"ちょっとだけ働く"がちょうどいい!シニアに広がる短時間勤務の魅力
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- 公開日:2025年10月28日
日本では、2040年には65歳以上の高齢者が全人口の約35%を占めると予想されています。そんな超高齢社会の中で、シニアたちは退職後も働きたいと考える人がほぼ大体数を占めるといいます。本日は、定年後の働き方の一つ、「短時間勤務」についてご紹介いたします。
この記事の目次
定年後も働きたいと考えているシニアは、増加の一途
内閣府によれば、65歳以上の男女のうち、収入のある仕事に就いている人は、およそ30%いるとされています。8年前の調査では約25%だったため、着実に定年後に働くシニアたちが増えていることがわかります。
また、65~69歳の間の年齢で絞ってみれば、その就業率は約54%であることから、今や60代以降も働くことは当たり前なことになっているのです。多くの人が定年後も働きたいと考えるようになった背景には、年金制度の見直しも大きな要因となっていることでしょう。
2025年の6月における年金制度改正法では、短時間勤務者でも社会保険に加入しやすくなる措置が盛り込まれることになったのです。これにより、働いた収入を得ながら、将来へのさらなる蓄えにするシニアたちも増えています。
厚生労働省によれば、シニア向け求人も年々増加傾向にあるといいます。特に介護や福祉、清掃業の分野でのシニア層の積極的な受け入れが加速しているのだとか。求人倍率を見てみても、介護業界の求人倍率は3.5倍、清掃業界では2.8倍となっています。
これらの職種は人手不足が深刻とされていますから、70代からでも歓迎される職場が増えているのです。「医療・福祉」分野は10年前より約65万人も働くシニアが増えており、高齢化社会が進む現代では医療や介護分野でのシニア雇用の需要が急速に高まっている現状があります。
また、仕事をしているシニアたちの多くは「卸売業・小売業」に従事していることが分かっています。その従事者の人数をみてみると、「卸売業・小売業」がおよそ130万人、続いて「医療・福祉」の約115万人、「サービス業」の104万人とのこと。
こうしたシニアたちの就業率をみても、"定年後は隠居生活"という言葉は、もはや昔の常識となっており、今では仕事をすることが定年後の普通の過ごし方といえるでしょう。
「短時間勤務」を希望するシニアたち
近年ではシニア向けの求人市場は拡大とともに、「短時間勤務」を前提とした募集が増えていることに注目が集まっています。短時間勤務とは、週2〜3日からシフトに入り、1日の稼働時間も3〜5時間とショートタイムとなっているのが特徴の働き方です。
こういった求人には、マンション管理や清掃、買い物補助といった仕事が増えてきています。特に、人手不足の業界では短時間でも働いて欲しいことから、シニアの短時間勤務を推奨する企業が増えています。
さらに、リモートワークや在宅ワークでの「短時間勤務」の求人も徐々に増えており、幅広い働き方ができると、シニアたちからも熱い視線が注がれています。加えて、短時間勤務では、簡単なデータ入力や単純労働が多いため、体力に不安を覚えるシニアたちからも支持されているのです。
データ元:内閣府「令和4年 高齢者の健康に関する調査結果(全体版)」、公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」
定年後、働くシニアが増えた理由は?

定年後に働くシニアが増えた背景には、様々な要因があると考えられています。
経済的理由
近年は、年金受給開始年齢の引き上げや、著しい物価高騰による生活費を捻出するために働くシニアたちが増えています。物価変動による余波は老後の資金不足にも影響を及ぼしているのです。
日本年金機構によれば、夫婦2人分の老齢基礎年金の標準額は約23万円です。一方、老後の生活費は夫婦2人で月約27万円と言われているため、その差額である不足分を補うために働きに出ている傾向にあります。
健康のため
シニアにとって働くことは、健康を保つ目的もあります。働きに出ることで自然と身体を動かすことができるので、軽い運動をしている感覚で働いているという方も。
また、人と交流することによって生活にメリハリができるといった、メンタルの健康も保つこともできるでしょう。健康診断なども定期的に企業が行っていることもあり、病気などの早期発見の確率も高められます。
社会との繋がりや生きがいのため
近年、孤独死のニュースが世間を騒がせていますが、一日家でぼーっと過ごしていると認知症のリスクが増えてしまったり、孤独から鬱になってしまったりといったシニアも少なくありません。
そこで、短時間でも働くことによって社会との繋がりをつくり、得た収入によって趣味を充実させているという方も。歳をとればとるほど友人ができないというシニアの悩みも、働くことによって解消されます。
職場で人と顔を合わせ、ご自身の経験やスキルが誰かの役に立つことで、新たな生きがいや充実感を得られることも働く大きな理由となっているでしょう。
データ元:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
短時間勤務におすすめの仕事とは?
