう。

    データ元:財務省「高齢化により増大する 社会保障関係費」、国土交通白書2022「第5節 観光政策の推進」

    2030年問題における対策とは?

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    このままでは、約5年後に2030年を迎える日本では多くの産業や社会制度に支障をきたしてしまうと言わざるを得えません。では、2030年問題における対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

    働き方改革や副業の推進

    企業でもテレワークやフレックスタイム制など多様な働き方を導入し、労働環境の向上と人材流出へ歯止めをかけようとしています。フレキシブルな労働環境は、雇用される側の意欲向上に働きかけられると共に、優秀な人材の確保や会社全体の生産性にも繋がります。また、このような働き方改革が進むことで働き手のワークライフバランスも充実させることが可能です。

    リスキリングやキャリア開発の推進

    2030年問題に伴う労働力不足の懸念から、企業にはリスキリングやキャリア開発など働きかけが求められています。リスキリングは、新たな職務や分野を習得することを指し、企業側には社員が新しいスキルを身につけることによってマルチに活躍できる人材を確保する狙いがあります。

    人材不足の解消のために人材を新たに採用することは、容易なことではありません。今いる社員のスキルを底上げすることで、人材不足に備えることができるようになるため、企業ではリスキリングやキャリア開発を積極的に進めていく必要があるのです。

    DX化推進の取り組み

    2030年問題への対策として、DXを活用して人材不足を補う動きも活発化しています。たとえば、デジタル化でペーパーレスにしたり、AIに電話応対をさせたりと、人材不足をDX化によってフォローしようという動きがあるのです。

    デジタル技術を仕事に活用できれば、限られた従業員数でも高いパフォーマンスを発揮することが可能となるため、今後もますますIoTやAIのようなデジタルテクノロジーが発展していくと予想されます。

    シニア人材の活用

    人材不足を解消するためにも、シニア人材の活用は必須でしょう。人材不足に悩む企業にとって経験豊富で実績のあるシニア人材を採用できれば、企業にとっても大きなメリットとなります。また、シニア層も長く働き続けることで年金だけに頼らずに生活を安定させることができるようになります。

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    外国人人材の活用

    外国人人材の活用は2030年問題を解決するために必要な事項になりつつあります。外国人労働者の受け入れは労働力不足を補うだけでなく、企業の生産性向上にも繋がると期待されているのです。

    2040年問題も今後、日本の課題に

    2030年問題を間近に控えた現在、2040年問題も存在するのをご存知でしょうか。
    2040年問題とは団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)が65歳以上の高齢者となり、高齢化社会が一段と進むことで起こり得るさまざまな社会問題のことを指します。

    団塊ジュニア世代は団塊の世代に次いで出生数が多く、2040年には団塊ジュニア世代が65歳を迎え、65歳以上の高齢者が全人口の34.8%に達することからさらなる労働力人口の減少が懸念されているのです。2030年問題の解決を図るための取り組みは、2040年問題緩和への糸口にも繋がっており、日本では政府や企業が前のめりに対策や準備をしていかなくてはならないと考えられています。

    2030年問題では、膨大な問題点が多くあるためにすぐに解決することは難しいとされていますが、企業や政府、そして日本に住む私たちが一つ一つに向き合っていくことで問題をより深刻化させないことが可能なのです。そのためにも、国民全体で2030年問題に真剣に向き合っていく必要があると言えるでしょう。

    まとめ

    2030年問題とは人口構造の変化と人材不足が引き起こす問題です。2030年問題と聞くと、課題ばかりが浮き彫りになりやすいですが、労働力や働き方における転換点にきたとも言えるでしょう。日本ではますます子育てしやすい社会が求められ、シニアたちも活躍できる社会がはじまったと言えるに違いありません。

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