長期キャリアを目指すなら、「再雇用制度」を詳しく知っておこう
- キャリアを考える
- 公開日:2025年6月17日
2025年4月1日より、65歳まで働きたい社員に対して企業側には雇用の確保が義務付けられました。本日は、再雇用制度の概要や勤務延長制度との違い、制度のメリット・デメリットを解説します。
この記事の目次
「再雇用制度」とは、定年後の従業員を引き続き雇用する制度
「改正高年齢者雇用安定法」は2025年4月1日より完全施行されることとなり、企業には2025年4月1日以降、希望する従業員に対し65歳まで雇用することが義務付けられました。具体的には、下記のような対応によって雇用確保義務が課されたのです。
・65歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・65歳までの継続雇用制度の導入
同時に、70歳までの就業機会を確保する「努力義務」も定められることとなりました。そのため、この法律は「70歳就業法」や「70歳定年法」とも呼ばれています。
具体的には、下記のような努力義務を企業が果たすことになります。
・70歳まで定年年齢の引上げ
・70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
・定年制の廃止
・70歳まで継続的に従業員と業務委託契約を締結する制度の導入
・事業主が自ら実施する社会貢献事業
この制度で、これまで長らく60歳定年が通常だった日本では65歳までが定年となり、希望者はさらに長く働けるように。世界的にみても定年を延長する国が増え、超高齢化社会を迎えた日本のように社会で活躍するアクティブシニアたちを増やそうという流れができつつあるのです。
隣国の再雇用制度は?
日本だけでなく、世界的にみてもアクティブシニアの活用は広まっています。
例えば、中国は定年制こそありますが、定年に達した後も業務委託契約で雇い続けることができるようになっています。
韓国では、日本と同様に一定の年齢での定年制が設けられています。ただし、定年まで働く人の割合は3割ほどにとどまり、多くの人は50歳を目途に退職するのだといいます。退職後は、起業したり再就職をする人が多数とのこと。
韓国は、公的年金制度が始まったのが90年代後半と遅かったこともあり、国民年金額が日本の半分以下なのだとか。こういった事情もあり、完全にリタイアするのが約72歳といいますから、なるべく現役で働き続けることが当たり前の社会なのです。
「再雇用制度」と「勤務延長制度」の違いは、定年時に退職するかどうか

定年後の継続雇用には、再雇用制度の他に「勤務延長制度」というものがあります。両者の違いは、定年時に退職するかどうかです。「再雇用制度」では、定年退職後に新しく雇用契約を結び直します。そのため、退職金が支給され、賃金や勤務形態は変わることがほとんどです。
一方、「勤務延長制度」は定年を迎えても退職手続きをしないため、定年前と同じ雇用条件で働くことになります。そのため、雇用形態や賃金、業務内容などは原則として変わらないですが、退職金は支給されません。
再雇用制度を利用する人の割合とは?
厚生労働省によれば、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業はほぼ100%に近く、多くの会社で定年制の廃止や継続雇用制度の導入がなされているといいます。
また、定年を迎えた働き手のほとんどが、再雇用制度を利用し働き続ける傾向にあることが見えてきました。このことからも、現在の日本では定年後に再雇用制度を活用してセカンドキャリア形成を行うシニアたちが増えてきたと言えるでしょう。
データ元:厚生労働省「高年齢者の雇用」
再雇用制度のメリットやデメリットとは?
再雇用制度を活用するメリットは、どのような点にあるのでしょうか。
・環境を変えずに安定した収入を得られる
老後資金の問題やライフステージの変化も見据えて、収入を得ることは生活を安定したものにしてくれます。さらに、再雇用制度を活用すればシニアになってから就職活動をすることなく、これまでの馴染みの環境で働くことができます。環境を変えることは新しいことに挑戦できる反面、精神面の負担も増える懸念もあります。
再雇用制度を活用すれば環境や仕事内容を劇的に変えることなく働き、収入を得ていくことができるのです。また、退職せずに継続して働くことができるため、厚生年金の受給額が増えることも大きなメリットになるでしょう。
・体調に合わせた働き方ができる
再雇用制度では、新たに雇用契約を結ぶことがほとんどです。そのため、自身の健康に合わせた働き方ができるでしょう。歳を重ねると体調の変化が出やすくなります。勤務日数を減らしたり、時短勤務にしたりと、ご自身の体調と相談しながら働くことができるのも再雇用制度のメリットと言えます。つまり、健康状態や生活状況に合わせた柔軟な働き方をすることが可能なのです。
デメリットとは?
