ビル管理士試験とは? 概要や試験対策についても解説
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- 公開日:2022年8月 2日
ビルを利用する人が快適に安全に過ごせるよう、設備の管理・点検などを行うビルメンテナンス。今回は、ビルメンテナンス業界において特に大きい権限を持つ「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」の資格についてご紹介。試験内容や受験に必要な資格や実務経験など、詳しくお伝えしていきます。
この記事の目次
ビル管理士試験とは?
ビル管理士とは通称であり、正式名称は「建築物環境衛生管理技術者」と言います。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律により、建築物の所有者には建物の維持管理が環境衛生上適正に行われるよう、監督するものの設置が義務づけられています。
この「監督するもの」こそが「建築物環境衛生管理技術者」であり、これを名乗るためには同名の資格を取得する必要があります。
この資格は国家資格であり、建築物環境衛生管理技術者は、ビルの所有者やテナント先に対し意見を述べる権限や、その意見の尊重義務が法律で定められており、事実上の最高責任者と言えます。
管轄は厚生労働省となっているので、詳しい仕事内容については厚生労働省のサイト(※1)をご覧ください。
※1 厚生労働省 建築物環境衛生管理技術者について
そしてこの資格取得をするためには、講習会を受講するか、試験に合格する必要があります。これらは厚生労働大臣が指定する試験機関、公益財団法人日本建築衛生管理教育センターが実施しています。
今回はこの「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」の試験について詳しくお伝えしていきます。
合格率20%程度!ビルメンテナンス業界でも難関資格
大きい権限をもつ資格だけあって、2021年の試験合格者は1707人。(※2)全体の17.7%と、かなりの難易度を誇ります。
2020年の合格者は1933人で全体の19.5%、2019年の合格者は1245人で全体の12.3%と、年によって違いがありますが、それでも合格率は20%程度で推移しているので、難易度の高い試験だということ分かります。
※2 厚生労働省 第51回建築物環境衛生管理技術者試験の合格発表
気になる合格基準
まず、試験問題数は全科目合計180問で、配点は1問につき1点です。
試験科目は7科目で、科目ごとの得点が満点数の40%以上、かつ、全科目の得点が全科目の満点数の65%以上の場合に合格となります。
つまり、合計得点が合格点を超えていても、40%未満の科目があった場合は不合格になる、ということを覚えておきましょう。
2022年度の試験について
2022の試験については、厚生労働大臣が指定する試験機関、公益財団法人日本建築衛生管理教育センターのサイト(※3)にて試験日程が開示されています。(2022年の度分の申し込みは終了しています。)
試験実施日:2022年10月2日(日)
試験地:札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、福岡市
受験料:13900円
合格者の発表は、2022年10月31日(月)午前10時に公益財団法人日本建築衛生管理教育センター国家試験課、もしくはサイトに番号が掲載されます。
※3 公益財団法人日本建築衛生管理教育センター 建築物環境衛生管理技術者 試験について
ビル管理士試験には受験資格が必要!
「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」は、さまざまあるビルメンテナンス資格の上位資格とも呼べる資格のため、受験するためには建物の環境衛生維持管理業務に従事していた2年の実務経験が必要となります。
建物の環境衛生維持管理業務とは、下記などを指します。
空気調和設備管理、電気設備管理、給水、給湯設備管理 (貯水槽など)、清掃及び廃棄物処理、排水設備管理 (浄化槽など)、ねずみ・昆虫などの防除、ボイラー設備管理
また、実務経験としてカウントされる建物も下記のように指定されています。
商業施設 | 興行場(映画館、劇場など)、遊技場(ボーリング場など)、百貨店、店舗 |
---|---|
公共施設 | 集会場(公民館、市民ホールなど)、図書館、博物館、美術館、学校など |
宿泊所 | 旅館、ホテル |
医療・福祉施設 | 保育所、老人ホーム、病院など |
そのほか | 結婚式場、研修所、事務所、共同住宅、保養所、寄宿舎など |
また、名称は違いますが、上記の目的で使用されている建物であれば実務経験としてカウントされますので、勤めている企業に実務経験証明書を発行してもらいましょう。
上記に含まれない建物は、倉庫、駐車場、工場(浄水場、下水処理場、清掃工場、製造工場など)通信施設、発電所などが上げられます。
業務や建物の判断が難しい場合は、一度日本建築衛生管理教育センター国家試験課に問い合わせてみるのが良いでしょう。
ビル管理士試験の試験内容
ビル管理士試験は全部で7科目であり、下記のような点数配分になっています。
科目 | 配点 | 合格基準 |
---|---|---|
建築物衛生行政概論 | 20点 | 8点 |
建築物の環境衛生 | 25点 | 10点 |
空気環境の調整 | 45点 | 18点 |
建築物の構造概論 | 15点 | 6点 |
給水及び排水の管理 | 35点 | 14点 |
