2024年10月から最低賃金が全国平均で時給1,054円に! 働く私たちにどんな影響がある?

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2024年10月から最低賃金が全国平均で時給1,054円に! 働く私たちにどんな影響がある?

厚生労働省の発表によれば今年、最低賃金が大幅に引き上げられます。全国平均で時給1,054円と、過去に比べても過去最高の引き上げ額です。では、働く私たちへの影響はどのようなものがあるのでしょうか。

この記事の目次

    最低賃金とは、労働者に支払わなければならない賃金の最低額

    最低賃金とは、「最低賃金法」という法律に基づき、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度のことです。

    最低賃金は、正社員やパート、派遣社員、外国人労働者など雇用形態に関わらず、全ての労働者に適用されます。また、研修中や試用期間中でも雇用者は最低賃金以上の支払いをしなければならないと決まっています。

    定められた賃金額より低い賃金で契約した場合は無効とされ、その場合は最低賃金額での契約をしたものとみなされます。もし、使用者が最低賃金以上の賃金を支払っていなかったと発覚した場合は、最低賃金との差額を支払う必要があるとともに、罰則が課せられます。

    最低賃金の引き上げの主な目的は、現在の社会情勢や経済財政に合わせ、賃金を適正な金額とするためだとされています。また、近年の物価の上昇などにより、私たちの生活は著しく変化しています。そこで、賃金の最低額の保障によって労働条件の改善や労働者の生活の安定を図り、経済の発展を図ろうとしているのです。

    最低賃金は毎年10月に改定される

    最低賃金の引き上げは毎年7~8月頃決定し、10月から改定が実施されます。改定時期の状況により据え置きになることはありますが、引き下げられたことは過去にありません。

    最低賃金の金額は、都道府県ごとに設置されている、最低賃金審議会による審議を経て改定されることになっています。なお、審議会は、公益委員・労働者側委員・使用者側委員で構成されています。

    直近の最低賃金の引き上げ額を見てみると、新型コロナの影響で経済状況が悪化した2020年度は1円の引き上げでしたが、2021年度からは過去最大の引き上げとなっています。令和5年(2023年)では、最低賃金の全国平均が初めて1,000円を超えました。

    そして、厚生労働省によれば2024年度(令和6年度)の全国都道府県別の最低賃金の上げ幅の目安は50円であると公表されました。全国で50円の引き上げが実現すると、全国平均で時給1,054円となり、過去最高の水準となります。過去10年でみれば、過去最大の引き上げを4回更新して、全国平均で224円引き上げられたことになります。

    最低賃金改正後、都道府県別に比較してみると1位は東京都の1,163円、2位は神奈川県の1,162円、3位は大阪府の1,114円となる見込みです。また、最低賃金が1,000円を超える都道府県は東京都、神奈川県、大阪府を含めた15都道府県に上ります。

    2023年10月の最低賃金改正では、時給1,000円を超える地域は8都府県にとどまっていましたが、2024年の最低賃金改正後は北海道や茨城県、栃木県といった初めて最低賃金が1,000円を超える道府県が増加する見込みなのです。

    最低賃金には主に2つの種類がある

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    最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する人を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

    「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の両方の最低賃金が同時に適用される場合は、高い方の最低賃金額が適用されることを覚えておきましょう。

    地域別最低賃金

    パートやアルバイト、外国人労働者を含め、すべての労働者に適用され、基本的に毎年改定されます。毎年、都道府県労働局長が、金額改正(引き上げ)が必要だと認める場合に地方最低賃金審議会に諮問し、同審議会の意見を聞き、改正を決定しています。

    特定(産業別)最低賃金

    特定(産業別)最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定されています。

    他の産業より高く賃金を設定することで、産業を担う労働力を集めることができます。少子高齢化により働き手が確保しづらくなった日本にとって、雇用を安定させるためにはなくてはならない制度と言えます。

    どの産業に適用されるのかは都道府県によって異なり、18歳未満又は65歳以上の方や雇入れ後一定期間未満の技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されないことがあります。

    2024年3月時点では特定(産業別)最低賃金に該当する職種は全国で224件あります。主に製造業が中心となっており、鉄鋼業や電子部品、デバイス、電子回路、自動車関連業などで指定されています。

    特定(産業別)最低賃金の金額は、産業ごとの関係労使による申し出を受けて、厚生労働大臣または都道府県労働局長が改正の必要性を最低賃金審議会に諮問し、必要との意見が出された場合に改正されることになっています。

    最低賃金にはボーナスや残業代は含まれない

    最低賃金には、ボーナスや臨時手当、残業代は含まれません。具体的には、下記賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

    ・通勤手当
    ・結婚手当など臨時に支払われる賃金
    ・賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
    ・時間外割増賃金や深夜割増賃金といった所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金
    ・休日割増賃金など、所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金

    また、雇用されている職場がしっかりと最低賃金を守っているかを確認する方法は、時給・日給・月給で算出してみると明らかになるでしょう。

    <時給の場合>

    最低賃金は1時間当たりの賃金で表されているため、地域別最低賃金の金額が時間給を上回っているかをわかりやすく確認できます。
    つまり、【時間給≧最低賃金額】となっていれば問題ありません。

    <日給の場合>

    日給制の場合は、時間当たりの賃金を算出する必要があります。

    例えば・・・
    東京都(※2023年10月での最低賃金は1,113円)で所定労働時間8時間、日給9,000円で働いている場合で考えてみます。

    日給9,000円÷8時間=時給1,125円

    時給換算は1,125円となり、東京都の最低賃金の1,113円を上回っていることになります。つまり、【日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額】となっているため問題ありません。


    <月給制の場合>

    月給は日給と同様に、時間当たり賃金を算出する必要があります。

    例えば・・・
    東京都(※2023年10月での最低賃金は1,113円)で所定労働時間8時間(週休2日勤務)、基本給150,000円、職務手当30,000円、職能手当10,000円の場合で所定労働時間が160時間で考えてみます。

    基本給150,000円+職務手当30,000円+職能手当10,000円=月給190,000円
    月給190,000円÷160時間=時給1,187円

    時給換算は1,187円となり、【月給÷1ヶ月月平均所定労働時間≧最低賃金額】であるため最低賃金は守られていることになります。


    もし、最低賃金を下回っていたら...?

