今注目される"エイジフリーWORK"とは?現代ならではの働き方を解説
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2025年7月 3日

定年制度が改められ、世間では徐々に人生100年時代に相応しく、長く働くことができるようになってきました。本日はそんな“エイジフリーWORK”という現代ならではの働き方に注目していきます。
この記事の目次
エイジフリーWORKとは?
もしかしたら聞き慣れない方も多いかもしれない、"エイジフリーWORK"という言葉。
エイジフリーWORKとは、定年退職後も年齢に関係なく働き続けたいお年寄りが快活に働くことができるという概念です。エイジ(年齢)+フリー(自由)という言葉通り、年齢という枠に縛られずに働くことができるため、働き方改革を迎えた現代においても注目されています。
シニア世代の中でも、退職年齢を過ぎても健康的で活発なアクティブシニアが多く存在します。そんなアクティブシニアたちにとっては、年齢で働くことが制限されるのは大きなストレスになってしまいます。また、まだまだ元気である高齢者に隠居生活をしてもらうのは、この少子高齢社会を迎えた日本では社会的にも経済的にも大きなマイナスを生んでしまいかねません。
そこで、アクティブシニアたちにこれまでのスキルや知識を活かして社会で長く活躍してもらうべきだとして生まれたのが「エイジフリーWORK」なのです。年齢という壁を超えてシニアたちが望むべき仕事ができ、社会もそんなシニアを活用していくことで働きを循環させていく。
そこには単にお金を稼ぐことだけではなく、キャリアを積み重ねてきたからこそ自らのスキルや知識を社会に還元したいといったシニアたちの想いも含まれているのです。これまでの働き方に拘らず、シニアにとっての生きがいややる気、働き甲斐までが求められる仕事をすることが「エイジフリーWORK」とも言い換えられるのです。
近年、独居老人や孤独死といったワードが世間を賑わせています。また、核家族化や晩婚化、未婚率といった家族の単位が最小化するケースが進んでいます。そんな日本では高齢になればなるほど、パートナーに先立たたれてしまい、職を持たない老人が社会と断絶してしまう状況が増えてしまっています。
社交的な方は歳を重ねてからも積極的にコミュニティに属したり、友人たちに声かけをしたりできる場合もあるでしょう。しかし、仕事一筋で生活してきた方にとっては仕事がなくなった後の生活が何とも味気なく、孤独を感じせざるを得ないことも。このように、定年退職後の老後生活はある人にとっては孤独で単調な生活になってしまうことも少なくありません。
そこで今、年齢という枠に縛られずに働くことのできる"エイジフリーWORK"が注目を集めているのです。
エイジフリーWORKに注目が集まる日本の諸事情とは?
エイジフリーWORKに注目が集まる背景には、様々な日本の諸事情が関わっているとされています。
少子化による労働力不足
現在でも多くの職場や職種で耳にする、労働力不足という言葉。そんな労働力不足は、今後の日本においてはますます進むと試算されています。なんと10年後の2035年には現在の2倍もの労働力不足になるというのです。
また、厚生労働省は2024年には生まれた子どもの数が前の年より4万人以上少ない68万6061人だったことを公表しました。1899年に統計を取り始めて以来最も少なく、初めて70万人を割り込んだといいます。
さらに、来年度からはそんな少子化対策を後押しするために子ども・子育て支援金制度に充てられる「独身税」の導入も決まるなど、日本の労働力不足は出生率の低さにも顕著に表れ、少子化対策により力を入れなくてはならない、待ったなしの状況にあります。
その傾向は、大企業よりも中小企業で深刻化しているといいます。中小企業庁によれば、製造業、建設業、卸売業、小売業、サービス業のすべての産業において、人手不足となっており、現在でも人手不足感は強まり続けているといいます。
地方ではよりよい条件や職場環境を求めて都市に転職する人も増えているため、労働力不足に頭を悩ませている企業が多いのが現状です。特に、若者の都心部流出は歯止めがかけられない状況になっており、東京には毎年10~20万人程度が地方から移住していることから、一極集中化が年々進んでいることがわかります。
