【2025年4月雇用保険法改正】自己都合離職者の給付制限期間が見直しに!改正内容や離職期間の上手な使い方

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【2025年4月雇用保険法改正】自己都合離職者の給付制限期間が見直しに!改正内容や離職期間の上手な使い方

2025年4月に施行される雇用保険法改正のなかで、自己退職者の失業保険受給までの期間短縮が盛り込まれています。今回の改正は、年金受給前の退職者にとってもメリットが大きく、より転職しやすくなる可能性があります。この記事では、失業保険受給までの期間短縮について、教育訓練の費用負担率の変更、離職期間の過ごし方などを解説します。今後、転職を検討している方はぜひご一読ください。

この記事の目次

    雇用保険制度とは、失業・休職時も安心して暮らすための保険

    雇用保険とは、労働者が失業や休職した際に、安心して暮らせるように給付を行うための保険です。具体的には、求職者給付や教育訓練給付、高年齢雇用継続給付、育児休暇や介護給付などがあります。雇用保険は労働者を雇用している会社や、組織に強制的に適用されます。

    雇用保険の加入条件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある人です。雇用期間については31日以上と雇用契約書に明記されている場合はもちろん、期間の定めがなく雇用される、雇用契約に更新規定があるが、31日未満で雇止めの明示がない場合も、加入条件に該当します。

    週の所定労働時間は契約をする際に定めた時間が対象となるため、残業などで労働時間が一時的に20時間を超えた場合は、雇用保険の加入条件には該当しません。

    失業保険給付制限期間が短縮される

    今回の雇用保険制度の改正によって、自己都合離職者の給付制限が短縮されます。現在、自己都合離職をした後に失業保険を申請すると、原則給付を受けられるのは、待機満了の翌日から2ヶ月後です。しかし、2025年4月からは、この待機期間が、1ヶ月へと変更されます。

    また、過去5年間で2回を超える場合は3ヶ月だった待機期間が、5年間で3回以上の自己都合退職があった場合に3ヶ月の待機期間へと変更になります。離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職促進に資する教育訓練を行った場合は、給付制限が解除されます。

    給付までに期間制限が設けられている理由としては、倒産などによる理由で再就職の準備ができない場合には保護を行うが、自ら離職をするのは労働の意思がないと捉えられているためです。また、失業保険をもらうためにすぐに離職をするなど、制度の濫用を防ぐためでもあります。

    しかし、近年では転職する人が増加しており、自己都合で退職している人も増加傾向にあります。そのため、安心して労働者が再就職活動を行えるよう、給付制度の見直しが行われることになりました。

    そのほか、現状の失業保険では受給期間が、離職の翌日から1年間の内、2ヶ月から3ヶ月が待機期間です。場合によっては、給付日数が残っていても給付が受けられなくなる場合があります。しかし、今回の改正によって待機期間が短くなるため、失業手当を最後まで受け取れる可能性が高まります。

    その他の雇用保険制度の改正

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    その他、転職や今後のキャリアに関する雇用保険の改正内容についても、簡単にご紹介します。将来の自分が、いざという時でも安心して暮らせるように、変更内容をご確認ください。

    雇用保険の適用拡大

    雇用保険の適用拡大も、今回の改正内容の1つです。変更される理由としては、年々働き方や生計維持の仕方が多様化していることを踏まえて、雇用のセーフティネットを広げる必要があるためです。

    現状、雇用保険は週の所定労働時間20時間以上、31日以上の雇用期間が見込まれている場合に適用されます。2つの条件の内、週の所定労働時間が10時間以上に変更されます。失業認定基準なども、以下のように現行から2分の1に改正されます。

    ■被保険者期間の算定基準
    【改正前】賃金の支払の基礎となった日数が11日以上または、賃金の支払の基礎となった労働時間が80時間以上ある場合に1月とカウント
    【改正後】賃金の支払の基礎となった日数が6日以上または、賃金の支払の基礎となった労働時間が40時間以上ある場合に1月とカウント