清掃 | 25点 | 10点 |
ねずみ、昆虫等の防除 | 15点 | 6点 |
180点 | 117点 |
合格点は全科目の満点数の65%以上である117点ですが、各科目にも合格基準点があるので、偏ることなく満遍なく勉強するようにしましょう。
基本的に正誤問題や穴埋め問題が多いですが、計算問題や図の問題も出題されますので、過去問はきちんとチェックする必要があります。
建築物衛生行政概論
主に「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」の問題ですが、建物を管理するにあたり必要な法律の問題も出てくるため、しっかり傾向を把握しておきましょう。
建築物の環境衛生
衛生に関して、より専門的な知識が必要となる問題が出題されます。そのため専門外、と思うような範囲も出てくるので注意しましょう。
空気環境の調整
もっとも問題数の多い範囲になります。他の科目より合格ラインが厳しく、しっかり勉強すべき範囲を言えるでしょう。計算や図を参照して解く問題も出ますが、実務レベルの問題もあるため、取れるところでしっかり点を取っておきましょう。
建築物の構造概論
主に管理することになる建物の構造についての問題です。これ以降は実務の中で経験則として覚えている問題も出てくるので、しっかり取っていきましょう。
給水及び排水の管理
主に給水設備や水道法などについての問題です。
清掃
ビルの清掃に関わる範囲です。そのため廃棄物処理法といった法律の内容から、ビル清掃ならではの問題など幅広い問題が出題されます。
ねずみ、昆虫等の防除
害虫・害獣駆除の問題であり、時に生物の生態も出てきますので、過去問を見てしっかり傾向を学んでおきましょう。
計算問題・図の問題も対策要
特に出題範囲の広い「空気環境の調整」範囲では計算問題や図を参照して解く問題が出題される傾向にあるので、当日慌てなくてもいいよう、過去問を参照してしっかり傾向を把握しておきましょう。
ビル管理士試験勉強のおすすめ学習方法とは?
独学
現在は過去問も掲載されている他、各社から教本やテキストも多数販売されています。自分のペースでこつこつ勉強していきたい方は、独学がオススメです。
何かしらの講座に入会して勉強する場合も、過去問や模擬問題を繰り返し解くことは非常に重要です。出題傾向の把握や問題に慣れるためにも、最低でも過去問は繰り返し解き、満点を狙えるようにしておきましょう。
動画教材
最近はEラーニングやDVDによる動画教材サービスも始まっています。
料金はかかりますが、より分かりやすい解説がほしい、という方はこちらもご検討ください。
講習
受講資格に該当する場合、101時間の講習を受講することで「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」の資格を取得することができます。
受験と違う点は、受講料が108800円と受験料より割高であること、受講資格が実務経験のみならず、所持資格や学歴によって細かく決められていることが上げられます。
ですが合格率の低い試験と違い、確実に資格を取得できるので、ご自身の経歴を鑑みてこちらに応募するのも一つの手段です。
細かい内容については、サイトをご覧ください。(※4)
※4 公益財団法人日本建築衛生管理教育センター 建築物環境衛生管理技術者講習会
ビル管理士試験はいつから勉強したほうが良い?
合格率は20%程度とかなりの難易度の試験です。そのため余裕を持って勉強にあたる必要はありますが、だからと言ってずっと同じ集中力を持続できる方は多くないでしょう。
単純計算して、試験科目は7科目。一科目につき10時間取るとしても、70時間必要になります。1週間に2,3時間取った場合、一月に取れる勉強時間はおおよそ15時間前後でしょう。
その場合、およそ試験から5ヶ月前には勉強を始めていないと間に合わない計算になります。
もちろんこれはあくまで一例ですが、週に自分がどれくらいの勉強時間が取れるか算出するのは、勉強計画を立てる上で、非常に有効な手段です。
ぜひ試験日から勉強を始める時期を逆算し、余裕をもって勉強していきましょう。
ビル管理士試験の受験資格がなかった!どうしたらいい?
前述したように、「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」には受験資格があり、それを満たしていなかった場合は受験できません。
実務経験をつけながら試験対策する
満たしていない理由はおそらく「実務経験」によるところが大きいと思われるので、この実務経験を満たす環境で働く必要が出てくるでしょう。
よって、もし「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」の資格取得を目指すのなら、前述した「実務経験」に該当する施設で該当業務に携わりながら、試験対策を行っていきましょう。
別の資格取得を目指す
前述した「講習」を目指す手段もあります。特にビルメンテナンスにはビル管理士以外にも、「電気工事士」「危険物取扱者」「ボイラー技士」「冷凍機械責任者」といった資格があり、これらの資格を取得した後に該当する実務経験を積むことで、講習会を受講することもできるようになります。
もし確実に資格を取得したい、という方は、じっくりそちらの道を検討するのも一つの手段でしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」の資格についてご紹介しました。
試験内容や受験に必要な資格や実務経験など、今回お伝えしたことを参考に、自分にあったキャリアプランを描いていただけたらと思います。