情報と人を結ぶ"ナレッジの橋渡し"で地方の中小企業の経営者を支えたい。~店長時代から積み上げた「キャリア」を総投入するエイジフリーの挑戦~|人生100年時代のライフシフト

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情報と人を結ぶ

マクドナルドでの店舗運営、人事改革、経営危機のV字回復、そして地方創生へ――。常に「現場」を起点にキャリアを切り拓いてきた日比谷さん。その原点と、これからの挑戦について話を伺いました。

この記事の目次

    PROFILE

    株式会社カルビン
    日比谷 勉(62歳)

    東京都日野市出身。学生時代は野球やソフトボールに打ち込み、大学卒業後、日本マクドナルドに入社。29歳で店長に昇進し、不振店舗の立て直し等で実績を上げる。その後、人事部で採用戦略や組織改革を牽引し、2015年の経営危機時には現場主導の施策でV字回復に大きく貢献。50代半ばでパーソルグループへ転身し大手企業の支援に従事。60歳を機に地方創生支援の「カルビン」に参画。現在62歳、生涯現役を掲げ、次なる起業も見据え挑戦を続けている。

    泥まみれの白球が教えてくれた原点――「努力はきっと報われる」

    私がこれまでの人生、そしてキャリアを振り返ったとき、自身の原点として必ず思い浮かぶのが、東京都日野市で泥まみれになって白球を追いかけた野球少年時代です。特に高校時代の野球部は、朝から晩まで水も飲まずにノックを受け続けるような、今では考えられないほど過酷な環境でした。

    しかし、その厳しい練習の日々の中で、私は人生のベースとなる一つの確かな手応えを実感しました。 当時の監督は、学年に関係なく、目的を持って本気で取り組む人間を正当に評価してくれる方でした。私は決して体は大きくありませんでしたが、足の速さなど自分の強みを必死にアピールし続けた結果、ベンチ入りを果たすことができたのです。

    「自ら目的を持ち、懸命に頑張れば、必ず見てくれている人がいてくれる。努力はきっと報われる」。この強烈な成功体験が、私のキャリアを切り拓く最初の原動力となりました。

    「Up to You」運命的な出会い。若き日の直感が導いた道

    大学では野球からソフトボールへ転身。ソフトボール部で相変わらず白球を追い続ける日々を続け、最終学年ではキャプテンを務めるまでやり切りました。迎えた就職活動。当時はバブル絶頂期で、流通や証券が大人気の時代でした。私も大手百貨店から内定をいただき、周囲も喜んでくれましたが、会社の都合で配属先が決められる当時の百貨店のキャリアパスに、どうも腹落ちしない自分がいました。

    そんな時、偶然手に取った雑誌のコラムに目を奪われました。執筆者は、日本にマクドナルドを持ち込んだ創業者・藤田田(ふじた・でん)氏。「あのマックって、このおじさんが始めたのか」。最初は純粋な驚きでしたが、次第にその圧倒的なバイタリティとビジネスの切れ味に惹きつけられ、私は周囲の反対を押し切ってマクドナルドの説明会に飛び込みました。

    そこで聞いた「年齢は関係ない。あなた次第"Up to you"で20代でも店長になれる」という実力主義の言葉に、私は完全に心を撃ち抜かれました。「自分が頑張れば報われる」という高校時代の原体験と重なり、説明会終了後に人事部長を捕まえて直談判をしたほどです。こうして、私のマクドナルドでの波乱万丈なキャリアが幕を開けました。

    初の接客サービス。プライドを捨て、現場の女子高生から学んだ真のプロフェッショナル

    入社後、配属された店舗で私を待っていたのは、大きなカルチャーショックでした。体育会で少し偉そうにしていた私が、いきなり「いらっしゃいませ」と頭を下げる接客の世界へ飛び込んだのです。 さらに衝撃的だったのは、大卒の新入社員である私の教育担当(トレーナー)が、アルバイトの女子高生だったことです。

