パートは5年でクビってほんと?5年ルールとは?【社労士監修】
- ちょっと得する知識
- 公開日:2018年11月27日
パートで働いている人なら、5年をすぎると契約更新がされなかったりするらしい、と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。不安なく働き続けられるように、法改正で新しくできたルールを正しく理解しておきましょう。
この記事の目次
パートで5年以上働くとクビになりやすいってホント?
パートやアルバイトの立場であっても、5年以上同じ会社で継続して働くことで、正社員と同じようにクビになりにくくなりました。詳しくご紹介します。
「無期転換」ってご存知ですか?5年ルールとは?
パート、アルバイト、派遣、契約社員などの有期労働契約で働く人が、同じ会社で雇用契約を繰り返し更新して契約期間が5年を超えると、契約期間中に次の契約時に無期労働契約への転換を求めることができます。これを「無期転換ルール」と言います。5年超でその権利が発生することから、「5年ルール」とも呼ばれています。
このルールは、2013年4月施行の「改正労働契約法」によって新しくできたものです。法律施行以前の年数はカウントされないため、5年を経過した2018年4月から本格的に運用が始まりました。
2013年4月以降に1年契約を5回更新してきた人の例で考えてみましょう。この場合、2018年4月以降に1年契約を更新すれば、通算5年を超えることになります。このタイミングで、労働者に無期労働契約への転換を申し込む権利が生まれ、会社に申し込みをすれば、次の契約からは期間の定めのない「無期労働契約」となります。期限なしの契約ですから、更新ごとに更新されないことを心配する必要はなくなるわけです。
なお、雇用契約の「更新」には、自動更新も含みます。毎年自動的に更新されているために、契約をあまり意識していない人もあるかもしれませんが、まさにそのように長年会社に不可欠な戦力として定着している人こそ、このルールが想定している対象者なのです。
また、無期雇用への転換には、働く人本人からの申し込みが必要です。契約が5年を超えたからといって、自動的に無期雇用に切り替わるわけではないことに注意しましょう。
無期雇用となるメリットは?
無期転換により有期雇用から無期雇用になると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
まずメリットでは、雇用の安定性が増すことが挙げられます。有期契約では、契約期間満了のたびに、「契約更新してもらえないのでは」、「クビになるのでは」というような不安がつきまといます。無期転換できれば、期限なしの雇用になるのですから、こうした不安からは解放されることになります。一方的な雇止めのリスクも低くなります。
このことにより、安心して意欲的に働くことができるようになるのではないでしょうか。長期的なキャリア形成を考えることもできますね。
会社によっては、無期契約をきっかけに正社員並みに労働条件が良くなるケースもあるようです。ただし、無期転換で変わるのは雇用契約の期間のみ。正社員になれるわけではないので、誤解のないようにしましょう。
デメリットはあるの?
一方デメリットとして考えられるのは、無期契約をきっかけに仕事量が増える場合があることでしょうか。雇用契約としては期間が無期に変わるだけなのですが、個別の事例では、仕事量が変わったり、責任が重くなったりしたという報告もしばしば聞こえてきます。会社としても期間の定めなく働く人には、仕事の幅を広げてもらいたいという期待があることが多いです。
無期雇用への転換は、5年以上同じ会社で働いてきた人自身の申請があってはじめて行われるものます。対象となったら、転換の希望とともに、労働条件についても勤め先に確認することが必要です。
5年直前でクビになる!?パートがクビになる理由
5年ルールの運用開始とともに、今回の法律が5年以内の雇止めを促進してしまうのでは、という懸念が各方面でされています。実際にはどのような決まりになっているのか。パートがクビになる場合の条件も、あわせて確認しておきましょう。
会社はパートを簡単にクビにできる?
会社によっては、パートやアルバイトを無期雇用に転換することを嫌がり、無期雇用の権利が発生する5年を超える前にクビにしたり雇止めしたりするのでは、という懸念がよく聞かれます。もっともな懸念ですし、多くの人がそのように誤解をしがちですが、法律上では、会社は働く人を正当な理由なくクビにすることはできません。
働く人を守る法律によって、パートやアルバイトであっても、クビにするには正社員並みに厳しく理由が求められます。「解雇もやむを得ないほど、明らかに労働者側に責任がある」ことを表す理由でなければならないのです。具体的には、横領、賭博、採用条件に深く関わる点についての経歴詐称、2週間以上の理由のない無断欠勤などがこれに該当します。
たとえば子育て中の主婦の場合、子どもの発熱など、急に休みをとらなければならない状況は、しばしば起こるものです。こんなことで休みをとったらクビになりそう、と心配になるかもしれませんが、通常、これは正当な解雇理由には当たらないということがわかります。
それでも解雇となったときは
それでも解雇を言い渡されてしまったときには、すぐに了承せずに、会社に「解雇予告」や「解雇予告手当」の対応を確認することが大切です。会社は従業員を解雇する場合、30日以上前に従業員に「解雇予告」をする義務があります。そして、30日より解雇予告が遅くなると、会社はその遅れた日数分の平均賃金(解雇予告手当)を払わなければいけないことになっています。
残念ですが会社と揉めてしまった場合、その会社にどうしても居続けたいのか、多少の解決金がもらえればよいのか、揉めてそこでエネルギーを使うくらいなら前向きに他のことに時間を使う方がよいのかなど、対応はよく考えて決めるとよいでしょう。
会社の対応によっては、失業保険にも影響が出てくることも知っておきましょう。もし自己都合退社として処理されてしまうと、失業保険での受け取り条件が変わってしまいます。失業手当の給付日数と給付制限に大きな違いが出てくるのです。
なお、日雇い労働者や季節労働者など、臨時に雇われた労働者や試用期間中の人については、解雇予告や解雇予告手当の適用対象にはなりません。
まとめ
同じ会社でパートとして長く働いてきたなら、そして今後も長く働いていきたいと思うなら、無期転換を行うことは安心して働き続けるための助けになるものです。無期転換を行うためには、働く側から意思表示をする必要がありますので、正しい知識を身につけて準備しておきましょう。
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