リスキリングとは?中高年に求められる理由や役立つ資格

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リスキリングとは?中高年に求められる理由や役立つ資格

少子高齢化やDX社会の推進など、さまざまな社会問題によって注目されているリスキリング。社会の急速な進化と発展に対応し、キャリアを継続的に成長させるためには、新しい知識やスキルを身に付ける「リスキリング」がキーワードです。今回は、リスキリングの概要から中高年に求められる理由、おすすめの資格まで具体的に紹介していきます。

この記事の目次

    リスキリングとは

    リスキリングとは、働き方の変化や技術革新に対応するために、業務で役立つスキルや新たな知識を身につけるための取り組みです。

    経済産業省では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

    リカレント教育との違い

    リスキリングとリカレント教育は混同されやすい言葉ですが、仕事と学習を並行するのか、学習に専念するのかが大きく異なる点です。

    リカレント教育は、仕事と学習を繰り返しながらスキルを身に付けることを指し、一度仕事から離れて大学・専門学校などの教育機関で学び直します。リスキリングは、仕事から離れることなく、学習と業務と並行しながら進めます。

    また、リカレント教育は個人が主導ですが、リスキリングは主導が企業であり、戦略的に社員が業務で成果を出し続けるためのスキル獲得を促す学び直しであることも大きな違いです。

    アンラーニングとの違い

    アンラーニングは、現在の価値観や習慣を振り返り、必要性を感じないものを棄却することを言います。アンラーニングの目的は、価値観やスキルの見直しであり、新たな自分にアップデートするための取捨選択です。

    リスキリングの目的は、新たなスキルや知識を習得すること。つまり、「学びの修正」をするのがアンラーニングであり、「レベルアップ」をするのがリスキリングというところに違いがあります。

    しかし、アンラーニングとリスキリングは相反するものではありません。アンラーニングによる取捨選択は、新しいスキルや知識を習得するための余白を作るので、リスキリングの土台になってくれます。

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    リスキリングが中高年に求められる理由

    変化する働き方や技術革新への対応は世代問わず求められます。その中でも、特に中高年に求められる主な理由を紹介します。

    70歳まで就業機会が確保されたから

    平均寿命が伸び、人生100年時代を視野に生活する人が増加しています。そうした時代背景の変化から2021年4月に高齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。

    中高年は勤続年数の長さから、十分な経験や知識は蓄積されていますが、デジタルを中心とした技術革新への対応は、苦手と感じる人も少なくありません。現役で働ける期間が伸びた分、新しい知識やスキルの習得が求められています。

    労働力が不足しているから

    現代の日本では、少子高齢化や転職を当たり前とする働き方の変化などによって労働力不足が問題視されています。労働力が確保できないことによって倒産に陥る企業も出るほど、労働力不足は深刻化しています。

    リスキリングは、そうした労働力不足の企業と現代の救世主として期待されており、企業で活躍する中高年が新しいスキル・知識を身につけることで、少ない労働力でも効率的に業務が回るようになります。

    DXの社会に浸透しているから

    DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用で社会や人々の生活をより良いものへと変革することを言います。世界で推進されるDXですが、日本でも経済産業省がDX社会の実現を掲げ、DXを推進する企業が増加しています。

    そして、企業がDXを実現するためには、一部の部署や若手社員に限らず、現役で働く全社員が新たなスキル・知識を身につけることが必要です。

    国内外でリスキリングが活発化しているから

    世界経済や環境課題の解決に向けた議論を交わす年次総会のダボス会議で、第4次産業革命への対応を目的に「2030年までに10憶人のリスキリングを目指す」と提言されました。以降、国内外でリスキリングが活発化し、国内外の多くの企業が導入しはじめています。

    企業導入例
    大手精密機器メーカーの「Canon」は、新規ビジネスの展開に注力しており、既存事業との融合によって事業領域を切り拓くと意思表示しています。その目標を達成するためには、デジタル技術を持つ社員の増加が急務であると考え、非デジタル人材を対象とするリスキリング推進を開始しました。

