65歳になっても年金が受け取れない?年金をもらえる条件や受け取る方法をご紹介
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2024年11月20日
国民年金保険は、20歳から60歳未満までの人に加入義務がある制度です。原則65歳になると受給ができますが、場合によっては受給年齢に達しても受け取れないことがあります。今回は、年金制度の基本から受給要件について、年金を受け取るためのポイントなどをご紹介します。
この記事の目次
年金の基本を確認する
日本の年金制度は3階建てとされており、それぞれに対象となる人や期間などが異なります。1階部分は国民年金、2階は厚生年金、3階は私的な年金です。
国民年金
年金制度の1階部分である国民年金は、満20歳以上60歳未満までの全国民が加入する年金です。被保険者は3つに分けられ、納付する方法が異なります。
被保険者 | 対象者 | 納付方法 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 学生・農業者・自営業者・無職の人 | 自身で行う |
第2号被保険者 | 会社員・公務員 | 会社を通して行う |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 | 保険料の負担はなし |
参照元:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
保険料は定額となっており、給与に応じて変動することはありません。受給開始は原則65歳からで、必要に応じて繰り下げや繰り上げての受給が可能です。公的年金には障害年金や、遺族年金が含まれています。
障害年金
障害年金は病気や怪我によって、仕事や日常生活に影響がある人が年齢に関係なく受け取れる年金です。障害年金は2つあり、最初に診断された際に国民年金に加入していた際は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金となります。
障害年金を受け取る人は、国民年金保険料が免除となります。障害厚生年金に該当するよりも、軽い障害が残った場合は障害手当金の利用が可能です。どちらも受給には条件が設けられており、以下の2つを満たしている必要があります。
1. 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間で、保険料が納付または免除されている
2. 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がない
参照元:日本年金機構「障害年金」
遺族年金
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者、または被保険者だった人が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあり、亡くなった人の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。遺族基礎年金は子のある配偶者と子、遺族厚生年金は子がない配偶者でも受け取りができるなど、条件に違いがあるため確認が必要です。
参照元:日本年金機構「遺族年金」
厚生年金
厚生年金は年金制度の2階部分にあたり、会社員や公務員を対象に国民年金へ上乗せして給付をする制度です。厚生年金保険に加入している会社で、常時雇用されている70歳未満の人は国籍や性別などに関係なく、厚生年金の被保険者になります。保険料は給与に応じて変わり、会社側と折半して支払います。また、受給額も報酬額と加入期間に応じて変わります。
私的年金
3階部分の私的年金は国が用意しているものではなく、自身で用意をするものを指します。企業が運営する企業年金や個人で任意加入するものが、私的年金に該当します。公的年金に上乗せして支給されるため、老後の資金対策として加入している人もいるでしょう。
年金の受給要件は65歳以上だけではない
公的年金の受給要件は原則65歳以上ですが、受給をするためには年齢だけではなく、10年以上の受給資格期間が必要です。受給資格期間が10年にならない場合は、65歳となっても年金の受け取りはできません。
受給資格期間は国民年金の年金保険料を納付した期間を指しており、納付を免除や猶予を申請していた期間も含まれます。また、国民年金が任意加入だった期間に加入していなかった場合、その期間を合算対象期間とし、受給資格期間に計算します。
しかし、月数は入れられますが年金額には影響しないため、合算対象期間や保険料免除の期間が長いと、その分年金支給額は少なくなる点は知っておきましょう。合算対象期間に該当する可能性があるのは、以下の期間がある人です。
1. 昭和61年(1986年)3月以前に会社員の配偶者だった期間
2. 昭和36年(1961年)4月から平成3年(1991年)3月までの学生期間
3. 外国在住期間
4. 国民年金に任意加入したが滞納した期間
5. 厚生年金で脱退手当金をもらった期間
6. 遺族年金を受給中の期間
7. 配偶者が老齢年金を受給中の期間
参照元:国民年金機構「合算対象期間」
配偶者と現在離婚していても、該当期間に婚姻していた場合は合算対象期間となる可能性があります。また、学生期間は夜間や通信制は対象外です。
老齢厚生年金が支給されない場合もある
会社員や公務員として勤めている人は、65歳になっても厚生年金が支給されない場合があります。65歳になっても厚生年金に加入しながら会社で働き続けている人は、収入額に応じて老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となるためです。