    もし、ご自身の時給や時給換算が定められた最低賃金を下回っていた場合はどうしたらよいのでしょうか?

    上司に相談する
    まずは上司に相談してみましょう。最低賃金を下回る雇用契約は法的に認められていないため、最低賃金を下回っている場合は最低賃金と同額の賃金を求めることができます。

    また、以前は問題なかったのにも関わらず、最低賃金引き上げ後に下回っていることが発覚した場合は、該当期間の差額を請求することができるので覚えておきましょう。

    労働基準監督署に相談する
    上司に相談しても改善の余地が見られない場合は、都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)に問い合わせましょう。最低賃金を下回る賃金は法律違反となり、雇用主には罰金が科されることとなります。

    最低賃金上昇が与える影響とは?

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    最低賃金が上がるとどのような影響があるのでしょうか。
    まずはメリットをみておきましょう。

    労働者の生活の安定
    最低賃金の引き上げは、労働者の生活を安定させる効果があります。物価高な近年では、過去の生活と比べて非常に厳しい財政状況にある家計が多く、生活の質を維持することが困難になっている場合も。そこで、最低賃金の上昇は生活の安定を図り、働く意欲も向上させることを狙って定められているのです。

    賃金格差の解消
    最低賃金の引き上げはパートやアルバイト、契約社員といった、非正規従業員の賃金底上げに主に大きく作用します。最低賃金の上昇で正社員との賃金格差が縮小することで同一賃金として働くことができるようになり、格差が少なくなるというメリットがあります。


    続いて、デメリットをみてみましょう。

    人件費が増える
    時給が引き上げられると、単純に会社の負担が増えることになります。業績が上がっていれば問題ないかもしれませんが、これまでと同様の業績で賃上げを迫られるのは企業にとっては苦しい状況かもしれません。

    企業によっては従業員数や雇用時間の見直しが必要となる恐れも。働き手にとっては収入が増える一方、雇用主側にとっては最低賃金が上がったタイミングでコスト面を見直さなくてはならないでしょう。

    正規社員の不満に繋がる
    アルバイトやパートといった非正規社員のみ賃金を引き上げるという場合、正社員にとっては不平等に感じられることも。正社員のモチベーションに影響を及ぼす可能性があります。

    扶養内で働く人がシフトを減らす
    時給が上がったために扶養内で働くことが難しくなり、シフトを減らす従業員が出てしまうことも。最低賃金のUPと扶養内で働きたいと考える側との溝は避けて通れない問題となります。

    扶養内で働く方にとってはどのような影響がある?

    上記で、最低賃金が上がることにより扶養内で働く人がシフトを減らしてしまう恐れがあることを述べました。では、扶養内で働きたいと考えている方にはどのような点を考えなくてはならないのでしょうか。

    最低賃金が上がることで、従来と同じ勤務時間では扶養の条件を外れてしまう可能性があります。また、扶養を外れた場合は、社会保険料の支払いが必要となり、手取り額が以前より減ってしまうことも考えられるのです。

    まずはそれぞれのボーダーラインをみておきましょう。

    103万円の壁
    税法上、年収103万円を超えると配偶者の扶養から外れ、所得税の課税対象となります。

    106万円の壁
    社会保険法上、年収106万円を超えると配偶者の扶養から外れ、社会保険料の支払い義務があります。

    130万円の壁
    社会保険法上、「106万円の壁」の対象とならない事業所で、年収130万円を超えると配偶者の扶養から外れ、社会保険料の支払い義務が生じることに。

    このように、扶養内で働くには各ボーダーラインを超えないように年収を設定しなければなりません。最低賃金は過去20年間で1.5倍近くにまでに増加していますが、「103万円の壁」「130万円の壁」は依然と変わらないのが現状です。

    また、「106万円の壁」の対象となっていたのは、これまでは「従業員数100人超」の企業のみが対象でしたが、2024年10月からは「従業員数50人超」の企業にまで拡大されることが決まっています。今後はますます、扶養内で働き続けることが難しくなってきているのです。

    これまでに、「壁」を気にして扶養の範囲内で働いていた人は、今後も扶養内で働き続けるためには労働時間を減らし、調整をすることしか現状は打つ手がありません。

    扶養を外れて働くことで健康保険に加入でき、傷病手当金の対象となったり、老後の年金が増えたりするといったメリットも挙げられる一方、扶養内で働く難しさも年々高まっていると言わざるを得ません。

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    まとめ

    政府は2030年代半ばまでに1,500円に引き上げることを目標に掲げています。賃金の引き上げにより、従業員の生活水準を保つことができ、人材の確保にコミットできるといったメリットがある一方、扶養内で働きたいと考えている人にとっては労働時間を削るしか方法がないという点が問題になっているのも実情です。

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