    ■失業認定基準
    【改正前】労働した場合でも1日の労働時間が4時間未満の場合は、失業日と認定
    【改正後】労働した場合でも1日の労働時間が2時間未満の場合は、失業日と認定

    ■法定の賃金日額の下限額、最低賃金日額
    【改正前】給付率が80%となる点の額の2分の1、最低賃金で週20時間を働いた場合を基礎として認定
    【改正後】給付率が80%となる点の額の4分の1、最低賃金で週10時間を働いた場合を基礎として認定

    引用元:厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

    なお、雇用保険の適用拡大については、2028年10月から施行予定です。

    就職促進手当の見直し

    現在、就職手当や再就職手当、就職促進定着手当が設けられていますが、支給実績や人手不足の影響から見直しが行われます。2025年4月からは就業手当が廃止されるほか、就職促進定着手当の上限が、失業手当の支給残日数の40%から20%に引き下げられます。

    育児に関する支援の充実

    そのほか、育児に関する支援が充実します。まず、育児休業給付の取得者が増加傾向にあるため、財政基盤の強化が行われます。さらに、育児休業給付の給付率引き上げや、育児時短就業給付の創説も行われる予定です。

    教育訓練についても改正される

    教育訓練についても改正が行われ、受講費用の負担率が引き上げられます。教育訓練は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合に、その一部の費用を支給して労働者の学び直しを支援しています。現在、専門実践教育訓練給付金の給付率の上限は、受講費用の70%です。

    また、特定一般教育訓練給付金の場合は40%の支援を行っています。今回の改正によって追加給付を実施し、それぞれの給付金に対して10%ずつ追加され、専門実践では80%、特定一般では50%になります。それぞれの対象資格と講座は、以下の通りです。

    資格・講座名
    専門実践教育訓練給付金 医療・社会福祉・保健衛生関係の専門資格(看護師や介護福祉士)
    デジタル関連技術の習得講座、専門職大学院 など
    特定一般教育訓練給付金 大型自動車第一種免許など運転免許関係
    医療・社会福祉・保健衛生関係の講座(介護職員初任者研修)など

    参照元:厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

    離職期間にやるべきこと3つ

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    現在の仕事を退職し、次の転職先に勤め始めるまでの離職期間中にやるべきことがあります。今回は、必要な手続きやスムーズに次の仕事を始めるために大切なことを、3つご紹介します。

    手続きを行う

    まずは、退職後に必要な手続きを行いましょう。退職後にやるべきなのは、以下の4つです。

    1. 失業保険の受給手続き
    2. 健康保険の変更手続き
    3. 年金の手続き
    4. 会社から支払われていないお金の確認

    失業保険を受給するには、退職後すぐにハローワークへ必要書類を持って手続きを行いましょう。2025年4月1日以降の自己都合退職の場合は7日の待機期間と、1ヶ月の給付制限の後に支給されます。つまり、すぐに手続きを行っても、1ヶ月間はお金が入ってきません。後回しにすれば、その分受給開始が後ろ倒しになるため、まずはすぐに手続きをしましょう。

    また、退職後は健康保険の変更手続きが必要です。国民健康保険・任意継続被保険者制度・家族の扶養に入るなどの選択肢があります。どの手続き方法をとるかで、必要な書類や提出先は異なります。スムーズに手続きを済ませられるよう、できるだけ早くどの保険に加入するか検討しておきましょう。

    もし、次の転職先が決まっていない場合は、退職後14日以内に国民年金への切り替えか、家族の扶養に入る手続きが必要です。そのほか、会社から支払われるお金が手元に入ってきているかも確認しましょう。

    教育訓練などでスキルを身につける

    離職期間中に教育訓練などを活用して、仕事につながるスキルを身につけましょう。離職期間中は仕事がない分、集中して新しいスキルを身につけられます。特に次のやりたい仕事が決まっているが、スキルを身につける必要がある場合や、紹介状などを活用したい場合は教育訓練を活用しましょう。

