医療費控除とは?対象になる費用や申請方法、該当期間、掲載方法などを徹底解説!
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- 公開日:2025年1月 7日
医療費控除制度は、一定額以上の支払い済みの医療費に対して、住民税や所得税の控除が受けられる制度です。聞いたことはあるけれど利用したことはない、利用したいが詳細を知らないといった人も多いでしょう。今回は医療費控除の概要から、対象となる費用・対象外の費用、申請方法などについて解説します。計算方法やシミュレーションも記載していますので、医療費控除を行うか検討している人は、ぜひ最後までお読みください。
この記事の目次
医療費控除とは
医療費控除とは所得控除の1つで、確定申告を行うと所得税や住民税の控除が受けられる制度です。控除の中には年末調整で受けられるものもありますが、医療費控除は確定申告でのみ受けられる制度となります。
医療費控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに負担した医療費です。対象期間中に支払った医療費が合計10万円を超えた場合、超えた分の金額がその年の所得から差し引かれます。総所得金額が200万円未満の場合は、医療費の合計が総所得金額の5%を超えた場合に控除の対象となります。
医療費控除を受けられるのは、納税者本人と納税者と生計を共にする配偶者や、その他の親族です。妻や子供はもちろん、一緒に住んでいる祖父母などの医療費も対象となります。
高額療養費との違い
医療費控除と似た制度に、高額療養費制度があります。高額療養費制度は、健康保険に加入している人が一定の自己負担額を超えて医療費を支払った場合に、超えた分の払い戻しが受けられる制度です。
医療費控除との違いは、高額療養費制度は加入している健康保険へ申請が必要な点、また対象となるのは月初〜月末の1ヶ月間の医療費が払い戻される点です。どちらも多額の医療費負担を軽減させるための仕組みのため、活用できるか確認しましょう。場合によっては、両方の制度の併用も可能です。
医療費控除の対象になる費用
医療費控除には対象となる費用と、対象とならない費用があります。控除を受けられる費用はどれか、理解をしたうえで申請を行いましょう。医療費控除の対象となる費用は、以下の通りです。
• 病院での診察・治療・入院費用
• 入院時の食事代
• 医薬品の購入
• 出産に関する通院費や診察代
• 重大な病気が発見された時の健康診断費用
• 通院にかかる交通費
• 治療のためのリハビリやマッサージ
• 歯の治療費や歯列矯正費用
• はり師やきゅう師、柔道整復師による施術費用
• 介護保険の対象となる介護費用
医療費に含まれるかどうかは、基本的に診療や治療のために直接必要であるかどうかで判断されます。
セルフメディケーション税制とは
医療費控除の特例として、セルフメディケーション税制があります。セルフメディケーション税制とは医師の処方箋を必要としない、薬局などで購入できる特定の医薬品購入額を、所得控除できる制度です。
健康維持や疫病予防のために一定の取り組みを行う個人が、OTC医薬品(要指導医薬品及び一般医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)の購入費用について、所得控除が受けられます。具体的には、購入費用のうちの1万2,000円を超える部分が所得控除の対象です。
また、個人が行う一定の取り組みについては、健康診査や予防接種、特定健康診査の受診などが含まれます。セルフメディケーション税制の対象となる医薬品には、セルフメディケーションのマークが付いているものがあります。しかし、表示されていない商品があるほか、すべてのOTC医薬品が対象となっているわけではないため、事前に確認しましょう。
医療費控除の対象にならない費用
健康に関する出費でも、医療費控除の対象にならない費用には、以下のようなものが該当します。
• 通院のために使用した自家用車のガソリン代や駐車場代
• 美容整形代
• 健康診断や人間ドッグ
• タクシーでの通院費用
• 予防目的のサプリ購入費用や予防接種代
• 自分都合によるベッド変更の差額
• 親族に支払う療養上の世話のための費用
• 疲れを癒す、体調を整えるなど治療に関係ない費用
原則、病気や怪我の治療に直接関係ないものは、医療費控除の対象外です。ただし、タクシーの通院費については、急を要する場合や公共交通機関が利用できない場合などは、医療費控除の対象となる可能性もあります。状況によって医療費控除の対象となる場合もあるため、費用がどのような扱いになるのか申請前に一度確認しましょう。
医療費控除の申請方法と必要な書類
医療費控除を申請する場合は、確定申告を行います。確定申告は毎年、2月16日〜3月15日までの間に行います。申請する方法は税務署の窓口で直接提出する方法と、e-taxで提出する方法の2つです。e-taxの場合はマイナンバーカードがあれば、スマホからでも提出可能です。
医療費控除に必要な書類は、以下の通りです。
• 医療費の明細書
• 確定申告書
• マイナンバーを確認できる書類
• 医療費の支払いを証明できる領収書やレシート
• 医療通知書
• 源泉徴収票(給与所得者のみ)
医療費控除の明細書は、国税庁のHPからダウンロード可能です。医療通知書のほか、領収書やレシートを基に、必要事項を記入して自身で作成しましょう。確定申告の書類も、国税庁のHPで作成可能です。必要な書類が作成できたら、税務署へ提出します。以前までは領収書やレシートの添付が必要でしたが、現在は必要ありません。あとは還付金の入金があるのを確認するのみです。
医療費控除の計算方法
医療費控除はどのように計算をするのか、気になる人も多いでしょう。以下では、医療費控除の計算方法をご紹介します。
まずは、1年間に支払った医療費の総額を計算します。医療通知書や薬局のもらった領収書などを集めて、医療費を集計しましょう。また、この時に生計を同一とする配偶者や子供にかかった医療費も一緒に集計します。医療費の総額を算出した後に、医療費の控除額を求めます。
医療費控除額は、以下の計算式で求めましょう。
医療費控除額=(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円
基本は10万円を引きますが、その年の総所得額が200万円未満の場合は、その5%の金額を引きます。
医療費控除でいくら戻るのか?
