65歳以上の就業者数が過去最高! 長く働くことのメリットとは?
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- 公開日:2025年4月21日

2024年、65歳以上の就業者数が過去最高を記録しました。その要因や背景、人生100年時代を迎えた現代で長く働き続けることのメリットを解説。また、65歳からの就業において人気のある職種もご紹介します。
この記事の目次
過去最高記録を更新中! 65歳以上の就業者数は増加傾向
総務省によれば現在、65歳以上の高齢者の人口は3625万人となり、総人口のおよそ3割を占めているといいます。また、そんな65歳以上の高齢者の就業状況はといえば、全就業人口の約15%で就業率はおよそ25%なのだそうです。これは、日本で働く人の7人に1人は65歳以上の高齢者なのだといいます。
高齢化が進む今、就業率は過去最高を記録しました。さらに、65歳以上の就業者数を見ると20年連続で前年を上回っているといいますから、アクティブシニア層が積極的に働いていることを窺い知ることができます。
ある調査によれば、「いつまで働きたいか」とミドルシニア世代に質問したところ、「65歳まで」との回答が25.6%ともっとも多く、「70歳まで」が21.7%、「いつまでも」が20.6%といたといいます。このように、多くの人が60歳を過ぎても精力的に働きたいと思っているのです。
さらに、高齢者が就業している産業をみてみると、「卸売業・小売業」が最も多く、続いて「医療・福祉」や「サービス業」と続きます。なお、「医療・福祉」分野では10年前と比べて、およそ2.5倍に拡大しているといいますから、日本社会では多くの分野でシニアたちが活躍していることがわかるでしょう。
データ元:総務省「統計からみた我が国の高齢者」、内閣府「高齢者の経済生活に関する調査結果」
65歳以上の就業者数が増えている理由とは?
65歳以上の就業者が増えている理由には、いくつかの要因があると言われています。
雇用年齢の引き上げ
引き上げられた背景には、現代の日本がシニアの働き手を必要としていることが挙げられます。そのため、企業には希望する方が65歳まで働けるようにと「定年の延長」や「定年制の廃止」、「継続雇用制度の導入」などの措置が取れるようになりました。
また、2021年には70歳までの雇用確保措置が努力義務となりました。将来的には、70歳の雇用確保措置が義務付けられる日もくると言われています。
年金制度改革
従来、「在職老齢年金」は年金額と賃金の月額合計が65歳以上ならば47万円を超えてしまうと、その超えた全部または一部の年金が減らされていました。しかし、この枠が50万円へと引き上げられたのです。そのため、65歳以降に老齢厚生年金をもらいながら働く場合でもあっても、賃金額をあまり気にせず労働ができるように。
つまり、年金が減るから働くのを控えよう、ということが少なくなったのです。さらに、2022年4月からは在職定時改定が導入され、65歳以降に納めた厚生年金保険料が年金額に反映されることになりました。
以前は退職し、厚生年金を脱退しなければ老齢厚生年金額の改定が行われませんでしたが、この改定で、65歳以降に払い込んだ保険料が毎年の年金額として反映されることになったのです。そのため、年金を受給しながら働く方にとっては労働のモチベーションに繋がる結果となりました。
65歳以上になっても働き続けるメリットとは?
65歳以降も働き続けるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
安定的な収入の確保ができる
退職後は年金と蓄えで生活していかなくてはなりません。人生100年時代と言われる今、老後資金の確保は必須の課題でしょう。しかし、退職金や貯金を切り崩して生活すると考えると寿命が延びた今、老後の生活への不安は大きくなってしまいます。
ところが、65歳以上も働けるのであれば、毎月一定の収入を得ることができます。こうした金銭的な不安解消に、65歳以上となっても働けるという点は大きなメリットになってくれます。さらに、厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額を増やすこともできるのです。
現在、年金の平均受給月額は約15万円。この金額で生活をしていくと考えると、趣味や旅行などに充てられるお金は十分ではないため、65歳以上でも安定的な収入確保のためにも働くことの重要度が高まっていることが窺えます。
社会性のある生活ができる
退職後、他者と関わらずに家で過ごしていると孤独を感じてしまうことも。特にリタイアした世代は、日課である仕事がなくなるために外部との接点が切れてしまう方が多いと言われています。
65歳以降も仕事を続けることで、会社内でコミュニケーションを図り、仕事を通じて人間関係を構築したりすることで、社会の中での自分の存在意義を感じられる場面も増えます。
また、仕事は一人では完結しません。相手がいてはじめて成り立つものですし、その相手から感謝されたときに私たちはやりがいも感じます。仕事を続けることはそんな人との交流を踏まえた、社会性のある生活を送るためにはぴったりでしょう。
仕事に取り組むことでやりがいや生きがいを感じられ、生活にハリが生まれるのです。そして、仕事を通じてさまざまな人とかかわりや交流を持てることも、精神面に良い影響をもたらしてくれることが多いでしょう。
健康的な生活が営める
仕事を続けることで健康面にもメリットが多くあります。例えば、生活リズムに関しては起床や就寝の時間が定められるため、生活リズムを整えることができるでしょう。それに、働きに出ることで、身体を動かすことにも繋がり、日々の適度な運動にもなるのです。
また、企業によっては会社負担で定期的に健康診断を受けられるよう制度を整えてくれています。歳を重ねると、目をつぶれないのが健康問題です。退職後、病気が可視化されるまで何もできなかったという方も。このように働くことで会社が主導して健康面を考えてくれることにより、未病対策や病気の早期発見に繋がるでしょう。
データ元:厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
デメリットも抑えておく!
