物流・運送業界が直面する2024年問題とは|取るべき対策をわかりやすく解説

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物流・運送業界が直面する2024年問題とは|取るべき対策をわかりやすく解説

物流業界や運送業界で話題になっている「2024年問題」。一体どのような問題があるのか、併せて働き方改革関連法ができた経緯を解説します。企業に対しての影響はもちろん、ドライバーとして働く側にどのような影響があるのかも確認しましょう。

この記事の目次

    2024年問題の概要

    2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることにより発生する問題のことです。自動車運転業務が指すのは、主に物流業界の「トラックドライバー」です。

    現状ではトラックドライバーの長時間労働が慢性化し、労働環境が悪化しているなどの問題があります。2020年・2021年の、トラックドライバーの月の拘束時間を調査した結果は、以下のとおりです。

    残業時間 2020年度 2021年度
    275時間未満 56.4% 66.3%
    275時間以上〜293時間以下 25.3% 21.9%
    293時間超〜320時間以下 13.1% 9.4%
    320時間超 5.2% 2.4%

    引用元:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」

    繁忙期の拘束時間のため、月によってバラつきがあると考えられます。しかし、全体として長時間の拘束が一般的になっているといえるでしょう。上記のような長時間労働を解消するため、2024年の施行によりドライバーの労働環境を改善しようという試みです。

    年間の時間外労働が960時間に制限された場合は、月の時間外労働の時間は80時間までに制限されます。現状よりも稼働時間が短くなり労働環境が改善されるため、良い影響があると考えられますが問題点も浮上しているのです。

    働き方改革関連法ができた経緯

    働き方改革関連法は、働き方改革を進めるために各種労働関連法を改正する法律です。働く人たちが個々の事情に応じた柔軟な働き方を実現させるために、従来の労働関係の法律に加えられました。背景としては、育児や介護と仕事を両立させる労働者への対応が遅れている点が挙げられます。

    働き方改革関連法は2018年6月に改正法が成立し、2019年4月から段階的に施行されています。長時間労働の慢性化対策として労働基準法が改正され、1ヶ月の労働時間の規制が適用されました。大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から開始しています。

    原則1ヶ月の時間外労働は45時間まで、年間の時間外労働は360時間までです。ただし、物流業界はすぐの適用が難しいとされ、2024年4月1日からの適用となりました。

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    2024年問題によって考えられる懸念点

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    2024年問題は労働者の長時間労働を改善させるためのものです。しかし、物流業界にとっては大きな問題がいくつかあります。どのような問題があるのか、懸念点について解説します。

    ①運送・物流業界や関連する業界の問題点

    長時間労働が規制されるため、時間がかかる仕事を敬遠される可能性があります。そのようになると、モノが運べなくなる・作れなくなる状態になります。特に積み下ろしに時間がかかる、積み下ろしでの手待ち時間が長い仕事は受けられないとなるでしょう。

    モノが運べないとなると、完成品の輸送のみならず原材料品の輸送も難しくなります。つまり、長時間労働の規制が入ると、結果として製造業者や消費者にも影響が出ると考えられています。

    ➁運送・物流業界の問題点

    長時間労働ができなくなるため、従来のドライバーの人数では同じ量の業務はこなせません。従来と同様に業務を進めるためには、ドライバーを新たに確保する必要があります。しかし、現状ドライバーの有効求人倍率は2022年9月時点で2.12倍となっており、慢性的な人手不足であるとわかります。

    そのため、今後ドライバー業界では人手不足が進むでしょう。さらに、2024年問題によって運送・物流の企業は、売り上げが減少する可能性があります。運転業務に従事できる時間が減少するほか、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金も上昇します。

    割増賃金の基準が25%から50%以上に上昇するため、人件費の高騰による利益減少が起こるでしょう。運賃を上げると顧客離れとなる可能性もあり、売り上げ上昇が難しくなるなどの問題もあります。

    ➂荷主側の問題点

    2024年問題は、当然荷主側にも影響があります。ドライバーの不足を補うために賃金が上昇する可能性があり、その影響から運賃が値上げされる場合があります。そうなると、現在までのコストでは依頼ができず、物流コストが増加するでしょう。

    さらに、ドライバーの労働時間が減ると、従来よりも輸送にかけられる時間が減るため、輸送量や輸送リソースが減少します。今まで通りの輸送計画では荷物が届かない可能性が考えられるため、荷主側は輸送計画を新たに作る必要があります。

    ④消費者側の問題点

    物流に関する問題は、消費者にとっても他人事ではありません。毎日の買い物で利用するスーパーに商品が届かない、ネットで購入した商品が指定した日に届かないといった事象が発生する可能性も。

    また、再配達依頼が難しくなることも予想されるため、従来のようにすんなりと荷物が届く状態は難しくなります。このように2024年問題は、1つの業界だけではなく日々の生活にも影響を及ぼします。