では、デメリットはあるのでしょうか。
・給与が減る可能性がある
再雇用後の給与が下がることで、働くモチベーションが低下してしまうことも。給与面は働く意欲と直結しており、給与面に不満があってはいいパフォーマンスを発揮して働き続けられなくなってしまいます。再雇用された従業員の給与に関しては、4割〜6割減となることが多いとされています。
また、ボーナスも同様に削減されてしまうことが多く、年収全体ではさらに減少する傾向があります。このように給与が減少してしまうのは、再雇用で労働契約を見直す際に企業が業務内容や労働条件の変更をするためです。再雇用制度では役職や手当、賞与の見直しが下方修正されることが一般的でしょう。
・雇用形態の変化がある
職務内容や役職などの労働条件が変更され、定年前と異なる業務に従事することになる場合、新しい環境に馴染めないことがあります。また、これまでの正社員ではなく、時短勤務や派遣社員として働く可能性も。希望する雇用形態で働き続けられない場合に、ストレスや不満を感じてしまうでしょう。
・年金の一部が減額される恐れがある
厚生年金保険に加入している場合、老齢厚生年金額と給与や賞与の額に応じて、年金の一部や全額が支給されなくなることがあります。年齢によって計算方法が異なるため、定年後再雇用で働く場合は事前にご自身の受給金額がどうなっているのかをきちんと確認しておきましょう。
再雇用制度のポイントとは?

これまで再雇用制度について触れてきました。ここでは、再雇用制度を活用する際に抑えておきたいポイントをいくつかご紹介します。
契約について
再雇用制度では、1年間の期間を定めて雇用契約を結ぶことが一般的です。企業は原則として65歳までは雇用契約を更新する必要があります。もし、自身の会社でそうなっていない場合や不当な契約だと思われた際は、早めに法律家に相談しましょう。
賃金について
日本の雇用では業務の内容が同じであれば、"同一労働・同一賃金"が鉄則です。これは、仕事の内容や責任が同じであれば、支払う賃金を同じにしなければならないといったもので、定年後に再雇用される従業員も対象者になります。
再雇用制度で契約を結んだ際に、業務内容や責任が同じなのにも関わらず、給与の変動が下方修正された場合には企業側が違反している可能性も。再雇用制度を活用する前と後とでは、働き方にどのような違いがあるかを抑えておくようにしましょう。
各種手当について
企業は再雇用前に支給していた、通勤手当や住宅手当といった手当等も合理的な理由がない限り支給し続けなければなりません。また、定年退職前に付与された未消化分の年次有給休暇も引き継がれることになっています。ただし、週の所定労働時間が20時間に満たない場合や、月の賃金が8.8万円以下の場合は、厚生年金と健康保険の対象からは外れてしまいます。
再雇用制度を希望する場合は?
再雇用制度を希望する際には、企業側から個人へ通知がされます。そこで、本人の意向の確認が行われ、希望者には書面で「再雇用希望申出書」を提出するように求められるでしょう。
また、再雇用制度で働く場合には細かい点まで話し合っておく必要があるため、面談は納得するまで行うようにします。再雇用された後、希望の仕事内容でないこともあるため、面談で業務内容や条件についてすり合わせをしておくべきでしょう。
労働条件などについて企業側との話し合いがスムーズに進めば、契約を結びます。再雇用制度では一度定年退職の手続きを行う必要があるため、退職のタイミングで退職金を受け取ることになります。万が一、退職金制度があるにも関わらず企業側から退職金が支払われない際には、すぐに担当部署に相談するようにしてください。
まとめ
平均寿命が延びたことで、私たちはキャリアについて深く考える機会が増えました。制度も整えられた今、長期間働くことを目指すなら再雇用制度を活用していくことが賢いかもしれません。








