フリーランスは今やボーダレスな働き方! フリーランスとして海外で働くことはできる?
- 独立・起業
- 公開日:2024年8月29日
働き方が流動的になってきたと言われる日本で、注目されるフリーランス。本日は、フリーランスとして場所を選ばず働けるのかをワールドワイドな視点でお届けします。
この記事の目次
世界に見る、フリーランスという働き方
日本ではこの数年でフリーランスという働き方が認知され、その人口も徐々に増えています。総務省によれば、2023年に本業がフリーランスである人の数はおよそ210万人で、職に就いている人全体では約3%の割合だといいます。
また、専業のフリーランスだけではなく副業のフリーランスも含めると日本のフリーランス人口は1,500万人にのぼるといいますから、この数字からもフリーランスとして活躍している人は増えていることがわかります。
このように、フリーランスという働き方が認められてきた日本ですが、世界的に見ればまだその数は少ない印象です。フリーランス大国と呼ばれるアメリカでは、日本と違い終身雇用制度はありません。一度就職しても長く勤めようという概念がそもそも存在しないため、会社に入っても数年でジョブチェンジを考えたり、最終的には独立したりと、組織に頼らずに働く人が多いのです。
そんなアメリカでは3人に1人はフリーランスと言われているほど、フリーランスという働き方が定着しています。さらに、専門的なスキルを持っていることが重視される傾向があるため、エンジニアや翻訳といった専門性がある職種でフリーランスとして独立する人が多いようです。
企業としても、自社の社員を一から育てるよりも、専門性の高いフリーランスと雇用関係を結ぶことに大きなメリットを感じているといいます。また、そんなフリーランスが多く活躍するニューヨーク市では、フリーランスの労働環境を守ろうと2016年に「フリーランス賃金条例」が定められました。
これは、報酬が800(※日本円で13万円ほど)ドル以上の場合には書面による契約を義務付けるというものです。これにより、よりフリーランスが働きやすい社会の実現が加速したといいます。日本でも2023年に「フリーランス新法」が可決されましたが、アメリカの法整備が日本より先であることからも、アメリカでのフリーランスの活躍の多さが窺い知ることができます。
他の国を見てみても、イギリスではフリーランスとして働く人は人口の10%にあたるおよそ190万人、インドでは1,500万人以上のフリーランスが活躍しているといいます。世界各国でも日本と同様に、ITに特化したウェブデザインやソフトウェア開発の分野で独立して働いている人が多いようです。
※データ元:総務省「基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方 ~令和4年就業構造基本調査の結果から~」
日本で働くフリーランスと海外で働くフリーランスの違いとは?
では、ここで日本におけるフリーランスの実態を掴んでみましょう。
まずは、労働時間についてです。フリーランス協会によると、フリーランス全体の3割に当たる人たちが月に140~200時間働いていることがわかりました。一般的に日本で会社員として働く場合の労働時間は1日8時間であることが多いので、月に換算すると160時間程度です。つまり、フリーランスになってからも会社員と同じくらいの労働時間であることがわかります。
次に報酬面です。年収は200~400万円が全体の30%を占め、続いて400~600万円の間の層が15%ほどで推移しています。また、年収1,000万円を超える人は全体の1割にも満たないことが明らかになりました。日本人の年収の平均値は458万円で、男性の平均年収は563万円、女性の平均年収は314万円といいますから、サラリーマンでもフリーランスでもあまり収入に変化がないように見受けられます。
では、海外のフリーランスたちはどうでしょうか。ある調査によると、180ヶ国のフリーランサーの平均労働時間は週36時間で、平均年収はおよそ410万円ほどだといいます。これは1日に7時間ちょっと働く計算になるため、日本より海外で働くフリーランスの方が効率よく収益を上げていることになります。
なお、フリーランス大国のアメリカでは約415~700万円ほど。また、アメリカには年収が1,000万円を超える職種が多くありますので、フリーランスとしても稼いでいる人が日本よりも多く存在するのが現実でしょう。
※データ元:フリーランス協会「フリーランス白書2024」、国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
海外でフリーランスとして働くことは可能?
では、日本人が海外でフリーランスとして働くことは可能なのでしょうか。円安の今、海外で働くことができれば収入を大幅にアップさせることができるかもしれません。それに、働く場所を選ばないとされているフリーランスでしたら、海外で働ける可能性も大いにあると考えられます。
それでは具体的に、海外でフリーランスとして働くためのポイントをみていきましょう。
まず、考えなくてならないのがビザです。基本的には就業ビザを取得しなければ仕事ができない恐れがあります。
さらに、ビザが取得できたとしても収入を得たら考えなくてはならないのが税金の問題です。日本では国内に1年以上居所を有する者と定義されているため、該当する人は日本で税金を支払う義務を負います。一方、海外に1年以上滞在する場合は非居住者となるため、滞在国での税制にしたがって納税が必要なる場合があります。予め、滞在先の税制度を確認するようにしましょう。
また、フリーランスとして移住先を選ぶにはいくつかの要件を備えておくべきかもしれません。英語圏であるとか、日本から近いといったことも働きやすさとしては重要ですが、その中でも特に治安がいいところで働くことは大切なポイントになるでしょう。
仮に治安が悪い国では、薬の蔓延、強盗や殺人といった犯罪が頻繁に起こる恐れがあります。せっかく海外で働けることになったのはいいけれど、命を落としてしまう危険性が常に隣り合わせの国では安全に過ごすことができません。治安についてよく調査をしてからその国に行くようにしましょう。
海外で活躍できる職種とは?