    2024年問題で企業が取り入れるべき対策

    2024年問題ではドライバー・運送業界・荷主側、すべての面で問題が出てくるとわかりました。各企業は問題解消のために、今後何かしらの対策を取り入れなければなりません。

    ①ドライバーの確保

    運送・物流業界側でまず必要となるのが、ドライバーの確保です。慢性的な人手不足と長時間労働の規制により、現状と同じ条件では人は集まりません。求人を出す際は、現状の問題となる部分を解消させ、待遇を向上させる必要があります。

    賃金や労働条件はもちろん、時短勤務や女性や高齢者でも働ける環境の整備が必須です。新しいドライバーの確保のほか、環境整備によって既存のドライバーの離職を防いで、働いてくれる人材を確保し続ける方法を考える必要があるでしょう。

    ➁デジタルシステムの導入と活用

    2024年問題では業務に対しての効率化や、従来の進め方の見直しが必要です。そのためには、デジタルツールの活用が有効となります。例えば、勤怠状況はスマホを活用して正確に計測することで、時間外労働の時間調整や荷物の積み下ろしの待機時間を把握することができます。

    運行計画も、少ない稼働時間でより多くの輸送をできる内容にするべきでしょう。配送ルートは経験や勘ではなく、AIなどによる客観的なデータを利用することで最適化することもできます。

    ➂荷主企業や消費者への理解を周知する

    2024年問題では労働力が不足するため、新たな人材確保やコストの上昇などが考えられます。そのために、運送コストを上げざるを得ない点を、荷主企業側には周知する必要があります。また、荷待ち時間減少のお願いや、付帯業務の軽減などの協力を仰ぐことも大切です。

    運送・物流業者はもちろん、荷主業者からも消費者への周知が必要です。再配達を削減するために宅配ボックスの活用を促したり、まとめ買いを依頼したりすることも対応策のひとつです。2024年問題は運送・物流業界のみならず、社会全体として改善に向かう対策へ協力する姿勢が大切だと言えるでしょう。

    2024年問題に企業が対応しなかった場合の罰則

    もし、企業が2024年問題に対応しなかった場合、どのような罰則があるのでしょうか。罰則内容や影響についてご紹介します。

    運送・物流企業側の罰則

    労働基準法第32条では、労働時間の上限は1日8時間・1週間で40時間までと決められています。上限時間を超える場合は、労使間で36協定を締結する必要があります。自動車運転の業務では、特別条項付き36協定の締結によって、年960時間までの時間外労働が可能です。

    この規制に違反をした場合、事業者が6ヶ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。貨物自動車運送事業法違反によって、警告や車両停止、事業停止などの行政処分を受ける場合もあるでしょう。

    荷主企業側の罰則

    運送・物流事業者の労働基準法違反は、荷主側にも問題があるケースが少なくありません。非合理的な到着時間や、事故などによるやむを得ない遅延へのペナルティなどが設定されていることもあるのです。

    もし、運送・物流事業者の法律違反行為に対して、荷主側の主体的な関係が認められると、荷主勧告が発動されます。その結果、荷主名と事案の概要が公表されます。主体的でない場合でも警告が発せられるほか、3年以内に同様の違反行為が見つかった場合は荷主勧告の対象です。

    荷主企業側は、ドライバーや運送・物流事業者の安全を守る必要があります。法律や規定を遵守して、適切な労働環境の確保が大切でしょう。

    2024年問題から考えられる働き手側のメリット・デメリット

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    2024年問題は、ドライバー側にもメリット・デメリットがあります。

    ドライバー側のメリット

    労働時間の上限が短くなるため、職場での拘束時間も短くなります。さらに、時間外労働の時間に制限があるため、より1日・1週間の労働時間が明確になるでしょう。また、荷待ち時間の削減などにより、待機時間を減らせるようになります。従来よりも短時間での勤務が可能となるのは、嬉しい点です。

    ドライバー側のデメリット

    従来よりも労働時間が少なくなり、時間外労働も規制されるため、時間外労働の手当で得ていた分の賃金が得られなくなるでしょう。しかし、残業が減ることは悪いことではない上、企業側は離職防止のために賃上げを行う可能性もあります。

    まとめ

    2024年問題は運送・物流業界における、ドライバーの時間外労働に対する制限で発生する問題を指します。年間の時間外労働の時間が現在よりも減るため、現状の長時間労働が改善される見込みです。しかし、1日あたりの労働時間が減るため、1日で運べる荷物の量や稼働時間に支障が出てきます。

    そのため、2024年4月1日以降さまざまな問題が発生すると考えられています。運送・物流企業側ではドライバー不足や利益の減少、荷主企業側では輸送コストの増加や輸送量の減少などの可能性も。問題解消のためには人材の確保や輸送計画の見直し、デジタルツールなどの活用が必要です。

    また、ドライバー側にも労働時間削減による、収入減などの影響が出てくると考えられます。今後、運送・物流業界は賃上げや福利厚生などの完備によって、人が定着する環境の構築をしなければならないでしょう。

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