こんな独立の方法もある!? 最近人気を集める「脱サラ農業」とは
- 独立・起業
- 公開日:2024年11月28日
独立を考えたときに「独立するほどのスキルがない」、「これまで携わってきた仕事で独立が難しい」と、スキルや経験不足に悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、一から始めることができる“脱サラ農業”についてお伝えします。
この記事の目次
現在、脱サラ農業が人気!
皆さんは、脱サラ農業という言葉を聞いたことがありますか?脱サラ農業とは、会社員を辞めて農家に転職し、農業をはじめることです。
農家と聞くと、昔から農業を営んでいる人が代々継いでいったり、大学で農業について専門知識を備えた人が従事するといったイメージが多いかもしれません。ところが、最近では「脱サラ農業」が人気になってきているのです。脱サラして独立したいと考える人にとって"農業"という分野は一から始めることができ、参入しやすいといったメリットがあります。
従来の農業のイメージは「大変」、「稼げない」と思う方もいるでしょう。しかし、近年ではスマート農業などのDX化により身体的負担も少なく、農業で稼ぐことが可能となってきています。(※スマート農業とは、ロボットやコンピューターを利用して行う農業のこと)
農林水産省によれば、令和5年に新規自営農業として就農した人は約3万人。このうち、50歳以上の年代は約2万5,000人と、ミドルシニアやシニア層が8割近い割合を占めています。そんな新規の就農者たちは、会社員だった方が独立して農家に転向している場合が多くあります。
就農した部門別にみてみると、露地野菜作が1,300人と最も多く、次いで果樹作が820人、施設野菜作が620人となっていっているとのことです。世界各国でも、異常気象や人口爆発の観点からも食料自給率をあげることが焦点となっています。そういった意味でも、農業の必要性と需要は今後高まる一方であるため、就農は将来性のある分野だと言えるでしょう。
脱サラをして農業を営みたいと考える人は田舎暮らしに憧れを抱き、都会から離れて暮らしたいと思っている人がほとんどです。また、国税庁によれば日本の平均年収はおよそ430万円。対して、独立農家の平均年収は415万円とその差がほとんどありません。
毎日、満員電車に揺られて生活をするより、広大な自然の中で暮らす方が豊かな人生が送れると、脱サラ農業に魅力を感じている人が多くなっているのです。さらに、田舎で農家を営む場合、都会ほど生活費が必要ではないため、同じくらいの収入でも手元に残るお金は農家の方が多い場合も。
そのような事情からも、スローライフを目指して脱サラ農業に従事する方が増えているのです。最近では、コロナウイルス感染症の影響から会社でもリモートワークが一般的になりました。そんな職場に縛られない働き方が浸透したことで地方に移住しながら本業を続け、副業として農業を行うという選択をする方も増えてきました。
さらに、一人で畑を管理することは金銭的にも労力的にも負担が大きいからと、複数人で一つの農場を管理する"シェア畑"も注目を集めています。また、自分が作った作物で料理をして提供するレストランやカフェなどを運営する農家も多くなってきました。
そういった品物を通販で販売することで大きく収入を増やしている脱サラ農業者もいるため、一から独立する上で就農は、夢の広がる働き方なのです。
データ元:農林水産省「令和5年新規就農者調査結果」
自分に合った農作物を考えるのも魅力の一つ!
一概に農業といってもあらゆる種類や分野があり、脱サラ農業では自分が好きな作物を作ることができます。どういった種類があるのか、見ていきましょう。
稲作
稲作は苗作りから田植え、水田の管理、稲刈りと通年で行うことが多岐にわたります。必要な資格もなく、農地や農作業機械があればすぐにスタートすることができます。日本の主食である米を作ることの意義も感じられるでしょう。費用面で悩んでいる場合は、引退農家から事業継承して稲作を始めるといった選択肢もあるため、気になる方はその土地の農協などに確認してみましょう。
野菜
畑やビニールハウスなどの施設で野菜や豆類、穀物などを栽培します。直売所やスーパーなどで販売されるもの以外にも、家畜に食べさせるための作物や、食品工場で加工される作物などを栽培することも。
果物
果樹栽培は一つの農作物の単価が高い分野です。近年ではシャインマスカットといった高価格かつ需要の高いブランド果実も続々と販売されています。一度植えた木は何年もかけて育てるのが基本で、肥料を施したり、病害虫対策をしたりといった手入れを行いながら育てていきます。
畜産や酪農
牛、豚、羊、鶏などの家畜を飼育して肉や乳などを生産します。動物が主体となる産業のため、病気のリスクや管理状態などを気にしながらの飼育は骨の折れることも少なくありませんが、近年はIT技術の導入によって比較的楽に運営できるようになってきています。また、和牛は国際的な人気を誇り、収入の面に関しても期待が大きく持てるでしょう。
花農家
花農家は、切り花用の花や鉢植え用の花、球根などを育てます。家庭用だけではなく、冠婚葬祭に使われる花や商業施設に飾られる花なども出荷します。収穫と出荷準備、販売・マーケティング活動と、幅広い仕事内容が特徴です。
脱サラ農業のメリットとデメリットとは?
