社会の「不」を突破する「伴走者」であれ。―HR、起業、売却、海外挑戦、そして辿り着いた"地域に仕組みを残す"という使命―|株式会社カルビン

  • 企業インタビュー
社会の「不」を突破する「伴走者」であれ。―HR、起業、売却、海外挑戦、そして辿り着いた

起業と事業売却、海外での社会課題への挑戦を経て、現在は株式会社カルビン代表として全国の地方を飛び回る東さん。なぜ今、日本の地方で「外部人材を活用する文化づくり」に取り組むのか。HRの原点から海外挑戦の挫折、そして自治体と連携する理由まで、その思考と覚悟を伺いました。

この記事の目次

    【プロフィール】

    東 慶親(あずま よしちか)
    リクルートにて9年間、HR領域の最前線で営業および商品開発に従事。顧客の「不」に向き合う現場主義を徹底的に叩き込む。その後、ライブドア、楽天を経て2007年に起業。成功報酬型インターネット広告モデルで急成長を遂げるも、組織の持続性を見据え、自らの意思で事業売却という"攻めの決断"を下す。

    売却後は連続起業家として株式会社カルビンを立ち上げる。社会課題を解決するビジネスを探し続け、行きついたのは東南アジア・フィリピンにおける給与前払いサービス(フィンテック事業)の立ち上げ。社会構造に根差した課題解決に3年半挑むもコロナ禍を経て帰国。

    エリアを母国日本に絞り、これまでの経営経験と海外での挑戦を背景に、地方自治体と連携しながら中小・小規模事業者に「外部人材を活用する文化」を普及させるべく伴走支援型で全国を飛び回っている。

    私に刻まれた「創造」と「"不"への違和感」

    私は導かれるように、HRの世界へと入りました。リクルートという戦場で私が学んだのは、決して小手先の営業技術ではありません。「顧客の『不』に潜り込む」ということでした。

    「良い人が採れない」「すぐ辞めてしまう」、その言葉の奥にある構造を疑え。既存商品を売るな。"解決できる形"を創れ。営業として来る日も来る日も現場を歩き、違和感を集め、これらを商品を通じて顧客の課題解決に繋げる。この「現場起点のクリエーション」が、私の原点になりました。

    Web2.0の熱狂、そして挫折

    2005年、私はインターネットの奔流に身を投じました。舞台はライブドアですが、瞬く間に歴史的事件が起きたのです。怒号、混乱、そして退場。不確実性という現実を、私は身をもって知ることになります。

    その後、次なるステージの楽天グループで出会ったのが成功報酬型広告でした。「枠」ではなく「成果」を売る。ユーザーが喜び、顧客が潤い、初めて自社が利益を得る三方よしの構造です。この潔さに、この広告モデルは革新的であると、私は心の底から痺れました。

    2007年に起業し、人材募集の世界に成功報酬型インターネット広告モデルを創り、会社は急成長を遂げました。日本を代表するハンバーガーチェーンや同じくコンビニエンスチェーンなどが起業直後から大手取引先となります。

    しかし、リーマンショックの影響があり人材ビジネスは冷え込みました。ここをEC領域へのピボットで乗り越えました、乗り越えたどころか急成長したのです。 ところが、組織は悲鳴を上げていました。私にとって大切な従業員は「同志」です。

    深夜まで消えないオフィスの灯りを見るたび、私は経営者として逃げられない問いを突きつけられました。「成長の代償を、誰に払わせているのか」。 数字は伸びていましたが、組織の持続可能性は限界に近づいていたのです。

    そして私は、自らの意思で会社の売却を決断しました。社員にその決断を伝えた日、会議室には重たい沈黙が落ちました。裏切りだと感じた従業員もいたはずです。もしかしたら、安堵した者もいたかもしれません。誰よりも、その両方を理解していたのは私でした。

    印鑑を押す瞬間、手が震えることはありませんでした。ですが、胸の奥で何かが静かに折れる音がしました。譲渡が完了した夜、灯りの消えたオフィスに一人立ち、私は初めて耳鳴りがするほどの"静けさ"を聞きました。あれほど追い求めた成長の先にあったのは、歓喜ではなく、責任の余韻だったのです。

