毎年10月に改訂される「最低賃金」。あなたはどこまで知っていますか?

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毎年10月に改訂される「最低賃金」。あなたはどこまで知っていますか?

毎年10月になると、ニュースなどでよく聞く「最低賃金」。2023年度の最低賃金は全国平均で過去最高43円が引上げられ1,004円となりました。昨今の物価高の影響などで消費者の家計が圧迫される中、最低賃金の引上げは必要な経済対策となっているのです。本日は、意外とよく知らない「最低賃金」について詳しくお届けいたします。

この記事の目次

    そもそも「最低賃金」とは?

    最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額のことで、時給で換算されます。

    大企業から町の商店まで事業規模は関係なく、パートやアルバイト・外国人労働者も含めた全ての労働者に適用されるものです。最低賃金は毎年の改定時期の状況により据え置きになることはありますが、引き下げられたことは過去にありません。

    また、最低賃金は大きく分けて2種類あることをご存じでしょうか。都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する人を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」です。

    「特定(産業別)最低賃金」は、どの産業に適用されるのかは都道府県によって異なります。そして、「特定(産業別)最低賃金」と「地域別最低賃金」の両方の最低賃金が同時に適用される場合においては、高い方の最低賃金額が適用されることになっています。

    データ元:厚生労働省「最低賃金の概要」

    最低賃金は、都道府県ごとに異なる!

    「地域別最低賃金」
    「地域別最低賃金」は都道府県ごとに設置され、最低賃金審議会による審議を経て、毎年金額の改定が行われています。地域別によって決められる理由は、地域によって物価や家賃など経済状況が異なるので、地方最低賃金審議会が地域ごとの実情をふまえた審議を行い、都道府県労働局長が金額を決めるためです。

    最新の「地域別最低賃金」はこちら

    「特定(産業別)最低賃金」
    産業ごとに設定されている「特定(産業別)最低賃金」は、全国で225件(※2023年1月基準)あります。主に、「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要だと認めた際に設定されることになっています。

    特定(産業別)最低賃金の金額は、産業ごとの関係労使が改正の必要ありと判断した場合において、厚生労働大臣または都道府県労働局長に申し出ることで、最低賃金審議会にて改正されることになっています。

    都道府県別の「特定(産業別)最低賃金」はこちら

    最低賃金の対象となる「労働者」とは?

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    最低賃金が適用される対象者は、パートやアルバイト、嘱託といった雇用形態に関わらず、各都道府県内で働く全ての労働者です。派遣労働者に関しては、派遣先での最低賃金が適用されます。たとえば、派遣元とは異なる都道府県に派遣され就業した場合、派遣先の地域別最低賃金もしくは特定最低賃金が適用される決まりがあるので覚えておきましょう。

    最低賃金は、「最低賃金法」という法律で決められています。
    法律で定められているため、雇用者側は最低賃金以上の賃金の支払いを行わないと労働者に差額を支払うことはもちろん、罰則が課されます。そのため、受け取っている賃金が最低賃金より少ないときは、労働基準監督署へ相談するなど雇用側に改善を求めることができます。

    例外的に最低賃金の対象外となるケースもあります。一般の労働者と労働能力などが異なるため、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭める可能性のある方については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として特例が認められています。

    [最低賃金の減額が認められる可能性のある方]
    1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
    2. 試用期間中の方
    3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
    4. 軽易な業務に従事する方
    5. 断続的労働に従事する方

    最低賃金の対象となる「賃金」とは?

    最低賃金は、毎月支払われている基本的な賃金〈基本給〉が対象です。以下のような残業代や賞与、通勤手当といった一部の手当ては含まれないことを覚えておきましょう。

    [最低賃金の適用外となる賃金]
    ・臨時的に支払われる賃金(結婚手当など)
    ・1ヵ月を超える期間ごとで支払われる賃金(賞与など)
    ・所定労働時間を超えた労働時間に対して支払われる賃金(残業代など)
    ・所定労働日以外で働いた分に対する賃金(休日出勤手当など)
    ・精皆勤手当や通勤手当、家族手当、慶弔手当など

    最低賃金が守られているかを知るために

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    最低賃金が守られているか確認するためには、以下の方法があります。自身の職場でも最低賃金がきちんと守られているか確認しておきましょう。

    時間給制の場合
    最低賃金は時間給で提示されているので、そのまま照合してください。

    時間給≧最低賃金額(時間額)

    日給制の場合
    日給の場合、定められている1日の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金を求めます。

    日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

    月給制の場合
    1ヵ月間の平均所定労働時間をもとに1時間あたりの賃金を計算します。

    月給÷1ヵ月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

    例えば、月給制の場合の換算方法について具体例を挙げてみます。

    【東京都で働くAさんのケース】
    月間所定労働日数:20日
    1日の所定労働時間:8時間
    基本給:160,000円
    職務手当:40,000円
    支給総額:200,000円

    支給総額を時間単価に換算します。
    200,000円÷(20日×8時間)=1,250円

    東京都の最低賃金(令和5年度)は、1,113円です。したがって、上記条件では、最低賃金には違反していないということになります。

    最低賃金が守られていない場合は?

