世帯分離とは?仕組みやメリット・デメリット、手続きの進め方についてご紹介
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- 公開日:2026年4月22日
医療や介護の費用負担を減らすために、世帯分離を行うか検討している人もいるのではないでしょうか。世帯分離はメリットだけではなく、注意点もあります。今回は世帯分離の制度や、損をしないために知っておきたいポイントを解説します。
この記事の目次
世帯分離とは家族と住民票を分けること
世帯分離とは、同居している家族と本人の住民票を分けることを指します。世帯分離は、所得が少ない親世帯の住民税・医療費・介護費用を減らすのを目的に行われます。
介護サービスの負担額は本人の所得額と、世帯の所得額によって決まるため、世帯を分離させておくと介護サービスの負担額を減らせる可能性があります。ただし、世帯分離で必ず住民税や介護費用が下がるわけではありません。世帯分離をするかは、メリット・デメリットなどを知ったうえで検討してください。
世帯分離のメリット
世帯分離を行うと、医療や介護に関する費用が従来よりも下がる可能性があります。具体的な項目などについては、以下で解説します。
国民健康保険料が安くなるケースがある
世帯分離のメリットは、国民健康保険料が安くなる可能性がある点です。国民健康保険の保険料は、前年の所得と被保険者の人数をもとに計算を行います。そのため、世帯を同一にしていると前年の所得が高くなり、保険料も上がっていきます。
しかし、世帯を分離すれば所得が下がるので、保険料が安くなる可能性があります。子どもが働き盛りで、親の収入が子どもの収入を下回る際は、世帯分離によって国民健康保険の保険料を現在よりも下げられるでしょう。
高額介護サービス費制度の自己負担額の上限が下がる
世帯分離を行うと、高額介護サービス費制度の自己負担額の上限が下がります。高額介護サービス費制度とは、1ヶ月の介護の自己負担額が上限額を超えた際、超えた分が介護保険から支給される制度です。
自己負担の上限額は所得によって異なっており、所得が低いほど上限額も低く設定されています。世帯分離によって所得が下がると、その分高額介護サービス費制度の自己負担額の上限が下がる可能性も高まります。
高額介護サービス費制度の自己負担額の上限は以下の通りです。
| 区分 | 負担の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円(年収約770万円)〜課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税課税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
| 世帯の全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) 前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等:24,600円(世帯)、15,000円(個人) |
| 生活保護を受給している方 | 15,000円(世帯) |
引用元:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
世帯分離前は月の自己負担の上限額が44,400円だったが、世帯分離によって世帯の全員の市町村民税が非課税となったら、上限額は世帯で24,600円に下がるということです。

介護の自己負担額が減る
世帯分離を行うと、介護の自己負担額も減らせるでしょう。介護施設を利用する際、住居費や食費は原則自身で負担する必要がありますが、「負担限度額認定制度」を利用すると費用を軽減できる場合があります。
負担限度額認定制度を利用するには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
• 世帯全員が住民税非課税である
• 預貯金等が基準額を下回っている
ここでの預貯金等の基準額には、預貯金以外に株や債券などの資産が含まれます。基準額は以下の5段階に分けられています。
ただし、第2号被保険者の場合は利用者負担の段階に関係なく単身で1,000万円以下、夫婦で2,000万円以下になります。
| 利用者負担の段階 | 対象者 | 単身 | 夫婦 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受給している | 要件なし | 要件なし |
| 第1段階 |
世帯全員が市町村民税非課税 |
1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
| 第2段階 |
世帯全員が市町村民税非課税 |
650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① |
世帯全員が市町村民税非課税 |
550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② |
世帯全員が市町村民税非課税 |
500万円 | 1,500万円以下 |
| 第4段階 | 第1段階〜第3段階以外の人 | 対象外 | 対象外 |
負担限度額認定制度を活用できると、介護施設の1日あたりの利用料は以下のようになります。
| 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | 基準額 | |
| 食費:施設サービス | 300円 | 390円 | 650円 | 1,360円 | 1,445円 |
| 食費:短期入所サービス | 300円 | 600円 | 1,000円 | 1,300円 | 1,445円 |
| 居住費:ユニット型の固室 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,370円 | 2,066円 |
| 居住費:ユニット型の固室的多床室 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,370円 | 1,728円 |
| 居住費:従来型個室の特養・特養ショート | 380円 | 480円 | 880円 | 880円 | 1,231円 |
| 居住費:従来型個室の上記以外 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,370円 | 1,728円 |
| 居住費:多床室の特養・特養ショート | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 | 915円 |