具体的には、老齢厚生年金の1ヶ月の受給額と会社から得ている月額収入相当額の合計が、47万円を超える場合に、47万円を超えた分の2分の1が減額となる仕組みです。老齢厚生年金が減額または支給停止となっても、国民年金から支給される老齢基礎年金は減額されません。
年金を受け取るために気を付けるべきポイント
受給開始年齢となった時に予定通りの額を受け取るためには、気をつけておくべきポイントがあります。
ねんきん定期便の確認を忘れない
ねんきん定期便では将来受け取れる、おおよその年金額を確認できます。50歳未満は、これまでの加入実績に応じて受け取れる年金額。50歳以上65歳未満は、現在の加入条件が60歳まで続いた際の老齢年金の見込み額がわかります。ねんきん定期便を確認して、受け取れる額の詳細を随時確認しましょう。
納付忘れをしないような仕組みを作る
会社員や公務員の人は給与から天引きされるため問題ありませんが、自営業者や農業者は自身で納付をするために、納付忘れが起こる可能性があります。納付書を使用して金融機関で直接納める場合、期間内に納めないと未納となってしまいます。納付忘れをする可能性がある場合は、口座振替やクレジットカードでの納付に切り替えるなど、忘れないような仕組みを作りましょう。
年金を受け取るための対処法
年金を受け取るためには、いくつかの対処法があります。いざ受給年齢になった際に、受け取れないとならないよう、事前に確認しましょう。
受給資格期間を増やす
受給資格期間が10年に満たない場合は、受給資格期間を増やしましょう。
60歳までに老齢基礎年金の受給資格が得られなかった場合は、国民年金の任意加入制度を活用して、受給資格期間を増やせます。
60歳〜65歳までの間に保険料を納めて、受給資格期間を満たせば、その後老齢基礎年金を受け取れます。任意加入の条件は、以下の通りです。
• 日本国内在住の60歳〜65歳
• 老齢基礎年金の繰り上げ受給をしていない
• 60歳までの国民年金保険料の納付月数が480月(40年)未満
• 厚生年金に加入していない
受給資格期間が足りない場合は、任意加入によって資格を得ましょう。
保険料免除や納付猶予制度を活用
収入の減少や失業などで、国民年金保険の支払いが難しい人は、保険料免除や納付猶予制度の活用が可能です。免除される額は全額・4分の3・半額・4分の1の4種類があります。納付猶予制度は、20歳以上50歳未満の人で、本人または配偶者の前年所得が一定額以下の場合に、本人が申請後に承認されると保険料の納付が猶予されます。
保険料免除や納付猶予制度を活用した期間も、受給資格期間に加算されるため、支払いが難しくなった場合は放置せずに、どちらかの制度を申請しましょう。
追納を行う
免除や猶予を受けた期間は受給資格期間に加算されますが、年金額には影響しないため、免除や猶予期間が長いほど年金額は少なくなります。少しでも受給する年金額を増やしたいと考えている人は、追納を行いましょう。追納ができるのは追納が承認された月の、前10年以内の免除や猶予期間分のみです。
厚生年金に加入して60歳以降も働く
受給資格期間を増やす手段として、60歳以降も厚生年金に加入する方法があります。厚生年金は70歳まで加入できるため、60歳から70歳まで加入すれば、その分受給資格を増やせます。ただし、厚生年金加入者は国民年金の任意加入ができないため、国民年金の増額はできません。あくまで、厚生年金の年金額のみが増加します。
不安があるなら公的年金以外の資産を用意する
公的年金の支給額に不安がある場合は、個人で老後の資産を用意しましょう。貯蓄をする以外にも、老後向けの商品を活用して、年金以外の資金を用意できます。
貯蓄
1番手軽に始められる資金対策が、貯蓄です。毎月一定額を給与から天引きしておくと、継続して貯蓄ができます。1つの金融機関で1,000万円までは元本が保証されているため、ほかの投資のように元本割れするリスクが低い点は魅力的です。
お金を金融機関に預けておけば利息が付与されるため、お金が増えていきます。しかし、利息は少額のため、基本的には預けている利息でお金が大きく増えることはありません。また、貯蓄をする際は家計の見直しもセットで行いましょう。普段の収入と支出を見直して無駄を省くと、より多くの額を貯蓄へと回せます。
iDeCo
個人で年金を用意するならば、個人型確定拠出年金と呼ばれるiDeCoを検討しましょう。掛金を積み立てて運用し、その運用益を年金として60歳以降に受け取れる仕組みです。加入は満20〜65歳までで、60歳以降に加入した場合は加入から5年を経過した日から受給可能です。
iDeCoのメリットは掛金が全額所得控除の対象となる、運用益が非課税で再投資されるといった点です。反対に60歳になるまでは引き出せない点や、元本割れのリスクがあるといったデメリットも存在します。
個人年金保険
個人年金保険は保険と年金がセットになったもので、保険契約中に保険金給付に該当することが起きた場合は保険金が受け取れます。問題なく満期を迎えた場合は、一定金額を数年間年金形式で受け取りが可能です。年金の受け取り方法によって、確定年金・有期年金・終身年金の3つに分類されます。
個人年金保険に加入している場合は個人年金保険料控除として、所得税や住民税の優遇を受けられる可能性があります。ただし、途中で保険を解約した場合、解約返戻金が支払った保険料よりも下回る可能性がある点はデメリットです。
まとめ
原則65歳になると国民年金を受給できますが、場合によっては受給できないこともあります。特に受給資格期間が10年未満の場合は、受給年齢になっても支給されません。受給資格期間は、保険料の免除や猶予制度を利用していても期間に含まれるため、まずは受給資格の得られる10年以上となるように目指しましょう。
もし、受給資格期間が足りない場合は、60歳以降の任意加入や保険料免除などの活用がおすすめです。また、追納を行うと受け取れる年金額が増えるため、自身の加入状況を確認しながら必要な対応を行いましょう。