子なし現役世代は遺族厚生年金がもらえなくなる?2025年の制度改正の動向や、足りない老後資金を補う方法
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2025年7月 9日
2025年に遺族厚生年金の改正が行われ、子どもがいない夫婦の男女差がなくなる方向へ、制度の内容が変更される予定です。現行の遺族年金制度についてのほか、今回の改正によってどのように変更されるのかをご紹介します。もし遺族厚生年金が廃止されてしまう場合や、受け取れない場合の老後資金を作るポイント、老後資金を作るためにおすすめの資産運用についても解説します。
この記事の目次
現在の遺族年金制度について
まずは、遺族基礎年金の現行制度がどのようになっているか確認しましょう。遺族基礎年金の種類や受け取れる人の条件、現行制度の課題について解説します。
遺族年金の種類
遺族年金には遺族基礎年金と、遺族厚生年金の2種類があります。
遺族基礎年金
被保険者だった人が亡くなった場合に、その人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れる年金です。遺族基礎年金は、国民年金に加入している人が対象となるため、ほとんどの人が遺族基礎年金にも加入します。
遺族厚生年金
亡くなった人が会社員や公務員だった場合、その配偶者や子供に支給される年金です。厚生年金に加入している人が対象のため、自営業者などは対象とはなりません。
受け取れる人の条件
遺族年金が受け取れる人の条件は、被保険者と生計を同じくしていること、年収850万円未満であることです。具体的には、亡くなった人と同居している場合や仕送りをしていた場合は、生計を同じくしていたと判断される可能性があります。また、年収850万円未満、所得が665.5万円未満である人が遺族年金を受け取れます。
遺族基礎年金は、国民年金に加入している「子のある配偶者」または「子」のみが受け取りできます。子に該当するのは18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満の障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人を指します。ただし、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間は、子には遺族年金は支給されません。
遺族厚生年金は、死亡した人の遺族のうち最も優先順位の高い人が受け取れます。遺族基礎年金と異なり、子のない配偶者や父母、孫などでも受け取り可能です。もし受け取る人が、30歳未満の子のない妻だった場合は、受給できるのは5年間のみです。
反対に子のない夫が受け取る場合は、55歳以上である場合に受給ができますが、受給開始は60歳からとなります。優先順位の高い人が遺族厚生年金を受け取った場合、それ以下の人は年金を受け取れません。
現行制度の課題
現行の遺族厚生年金制度の課題は、制度上で男女の格差が発生している点です。現行制度では20代から50代の死別した、子のない配偶者に対して主たる生計維持者は夫のみと考えています。そのため、妻側は夫との死別後に生計を立てる力の維持が難しいとされ、30歳以上の場合は無期給付が行われています。
しかし、現在では女性も就労をしている場合がほとんどであり、社会経済が以前よりも変化しています。現在の環境に合わせた形への見直しとして、今回の改正が行われることとなりました。
2025年の遺族年金制度改正で変更される点

2025年の改正で変更される点を、3点ご紹介します。具体的にどのように変更されるのか、自身にはどのように影響するのかをご確認ください。
無期給付から有期給付へ
現行の遺族厚生年金では、夫を亡くした場合に妻が30歳未満だった場合は、5年間の有期給付、30歳以上の場合は無期給付です。妻を亡くした夫の場合は55歳以上で受給権が発生するが、受け取れるのは60歳になってからです。
年齢要件における男女差を失くすため、20代から50代に死別した子のない配偶者は、年齢や男女の性別に関係なく5年間の有期給付へと変更になります。ただし、妻側の制度については一気に変更となるわけではなく、段階的に変更となります。また、施行日前に受給権が発生している遺族厚生年金については、現行制度が適用されます。
中高齢寡婦加算及び寡婦年金の段階的廃止
中高齢寡婦加算や寡婦年金が、段階的に廃止されます。中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の受給権を取得した年齢が40歳以上65歳未満である場合、中高齢の寡婦はその後就労が難しいとされ、遺族厚生年金に対して加算される制度です。
寡婦年金とは死亡日の前日において、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間が10年以上ある場合に支給される年金です。夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻が、60歳から65歳になるまでの間、受け取れる年金です。
どちらの制度も夫と死別した妻が、就労するのが困難であると考えて設計されたものであり、男女差があるため将来的に段階的な廃止が検討されています。中高齢寡婦加算では、新規発生する年度に応じた加算額とし、受け取り始めた時点の加算額は受け取り終了まで変わりません。寡婦年金は、受給権が発生する年齢が段階的に引き上げられます。
子に対する遺族基礎年金の支給停止規定の見直し
遺族基礎年金でも、子に対する年金の支給停止規定の見直しが行われます。現行制度では遺族基礎年金の生計維持要件などに該当せず、受給権を有していない父または母と生計を同じくしている場合は、支給が停止されます。
見直しが検討された理由として、以前よりも離婚が増加しているなど、子を取り巻く家庭環境が変化している点があげられます。子の生活の安定を図る遺族基礎年金の目的を達成させるため、子が置かれている状況によって支給されない不均衡の解消を図るために改正が行われるのです。