    「なぜ高校生に教わらなければならないんだ」と、最初はちっぽけなプライドが邪魔をしました。しかし、彼女の接客を目の当たりにして、その傲慢さは見事に打ち砕かれます。口で説明するだけでなく、自ら完璧な手本を示し、淀みなくお客様に向かう。その洗練された身のこなしは、まぎれもなく「プロフェッショナル」でした。

    年齢や肩書きなど一切関係ない、現場で真に価値を生み出している人間こそがエキスパートなのだと、強烈に思い知らされました。この日を境に私のプライドは消え去り、「現場にこそすべての答えがある」という私の絶対的な信念が形成されたのです。

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    次々に立ちはだかる壁。燃え尽きる迄挑み続けた「地域に根ざす」店創り

    現場で無我夢中で学び、ありがたいことに29歳で店長に抜擢されました。しかし、赴任した長野県の店舗で、私はこれまでにない巨大な壁にぶつかります。東京の店舗と違い、地方のドライブスルー店舗には歩いている人などおらず、待てど暮らせどお客様は来ません。
    売上も採用もどん底の状態でした。

    「マクドナルドの看板に頼っているだけでは駄目だ。よそ者の私が、誰よりもこの地域を知らなければ商売は成り立たない」。そう痛感した私は、市役所や図書館に通い詰め、地域の歴史や地名の由来、お祭りの意味を徹底的に調べ上げました。地元の美味しい店を食べ歩き、お客様やスタッフと同じ視点で語り合えるよう泥臭く努めました。

    さらに、近くの病院に入院している難病の子どもたちを喜ばせたいと、マクドナルドのキャラクターによる慰問ショーを直談判して実現させました。ただ地域社会の一員として貢献したいという一心でしたが、この活動が地元のメディアで大きく取り上げられ、そこから風向きが劇的に変わりました。

    地域の皆様との強固な信頼関係が生まれ、売上も採用も右肩上がりに。ナショナルチェーンであっても、最後は「人と人、地域との泥臭いつながり」なのだと、身をもって学んだ忘れられない逆転劇です。

    現場経験×人事で広がった課題解決の引き出し。未曾有の危機を救った「人を信じる力」

    店長としての実績が評価され、私は本社の人事部へ異動。モバイルを使った日本初のアルバイト採用専用サイトの立ち上げなど、次々と新しい採用戦略を仕掛けていきました。 しかし2015年、マクドナルドは異物混入問題などで未曾有の危機に直面し、巨大な赤字を計上。

    お客様からの信頼は地に落ち、新卒採用の辞退率は未だかつてない水準となりました。絶望的な状況の中、私は「逃げずにこの会社を立て直す」と腹を括りました。最優先したのは、小手先のテクニックではなく「現場で懸命に働くスタッフを守り、信頼を取り戻すこと」でした。

    全国の店舗を回って、現場の店長やスタッフの声を真正面から受け止めると同時に、現場のクルーたちの笑顔の写真を全国から集め、店舗のトレイマットに掲載しました。「私たちは現場を信じているし、応援している」。そのメッセージは着実に広がり、お叱りの声は、やがてお客様からの温かい応援の手紙へと変わっていきました。

    その後、プロのアニメーターを起用した本気のアニメーションCMの展開や、実際の店舗での就業を体験できる「クルー体験会」を全店で導入。これらの施策が見事に噛み合い、創業依頼の課題だった"卒業退職を埋める春の大量採用"の課題を克服して、マクドナルドは奇跡のV字回復を成し遂げたのです。

    きっかけは「友人のお手伝い」。そこから始まったキャリアの総力投入と、地方創生への新たなチャレンジ

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    30余年全力で走り続け、最後にV字回復を見届けた私は万感胸に迫る思いでした。「やりきった」というのが正直な感想です。支えてくれた上司、共に走り続けてくれた仲間への感謝の想いを胸に、50代半ばで転職を決意しました。

