【2024年10月】社会保険適用枠拡大による年収106万円・130万円の壁に影響はある?
- ちょっと得する知識
- 公開日:2024年9月20日
2024年10月からの社会保険適用拡大により、扶養を外れる方が増えると見込まれています。今回は、年収の壁から社会保険の適用要件変更による影響、社会保険に加入するメリット・デメリットをご紹介します。また、社会保険料によって手取りが減っても、将来に備えられる資産形成や節税についても解説します。
この記事の目次
年収の壁について
まずは、年収の壁について再確認しましょう。年収の壁は、106万円や130万円などの種類があり、税金や社会保険の支払いに関するボーダーラインとなります。
106万円の壁
106万円の壁は、社会保険料が発生するボーダーラインです。年収が106万円を超えていて、以下の条件を満たした場合に、配偶者の扶養から外れて社会保険に加入することになります。
年収が106万円を超えていても、条件を満たしていない場合は社会保険の加入は必要ありません。
• 従業員が101人以上(2024年10月から要件が変更になります。詳しくは後述します)
• 週の所定労働時間が20時間以上
• 月額賃金が88,000円以上
• 2ヶ月を超える雇用の見込み
• 学生ではない
130万円の壁
130万円の壁も社会保険への加入のラインですが、106万円のような細かい条件はありません。年収が130万円を超えた時点で、配偶者の扶養から外れて社会保険への加入が必要です。
社会保険の適用要件変更による影響
2024年10月より、社会保険の適用要件が変更されます。適用要件の変更によって、年収106万円を超えた際の条件が、以下のようになります。
• 従業員が51人以上
• 週の所定労働時間が20時間以上
• 月額賃金が88,000円以上
• 2ヶ月を超える雇用の見込み
• 学生ではない
今までは従業員数が101人未満だったため加入条件に該当していなかった人も、社会保険の加入が必要となる場合があるでしょう。また、2025年以降には事業所の従業員数の制限をなくし、年収106万円を超えた時点で社会保険の加入を義務付ける可能性も。
社会保険への加入条件が広大すると、家計への負担が大きくなると考えられます。もし、夫婦2人で暮らしていて月のパート代が88,000円だった場合、社会保険料は月25,000円。保険料は事業主と折半するため、月12,500円、年間で15万円です。
社会保険の適用要件拡大への対応策
社会保険に加入すると、保険料が給与から天引きされるため、手取りが今までよりも減る可能性が高いです。その結果、年収調整のために働き控えをする方も増えてくるでしょう。政府は働き控えをする人への対策として、以下の施策を用意しています。
社会保険適用促進手当
社会保険の適用によって手取りが減少しないように、企業が支給できる手当です。給与や賞与とは別に社会保険適用促進手当が支給されることで、社会保険料分を補うことができます。本人の保険料相当額を上限として、最大2年間は保険料の算定に考慮されません。
130万円超えても扶養に入れる
年収が130万円を超えると、社会保険への加入は必須です。しかし、130万円を超えた理由が一時的なものであると認められると、扶養を継続できるという措置が用意されています。
例えば、繁忙期に残業が増えた、人手不足により一時的に勤務時間が増えた、などの理由で収入が増えた場合です。事業主が一時的であると証明すれば、扶養を継続できます。ただし、いつまでの措置であるのかなどの詳細は決まっていないため、今後変更される可能性があります。
参照元:「年収の壁・支援強化パッケージ」 厚生労働省
社会保険に加入するメリット・デメリット
社会保険の加入によって手取りが減少するため、加入しない方向で考えている人もいるでしょう。しかし、社会保険の加入には当然メリットもあります。以下では、社会保険に加入するメリット・デメリットを簡単にご紹介します。
社会保険加入によるメリット
• 厚生年金によって将来の年金額のアップ
• 病気や出産時の手当支給
• 遺族年金などの金額アップ
• 130万円の壁を気にせずに働ける
社会保険加入によるデメリット
• 手取りが減る可能性がある
• 元々加入していた健康保険より、付加給付が少ない
• 保険料負担率が高くなる
もし、事業主から手取り減少分の負担がなかった場合、今までと同じ勤務時間で働くと手取りは減少します。また、場合によっては元々加入していた健康保険の方がよかったとなる可能性もあるでしょう。
しかし、全体を見ると社会保険に加入する方が、将来受けられる保障が充実しており、安心して働けるといえるでしょう。
手取りが減ったらまず家計を見直そう
社会保険の加入によって手取りが減ってしまった際は、労働時間の調整はもちろん、家計の見直しを行いましょう。家計の見直しで無駄な出費を抑えてから、生活に必要な金額を増やす方向にすると、明確な目標に持って働けます。家計を見直す際は、まず以下のポイントから確認します。
• 水道光熱費
• スマホやインターネットの利用料
• 生命保険料
• サブスク代
• 自動車保険
現在利用しているサービスの金額と内容を把握し、同じような内容でより低額のものはないか探しましょう。また、サブスクリプションサービスや保険などは、似た内容のものを複数契約していないかを確認します。もし、似たものをいくつも契約していた場合は、内容を比較して極力絞りましょう。