    それでも、目は逸らしませんでした。事業譲渡は敗北ではなく、更なる攻めへの決断です。同志を守り、事業を持続させ、次の成長曲線へ移行するための経営判断。感情ではなく、責任で選んだ決断。この経験が、「攻めとは、守る覚悟を伴うことだ」と私に深く刻み込みました。

    マニラで見た「日銭がない」という現実

    事業売却後、私は東南アジアへ向かいました。 フィリピン・マニラ。そこで私が見たのは、利息制限法のない社会でした。借りた瞬間から抜け出せない返済、返せなければ人生の選択肢が奪われていく。

    問題は彼らの怠惰ではありません。構造なのです。その構造が、人を利息制限法の無い恐ろしい闇の世界へ誘っていました。私は給与前払いサービスを立ち上げました。今日働いた分を、今日受け取れる仕組みです。

    外様の我々が、フィリピン中央銀行のレンディングライセンス認可を取得し、国内最大手メガバンクとのシステム連携まで実装しました。しかし、コロナがすべてを止めました。世界最長のロックダウンです。それでも、私の中から「自分は、どこで戦うべきか」という問いは消えませんでした。

    IMG_7483.jpg

    帰国後、日本の地方で見た「閉塞」

    2020年、日本に帰国。私はまずテック系ベンチャーと関わり、自らを最新テクノロジーの最前線へチューニングしました。その中で地方の経営者と向き合う機会を通じ、私は再びあの時と同じ匂いを感じました。

    「人が採れない」「DXが進まない」「相談できる相手がいない」。一方で、都市部では優秀な人材が副業・フリーランスという形で余力を持っています。「人」はいるのに、接続されていない。ここに、私は日本社会の構造的な「不」を見ました。

    IMG_5315.jpg

    単なる人材紹介ではなく、地方に"仕組みを残す"

    カルビンは人材紹介会社ではありません。プロ人材を副業・フリーランスとして紹介する会社ではなく、経営者が自ら外部人材を活用し、その方の知見や経験・技術を使いこなせる状態をつくる会社なのです。

    そして、この概念を中小規模事業者に普及させ、来る労働人口減少社会に立ち向かってもらう。そんな仕組み・文化を残していく事が使命と考えています。ここでいくつか、事例をご紹介します。

    ■石川県の能登地方、70歳の農業法人社長
    周囲は彼の事を保守的だと言っていましたが、私は違う顔を見ていました。販路を広げたいが、その術がないだけなのです。都市部のプロ人材とのご縁は、ただのマッチングではありません。

    課題を再定義し、使える時間を整理し、外部が機能する設計の整備を実装することです。結果、変わったのは売上だけでなく、「外部を使っていい」という意識の変革でした。

    ■熊本県に台湾の半導体メーカーTSMCが進出、その後の地元企業の混乱
    熊本県に台湾の半導体メーカーTSMCが進出し、地元企業からの人材流出は止まりませんでした。その際に、200社の経営者を前に私が語った言葉は「囲い込むな、外部を使え」です。それは決して精神論ではありません。

    外部人材の活用に向けて、どの「課題」を切り出すのか、「誰」を入れるか、どの「時間軸」で解決するのか。ここを適切に設計しなければ、副業・フリーランス人材は決して機能しません。

    "人を入れる前に企業の構造"を整える企業の課題の整理と解決へのプロセスの設計は、あくまでも主体者である経営者が行うものです。我々は、伴走者としてサポートする事が大切だと考えています。

    ■高知県の印刷会社、20億規模の企業の製造ラインの混乱
    高知県の印刷会社にサポートとして入ったのは、67歳の製造コンサルタントです。そこで機能したのは、能力だけではありません。社長との相性、現場への理解と距離、時間の同期、この3つが噛み合ったときに外部は"外部"ではなくなるです。