    教育訓練以外でも、プログラミングや資格の取得、語学学習など気になるものを身につけましょう。仕事や次のステップにつながるスキルが身につけば、自信を持ってその後の生活を送れるようになります。

    生活リズムを崩さない

    仕事がない期間だからといって、生活リズムを崩して過ごし続けていると、再就職した時に体が元の状態に戻らず辛くなります。健康的に過ごすためにも、生活リズムを保って生活しましょう。

    まずは、少しでも早い時間帯に起きて、太陽光を浴びるようにしましょう。日光を浴びると精神を安定させるセロトニンが分泌されるほか、体内時計がリセットされるため、規則的な生活を送れます。就寝と起床の時間を統一させて、再就職後もスムーズに生活ができるように、離職期間も過ごしましょう。

    離職期間を無駄にしない過ごし方5選

    離職期間をさらに無駄にしないために、意識しておきたいポイントを5つご紹介します。離職期間はもちろん、再就職後も安心して過ごすために、ぜひご確認ください。

    情報収集

    まずは、離職期間や再就職に向けてやりたいこと、やっておくべきことの情報収集を行いましょう。資格を取得したい、体の不調を治したい、仕事につながる資格を取得したいなど、やりたいことは色々あるでしょう。

    少しでも離職期間を無駄なく、充実させるためには、どのようなステップを踏むのか、費用についても調べる必要があります。気になることは、とことん調べて情報を収集しましょう。

    仕事でできなかったことをやる

    離職期間は仕事でできなかったが、やりたかったことをやる絶好の機会です。離職期間は旅行や資格取得、趣味を楽しむ、自分を癒すなどに対して、まとまった時間がないとできないことに取り組める期間となります。また、後回しにしていた歯医者や眼科などの病院へも行って、不調を整えましょう。

    相談相手を見つける

    離職期間中は人との関わりが減る場合が多く、1人で過ごす時間が増えていきます。働いていないことに罪悪感や不安感を抱き、孤独を感じる場合もあるでしょう。

    不安や孤独を感じた時に、気軽に相談できる相手を見つけておくと安心して過ごせます。知っている人に相談しにくい場合は、相談窓口に相談するのもおすすめです。不安な気持ちは1人で抱え込まずに、誰かに相談しましょう。

    有意義な過ごし方を考える

    離職期間の1日を快適に過ごすために、有意義な過ごし方を考えてみましょう。まずは、スマホアプリで1日の過ごし方を可視化するなど、普段の生活の仕方を認識するところから始めましょう。

    自分の理想の生活と現在の過ごし方を比較して、改善すべきところが分かれば、有意義な1日を過ごせるようになります。時間管理術が身につけば、再就職後の仕事をする時にも役立ちます。

    今後の生活について検討する

    時間のある離職期間中に、今後の生活や人生について検討しましょう。スキルやキャリアプランはもちろん、マネープランの見直しもおすすめです。特に、収入がなくなる離職期間は、今までと同じように出費をしていては、蓄えがなくなってしまいます。

    無駄な支出がないか確認しましょう。特にスマホの利用料金やサブスクリプション、保険などは一度見直しをすると、節約効果が大きいです。また、家計の見直しと同時に、将来の生活資金や老後資金などを、どのように用意するのかなども検討しましょう。

    まとめ

    2025年4月から施行される雇用保険制度の改正から、自己都合退職時の失業保険の給付制限が短縮される内容をご紹介しました。現在、自己都合退職時に失業保険を申請すると、2ヶ月の給付制限後に受給できるようになります。

    しかし、改正後は離職後や離職前1年間に教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されるほか、通常時でも制限期間が1ヶ月に短縮されます。また、同時に教育訓練費用の負担率が引き上げられるなど、改正の内容はメリットとなる点が多くあります。

    今後、転職を検討している方は、少しでも有意義に離職期間や再就職後の生活を送るために、気になるポイントをぜひもう一度振り返ってみてください。

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