"年齢を重ねることは、より豊かに生きること"シニアのチカラを世の中の活力へ!|株式会社社会人材コミュニケーションズ

  • 企業インタビュー

理系エンジニアとしてキャリアをスタートし、教育・シニア支援へと歩みを進めた宮島忠文さん。人生100年時代におけるキャリアの再定義とは?年齢を重ねることが希望になる社会を目指す、その挑戦と想いを紐解きます。

この記事の目次

    【代表プロフィール】

    宮島忠文 
    株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役CEO社長、一般社団法人社会人学舎代表理事、MBA・中小企業診断士
    総合電機メーカーにてエンジニアとしてキャリアをスタート。ハードウェア・ソフトウェア設計、生産管理システムの開発等を行う。従来より問題意識を有していた教育事業に就くべく受験指導校にて教務責任者・執行役員として18年間従事。同時に中小企業診断士として事業再生・新規事業立ち上げ等を中心とした経営診断・ハンズオン支援を行う。2013年より理念を実現すべく社会人材学舎を創業。経済産業省・中小企業庁・厚生労働省においてキャリア等に関する研究会の委員を務める。著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日本経済新聞出版)

    理系エンジニアとしての原点と、学歴を語らない理由

    まず、自己紹介代わりに私のポリシーからお話しさせてください。私は、自分の出身大学を公にしません。なぜなら、学歴というフィルターを通して人物を判断されることを良しとしないからです。

    大手電機メーカーに入社しているので、それなりの大学を出ているのだろうと思われがちですが、私が大切にしているのは大学以降に何を成し遂げ、何を学んできたかという「プロとしての実績」です。たとえば多くの外資系のコンサルティングファームで活躍する人々が、わざわざ学歴を語らないのと同じで、実力こそがすべてだと考えています。

    私は生粋の理系人間で、電子工学を専攻していました。当時の最先端技術を学びたいという思いから、メーカーのエンジニアを目指し、ご縁があって総合電機メーカーに入社。入社後は、主に医療系のシステム開発に携わり、非常に専門性の高い仕事に関わることができました。

    私は入社以来、ほぼ一貫してこの分野に身を置いていましたが、キャリアの途中で大きな転機が訪れました。それは、自ら希望した開発部門から生産管理部門への異動です。技術者として、システムや回路というミクロな視点でモノづくりをすることには慣れていましたが、生産管理の仕事は全くの別物でした。

    製造ライン全体を俯瞰し、生産プロセスを最適化する。これは、業務フロー全体を理解し、無駄を徹底的に排除する仕事でした。この経験を通じて、私は技術的な知識だけでなく、業務全体を俯瞰する視点や、論理的に課題を特定する力を身につけました。今思えばこの2年間は、後の私のキャリア、特に経営者としての土台を築く上で、最も重要な期間だったと言えます。

    初めての起業と、キャリアへの目覚め

    総合電機メーカーを退職した大きな理由の一つは、現場のエンジニアとして第一線で働き続けたいという思いが強かったからです。管理職への移行を機に、私は一度会社を離れることを決意しました。退職後、私はIT企業を立ち上げました。総合電機メーカー時代に身につけた技術と、製造現場で得た業務改善のスキルを武器に、顧客の業務システム構築を手掛ける会社です。

    正直なところ、技術には絶対的な自信がありました。現役のエンジニアとして、実際に最先端のシステムをゼロから構築し、顧客の業務効率を劇的に向上させることにも成功しました。生産管理部門の経験で身に付けた事業を俯瞰して捉え、最適なフローを構築するスキルは、十分に事業系のシステム構築に活かせると確信することができました。

    しかし、創業からわずか3年後、会社を閉じることになります。原因はシンプルでした。技術はあっても、お金の知識や経営、そして人の大切さを知らなかったからです。当時はまだクラウド環境が一般的ではなく、システム開発には高額なサーバーや機材の先行投資が必要でした。仕事が来るたびに、多額のコストが発生し、銀行からの融資は受けられませんでした。