| 居住費:多床室の老健・医療院(室料を徴収する場合) | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 | 697円 |
| 居住費:多床室の老健・医療院(室料を徴収しない場合) | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 | 437円 |
参照元:大阪市「介護保険負担限度額認定申請書」
第4段階の人は負担限度額認定制度の対象外となるため、施設との契約額を支払う必要があります。
後期高齢者医療制度の自己負担割合が下がる
後期高齢者医療制度の保険料は、世帯の所得によって負担額が変わります。そのため、世帯分離を行うと所得が低くなる可能性が高まります。後期高齢者医療制度は75歳以上が加入する制度で、一般的な所得であれば自己負担額1割で病院を受診できます。
ただし、一定以上の所得がある人は2割、現役並みの所得がある人は3割負担です。もし子どもと世帯を同一にしていた場合は、一定以上の所得があると判断され、自己負担額が2割や3割となるでしょう。世帯分離によって一般的な所得層となれば、自己負担額が1割に変化します。
世帯分離のデメリット
メリットが多いように見える世帯分離ですが、当然デメリットも存在します。場合によっては、世帯分離をする前よりも損をする可能性もあるため、事前にデメリットについても知っておきましょう。
国民健康保険料が高くなる可能性がある
世帯分離を行うと、国民健康保険料が安くなるケースがあるとメリットでお伝えしました。しかし、世帯分離によって世帯を分けると、それぞれの世帯主が国民健康保険を支払わなければいけません。
2つの世帯を合算すると、世帯分離前よりも合計額が高くなる場合があります。世帯分離を検討している際は、国民健康保険の保険料の総額がどのように変化するかまで確認しておきましょう。
扶養手当や家族手当は使えなくなる
もし親を扶養に入れて働いている場合は、世帯を分けると扶養から抜けることになるため、扶養手当や家族手当は使えなくなります。各種手当を勤務先から受け取っている際は、世帯分離によってもらえなくなるお金はないかをご確認ください。
子どもの勤務先の健康保険組合が利用できなくなる
子どもの勤務先の健康保険組合に入っている場合、世帯分離を行うと利用ができなくなるケースがあります。健康保険組合の加入条件に、扶養に入ることや同居を求められる場合があるためです。世帯分離を行うと、同居はしていても子どもの扶養から外れるため、利用できなくなるでしょう。
手続きが面倒
世帯分離を行うには、住民票など各種必要な書類の取得や提出が必要となります。親が自分で手続きできない場合は、子どもが都度代わりに対応する必要があります。委任状も毎回求められるため、手間も時間もかかってしまうでしょう。
世帯分離で損しないためのポイント
世帯分離をしたのに、経済的なメリットを受けられないとならないよう、確認しておきたいポイントを3つ紹介します。手続きをする前にご確認ください。
生計が別であることの証明を事前に準備する
世帯分離とは同居している家族と、生計を別にしていることを住民票へ登録するものです。基本的には、窓口にて「生計を別にするために世帯分離をしたい」と伝えれば問題ありません。
しかし、生計を別にしている証明を求められる場合もあります。そのような際に備えて、源泉徴収票や課税証明書など生計が別であるとわかる書類も一緒に持っていくと、スムーズに手続きが進むでしょう。
介護費用の話は避ける
世帯分離の理由を聞かれた時に、「介護費用の負担軽減が目的です」など、介護費用の話を出すのは避けましょう。世帯分離は、介護費用の軽減を目的とした制度ではありません。
本来の目的と違う理由を伝えると、申請が通らない可能性が高まります。あくまでも「世帯を分けるために利用する」と、本来の目的にあった理由を伝えましょう。
健康保険の手続きを忘れない
世帯分離を行った後は、健康保険の手続きが必要です。国民健康保険の世帯が分離した場合は、それぞれの世帯主が国民健康保険を支払うための申請を行います。
また、従来の健康保険証を返却し、新たな保険証の受け取りも必要となります。返却は所属する市区町村の国民健康保険担当窓口です。申請手続きを行った際に、一緒に返却すると手間が省けます。
世帯分離の申請方法

世帯分離の申請方法について、簡単にご紹介いたします。
必要書類
世帯分離を行う際には、以下の必要書類を揃えて提出しましょう。
• 本人確認書類
• 世帯分離届
• 国民健康保険証(世帯分離を行う家族全員分)
• 印鑑
• 委任状
本人確認書類は、マイナンバーカードや運転免許証などで問題ありません。委任状は親本人ではなく、子どもが代理で申請する際に必要です。
申請の流れ
申請開始〜完了までの流れは以下の通りです。
1. 市町村役場で「住民異動届」を入手する
2. その場で必要事項を記入する
3. 持ってきた必要書類と一緒に提出する
窓口では世帯分離の理由を直接聞かれる場合もあるので、答えられるように準備しておくと安心です。
世帯分離を検討した方がいい人
メリット・デメリットを知っても、世帯分離をするか悩んでいる人もいるでしょう。以下では、世帯分離を検討した方がいいパターンを3つ紹介します。
①親の収入が同居家族より少ない
親の収入が年金のみなど、同居家族より少ない場合は、世帯分離によってメリットを得られる可能性があります。
世帯分離によって住民税が非課税世帯になれば、介護保険料や医療費の負担額は軽減されるでしょう。国民健康保険料も下がるケースがあるため、親の収入が子どもより少ない家庭は、ぜひ一度世帯分離を検討してみてください。
②介護保険サービスを利用している人
世帯分離によって親の所得が低くなると、介護保険の負担割合が下がる可能性があります。また、介護施設を利用する際に負担限度額認定制度を活用できると、食費や居住費を抑えて利用できるようになります。
③親世帯が各種給付金の支給対象となっているケース
世帯分離後の親世帯が、国や自治体が用意している給付金や支援制度の対象となっている場合は、世帯分離をご検討ください。
福祉関連の給付金や生活支援制度など、さまざまな制度が用意されています。住んでいる自治体の制度などを確認し、利用できそうな制度があれば、ぜひ世帯分離も視野に入れてみましょう。
まとめ
世帯分離とは、同居している家族と生計が別であることを明らかにし、住民票を分ける制度です。世帯分離によって住民税・医療費・介護費用などの負担額を減らせる可能性があるなど、メリットもあります。
一方で、扶養手当など受けられなかったり、手続きが面倒だったりというデメリットもあります。制度の内容を今一度確かめてから世帯分離を行うか検討しましょう。