ここで、脱サラ農業のメリットとデメリットをみてまいりましょう。
脱サラ農業のメリット
自然に囲まれた環境で仕事ができる
都会の喧騒を離れ、農業をすることで精神的にゆとりを持ちながら仕事をすることができます。都心でサラリーマンをしていると、満員電車での通勤や仕事に追われるなどストレスはつきものです。しかし、大自然相手に広大な土地で生活することでそんなストレスを感じずに仕事をすることができます。
健康的な生活が送れる
農家として働く場合、身体が資本になることから朝は早く起き、夜は早く寝るという生活を送る人がほとんどです。農家として働けば、身体を動かして日々を送ることになるので必然的に健康的な生活に。
また、会社員と比べると煩わしい人間関係も少ないため、ストレスを抱えずに生活することができます。そして、食べ物に関しても近所の農家の方が作った作物や地域で地産地消することが多いので、食生活自体が健康的なものになります。
作物を育てる喜びと将来性
スーパーで買った作物よりも自身が丹精込めて育てた作物を、新鮮なうちに食べられることは幸せなことでしょう。また、日本の食文化はいまや世界中でブームになっています。日本食はおいしくてヘルシーで安心・安全と、世界中から注目が集まっているため、農家としても今後市場の拡大が見込めます。
自分のペースで働ける
農業は個人事業です。働く時間や日数を自分で決めることができます。もちろん、生き物相手なので苦労することもありますが、収穫が終わってしまえば残りの期間は仕事をしないという選択肢も。裁量が大きいため、自分のペースで働きたい方に見合った職種だといえます。
収入の上限がない
会社員として勤めていると、転職でもしない限りなかなか収入を上げるのは難しいでしょう。しかし、農家として働く場合には収入に上限はありません。人によっては年収が3,000万円だという農家の方も珍しくありません。このように、就農では収入に上限がないため、工夫次第で多くの報酬を得ることができるでしょう。
脱サラ農業のデメリット
天候や世界情勢に左右される
会社員なら毎月決まった収入を得ることができる一方、農業は個人事業主です。そのため、作物の質や市場の状況によって収入が左右することがあります。資材の高騰や電力の値上げで利率が低くなってしまうことも。
さらに、天候によっては不作になってしまうこともあり、収入を満足に得られない事態に陥ってしまう恐れもあります。このように、天候といった自然が相手になる農業は人知が及ばないことも多いため、安定しない職業だとも言えます。
体力や根気が必要になる
農業は体力も知力も必要になります。一から始められるといっても必要な知識は膨大ですし、農家としては経験も大切になるため、一人前になるまではある程度の時間が必要だと言えるでしょう。また、作るだけではなく、売るといったマーケティング知識も必要となるため、学びの範囲が多いのも特徴です。
脱サラ農業を成功させるポイントとは?
では、脱サラ農業を成功させるポイントをまとめていきます。
経営として農業を見つめる
栽培作物の選択は、事業を運営していく上でも重要になります。農業参入をする際には、マーケティング視点での市場調査とターゲット分析を行い、栽培作物を決めることが大切になります。
持続的に収益をあげるためには栽培作物はこれでいいのか、コストと初期費用は見合っているのかといった経営観点をしっかりと持っていないと脱サラ農業としてせっかくスタートしても立ち行かなくなってしまうことも。売上と、栽培にかかる運営費などを経営的視点で計画することが課題の一つになります。
ブランド化を図る
小規模な栽培でも、作物に高付加価値をつけてブランド化することで単価をあげることが可能になります。SNSやホームページの充実も、昨今の農家にとっては必要不可欠な運営アイテムでしょう。また、最近では農業見学ツアーや収穫体験などイベントを通してファンづくりを強化してブランディング化を図ることも重要なポイントになります。
多角的な農業を行う
自ら栽培した作物を使って加工・製造した商品を販売することを、6次産業化といいます。近年はこの6次産業化を通してレストランを運営し、自ら作った農作物を料理にして提供するなど、農業生産だけでない多角的な農業を行うことも大切になってきています。
スマート農業を活用する
先端技術を取り入れた「スマート農業」の導入は、農業の効率化を図ることができます。最近では、環境制御システムによるビニールハウスの環境管理といったスマート農業の活用が進んでいます。スマート農業を取り入れることで担い手不足を補ったり、少しの労力で収穫を増やしたりできるため、今後ますます農家に取り入れられていくと思われます。
脱サラ農業として独立する前に考えるべきこと
脱サラ農業を今後やっていきたいと思われる人はまず、独立前に農業法人で働いて経験を積むことをおすすめします。農業は、天候など人が抗えないことも存在します。独立する前に農業の実務を経験することで、自分に合っているのか合っていないのかを見極めることができるでしょう。
また、農家として失敗してしまうケースには、初期段階から設備や農業機械などに高額の投資を行ってしまい、想定していた収益を上げられず資金繰りに困るといった点があります。農業分野へ参入するのなら、始めは資金を抑えながらスタートし、軌道に乗ってから投資額を大きくしていくといった方がリスクを減らすことができるでしょう。
さらに、農業次世代人材投資資金や農業次世代人材投資資金といった補助金を活用しながら行えば、自己資金をあまりかけずに農業を始められます。独立就農に向けた準備期間や独立就農後の経済的な不安をある程度解消できるため、こうした補助金の活用は脱サラ農業への背中を押すきっかけとなってくれます。
まとめ
農業は、今後も需要が見込まれる成長産業です。独立したいと悩んでいる方にとって脱サラ農業は一から独立でき、大自然の中でセカンドキャリアを叶え、自分らしく生きることに繋がる方法の一つになるかもしれません。