退職金から税金はいくら引かれる!?手取り金額の算出法とは

  • ちょっと得する知識
退職金から税金はいくら引かれる!?手取り金額の算出法とは

退職金がいくらもらえるかを知ること。それはサラリーマンにとって重要な情報です。退職後の生活に備えるためにも、できるだけ正確に把握しておきたいもの。ここでは、退職金の仕組みや相場に加えて、税金の内容や計算方法についてもお話します。

この記事の目次

    退職金の基礎知識

    そもそも退職金とはどのようなものなのでしょうか。制度の内容をおさえた上で、「退職金は誰がもらえるのか」「いくらもらえるのか」といった疑問に答えていきます。

    退職金は誰がもらえる?

    退職金とは、退職時に会社から特別に支払われる一時的な賃金のこと。税法では、「退職所得」と呼ばれます。定年退職の際にもらうイメージが強い退職金ですが、定年前に転職などで会社を退社した場合でも、退職金をもらえることがあります。

    退職金は、多くの会社で導入されている制度ですが、必ずしもすべての会社で支払われるものではありません。退職金の支払いは、国や法律が定めるものではなく、勤めている会社次第のためです。

    つまり、退職金がもらえるのは、退職金制度のある会社で働き、会社が定めた支給条件を満たしている人。制度がなければ退職金はもらえないことになりますし、制度はあっても支給対象者でなければ同様です。

    なお、退職金制度については、企業規模が大きいほど導入率は高く、小さい会社ほど低い傾向にあります。

    関連記事:非正規雇用でも退職金がもらえる!?確定拠出年金の基礎知識を学ぼう

    退職金はいくらもらえる?

    退職金について考えるとき、一番の関心はその金額でしょう。前述のとおり、退職金については各企業が決めているため、支給額も企業ごとに異なります。まずは、自社の就業規則や賃金規則を確認し、退職金規定の内容をチェックすることが大切です。一般に、退職金の額はさまざまな条件で変化し、大企業か中小企業かでベースは大きく異なります。

    個人の条件としては、退職理由が「自己都合退職」であるか「会社都合退職」であるか。さらには、本人の「学歴」が大卒か高卒か、さらに「勤続年数」、会社によっては退職までに勤めた「役職」などの要素が関わってきます。

    たとえば、東京都産業労働局の調査をもとに、大卒社員が中小企業を退職するケースで、勤続年数ごとのモデル退職金の相場を見てみましょう。

    退職金モデル支給.jpg

    自己都合か会社都合かの退職理由による差も明らかですが、勤続年数が大きく影響することがわかります。支給額は勤続年数などの条件で変わるので、実際に退職を考えるなら、事前に自分がいくらもらえるのかをシミュレーションしておきたいものです。

    退職金と税金の関係

    退職金はまとまった額になることが多いため、税金も気になるところです。受け取る金額次第では、税金も大きな金額になる可能性があります。税金の内容や計算方法、必要な手続きなどを知っておきましょう。

    pixta_46400897_M.png

    退職金を受け取る前に

    退職金は特別な「所得」であるため、退職金を受け取ったら確定申告をする必要があるのではないか、と気をもむ人もあるかもしれません。しかし実際には、勤務先に事前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておけば、原則として確定申告の必要はありません。

    勤務先が、退職所得の金額に応じて「退職所得控除」を反映させた税額を計算し、退職金の支払いの際に源泉徴収してくれるためです。

    しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しないでいると、退職金で控除なしの税額を源泉徴収されてしまいます。

    「退職前に会社と関係が悪化し、相談しづらい...」という状況になれば、自分で確定申告をして清算するという事態も。このようなことを避けるためにも、円満な退社を心がけましょう。

    退職金にかかる税金の計算方法

    退職金とはいえ収入には違いありませんから、税金は課せられます。ただし、長年の功労に報いるという退職金の意図から、他の所得より優遇されています。

    税金の種類は、所得税と復興特別所得税、そして住民税です。他の所得とは分離して計算し、「退職所得控除」が認められていて、税負担が軽くなるように配慮されています。

    退職金にかかる所得税は、「退職所得」に対して所得税の税率を掛けて計算します。「退職所得」は「(退職金-退職所得控除額)✕0.5」で求めます。課税対象となる退職所得は、退職金より大きく減額されることがわかります。

    また、退職金が退職所得控除額以下であれば、退職所得は0円となり所得税はかかりません。税金対策を考える際には、退職所得控除額がカギと言ってよいでしょう。

    退職所得控除額の計算方法は、勤続年数によって異なり、以下のように計算されます。

    勤続年数20年以下 「40万円×勤続年数」※80万円に満たない場合には、80万円

    勤続年数20年超 「70万円×(勤続年数-20年)+800万円」

    勤続年数ごとのシミュレーション

    勤続30年の場合のシミュレーション

    勤続30年で2,000万円の退職金をもらう場合でシミュレーションしてみましょう。

    退職所得控除額 「70万円×(30年-20年)+800万円」=1,500万円
    退職所得 「(2,000万円-1,500万円)×0.5」=250万円

    この250万円が課税対象となるわけです。平成30年分所得税の税額表によれば、250万円への税率は10%、控除額は97,500円ですので、所得税額は「250万円×10%-97,500円」で152,500円。復興特別所得税(所得税の2.1%)を合わせると、合計155,702円となります。