65歳以降も働き続けるメリットを見てきましたが、反対にデメリットについても抑えておきましょう。
体力が追い付かないことがある
歳を重ねると体力が低下し、無理がきかずに働き続けることが困難な場合もあります。職場に向かうだけでも疲れてしまい、長時間の労働が苦痛になってしまうことも。そうした際は働き方を見直すとよいでしょう。
例えば、勤務時間を短縮したり、週休三日にしたりするなど、企業と相談して無理のない働き方をすることが大切になります。身体が資本なのに働くことで健康を損なっては元も子もないので、体力に限界を感じる前に人事や同僚に相談をしましょう。
給料が下がってしまう
退職後に働く場合、同じ仕事をしているのにも関わらず、給料が低くなってしまう可能性も否めません。企業で勤めている場合には65歳で定年を迎え、再雇用される場合も。そして、ほとんどの再雇用では給料が下がるケースが多いといいます。
同じ稼働日数や業務内容に差異がないのに、もらえる給料が同じという点に不満を覚えてしまうことは場合によってはデメリットの一つになります。ご自身の中でその点とうまく折り合いが付けば、同じ職場や同じ業務内容でも働き続けることができると言えそうです。
仕事漬けになり兼ねない
定年退職をした後には趣味や旅行を楽しもうと考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、65歳以降も働く選択をする場合、思い描いた老後が送れない可能性があります。働くということは責任も伴いますから、簡単に休みが取れないことも。老後、ゆったりとした生活をしたいと思っていた方にとっては、理想とかけ離れた仕事漬けの生活になってしまうかもしれません。
65歳以上の就業で気を付けておく、ポイントは?
65歳以降も働き続ける場合には、在職老齢年金のことを頭に入れておきましょう。60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、「老齢厚生年金の月額」と「月給・賞与(直近1年間の賞与の1/12)」の合計額が50万円を超えると、年金が減額されてしまいます。
制限を受けて満額もらえなかった年金は、その後改めて受け取ることはできません。そのため、年金ももらいながら所得を得る場合の「在職老齢年金」について考えておかなくてはならないでしょう。(※ただし、老齢基礎年金は減額されず、全額受け取れます)
65歳からの就業で人気の職業とは?
ここからは、65歳からの就業で人気がある職業をみていきましょう。
マンション管理人
マンション管理人は管理会社に雇われるケースがほとんどです。マンションの訪問客の一次対応や設備の点検、敷地内の簡単な清掃などを担う仕事です。短時間勤務なども可能なため、70歳以上の就労者が多く、シニアに人気の仕事です。
介護職員
介護や支援が必要な人のサポートをする介護職員も人気の仕事となっています。仕事内容としては食事や入浴介助、掃除や洗濯を行います。高齢化が進む日本では、要介護者の需要は増加しているのにも関わらず、介護職員の数は不足しているため、求人数の多い職種です。
清掃
オフィスビルやマンション、ホテルや商業施設などの清掃の仕事もシニアを対象とした求人に多いです。短時間勤務やシフト制など働き方に柔軟性があるほか、未経験でも採用されやすいことが特徴となっています。
警備員
警備員も近年、シニアに人気の職業となっています。施設の巡回や交通誘導などを担います。従来は男性が多く従事していましたが、近年は多くの女性が活躍しています。他にも、テーマパークやイベントなどの単発仕事も多いのが特徴です。
家事代行
近年家事代行サービスはタイムパフォーマンスが求められる現代において人気のサービスです。利用者の自宅に訪問し、料理や掃除といった家事を行います。これまでに培ってきた家事の経験を活かせるからと、女性シニアに人気の求人になっています。
講師
英語や日本語といった講師から陶芸や手芸、カメラといった分野まで様々な講師が募集されています。コロナ禍以降、オンラインが普及したこともあり、手軽に始められる仕事の一つです。これまでの趣味や特技を活かして働くことができるので、やりがいの面でも満足度の高い仕事でしょう。
長く働き続けるために意識すべきこととは?
江戸時代より寿命が倍以上も伸びた現代。65歳以降も働き続けるためにはどのようなことを意識したらいいのでしょうか。
まずは、健康に留意することです。長く働くためには何といっても健康でなくてはなりません。さらに、健康で長く働けるということは逆を返せば、病気をしないということです。病気をしてしまうと、働けなくなってしまうだけでなく治療や通院にお金がかかってしまい、お財布にとってもマイナスを生みます。
老後の資金のために長く働くためにも、医療費は節約したいものです。そのため、バランスの良い食生活を心がけたり、適度な運動を行ったりと、自身の身体を労わる生活を心がけましょう。そしてもう一つ、長く働くために意識したいことがあります。
それはスキルを身に付けることです。得意なことや専門的な知識やスキルを身につけておくと、職に困らず長く働くことができるでしょう。もしかしたら「こんな歳で始めても...」と勇気が出ない方もいらっしゃるかもしれませんが、介護分野やIT知識など今から学んでも即戦力として企業が求めているスキルが世の中には沢山あります。
「私なんか...」と思わずに、定年を迎えるまでに『何か一つを身に付ける』という気持ちで、前向きにスキル取得に臨みましょう。そうすれば65歳からのキャリアを後押ししてくれる武器になります。
まとめ
寿命が延びた現代では、仕事の定年はある意味で定められていないのかもしれません。自分らしく生きるためにも長く働くという観点で、人生を見つめてみましょう。