個人事業主の年収とは?確認方法や正しい計算方法をわかりやすく解説
- 独立・起業
- 公開日:2026年8月28日
個人事業主の年収は、会社員の給与収入とは考え方が異なります。売上や所得、手取りなど似た言葉が多く、「自分の年収はどの金額を指すのだろう」と迷う人も少なくありません。また、ローン審査や賃貸契約、補助金申請などで年収の申告を求められる場面もあります。この記事では、個人事業主の年収の考え方や確認方法、年収を聞かれる主なケース、適切な答え方についてわかりやすく解説します。
この記事の目次
個人事業主の年収の定義
個人事業主の場合、「年収」という言葉は場面によって意味が異なります。一般的には事業所得を指すことが多いものの、売上高や収入金額を求められる場合もあります。
所得金額は、収入(売上)から必要経費を差し引いた金額のことです。確定申告書なら、「確定申告書第一表」第一表の「所得金額等」の合計欄が該当します。
売上・所得・収入との違い
個人事業主の場合、売上・所得・収入など似たような言葉があり、違いがわからない人も多いでしょう。各言葉の違いは以下の通りです。
- 売上:年間の売上の合計
- 所得:売上から必要経費を差し引いた金額
- 収入:売上よりも広い範囲を含めた収入
売上は事業で得た1年間の収益のことを指しており、商品やサービスの販売や業務委託で得た報酬が含まれます。所得は、事業で得たお金から必要な経費を除いた金額で、この所得が最終的な課税対象です。
売上額が同じでも、必要経費の額が変われば所得も異なります。例えば、売上が1,500万円でも以下のように経費が異なれば、所得も変化します。
・売上1,500万円-経費800万円=所得700万円
・売上1,500万円-経費500万円=所得1,000万円
収入は売上よりも広い範囲を指すケースが多く、本業以外からの収入も含みます。不動産収入や配当収入などが、収入に該当します。各言葉の違いは以下の通りです。
| 項目 | 意味 |
| 所得(年収) | 売上から経費を引いたもの |
| 売上 | 事業で得た1年間の収益 |
| 収入 | 事業売上や不労所得など、入ってくるお金全般 |
| 経費 | 事業を維持するためにかかったお金 |
混ざりやすくなりますが、それぞれの違いを理解しておくと、計算がしやすくなります。
会社員の年収との違い
個人事業主は会社員など給与所得を得ている人とは、年収の考え方が異なります。給与所得者の場合、勤務先から支給された給与や賞与の合計額、社会保険料や税金が控除される前の金額が年収です。
個人事業主のように必要経費の差し引きをする前の金額が年収となるため、計算の仕方などが異なります。
個人事業主の年収を確定申告書で調べる時の見方

個人事業主が自分の年収を申告する際、確定申告書を利用する場合もあります。確定申告書で年収を見る際は、「確定申告書第一表」の「所得金額等」の合計欄(12)に記載された金額を見ます。
合計欄は各種所得金額の合計額を示した金額で、個人事業主で事業所得のみの場合は、売上から必要経費を差し引いた金額と一致します。
ただし、青色申告を利用する場合は「青色申告特別控除額」を考慮した計算が必要です。青色申告特別控除額とは、青色申告を行っている人だけが受けられる控除で、一定額を所得から差し引ける制度です。
青色申告者が年収を知る時は、確定申告書第一表の12欄の合計額に、青色申告控除額を加算します。利用できる控除額が条件によって、10・55・65万円です。
個人事業主の年収の計算方法
個人事業主の年収を計算する時の方法をご紹介します。税込みと手取りで計算方法が異なるので、必要に応じて以下の計算式を使って自分の年収を算出してください。
事業所得の計算方法の計算方法
事業所得はローンの審査やクレジットカードの申し込みなどで、年収を提出する際に利用されます。個人事業主が事業所得を計算する際は、売上高から売上原価と必要経費を差し引きます。
事業所得=年間売上-年間売上原価-年間必要経費
売上原価とは、商品仕入れや製造コストなどが含まれます。通信費・従業員給与・事務所家賃などは経費になります。もし、取引先から源泉徴収されている場合は、その金額も売上に含めて計算を行います。
手取り年収の計算方法
個人事業主の手取り年収は、実際に自分が使えるお金を指します。手取りの年収を計算する際は、売上から経費のほかに、税金や社会保険料などを差し引いて算出します。
手取り年収=税込み年収-(所得税+住民税+社会保険料)
介護保険料や個人事業税なども、差し引けるお金の対象です。手取り年収は、生活費や事業の運転資金など、実際に自由に使えるお金となります。生活を維持する際の、目安として使えるのが手取り年収です。
個人事業主の平均年収
個人事業主の年収で気になるのは、平均年収です。国税庁が公表している「(第22表)所得者区分別の平均所得金額及び平均税額の累年比較」では、令和4年度の事業所得者の平均年収は472万円です。また、中央値は261万円です。所得の分布で多いのは300〜400万円ほどとなっています。
dodaの調査によると、会社員の年収中央値は384万円、平均年収は男性で487万円、女性は350万円です。職業や年齢によって異なりますが、会社員よりも個人事業主の方が年収が低いというケースもめずらしくありません。
個人事業主が年収を聞かれる場面

個人事業主が年収を聞かれる場面を、具体的にご紹介します。以下のような時には、ぜひ事前に年収を確認しておいてください。
賃貸物件への申し込み
賃貸物件を契約する際に行われる入居審査では、継続的に家賃を支払えるかを判断するために、年収がわかる書類の提出が求められます。個人事業主の場合は、確定申告書・納税証明書・課税証明書などが、収入証明書に該当します。