    仕事が順調に進むほど、資金繰りが厳しくなるという皮肉な状況に陥りました。技術者としての自信はあったものの、経営者として未熟だった私は、この壁を乗り越えることができなかったのです。この失敗は、私に大きな反省をもたらしました。同時に、私自身のキャリアを深く見つめ直す機会となりました。

    次に私が選んだのは、これまでの経験とは全く異なる「教育」の分野でした。具体的には、資格試験予備校です。縁あって学校経営に携わり、そこで私が気づいたのは、「資格」はあくまで人生の「手段」に過ぎないということ。

    司法試験や公務員試験といった難関資格に合格しても、必ずしもキャリアを成功させられるわけではない。一方で、たとえ不合格であっても、自分のビジョンを明確に持ち、日々行動している人は道を切り拓いていく。つまり、何よりも重要なのは「キャリアのビジョン」なのだと確信したのです。

    「人生100年時代」の光と影、そしてシニア支援事業への想い

    この教育事業での経験は、私の社会に対する見方を変えました。当時はまだ、日本社会が「失われた30年」の渦中にありました。リストラや早期退職制度が当たり前になり、私と同年代の優秀なミドル・シニア世代が、キャリアの行き場を失っていくのを目の当たりにしました。彼らは決して能力が低いわけではありません。

    長年培った経験や専門知識に裏付けられた高い能力、そして何より人としての厚みがある。ただ、転職という概念に慣れていない、あるいは自身の価値を言語化するスキルがなかっただけなのです。私は、この状況を非常に危惧しました。彼らのキャリア支援は、まさに社会的な課題でした。

    彼らが持つ価値をもう一度社会に還元することができれば、日本全体の活力が向上するはずだ。私は「シニアが持つ知恵と経験を、社会全体で活かせる仕組みを作りたい」と強く思うようになりました。これが、シニア支援事業で起業した動機です。これは、単に再就職を支援するだけでなく、日本の活力を高め、持続可能な社会を築くという大きな意義を持つと信じています。

    創業期の壁と、シニアが輝く「知命塾」という哲学

    2012年からこの事業を始めましたが、当初は困難の連続でした。まず、多くの企業がシニア活用に前向きではありませんでした。「コストがかかる」「ITに疎い」といった固定観念の壁に何度もぶつかりました。また、シニアの方々自身も、再就職に対して自信を失っている方が多く、転職市場の厳しさを知っているからこそ、一歩を踏み出せないでいました。

    この困難を乗り越えるために徹底して行ったのは、彼らとの「個別対話」です。シニアの方々一人ひとりのキャリアを丹念にヒアリングし、彼ら自身が気づいていない「価値」を言語化することをサポート。そして、企業に対してはシニア人材がもたらす「即戦力としての経験値」「高い付加価値」「安定した労働力」「若手育成への貢献」といったメリットを、具体的な事例で丁寧に説明しました。

    この地道な努力が、当社の核となるプログラム「知命塾」へと繋がります。「50にして天命を知る」という言葉から名付けたこの塾は、単なる就職セミナーではありません。人生の棚卸しを行い、自らの価値を再定義する場です。特に重視したのは「体感型」のプログラム。

    座学でキャリア論を学ぶのではなく、実際に自身の経験を振り返り、アウトプットすることで血肉となるような学びを得られるよう工夫しました。最近では、それらのノウハウの一部を拙著『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』にてご紹介する機会も得られました。

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    当社の強みと、シニア講師陣が担う「生きた教育」

    現在の当社の強みは、この「実体験に基づいたキャリア再定義プログラム」にあります。一般的な資格やスキルだけでなく、その人が持つ「非言語情報」----つまり、成功も失敗も経験したからこそ語れるリアルなストーリーや人間的な魅力----を最大限に引き出します。そして、このプログラムを支えているのが、当社のシニア講師陣です。

    彼らは、大手企業の管理職やエンジニアなど第一線の様々なキャリアを経験し、その後様々な葛藤を経て転職や独立を成功させたシニアの当事者たちです。教科書的な知識ではなく、自身の体験を基に語る彼らの言葉は、受講者の心に深く刺さります。彼らは「ロジック(論理)」だけでなく、「エートス(倫理)」や「パトス(感情)」をも兼ね備えているため、チャットGPTのようなAIには生み出せない「説得力」があるのです。