海外でフリーランスとして活躍できる職種にはどのようなものがあるのでしょうか。
・エンジニア
プログラミングなどを行うエンジニアは需要があるため、海外でもフリーランスとして働きやすいといえます。日本でもIT分野の人材が不足していますが、海外でも状況は似ているとのことです。働き方は自宅など好きな場所で作業できる請負の案件と、クライアントのオフィスに常駐する準委任の2種類のタイプがあります。
・ライター
日本語の文章を書く仕事は、ニュアンスや言い回しなど細かい点を理解していないとできないため、日本人でなければ難しい側面があります。そのため、日本語を用いるライターなどは海外で需要のある職種でしょう。
クラウドソーシングサービスで仕事を見つけることができ、営業がしやすいのも特徴です。また、パソコンが一つあればクライアントとのやり取りや納品までできてしまうため、フリーランス初心者にもおすすめできる職種です。
・Webデザイナー
Webデザイナーも海外で必要とされている職種でしょう。日本でもそうですが、海外でもHPのレイアウトやパンフレットの制作といった需要は増える一方です。PhotoshopやIllustrator、Sketchといったソフトが使いこなせれば、海外でもフリーランスとして活躍することができます。
また、日本よりも海外でWebデザイナーとして働く方が収入が高いといったデータもあるため、スキルがある人にとっては海外で働くメリットが多いでしょう。
・通訳
現地の言葉を日本語に翻訳する仕事などはすぐに働くことができる職種の一つです。また、通訳の仕事は現地のマナーや価値観を学ぶ上で役に立つでしょう。
海外での生活が始まると友人と作ったり、コミュニティに参加したりすることが苦手で孤独に陥ってしまうという方も。そういった場合にも人と話し、コミュニケーションを取ることのできる通訳の仕事を通じて、現地での生活に慣れやすいでしょう。
・動画編集者
近年のSNSの高まりで動画コンテンツを配信できるサービスが増加しています。ですから海外でも動画編集者として仕事を担っていくことは、常に案件がある需要の高い仕事をしていけるということでもあります。
また、海外にいながらも日本の仕事もすることができるため、収入が安定するまでは日本での仕事をメインにしながら、徐々に現地での仕事の比重を増やしていけるといったバランスがいい働き方ができるでしょう。
・日本語講師
日本語を教える日本語教師も海外でフリーランスとして働く職種としてはおすすめです。日本人であることを活かせますし、何より海外では今、日本食がブームとなっています。そんな増えつつある日本食レストランで日本語を教える講師として働くこともできるでしょう。
日本語教師の資格を持っていれば採用面では強みになりますが、資格がなくても働くことができる現地法人が多いとのこと。ネット上で開くオンライン塾の講師としてzoomやSkypeを利用して家にいるだけでお金を稼ぐことも可能です。
案件を獲得する方法とは?
海外で仕事を獲得する方法としては知人からの紹介に頼ったり、SNSでの情報を発信などがあります。また、最近ではフリーランス向けエージェントのサポートが充実していたり、専用のプラットフォームを活用したりすることで、案件獲得に繋げている現地の日本人フリーランスが多いようです。
比較的取得ハードルの低いノマドビザとは?
海外でフリーランスとして働くためにはビザが必要になることは先ほど触れました。しかしながらビザの申請や取得は大きなハードルがあることも多く、すぐに働き始めたいという方にとっては不都合でしょう。
しかし、比較的誰でも申請でき、取得ハードルがそこまで高くない、いわゆる"ノマドビザ"というものが存在します。例えば、ノマドビザではほとんどのビザ取得の要件に必要な現地企業や学校、婚姻などの内容がマストではないため、いきなりその土地で働きたいと思っている人にも取得しやすいのです。
以下に、ノマドビザがある国をいくつか紹介していきます。
・マレーシア
2022年10月より「DE Rantau Foreign Digital Nomad」という外国人のデジタルノマド民向けのビザができ、フリーランスにも対応可能です。期間は初めに1年間あり、延長すれば最大2年の間滞在することができます。
収入条件が設けられていますが、マレーシア国外からの雇用契約あるいは外注の請負が3ヶ月以上あり、約360万円の年収があればオンライン上で簡単に申請することができるのだそうです。
・タイ
タイでも2022年より「LTR(Long Term Resident)」という長期滞在ビザが誕生しました。
外国企業に勤める方が対象で最大10年間滞在することができるビザです。最初に5年間の取得後、さらに5年間の延長ができます。
必要な条件は過去10年間に現在の仕事関連で5年以上の実務経験があることや勤める会社の売上が225億円、過去2年間での個人年収がおよそ1200万円といった厳しめの要件が課されています。
・ドイツ
「フリーランスビザ」が設けられており、初めに3ヶ月、最長で3年間の滞在が可能です。必要な条件は滞在する州によって異なるとのことで、現地での面接も必要とされています。
・フランス
芸能人も多く移住するフランスでは「ビジタービザ」があります。必要な物としてはなぜフランスに滞在したいかといった動機書や、フランスで生活できる資金があるかを証明する経済証明書などがあります。ビザ取得の費用は日本円で15,000円ほどと、比較的簡単に取ることができるビザの一つでしょう。
・ドバイ
2021年より「Work Remotely from Dubai」というビザが始まりました。このビザで1年間の滞在が可能になるだけでなく、所得税や住民税もかからないそうです。必要なのは、最低50万円ほどの収入や過去3か月間の銀行取引明細、また健康保険への加入といった要件になります。
※データ元:外務省「海外渡航・滞在」
まとめ
インターネットの普及や交通の発達によりボーダレス化が進む世界。意思さえあれば、フリーランスとして日本だけに囚われずに働くことも可能になりつつあります。人生は一度きりです。場所に縛られずに働けるフリーランスという生き方を選び、海外で活躍するのも唯意義かもしれませんね。