    具体的な取り組みとしては、ソフトウェア技術者育成機関の設立や、クラウド研修、AI研修などを実施し、デジタル知識を習得できる環境を提供しています。

    中高年がリスキリングを行うメリット

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    企業がリスキリングを推進することで得られるメリットは多くありますが、企業に所属する中高年にとっても、活躍の幅が広がったり、転職時に有利になったりと、メリットがたくさんあります。どのような利点があるのか、具体的に紹介していきます。

    デジタル化への対応で活躍の幅が広がる

    企業活動のデジタル化が進んだことによって、ビジネスパーソンに求められるスキルは高度になっています。デジタル化が進めば、従来のスキルだけでは変化する時代に対応できなくなったり、仕事の幅が狭くなったりする恐れも。

    リスキリングで新たなスキル・知識の習得をすることは非常に重要で、新たなスキル・知識を学ぶことで活躍の幅が広がります。

    市場価値が高まる

    リスキリングの本来の目的は、スキル・知識の高まりで所属する企業に貢献することですが、個人の転職時に有利になる市場価値の向上も期待できます。

    インターネットを活用したサービス事業を行う企業が実施した「リスキリングに関するアンケート」では、9割以上の経営層・人事担当者が「年齢問わずリスキリングに積極的に取り組むことは、市場価値の向上につながる」と回答しています。

    リスキリングは、特定の企業でしか活かせない業務知識・スキルの習得ではなく、デジタル化・自動化する今後の企業活動に必要なマルチなビジネススキルを身に付けること。人生100年時代に生きる中高年にとって、大きなメリットを実感できるでしょう。

    中高年に求められているスキル

    企業活動において、世代ごとに求められるスキルや立ち回りは異なるもの。中高年に求められているスキルはどのようなものがあるのか考えてみましょう。

    コミュニケーション能力

    世代や職種問わず、コミュニケーション能力はどこの企業でも求められます。コミュニケーション能力とは、対人的な交流における意思疎通や協調性、傾聴力、自己表現能力などを指し、信頼関係を築くために重要なスキルです。

    デジタルスキル

    現代の職場ではデジタルを活用した業務が多く発生しているため、デジタルスキルが求められています。デジタルスキルは、タイピングをはじめとする基本的なコンピュータ操作からExcel・Wordでの文書作成、データ分析、プログラミングなどの高度なスキルまで含みます。

    デジタルスキルの習得を拒んでしまえば、自ずと活躍の幅を狭めることになります。今後も現役での活躍を望む場合は、積極的にデジタルスキルを習得しましょう。デジタルスキルは専門用語を使うものも多数ありますが、さまざまなツールの発達によって挑戦するハードルが低くなり、習得もしやすくなっています。

    プロジェクト管理スキル

    これまでの業務経験や人生での学びを活かして、プロジェクトを基準や目的から外れないように全体を統制するスキルは、中高年が持っておきたいスキルのひとつです。

    プロジェクト管理スキルには、計画立案する力や時間管理能力、リソースの最適化、チームへの気配りなども含まれます。こうしたスキルは新しい職場での信頼獲得や、職場の適応を早めるためにも役立ちます。

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    中高年のリスキリングにおすすめ!役立つ資格6選

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    ここでは、具体的に中高年のリスキリングにおすすめしたい資格を厳選して6つ紹介します。

    MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)

    MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)とは、国際資格のひとつで、WordやExcel、PowerPointなどのマイクロオフィス製品の操作スキルを証明する資格です。若年層から中高年まで幅広い世代が挑戦しており、これまで累計490万人以上(※2023年2月28日時点)の人が受験しています。

    マイクロソフトオフィス製品は、各バージョンで新しい機能が追加・改良されます。そのため、MOSはバージョンごとに試験が受けられるようになっています。MOSを取得することで、ビジネスシーンに必要なパソコンスキルの証明ができ、実用的な能力が身に付くので、中高年のリスキリングにふさわしい資格のひとつです。

    基本情報技術者試験

    基本情報技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)が実施運営する国家資格「情報処理技術者試験」の区分のひとつです。ITエンジニアの登竜門とも言われ、プログラマーやエンジニアなどを志す場合やそうした職業で活躍する人たちのスキル証明になるプログラミング系の資格でもあります。