    具体的には当社の講師の一人であるHさんのエピソードです。元々は大手金融会社で幹部を務め、球団経営にも携わっていた方です。退職後、意気消沈していた時期もあったそうですが、当社の活動を通じて再び社会と関わるようになり、今では当社の講師の一員として活躍するだけでなく、複数の会社でコンサルティングも手掛けるまでになりました。

    彼は60歳を過ぎてから中小企業診断士の勉強を始め、4年かけて資格を取得しました。年齢とは無関係に学び続ける彼の授業は、まさに「生きた教科書」です。さらに、彼の変化はご家族にも影響を与えました。彼の奥様はイキイキと働く彼の姿に刺激され、自分も何かを始めようと一念発起し、日本語教師の資格を取得して、実際に教壇に立つまでになったと聞いています。

    Hさんのように、当社の講師たちは自身の経験を「コンテンツ」に変えることで、年齢を重ねることがいかに素晴らしいかを証明してくれています。彼らはキャリアカウンセリングや研修企画のプロフェッショナルとして、受講者と向き合い、受講者の新たな人生へのチャレンジの手助けをしています。

    また、分業化が進んだ現代社会で、多くの人が「自分の仕事がどれだけの価値を生んでいるか」を見失っています。私たちは独自の分析手法を用いて、自身の仕事が会社全体や社会の「価値連鎖」の中で、どれほどの貢献をしているかを可視化します。これによりシニアの方々は、自身のスキルや経験が持つ価値を客観的に理解し、自信を取り戻すことができるのです。

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    未来へのビジョン:シニアが「暴れる集団」に

    今後のビジョンはこの事業をさらに発展させ、シニアが主体的に活動できる「コミュニティ」を創ることです。私たちは「知命塾」の卒業生を「アラムナイ(同窓生)」と呼び、そのネットワークを活性化させたいと考えています。これまでの約1000名近い卒業生たちが互いのスキルや経験を掛け合わせ、新しい事業やプロジェクトを生み出すような、活気ある「小さな社会」を形成したいのです。

    私は、このコミュニティを「戻れる場所」と表現しています。会社に依存するのではなく、いざとなればいつでも立ち戻れる、自分たちの価値を再確認できる場所。それが、本当の意味でのジョブセキュリティだと信じています。日本の社会は、これからシニアがボリュームゾーンとなっていきます。

    彼らが「暇を持て余す」のではなく、「ワクワクする」ような社会を創ることが、日本全体の活力を高める鍵だと確信しています。すでに、当社のメンバーには、元ロボティクスのプロフェッショナル、商社マン、金融マンなど、様々な分野の超一流な人材が集まってきています。

    彼らがこれまでの経験を活かし新しい挑戦を始める姿は、これからの日本を担う若者たちにとっても、最高のロールモデルとなると考えています。一方で、就業中の自分自身をネガティブに捉え、自分に自信が持てず、老後の未来に大きな不安を抱えて定年を迎える方や、特に何も準備することなく定年を迎え、立ちはだかる年齢の壁の現実に直面し当惑する方が多いのも現実です。

    そんな悩み多きシニアの皆さんも、定年後は私の塾で改めて自身のこれまでのキャリアを再定義し、自身の理想の未来を描き、真剣に自分と向き合うことで、新たな一歩を踏み出し始めています。自信を失っていた皆さんが、顔を上げて前を向いて、新しい資格に挑戦したり、若手経営者のメンターになったりして、どんどん若々しくなる卒業生を何人も見てきました。

    彼らの「活き活きとした姿」は、ご家族をはじめ周囲にも良い影響を与え、素晴らしい相乗効果を生み始めています。私はこれからもシニアの挑戦を全力で応援し、「年齢を重ねることは、より豊かに生きることだ」という社会の新たな常識を、自らの手で創り上げていきたいと考えています。"シニアの力を日本の活力に!"人生100年時代益々楽しみです。

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