    縁あって次に選んだのは、現場の人事課題を解決するコンサルティング組織の立ち上げでした。飲食のみならず小売り、運輸等の各種サービス業全般を対象に深刻な人手不足に苦しむ企業の課題解決を目的とした事業です。

    立上げ直後にコロナ感染拡大という試練にぶつかります。しかし、その渦中にあっても、経営危機に直面する企業の様々な課題に真摯に向き合い、オンライン研修への切り替えなどを通じて、大手チェーンを中心に約100社もの支援を行ってきました。

    やりがいはありましたが、一方で、お客様であった多くの大企業が組織規模特有の意思決定の遅さや、「絶対に今やるべき施策」が経営判断で「今」を見送られてしまうことに、次第にもどかしさを感じるようにもなっていました。

    そんな50代後半、私の視界を大きく変える出来事が起きました。きっかけは、私の地元で90年以上続く老舗の精肉店を営む友人からのSOSでした。「店舗を大幅にリニューアルしてオープンするから、手伝ってくれないか」。友人の頼みとあって二つ返事で引き受けたものの、いざ現状の店舗の中に入ってみて私は愕然としました。

    旧来型のアルバイトの採用方法やマネジメント。また、レジの仕組み一つとっても、昔ながらの高額なリース契約の継続等、旧態依然とした運営体制でした。「今は"Airレジ"のようなSaaSを使えばコストも抑えられるよ」「デジタルメニューボードでプロモーションを打とう」「厨房には強度の高いエレクター(組み立て式棚)を入れたら動線が劇的に良くなるよ」と。

    私の中では「当たり前」となっていた現代のビジネスツールや店舗運営のノウハウを、残念ながら友人は全く知らなかったのです。そこから私は、店舗のレイアウト、コンセントの位置からスタッフの動線まで、持てる知見をすべて注ぎ込んで、彼らと二人三脚で準備を進めました。

    結果としてリニューアルオープンは大成功。昔からのお客様に加え、新しいお客様が綺麗に列を作って並んでくださる光景を見たとき、胸の奥から熱いものが込み上げてきました。私の持っているノウハウが、目の前の友人をこんなにも笑顔にし、地域を活気づけることができる。この感動をFacebookに投稿したことが、次なる運命の扉を開きました。

    その投稿を見た知人の東さんから、「日比谷さん、めちゃくちゃいいことやってるね! 今僕がやっているビジネスがまさにそれなんだよ」と声がかかりました。彼が推進していた「地方創生事業」です。 カルビンは、地方自治体と連携し、地域の中小企業の経営者と、都市部などで活躍する「副業のプロ人材」をマッチングさせて経営課題の解決を伴走する画期的なサービスです。

    しかし、マッチングのプラットフォームはあっても、その前提となる「そもそも自社の本当の課題が何なのか、言語化できていない地方の経営者」があまりにも多いという壁にぶつかっているということでした。「日比谷さんのその現場の課題を見抜く力と伴走力を貸してほしい」。その熱烈なオファーを受け、私は大企業の支援から一転、地方の中小企業を救うという新たなフィールドへ飛び込む決意をしたのです。

    社長との二人三脚で挑み、掴み取った難関ドライバー採用成功の物語

    カルビンでの私の最大のミッションは、経営者の「モヤモヤとした悩み」を徹底的にヒアリングし、本質的な課題を整理・言語化して、最適なプロ人材へと橋渡しをすることです。これまでに、福岡県糸島市をはじめ、全国で延べ20社ほどの地方企業の伴走支援を行ってきました。

    ワインの醸造を始めたベンチャー企業が牡蠣小屋に販路を拡大する案件や、いちご農園の六次産業化、道の駅での新しいカフェの立ち上げなど、私の専門外の業種も多々ありましたが、マクドナルド時代から培ってきた「現場を観察し、真の課題を抽出する力」は、どんなビジネスにも見事に通用しました。

