フリーランスとして生きるために、「フリーランス保護新法」を知っておこう!

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フリーランスとして生きるために、「フリーランス保護新法」を知っておこう!

フリーランスとして生きる上で大切なのは、保障などの制度がどのようになっているかを知ることです。本日は、フリーランスとして社会で生きるために知っておくべき問題や、「フリーランス保護新法」についてご紹介します。

この記事の目次

    フリーランスが増えた今、新たな問題も・・・

    現在、フリーランス人口はおよそ1600万人。経済規模にすれば、なんと10兆円ほどが市場規模だとされています。また、コロナ禍は時代や組織に左右されない、フリーランスという働き方に注目が集まりました。

    そもそも、フリーランスとは特定の企業や組織などに所属せず、企業などから業務の委託を受けて働く事業者のことをいいます。そのため、フリーランスには労働基準法などが適用されず、取引上は弱い立場にならざるを得ませんでした。中には契約内容の変更や、報酬の未払いなどのトラブルも決して少なくはありません。

    そのような事態を受け、政府でもフリーランスが安定して働く環境を整えようと2023年2月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)が国会に提出されました。これはいわゆる「フリーランス保護新法」のことで、2023年4月には参院内閣委員会にて全会一致で可決されました。

    今回のフリーランス保護新法が整備された背景には、フリーランス人口の増加のほか、フリーランスの立場の弱さが大いに関係しているとされています。それに、フリーランスが労働人口の割合における30%に差し迫ろうというのにも関わらず、法整備が遅れているのではないか、との声が至るところで囁かれていました。

    また、内閣官房の調査によると、多くのフリーランスが取引先とのトラブルを経験していることがわかったといいます。フリーランスにとってはいきなり契約を切られてしまったことで路頭に迷ってしまうことも。今後も何もしないままでは、専業や副業といった働き方が多様化する中で、法律がないが故に弱い立場のまま契約をしなくてはならないフリーランスが増えてしまうことでしょう。

    そして2023年10月に開始された、インボイス制度。こちらもフリーランス保護新法の整備が求められた要因です。インボイス制度によって免税事業者のままのフリーランスは一方的に報酬の減額や取引停止を通知される可能性があるからです。実際、インボイス制度が始まった昨年からはフリーランスの悲痛な声やインボイス制度廃止への署名活動が盛んに行われています。

    データ元:ランサーズ「フリーランス実態調査2021-2022」、内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」

    フリーランス保護新法とは?

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    フリーランス保護新法と似たものに、下請法があります。下請法とは、発注元企業が下請事業者に発注した商品やサービスについて、代金の支払遅延や代金の減額、返品等といった下請事業者に不利益を与える行為を禁止する法律です。

    しかし、下請法は取引の発注者の資本金が一定の金額(1,000万円)以上になる場合にのみ適用されます。フリーランスに取引を発注する委託事業者の多くは、資本金1,000万円以下であることが多く、同法に適用されることは少なかったのです。

    しかし、フリーランス保護新法では資本金の大小を問わず、すべての事業者が規制対象となりました。つまり、取引を発注する委託事業者からフリーランスを守ることができるになるという訳です。まずは、そんなフリーランス保護新法の概要を簡単に整理しておきましょう。

    フリーランス保護新法は、フリーランスの取引適正化と就業環境整備のための法律です。この法律は、主に企業を相手に取引をするフリーランスに特化しています。ですので、フリーランスの取引相手が個人の場合は適用されません。内容としては、報酬の遅延や業務内容・取引条件の不明確さなどに焦点が当てられています。

    この法律における、フリーランスに該当する枠は以下の通りです。

    ・実店舗がない
    ・個人経営者や一人社長
    ・従業員を雇用していない
    ・経験やスキルを活用して収入を得ている
    (※従業員を雇用している個人事業主や、複数の役員や従業員を持つ法人は対象外)

    フリーランス保護新法でどのような措置があるのか?

    フリーランス保護新法では、企業側に対してフリーランスとの取引で次の措置を講じることが定められています。

    ・業務委託時の取引条件を明示する
    ・60日以内に報酬を支払う
    ・禁止事項を守る
    ・募集情報を正確に表示する
    ・出産・育児・介護に関する配慮に努める
    ・ハラスメント対策に努める
    ・契約不更新・中途契約する場合は事前予告する

    それぞれ詳しくみていきましょう。

    ・業務委託時の取引条件を明示する

    フリーランスに対し業務委託をした場合は、仕事内容や報酬等を記載した書面もしくはメールなど電磁的な方法により明示しなければなりません。これまでは口頭など曖昧な契約内容で仕事を発注していた業者については、取引条件を明示せずにフリーランスを使うことができなくなったという訳です。

    ・報酬の支払いに関して

    委託業者は、フリーランスからの納品物やサービスの提供を受けた日から起算して60日以内に報酬を支払わなければなりません。法律ができたことで、フリーランスは委託業者に支払いをこれまでよりも期日を区切って明確に請求することができるようになりました。

    例えば、「月末締め・翌月末支払い」という契約をフリーランスと結んだ場合、60日以内に収まるため合法ですが、「月末締め・翌々月15日支払い」の場合は60日を超えるため法律違反になります。