    最低賃金が守られていない場合、企業側は罰則を受けることになります。
    労働基準法第24条では、賃金の支払い方法について「通貨で・全額を労働者に・直接・毎月1回以上・一定期日を定めて」支払うことが定められているのです。

    地域別最低賃金の場合
    違反した場合には、最低賃金法第40条に基づき、50万円以下の罰金に処せられます。

    特定最低賃金の場合
    特定最低賃金において違反した場合、最低賃金法ではなく労働基準法第24条に基づき30万円以下の罰金に処せられます。

    もし、自分の会社が違反していたら?

    もし、自分の会社が違反していた場合、まずは職場の上司に相談してみましょう。それでも改善してくれない場合は、労働基準監督署に相談を試みます。

    最低賃金を下回る雇用契約は法的に認められていません。そのため、最低賃金と同額の賃金を請求することができます。また、最低賃金引上げ前は適法だったが、最低賃金引き上げ後に最低賃金が下回っている場合にもその差額を請求することができます。

    毎年の改正に合わせて、きちんと最低賃金を上回った報酬が支払われているかを確認しておきましょう。

    「最低賃金」引き上げで何が変わるのか

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    世界的に見ても平均年収は上がっているのにも関わらず、日本は1997年以降その数値はほとんど上がっていません。しかし、近年の世界情勢の変化や物価高の影響などで家計への圧迫はますます厳しさを増しています。

    そういう意味でも、毎年10月に改訂される「最低賃金」は労働者の味方です。2021年度までの約5年間は、引上げ額はおよそ20円台でしたが、2022年度は31円、そして今年度(2023年)は平均43円の引上げとなり、過去最高の引上げを記録しました。

    また、最低賃金の引き上げには従業員のモチベーションを上げ、生産性を高める効果もあります。ただ、労働者の賃金を上げることは企業側に負担を強いてしまうため、政府は最低賃金の引き上げによる中小企業等への配慮として、補助金等による支援策を打ち出しています。

    例えば、事業再構築補助金に最低賃金枠が設けられるようになり、最低賃金の引き上げによる経営の圧迫を受けないようにとしています。さらに、事業場内の最低賃金を引き上げ、条件を満たした場合には雇用調整助成金等を申請する要件が緩和されました。
    このように、政府主導でも賃上げに企業が対応できるようにと動いているのです。

    今後の日本の労働市場には課題があります。人手不足に陥っている運輸や建設、介護といった業種では労働時間の長さや低賃金が問題となり、諸外国と比較しても日本は先進国の中でも賃金は低い水準です。ますます人口が減ると予想される日本社会では、働く意欲に直結する「最低賃金」のアップは労働者のつなぎ止めを図るためにも重要だといえるでしょう。

    「地域別」に最低賃金を定めていいのか?

    イギリスやフランスなどは最低賃金が全国一律です。しかし、日本は地域ごとに異なる最低賃金を設定しています。人が集まる都心部では賃金も高いのに対し、一番低い地域と比較すると200円以上の差が生まれてしまっていることも。

    最低賃金の格差は、過疎化に歯止めがかけられない要因ともいわれ、日本社会の一つの問題点となっています。本来、最低賃金を定めることは生活水準を守るセーフティーネットの役割をも担っているはずですが、現状は地域間格差や世界と比較してもまだまだ改善の余地があります。

    日本はこれまでサービスの良い国だと評価されてきた側面があります。しかしながら、今後人手不足となれば高水準のサービスの提供はできなくなってしまうかもしれません。そうならないためにも、雇う側と雇われる側がウィンウィンの関係になるよう、今後も「最低賃金」についての議論は続けられていくでしょう。

    ※データ元:厚生労働省「東京労働局」

    まとめ

    毎年10月に改定される「最低賃金」。勤務先の都道府県に適用される最低賃金がいくらになっているのか、一度調べておきましょう。自身の職場が最低賃金を守っていない場合は、然るべきところへの相談を検討してください。

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