月の収入と出費を把握したら、現在の収入に対してどの程度不足があるのかを把握します。不足額に対して、今後の方針を決めましょう。収入を増やす・節税・資産運用など、自身の目標に合った方法を取り入れます。
ミドルシニアにもおすすめの資産形成・節税方法
手取りが減ったけれど、将来のためのお金を準備したい方に向けて、ミドルシニアにおすすめの資産形成や節税方法をご紹介します。継続していけば、将来的に世帯全体の所得を増やすことにつながります。自身の目的に合わせて、無理のない範囲で取り組みましょう。
iDeCo
iDeCoは個人型確定拠出年金のことで、将来受け取る国民年金以外に、自分で用意をする年金制度です。毎月の掛金を自身で運用して、将来のお金を積み立てます。60歳を迎えるまでは引き出せないため、強制的に老後の資金を貯められます。
iDeCoの掛金は所得控除の対象となるため、所得税と住民税の負担軽減が可能です。毎月1万円をiDeCoで積み立てた場合、年間で12万円が所得控除の対象です。所得控除を受ける際は、年末調整を行いましょう。なお、iDeCoの運用益は非課税となるため、どんどん将来のお金を増やしていけます。
NISA
NISAは少額投資非課税制度のことで、投資信託などの金融商品で得た利益が非課税になる制度です。NISAを非課税で投資ができる金額は、1,800万円となっています。また、成長投資枠とつみたて投資枠の2つがあり、年間最大で360万円まで投資ができます。
成長投資枠は購入商品や運用できる金額の自由度が高く、大きな金額を掛けられる人に、つみたて投資枠はより長期的な運用を目指す人に向いています。
ふるさと納税
ふるさと納税は各自治体へ寄付を行い、そのうちの2,000円を超える部分は所得税や住民税から控除される制度です。寄付を行った自治体から返礼品を受け取れるため、人気の方法です。納税できる金額は家族構成や年収、その他の控除の有無によって異なります。
会社員であれば、ふるさと納税を行う自治体の数が年間5団体以内の場合、確定申告不要で利用可能です。納税をしつつ、返礼品でお得に生活を送りたい人にはおすすめの制度です。
投資信託
投資信託は、投資家から集めたお金を大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品です。運用成果は、投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。少額から投資ができるほか、運用は専門家が行うため、投資初心者の人でも利用しやすいのが魅力です。
また、毎月一定額で購入できる商品を買い付けて積み立てられるため、一括で購入するよりも価格変動のリスクを抑えた運用もできます。一度申し込みをすると毎月自動で積み立てをするため、継続しやすくいくら分買うかと悩まずに済みます。
ただし、運用益や普通分配金の収益に対して、20.315%の税金が発生します。また、手数料が購入時や保有する際に発生するため、少しでも手元に残るお金を多くしたい人には向きません。非課税で運用したい場合は、NISAを検討しましょう。
株式投資
株式投資は、企業が事業資金を集めるために発行した株式を購入し、配当金や株主優待の権利を受け取れる制度です。株主は、企業に出資する対価として、株主総会で議決する権利なども得られます。基本的に株価が安い時に購入し、値上がりした時に売却すると差額分が利益になります。
ただし、日々株価は変動しているため、大幅に値下がりするリスクがあり、元本を大幅に割れる場合もあるでしょう。また、発行者が破綻した場合は投資資金を失う場合もあります。多額の利益を狙うなら株式の売買を、少額かつコツコツとお金を増やすなら企業からの配当金や優待受け取れる銘柄をメインに決めましょう。
資産形成は長期かつ分散と積立が重要
社会保険の適用要件変更の影響で手取りが減ってしまい、資産形成や節税に取り組む際は、焦らずに自分のペースを守って行いましょう。投資で利益を得るための基本的な考え方は、長期・分散・積立です。長期投資であればじっくりと資産形成ができるため、リターンの振れ幅を平均化できます。
投資は、1つの商品のみに絞ると、値下がりした際の損失が大きくなります。分散投資をすると、特徴の異なるいくつかの商品の保有しているため、市場の暴落に対するリスクを抑えます。積立投資は投資のタイミングをずらせるほか、資産を少しずつ増やせるため、結果的に相場が高い時と低い時の両方で投資商品の購入が可能です。
まとめ
社会保険の適用要件変更による年収の壁や、家庭への影響についてご紹介しました。現在の106万円の壁の条件は、2024年10月に変更となり、適用対象の範囲が広がります。社会保険料の負担が増加するため、今後手取りが従来よりも減る人も出てくるでしょう。
しかし、社会保険への加入は将来的な年金額増などのメリットもあるほか、働き控えをしなくても手取りが減らない施策が用意されています。総合的に考えて今後の働き方を検討してみましょう。
もし、手取りが減ってしまった場合は、家計の見直しと資産形成や節税方法を調べてみましょう。家計の見直しで現在の支出と必要な収入が分かれば、具体的な対策を取ることができます。