定年後に未経験から始めやすい仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。
警備や誘導
施設の巡回や出入口の管理、駐車場や工事現場の交通整理などが主な業務内容です。勤務形態は日勤や夜勤、シフト制など柔軟に働くことができるのが特徴です。特別なスキルがなくても採用されやすいことから近年、シニア向けの仕事として人気となっています。
調理補助や家事代行
飲食店や社員食堂などの調理補助は、近年求人が増えている職種でもあります。同じく、家事代行サービスもニーズが高まっている仕事です。特に、家事の経験豊富なシニアの採用が目立ちます。利用者の自宅に訪問し、料理や掃除、洗濯などを行います。
コールセンター
電話で顧客対応を行う、コールセンターもシニアが働きやすい仕事の一つです。長時間の電話対応は体力的に追いつかないという方も、短時間勤務なら無理なく働くことができるでしょう。
マニュアルもしっかりしているので、未経験からも始めやすいです。座ったまま業務することができる点も、シニアから人気のあるポイントとなっています。
マンション管理
マンション内設備の点検やトラブル対応、簡単な清掃を担うマンション管理も短時間勤務の求人数としては多いでしょう。細かな気配りや丁寧な対応が求められることも多いため、経験豊富なシニアたちのキャリアが活かされる分野でもあります。
清掃
商業施設やオフィスビル、公共施設など勤務場所は様々です。難しいスキルは要求されないため、未経験でも採用されやすいでしょう。職場にはシニアたちが多く勤めていることから、知り合いを作りやすい職種でもあります。
介護スタッフ
介護施設や老人ホームでの介助業務は、比較的短時間の仕事が多いです。国家資格がないと採用されないのではないかと心配する方もいるかもしれませんが、その業務内容には利用者の話し相手になることだったり、配膳を手伝うことだったりと軽い作業が中心となりますので、安心して働けます。
インストラクター
これまでの経験を活かして、インストラクターとして短時間勤務するシニアたちも増えています。外国語や日本語講師といった語学系や絵画や手芸といった趣味の分野まで、求人は幅広くあります。自分の好きなことや特技を仕事にできるため、やりがいを感じられる点もシニアたちの背中を押しています。
短時間勤務で気をつけておくべきこと

短時間勤務であっても、働き続けるためにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
目標値を決める
短時間勤務をする上で、まずはご自身が月にどのくらいの労働収入が必要なのかを把握するようにしましょう。退職金や公的年金を差し引き、月にどのくらいの収入があればよいのかを計算します。
短時間勤務ではシフトを多く出せないことも。まずは、不足する生活費を考えることで無理しない働き方が見えてきます。短時間勤務では時給で働くことが多いため、【時給×働く時間数】で予めどのくらいの頻度で働くべきかを考えておくと◎。
マイペースに働く
短時間勤務のメリットは、体力と相談しながら働ける点にあります。そのため、無理のないスケジュールを設定し、シフトを詰め込みすぎないようにしましょう。シフトを入れすぎてしまうと短時間勤務の本来の良さがなくなってしまいます。働く際には無理なくマイペースに仕事ができるよう、シフトを調整するようにしましょう。
交通時間を検討する
短時間勤務では、交通時間にも気を配っておきましょう。短時間勤務だというのに、通勤に時間をかけ過ぎると働く前に体力が消耗してしまい、疲れてしまうことも。なるべく体に負担にならない範囲内での勤務をおすすめします。
職場の雰囲気を乱さない
短時間勤務といっても、同じ職場で働く人たちとの輪は乱さないようにしましょう。特に、同年代よりも年下のスタッフと働く際にはコミュニケーションを円滑にできるよう、挨拶などを積極的に行いましょう。
世代が異なるとどう接していいかわからないことも。それは相手も同じことを思っていることが多いので、年の功を活かしてこちらから職場での明るい雰囲気づくりを心がけましょう。
年金とのバランスをみて働く
働きながら年金を受け取る場合に考えておかなくてはいけないのが、「在職老齢年金」です。収入が増えてしまうと、年金が減らされてしまうことも。
短時間勤務では可能性が低いかもしれませんが、高収入になってしまう場合には、総報酬月額相当額が43万円程度になるように抑えて働きましょう。年金全額受給の範囲内で働けるのか心配な方は、年金機構に問い合わせてみると良さそうです。
まとめ
2025年10月には最低賃金改定により、前年を大きく上回る全国平均1,118円との目安が提示されるとのこと。今後も、定年後の短時間勤務への環境はより一層整っていきそうです。