医療費控除で実際にいくらが手元に戻ってくるのでしょうか。医療費控除で受けられる還付金の額は、医療費控除額×所得税率で求められます。所得税率に関しては、以下の早見表をご確認ください。
課税所得金額 | 税率 |
---|---|
1,000円〜1,949,000円 | 5% |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% |
40,000,000円〜 | 45% |
以下で、いくつかのシミュレーションをご紹介しますので、自身の所得などに近いものをご確認ください。
所得が700万円・医療費が20万円の場合
所得が700万円で1年間に支払った医療費の自己負担額が20万円、生命保険料や社会保険料で補填される金額が5万円の場合で、計算してみます。
• 20万円(医療費合計額)-5万円(保険金補填額)=15万円
• 15万円-10万円=5万円
この場合、医療費控除されるのは5万円です。所得が700万円の場合の所得税率は23%のため、5万円×23%で還付金額は11,500円となります。
所得が300万円・医療費が20万円の場合
所得が300万円で1年間に支払った医療費の自己負担額が20万円、生命保険料や社会保険料で補填される金額が6万円の場合で、計算してみます。
• 20万円(医療費合計額)-6万円(保険金補填額)=14万円
• 14万円-10万円=4万円
この場合、医療費控除されるのは4万円です。所得が300万円の場合の所得税率は20%のため、4万円×10%で還付金額は4,000円となります。
所得が150万円・医療費が20万円の場合
所得が150万円で1年間に支払った医療費の自己負担額が20万円、生命保険料や社会保険料で補填される金額が5万円の場合で、計算してみます。
• 20万円(医療費合計額)-5万円(保険金補填額)=15万円
• 15万円-総所得150万円×5%=7.5万円
この場合、医療費控除されるのは7.5万円です。所得が150万円の場合の所得税率は5%のため、7.5万円×5%で還付金額は3,750円となります。
医療費控除を行う際の注意点
医療費控除を利用する際には、注意しておくべき点があります。今回は医療費控除を行う際の注意点を、3つご紹介します。後悔しないように、申請前にぜひご確認ください。
確定申告後も領収書の保存が必要
確定申告によって医療費控除を行った後、使用した領収書を処分しようとする人もいるでしょう。しかし、医療費控除の明細書を提出した後に、明細書の記載内容を確認するために、領収書やレシートの提出を求められる場合があります。
提出や提示を求められるのは、確定申告の期限から5年を経過するまでです。もし、提出を求められてもすぐに対応できるよう、使用した領収書やレシートは5年間保存しましょう。
医療費控除の明細書は分けて記載する必要がある
医療費控除の明細書を記載する際は、「医療費通知に記載された事項」と「医療費の明細」に分けて記載する必要があります。医療費通知がある場合は「医療費通知に記載された事項」の欄に、自己負担額や1年間で発生した医療費などを記載します。
もし、医療費通知がない場合や記載されていない項目について計上する場合は「医療費の明細」に記載が必要です。ただ、医療費控除の対象となる金額を集計するだけではなく、どちらの項目に該当するのかも確認する必要があります。
セルフメディケーション税制とは併用できない
医療費控除の特例である、セルフメディケーション税制と医療費控除は併用できません。セルフメディケーション税制は、健康の保持や疫病の予防に取り組んでいる個人が、OTC医薬品を購入した場合に、一定額に対して所得控除を受けられる制度です。
医療費控除では、健康の保持や予防目的の購入費用などは対象外となります。どちらを利用するか迷った際は、試算を行って、少しでも多くの金額が戻ってくる方を選びましょう。
まとめ
医療費控除の概要や対象となる費用・対象とならない費用などについて、ご紹介しました。医療費控除とは、所得控除の1つで、確定申告を行うと所得税や住民税の控除が受けられる制度です。基本的には、病気や怪我の治療に関する費用について、合計10万円を超えた場合は控除が受けられます。
医療費控除は他の控除とは異なり、年末調整での申請はできません。会社員でも自営業者でも、確定申告での申請が必要です。医療費控除明細書や確定申告書を用意して、毎年2月16日〜3月15日の間に申請しましょう。
医療費控除によって、控除される金額はもちろん、受け取れる還付金の額も所得や自己負担している医療費によって異なります。どのくらい控除されるのか気になる場合は、ぜひ一度計算をしてみましょう。