    企業の課題に応じて「スキル」「タイプ」「タイム」の3つ歯車を合わせ、続ける我々の執念こそ課題解決に重要と考えています。

    「なぜ自治体と組むのか?」ミドルシニア層のプロ人材への期待

    これまで20を超える自治体を通じ、150を超える経営者をサポートしてきました。地方の経営者にとって、最初の一歩はとても重いものです。外部を使うことは怖いのです。

    だからこそ、私たちは自治体と組みます。自治体が信用を担保し、挑戦できる環境を整え、成功事例を地域に残す。単発の支援では終わらせません。それを「文化」にする。それが、カルビンの流儀です。

    これまでも、多くのミドルシニア層のプロ人材が活躍してくれています。ミドルシニア層のプロ人材がこれまで培ってきた「相手の話を聴く力(傾聴力)」、そして「現場の混乱を論理的に解きほぐす力(言い換え力)」。

    それは、深刻な不安を抱える地方の経営者にとって、何物にも代えがたい救いになります。「自分なんて」と構える必要はありません。あなたの経験は、誰かの不安を確信に変えるための「宝の地図」なのです。

    最終章rectangle_large_type_2_9e5b3286aa5c31f82a55def25327876c.jpg

    卒業がゴール、「伴走」とは依存を生まない関係

    私の目的は、契約を続けることではありません。企業が自ら外部人材を使いこなすこと。そして、私たちを卒業していくことです。ですが、新たな壁にぶつかったとき、また思い出してもらえる存在でありたいと思っています。伴走とは、決して依存を生まない関係なのです。

    HR、起業、売却、海外挑戦。すべては一つにつながっていました。現在の私は人的リソースを売っているのではありません。地域に外部人材を活用するという「仕組み」を作っているのです。地方に「外部を使いこなす文化」を根付かせること、日本の未来は、地方の経営者の熱の中にあります。私はこれからも、その隣で走り続けます。

    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)

    関連記事

    情報と人を結ぶ"ナレッジの橋渡し"で地方の中小企業の経営者を支えたい。~店長時代から積み上げた「キャリア」を総投入するエイジフリーの挑戦~|人生100年時代のライフシフト

    記事をシェアする

    • Twitter
    • Facebook
    • Line

    あなたへのオススメ記事

    82歳の起業家が挑む、シニア人材が日本を救う

    82歳の起業家が挑む、シニア人材が日本を救う"ブライト・キャリア(輝かしい経歴)"革命|株式会社アイ・ヒューマンサーチ

    現在82歳の古田さんは、平均年齢71歳のコンサルタント集団を率い、「シニアこそ企業の力になる」と語ります。定年後の20年間こそが人生の黄金期だとし、経験を武器に新たな働き方を創り出してきた古田さんの歩みから、これからの時代を生きるヒントが見えてきます。

    • 企業インタビュー
    • 2026年1月23日
    介護現場のDX化の推進をミドルシニアと共に~介護の現場から日本の未来を創る!~ |一般社団法人介護事業者生産性向上協会

    介護現場のDX化の推進をミドルシニアと共に~介護の現場から日本の未来を創る!~ |一般社団法人介護事業者生産性向上協会

    介護業界の未来を現場から切り拓くことを目指し、鈴木勝博理事が歩んできた多彩なキャリアと、介護の最前線で得た気づきをご紹介します。政治家・経営者としての経験を活かし、ICT化や人材育成、介護離職防止、外国人材との共生など、業界全体の課題に挑む一般社団法人設立の背景と今後の展望について語っていただきました。

    • 企業インタビュー
    • 2025年11月18日

    "年齢を重ねることは、より豊かに生きること"シニアのチカラを世の中の活力へ!|株式会社社会人材コミュニケーションズ

    理系エンジニアとしてキャリアをスタートし、教育・シニア支援へと歩みを進めた宮島忠文さん。人生100年時代におけるキャリアの再定義とは?年齢を重ねることが希望になる社会を目指す、その挑戦と想いを紐解きます。

    • 企業インタビュー
    • 2025年9月16日

    おすすめ・シリーズ記事

    人気記事ランキング

    おすすめの求人はこちら

    活躍中の年代から探す
    雇用形態から探す
    募集条件から探す
    働き方から探す
    福利厚生から探す
    職種から探す
    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)