家賃の支払い能力については、月収の3分の1以内が適正とされる場合がほとんどです。月額家賃の36倍以上の年収があると、適正と判断できます。
クレジットカードの申し込み
クレジットカードを申し込む際も、クレジットカード会社によって審査が実施されます。審査時は、年収以外にも継続的な支払いができるだけの安定性があるかなども確認されます。収入の情報を元に、利用限度額が決まります。
通常、収入証明書の提出は不要なケースがありますが、キャッシング枠を利用する場合は提出を求められる場合がほとんどです。
公的制度の利用
給付金や補助金などの公的制度を利用する際も、利用条件を満たしているかどうかを確認するために、収入証明書の提出が必要となる場合があります。たとえば、保育所の入所申し込みでは、保育が必要な理由として「確定申告書の控え」の提出が求められます。
補助金を申請する時には「所得税の納税証明書」や「確定申告書」の提出が必要です。必要な書類の種類は自治体によって異なるため、利用する際はお住まいの自治体のWebサイトなどでご確認ください。
ローン審査を受ける時
金融機関のローンに申し込みをする際も、収入書類の提出が必要です。住宅ローン・自動車ローン・教育ローンなど、返済能力があるか判断するために審査が実施されます。
利用可否や借入可能額は、年収だけでなく事業実績なども含めて総合的に判断されます。利用を検討している際は、確定申告書の控えなどを用意しておくとスムーズに手続きが進むでしょう。
提出書類の種類
申請の際に提出する書類は、申請先によって異なります。代表的なものは以下の表の通りです。
| 聞かれる場面 | 主な申請書類 |
| 賃貸物件 | 確定申告書の控え・所得証明書・課税証明書 |
| クレジットカード | 確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書・納税通知書・納税証明書・所得証明書・年金証書・年金通知書 |
| 公的制度 | 確定申告書の控え・課税証明書・所得証明書・納税通知書 |
| ローン審査 | 確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書・納税通知書・納税証明書・所得証明書・年金証書・年金通知書 |
場合によって異なるケースもありますが、確定申告書の控えや所得証明書があると、基本的には問題なく手続きなどが進むでしょう。
個人事業主の年収の答え方
個人事業主が年収を聞かれた時の答え方についても解説します。もし、ローンの申請やクレジットカードの申請などを行う際は、税込みの年収を回答しましょう。単純に手取りの金額を知りたい場合は、社会保険料などを引いた金額を回答します。
副業で個人事業主をしている場合の年収の答え方
副業で個人事業主をしている場合は、年収の答え方が異なります。本業と副業で計算の仕方などが異なるため、分けて考えるようにしてください。
- 本業の給与収入:勤務先から発行される源泉徴収票に記載されている支払金額
- 副業の売上(収入金額):事業として得た年間の総収入
- 副業の所得:副業の売上から必要経費を差し引いた金額
本業のみを聞かれているのか、総収入を聞かれているのかによって、年収の金額は変わってきます。
個人事業主が嘘の年収を答えるリスク
個人事業主が年収を聞かれた時に嘘の金額を答えると、信用を失って事業に影響が出るうえ、融資などの時に虚偽を申告すると罰則を受ける可能性があります。個人事業主は帳簿管理や確定申告を行い、正しい年収の提示を行うことが重要です。
個人事業主が手取り年収を増やす方法
個人事業主の年収は税込み年収と、手取り年収の2つがありますが、生活に大きく関係するのは手取り年収です。売上が大きくても手取りが少なくては、家計が苦しいと感じやすくなります。以下では、手取り年収を増やす方法を3つご紹介します。
経費を正しく計上する
必要経費を正しく計上すると、課税所得金額が減少するため、所得税や住民税の負担額も軽減されます。支払う金額が少なくなると、その分手取り年収の額は増えるため、正しい計上は重要です。
経費として計上するための領収書やレシートは、わかりやすくしっかりと保存しておきましょう。自宅で事業を行っている場合は、事業に使用している分だけ、家事按分をして家賃や電気代などを計上できます。
青色申告を利用する
青色申告を利用すると、青色申告特別控除を受けられるので、所得税や住民税の負担が少なくなります。青色申告を利用すると、最大で65万円の控除を受けられます。
利用する際は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要です。事前に提出しているか、確定申告の前に確認してみてください。
控除を利用する
税金を計算する際、所得額から一定額を差し引ける所得控除や、税額から差し引ける税額控除が用意されています。生命保険料控除や医療費控除などさまざまな控除が利用されているため、自分が使えるものはないか、ぜひ確認してみてください。
また、年によって利用できる種類も変わるため、毎年確定申告の前に確認しておくと安心です。控除を利用すると、さらに税額負担を減らせるようになります。
まとめ
個人事業主の年収は、会社員の給与収入とは異なり、売上・所得・手取りなど複数の金額が関係します。そのため、年収を確認する際は、何の目的で必要なのかを把握し、適切な金額を伝えることが大切です。
また、年収は賃貸契約やローン審査、補助金申請などさまざまな場面で確認を求められます。普段から帳簿や確定申告書を整理し、自分の所得や収入を正確に把握しておくことで、必要な手続きにもスムーズに対応できるでしょう。