    ・禁止事項を守る

    フリーランスと一定期間以上継続して取引を行う場合において、発注事業者は以下の行為が禁止となりました。

    ・フリーランスに責任のない理由で受領を拒否すること
    ・フリーランスに責任のない理由で報酬を減額すること
    ・フリーランスに責任のない理由で返品を行うこと
    ・相場と比べて著しく低い報酬額を不当に定めること
    ・正当な理由なく、事業者側の指定するモノの購入やサービス利用を強制すること
    ・事業者側の一方的な都合で金銭・サービス・その他経済上の利益を提供させること
    ・フリーランスに責任のない理由で給与内容を変更させたり、やり直しをさせたりすること

    これまでフリーランスは意味のわからないタイミングで契約を切られたり、ウェブデザイナーなどの完成物と引き換えに報酬を得るようなフリーランスは何度もやり直しをさせられたりと、そんな働く環境に頭を悩ませていました。この法律によって、フリーランスの立場改善に抜本的な解決をもたらすかもしれないと期待が寄せられています。

    ・募集情報を正確に表示する

    今後は、広告等を使用した不特定多数のフリーランスを相手に業務委託募集を行う際には、正確で最新な情報を伝える必要があります。企業はフリーランスを募集する際に、虚偽または誤解を招く表現は使用していけません。

    これは、クラウドソーシングサイトにも当てはまります。実際の契約時に募集内容と契約内容が異なる場合は、企業側に対してフリーランスが説明を求めることができるようになりました。SNS等では、曖昧な表現でフリーランスを募集する広告も多く見かけます。こういった情報を是正できる措置の一つになることでしょう。

    ・出産・育児・介護に関する配慮に努める

    企業はフリーランスとの業務委託契約において、出産や育児、介護に関しての配慮をしなければならなくなりました。具体的には、納期の変更やスケジュールの調整、リモートワークの許可などが挙げられます。

    これまで発注業者にとっては、フリーランスが働く環境について無関心であることが比較的多かったでしょう。しかし、今後はフリーランスのライフスタイルに合わせ、出産・育児・介護と業務を両立できるよう、発注事業者側に配慮が求められるだけではなく、フリーランスからも申し出て就業条件の変更や交渉ができるようになりました。

    ・ハラスメント対策に努める

    フリーランスに対しハラスメントをしないように、企業は適切な対応を義務付けられました。昨今、ハラスメント被害は拡大しておりフリーランスの働く環境も例外ではありません。また、ハラスメント被害を訴えたフリーランス対して企業は不利益な取り扱いや契約解除を行ってはいけないことも義務付けられました。

    フリーランスの中には自身が弱い立場だからと、パワハラやセクハラに耐えて働かねばならない方も多くいました。今後は組織に属している人たちと同様に、ハラスメント被害を訴えられるようになったのです。

    ・契約不更新・中途契約する場合は事前予告する

    企業側がフリーランスとの契約を更新しないもしくは中途解約する場合は、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。また、フリーランスから契約解除等の理由を求められた場合には、企業は遅滞なく理由を開示しなければならなくなったのです。

    これまで、理由を聞けずに契約解除となっていたフリーランスも多いことでしょう。今後は、よりクライアントと対等な立場として仕事をする環境が与えられるようになります。

    フリーランス保護新法を守らないとどうなるの?

    では、フリーランス保護新法に企業側が違反した場合、どういった罰則があるのでしょうか。

    まず、企業がフリーランス保護新法に違反していると発覚した場合、公正取引委員会や厚生労働大臣から指導・命令を受けることになります。さらに、国が発注事業者に立ち入り検査・勧告・公表・命令などを行うことができ、命令違反や検査拒否には50万円以下の罰金を科せられます。

    また、発注事業者に違反行為があった場合、フリーランスはその旨を国の行政機関に進言することができます。今後は不当な契約解除や劣悪な労働環境があれば、国に間に入ってもらいトラブルを解決できる仕組みができたのです。フリーランスとして活動するためにはこうした法律の"盾"も重要になってくるでしょう。

    フリーランスという働き方に悩んだときは?

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    フリーランス保護新法が成立したからといって、クライアントにいきなり強気で接することができるようになるわけではないでしょう。悩み事がある場合は、まずは有識者のアドバイスを聞いてみてください。内閣官房の「フリーランス実態調査結果」によれば、寄せられたトラブルには報酬や業務の内容などが明示されないことや、報酬の未払いといった事項が多かったといいます。

    現在ではそのようなフリーランスの働き方を鑑み、フリーランスガイドラインの策定と並行して、弁護士会が関係省庁とが連携して、フリーランス・個人事業主の方がトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口、「フリーランス・トラブル110番」を設置しています。

    フリーランスや個人事業主の方でトラブルに悩んでいる場合は、まずは相談するという一歩からはじめてみると良いでしょう。

    まとめ

    フリーランスという働き方が増えてきた現代。これまでは「泣き寝入り」という言葉がフリーランスの労働環境で多く見受けられました。今後は、フリーランス保護新法が盾となってフリーランスの働き方を守ってくれることでしょう。法律があることで、フリーランスの働き方がよりよいものになることを期待したいですね。

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