2025年の遺族年金制度改正で変更されない点
2025年の遺族年金制度の改正では、いくつかの内容が変更されます。しかし、子のある20代から50代の配偶者の受給要件と、高齢期の配偶者の受給に関しては変更ありません。
18歳未満の子がいる配偶者の場合、子が18歳に到達する年の年度末まで、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。また、60歳以上で配偶者を亡くした場合も、遺族年金の受給に関する要件は変更されません。
遺族年金改正後にも備えられる老後資金を作るポイント
遺族年金制度の改正によって、30歳以上の子のない妻の遺族厚生年金も、5年間の有期給付へと変更されます。さらに、子なし世帯で自営業として働いている場合、遺族基礎年金も受け取れないため、老後までの資金や老後の資金の形成が難しくなる人もいるでしょう。以下では、老後の資金を作るためのポイントをご紹介します。
支出の見直し
制度の改正に左右されずに老後資金を作るためには、まず支出を見直しましょう。特にスマホの利用料金や電気代などの、固定費を見直すと節約効果が大きくなります。まずは、固定費がどのくらいあるのか、支払っている金額について確認しましょう。現在の収入に対して支出がどの程度あるか、さらにどの程度削減できるのかを把握できれば、今後の資金計画も立てられます。
少しでも長く働く
老後資金を作るためには、少しでも長く働くことも検討しましょう。60歳で定年退職を迎えた後に、年金を受給できるまでには5年間の時間が空きます。その間の生活費を退職金で賄う場合もありますが、退職後の生活が長く続くことを考えるとあまり最適ではありません。
再雇用制度なども用意されているため、定年後も働き続けられる環境が整っています。しかし、定年退職後も定年前と同じように働く必要はありません。午前中のみや週2日だけなど、無理のないペースで働きましょう。
年金額を確認する
老後の生活に必要となる具体的な金額を知るためには、将来受け取れる年金額を確認しましょう。ねんきん定期便やねんきんネットを確認すると、現在の納付額の確認や将来受け取れる年金額のシミュレーションが利用できます。
生活費と年金額にどのくらい差があるかが分かれば、年間でいくら資産を作っておくべきかが把握できます。なるべく早いうちから準備を始めておけば、定年間近になって慌てることもありません。
また、年金は65歳から受給開始となりますが、最大で75歳まで受給を繰り下げできます。繰り下げ受給を選択すると、受け取れる年金額が増加します。増額率は基礎年金でも厚生年金でも、1か月あたり0.7%です。受け取れる年金額の確認はもちろん、年金の受け取り時期も検討しましょう。
健康の維持
老後の資産を少しでも作るためには、健康の維持・管理が大切です。長く働くためには、健康な体が必要です。病気や怪我をすると働けなくなるほか、医療費がかかるため、想定していた老後費用よりも多くのお金が必要となる可能性があります。食生活に気をつける、適度な運動をする、健康診断などを利用するなど、日々できることを取り入れて健康維持に努めましょう。
老後資金を作るなら資産運用や保険も考える

老後資金を作るためには、支出の見直しや働く期間を増やすなどのほか、資産運用も検討しましょう。国民年金や遺族年金以外に資産を用意しておけば、老後に慌てる必要もありません。今回は、老後資金を作るためにおすすめの資産運用や保険を5つご紹介します。
終身保険
終身保険は保険期間が一生涯続く死亡保険で、解約しない限り保障が続きます。死亡保険の場合は被保険者が死亡または、指定されている高度障害状態になった時に、保険金が支払われる仕組みです。遺族厚生年金を受け取れない人にも資産を残せるため、不安がある人は加入を検討しましょう。
個人年金保険
個人年金保険は国民年金などとは別に、個人で用意する年金です。毎月の保険料を一定年齢まで支払いを続け、受給開始時期になると年金として受け取れる仕組みです。もし、保険料払込期間中や年金据置期間中に亡くなった場合、払い込んだ保険料相当額を死亡保険金として受け取れます。保険金の受け取り相手は自身で決められるため、配偶者にもお金を残せます。
投資信託
投資信託は複数の投資家から集めた資金を、投信会社などの専門家が国内外の株式・債券などで運用し、運用成果を投資家に分配する金融商品です。投資信託は少額から始められる場合が多く、投資経験が少なくても専門家に任せて運用できるため、初心者も始めやすい投資です。
iDeCo
iDeCoは個人型確定拠出年金と呼ばれ、国民年金以外に自分で用意する年金です。掛金は毎月5,000円からで、自身で選んだ運用商品で掛金を運用します。60歳になったタイミングで、運用したお金を年金という形で受け取りができます。
NISA
NISAは少額投資非課税制度と呼ばれ、投資した商品から得られる利益は非課税となる制度です。つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠が用意されており、それぞれを併用しながら、長期的に資産の形成ができます。最大で1,800万円(内成長投資枠は1,200万円)までは、非課税で保有できるため、少しでも費用を抑えて資産運用を行いたい人は、NISAの利用もご検討ください。
まとめ
2025年に遺族年金が改正され、特に遺族厚生年金では子がない夫婦での受給要件が大きく変わります。現在は子のない30歳以上の女性は、遺族厚生年金が無期給付されます。男性の場合は受給権が55歳から発生し、60歳以降にならないと受け取りができません。
しかし、改正後は男女や年齢に関係なく、5年間の有期給付へと変更されます。そのほか、中高齢寡婦加算なども、段階的に廃止されるなどの変更が行われます。今後、自身が遺族厚生年金や遺族基礎年金を、十分に受け取れる可能性があるのか一度確認しましょう。
将来の遺族年金に不安がある人は、老後の資産を作るために家計の見直しやいつまで働くのかを計画しましょう。また、老後資金を用意するために資産運用や保険の加入などもご検討ください。