    中でも特に印象深かったのが、創業50年を迎える物流会社の「ドライバー採用」プロジェクトです。二代目の社長は「2024年問題でドライバーが足りない。とにかく人が欲しい」と焦燥感を募らせていました。しかし、現地訪問とオンラインでじっくりと対話を重ね、「社長、本当の問題は何ですか?」と紐解いていくと、単なる人手不足ではない真の課題が浮き彫りになってきました。

    ベテラン社員が定年を迎える中、会社を5年後、10年後へと存続させるためには、ただ人数を揃えるだけでなく「未来の組織を背負う若手ドライバーを採用し、育成すること」が急務だったのです。「社長が今やらなければならないのは、単なる補充ではなく、若手を育て、技術を継承するための入り口を作ることですよね」と問いかけると、社長の目の色が変わりました。

    そこからは、会社の隠れた魅力を徹底的に発掘する作業です。実はこの会社、ただの荷物ではなく「お花」に特化したクリーンな配送を行っており、さらに地元プロサッカーチーム「アビスパ福岡」の選手送迎バスも運行しているという、素晴らしい実績を持っていました。しかし、社長にとっては当たり前すぎて、若手へのアピール材料だとは全く気づいていなかったのです。

    私たちはこれらの強みを前面に押し出し、求める人物像(ペルソナ)を明確に設定。その上で採用のプロ人材をアサインし、戦略を更に練り上げた結果、見事に若手ドライバーの採用を成功させることができたのです。単に人を採用しただけでなく、社長自身が「自社の価値」を再発見し、未来への明確なビジョンを持てた瞬間でした。

    地方企業の経営者の「課題解決の伴走者」であり続ける

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    こうした経験を通じて強く感じるのは、地方の経営者は決して「情報弱者」ではないということです。社長自らが現場に出ながら何役もこなし、日々目の前の業務に追われているため、「重要だけれど緊急ではない未来のための戦略づくり」に割く時間がないだけなのです。相談できる相手もおらず、古い成功体験のバトンだけが渡されているのが実態です。

    私はこれまで、マクドナルドの現場から人事、そしてDXやマーケティングまで、数々の修羅場を経験してきました。一見バラバラに見えるそれらの経験の「引き出し」が、今、地方企業のモヤモヤとした課題を整理し、言語化するためにすべて繋がっていることを実感しています。

    私が行っているのは、高度なコンサルティングというよりも、情報と人をつなぐ「ナレッジの橋渡し」です。経営者の頭の中を整理するだけで、企業は見違えるように動き出します。このダイナミズムこそが、今の私の大きな原動力となっています。

    エイジフリーの私の挑戦。すべての経験を掛け合わせ、世界に冠たる食ビジネスへの挑戦へ

    現在、私は62歳です。一般的な企業であれば、65歳が一つの区切りとなる年齢でしょう。同期の中には、すでに悠々自適なセカンドライフを楽しんでいる者もいますし、それも素晴らしい人生だと思います。しかし、人生100年時代と言われる今、私の実感として、今の60代はまだまだ十分に動けます。

    何より、私は忙しく期待されている環境が好きですし、日本の「年齢による一律の幕引き」の制度に抗いたいという強い思いがあります。この先、70歳、80歳になった時、私は何をしているか。最近、密かに思い描いている夢があります。

    それは、様々な企業支援を経て一周回った今、私の原点である「外食ビジネス」を自分自身の手で立ち上げることです。採用、マーケティング、オペレーション、そして地方創生の知見。これまでの全キャリアの集大成として、今の時代のテクノロジーやAIも上手に使いこなしながら、"世界に冠たる新しい食ビジネスを創り上げる"それが私の最後の挑戦になるかもしれません。

    かつてマクドナルドの現場に飛び込み、無我夢中で駆け抜けた30余年。これからの人生には、それと同じだけの豊かな時間がまだまだ残されています。これからも過去の足跡をしっかり見つめ直し、新たな出会いを楽しみながら、生涯チャレンジャーとして歩み続けていきたいと思っています。

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