    「情報処理技術者試験」は、レベルが4段階に設定されていて、基本情報技術者試験はレベル2に該当する比較的チャレンジしやすい資格です。より高いスキルを習得・証明したい場合には「応用情報技術者試験」への挑戦がおすすめ。

    「応用情報技術者試験」は、技術、管理、経営まで幅広い知識と応用力が身に付く資格であり、ITエンジニアとしてのレベルアップを目指す人には最適な資格です。

    ITパスポート

    ITパスポートは、ITの基礎知識があることを証明できる国家資格のひとつです。IT系の国家資格の中では、入門として比較的挑戦しやすく、近年では年間20万人程度が受験している人気の資格でもあります。これまでITスキルに触れてこなかった、これからITスキルを身に付けて行きたいという中高年にリスキリングにおすすめです。

    情報セキュリティマネジメント

    情報セキュリティマネジメントは、ITやインターネットの情報セキュリティに関連する知識を保有していることを示す国家資格です。情報セキュリティマネジメントの計画・運用・評価・改善を通じて、サイバー攻撃などの脅威から組織を守るための基礎スキルを認定します。

    「情報処理技術者試験」の新しい試験区分として誕生し、情報セキュリティに加えて情報管理や業務改善などの分野も学習できます。

    プロジェクトマネージャ試験

    プロジェクトマネージャ試験も国家資格です。システム開発プロジェクトの目的を実現・達成するべく、責任者として現場をまとめ、計画、実行、管理などを担う人を対象としています。とはいえ受験資格はなく、プロジェクトマネージャーの経験の有無も不問。これからプロジェクトマネージャーを目指したいという方でも挑戦できます。

    プロジェクトマネジメントのスキルは、人生100年時代を生きる中高年にとって求められるスキルでもあり、需要のある人材になるための手段でもあります。難易度が高い資格ですが、年収増加やキャリアアップなどにも役立つ資格です。

    ウェブ解析士

    ウェブ解析士資格とは、ウェブ解析やデジタルマーケティングを通じて事業の成果を誘導できることを証明する資格です。「一般社団法人ウェブ解析士協会」が運営する民間資格であり、ウェブ解析を体系的に学べる環境や、スキルの評価基準を設定し、必要な能力や知識が習得できます。

    ウェブ解析士資格で習得できる能力や知識は、Web上の施策効果の改善や、サイト運用・広告運用に関するコンサルなどに役立つので汎用性が高く、多くの業界で需要があります。

    TOEIC

    TOEIC(トーイック)とは、日常生活や国際ビジネスにおいて活用できる英語力を測定するテストです。世界160カ国で実施され、英語コミュニケーション能力を平等に評価するグローバルスタンダードなテストでもあります。

    合否が出る一般的な資格試験とは異なり、スコアで評価されるのが特徴。試験はリーディングとリスニングの2つで構成されており、それぞれ495点、990点満点です。一般的に600点台は旅行業界や航空業界でも通用するレベル、800点以上は専門・ネイティブレベルと評価されています。

    高スコアを獲得することによって、仕事や転職に有利になるだけでなく、海外の人とのコミュニケーションや旅行などのプライベートでも役立ちます。

    中高年のリスキリング学習方法

    リスキリングの方法には、さまざまな種類があります。社内の制度を活用するもよし、外部の研修などを利用するもよし、独学でコツコツやるもよし。どの方法が自分に合うか考えながら参考にしてみてください。

    企業のプログラムで学ぶ

    企業によっては、自社内にさまざまな学習機会を設けているため、研修やオンライン講座など教育プログラムを受けることができます。もし社内に制度がない場合は、外部企業のリスキリング教育プログラムを活用することもできます。

    独学する

    企業のプログラムで学ぶのは気が引けるという場合は、独学でリスキリングするのもひとつです。スマホアプリや参考書オンライン講座など、現代では学習のためのツールやコンテンツがたくさんありますので、上手に活用してみましょう。

    まとめ

    働き方の変化や技術革新に対応するために、業務で役立つスキルや新たな知識を習得するためのリスキリングは、現代を生きる中高年に求められる取り組みです。

    新たな知識を身に付けることによって、需要があり続ける人材となり、働きがいや生きがいにも繋がるでしょう。本記事で解説した内容を参考に、ぜひリスキリングに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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