    勤続10年の場合のシミュレーション

    勤続10年で200万円の退職金をもらう場合でシミュレーションしてみましょう。

    退職所得控除額 「40万円×10年」=400万円

    控除額が退職金を上回り、退職所得は0円です。所得税と復興特別所得税はかかりません。

    住民税についても、退職所得に課税します。税額は「退職所得×税率10%」で計算し、所得税と一緒に退職金の受け取りの際に差し引かれます。

    まとめ

    退職金は法律で定められたものではないので、会社によってその内容はまちまちです。支給の有無だけでなく支給金額や条件など、自分の会社の規定を確認しておきましょう。さらに、税金の計算方法を知っておけば、実際に受け取れる金額を把握することもできます。

    転職を考えている方や将来のライフプランを検討している方は、シミュレーションしておくと安心ですね。

    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)

    関連記事

    退職金をもらってからでもまだ稼ぎたい!そんな方向けの高収入の中高年求人特集

    記事をシェアする

    • Twitter
    • Facebook
    • Line

    あなたへのオススメ記事

    【個人事業主向け】定額減税マニュアル!申請方法から控除しきれない場合の対処法まで解説

    【個人事業主向け】定額減税マニュアル!申請方法から控除しきれない場合の対処法まで解説

    2024年6月から始まった定額減税は、所得税や住民税を支払っている人、全員に関係する制度です。給与所得者の場合は特別な手続きはありませんが、個人事業主は確定申告などの手続きが必要になります。今回は定額減税の概要から、個人事業主が定額減税を受ける方法、控除しきれない方法や所得税がない場合についての救済措置をご紹介します。個人事業主として働いている人は、ぜひご一読ください。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年11月13日
    106万円・130万以外にもある年収の壁。自分に最適な損しない働き方を見つけよう

    106万円・130万以外にもある年収の壁。自分に最適な損しない働き方を見つけよう

    106万円や130万円の壁などの“年収の壁”は、パートやアルバイトで働く人なら、よく耳にするワードでしょう。年収の壁にはいくつか種類があり、分かりづらい点も。今回は社会保険と税金に関係する年収の壁や、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。年収の壁について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年11月 5日
    高額医療費制度とは?申請方法や注意点、マイナ保険証との関係をご紹介

    高額医療費制度とは?申請方法や注意点、マイナ保険証との関係をご紹介

    年を重ねていくと年々、体の不調や不安を感じる方は多いでしょう。怪我や病気のリスクも増え、医療費の負担も増えていきます。今回は万が一のときに利用できる、高額医療費制度の概要から申請の流れ、マイナ保険証を利用している場合や注意点などについて解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年10月31日
    ふるさと納税制度の仕組みが知りたい!活用する上でのメリット・デメリットとは?定額減税への影響も解説

    ふるさと納税制度の仕組みが知りたい!活用する上でのメリット・デメリットとは?定額減税への影響も解説

    年々利用する人が増えている“ふるさと納税”。今回はふるさと納税の仕組みから、メリット・デメリット、定額減税の影響について解説します。併せてどのような人におすすめなのかもご紹介していますので、ふるさと納税を利用したいけれど、理解しきれていないといった方は、ぜひご一読ください。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年10月29日
    【2024年更新】全国47都道府県の最低賃金ランキング!効率的に稼ぐための方法も紹介

    【2024年更新】全国47都道府県の最低賃金ランキング!効率的に稼ぐための方法も紹介

    2024年10月から最低賃金が引き上げられました。実際に自身の住んでいる地域がどのくらい引き上げられたか知らない人もいるでしょう。今回は改定された最低賃金や、地域に関係なく時給が高い仕事についてご紹介します。少しでも稼ぎたいと考えている人は、ぜひご一読ください。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年10月23日
    社会保険の扶養から外れるタイミングとは? 外れてしまう条件や収入基準を解説

    社会保険の扶養から外れるタイミングとは? 外れてしまう条件や収入基準を解説

    2024年10月より社会保険適用の対象が拡大されました。そこで対象となった方にとって気になるのは、社会保険の扶養から外れるタイミングではないでしょうか。本日は、社会保険適の扶養から外れる条件やタイミング、その後の手続きなどについて解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年10月 3日

    おすすめ・シリーズ記事

    人気記事ランキング

    おすすめの求人はこちら

    活躍中の年代から探す
    雇用形態から探す
    募集条件から探す
    働き方から探す
    福利厚生から探す
    職種から探す
    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)