物価高による生活費の高騰
日本は少子高齢化だけに頭を悩ませているわけではありません。現在、物価高に見舞われています。今年は深刻なコメ不足が取り沙汰されましたが、高騰しているのは何もお米だけではありません。日本の食料品価格は、2024年末頃から前年比6~7%で推移しているといいますから全体的に生活費が嵩んでいる訳なのです。
食料品が値上げてしている背景には、円安が原因となっていることが挙げられます。さらに、日本は食料自給率が低い国であり、あらゆる食料品を輸入に頼っています。円安に加え、原材料費である輸入品目も全体的に値上げしているため、スーパーに並ぶ物価に価格として転化してしまうのです。
このように、物価高の影響は私たちの家計に直接作用を及ぼします。10年前の1万円と現在の1万円では同じ価値ではなくなっています。同じ金額のお金なはずなのに、買える品数は圧倒的に減ってしまっているのです。
ここで打撃を受けるのが我々国民です。老後の資金にと貯金をしていても、お金の価値が下がっているのですから、将来老後の資金が足りるかどうかとても不安な状況が今後も続くと考えられています。
データ元:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」、中小企業庁「令和元年度(2019年度)の中小企業の動向」
エイジフリーWORKが日本の労働力を底上げする!?
労働力不足の起因となる、少子化高齢化によって現役世代が高齢者を支えるという年金制度にも影を落としてしまっています。2024年には、正社員の人手不足割合が過去最高の55.3%に達するなど、今日本では深刻な人手不足が続いています。
働き盛りの世代が減ってしまえば一人一人の負担はより増えてしまい、このままいけば日本の年金制度が破綻してしまう日もそう遠くはないかもしれません。そんな日本の労働市場を救うかもしれないのがエイジフリーWORKです。総務省によると、国内の65歳以上の高齢者の就業者数は連続で増加しており、15歳以上の就業者総数に占める高齢者の割合は15%にも上るといいます。
そのため、日本社会は長年のキャリアを持つシニアたちの活躍を期待しています。企業はシニア世代に長く働いてもらうことで、人生経験が豊富な人材を即戦力として活用したり、ノウハウやスキルを若い世代に伝承することもできるようになるのです。
エイジフリーWORKは何も企業や社会へのメリットだけではありません。シニア世代にとっても、長く働けることは老後の資金不足を補う一助にもなるのです。退職後も働き続けられることで物価高にも備えることができますし、長らく叫ばれている老後資金の不足の問題も働き続けることで解決できるため、心の安定に繋がるでしょう。
また、仕事を通じて人とコミュニケーションを図ったり、感謝されたりすることで生きがいややりがいを得ることができます。実際に、エイジフリーWORKを推奨する企業は徐々に増えてきています。飲食店や清掃業ではアルバイトの採用に年齢制限を設けていないところも広がってきており、中には80代のシニアたちが活躍しているといいます。
さらに、シニアたちも健康なうちは働きたいと考えているといいます。調査によれば、元気なうちは働き続けたいと考えている65歳から74歳までの高齢者男性は、なんと96%といいますから、ほとんどのシニアたちが長く働く気があるという訳なのです。
データ元:パーソル総合研究所「2035年の労働力不足は2023年の1.85倍―現状の労働力不足と未来の見通し」、花王「元気なうちは年齢に関係なく働きたい働く60代男性たちの仕事やくらしへのおもい」
エイジフリーWORKの具体例とは?
一概にエイジフリーWORKといっても、何も正社員として働くことを指すのではありません。一体どのような種類の働き方があるのでしょうか。
スポットワーク
アルバイトやパートなどの短時間や1日単位で働ける仕事のことです。短時間での勤務が可能なため、プライベートを大切にし、自身の体力と相談しながら働くことができます。人によっては憧れていた業界や職種にチャレンジすることも。スポットワークで働くことは、若者と比べ、体力的にも衰えてくるシニアにとって無理なく続けやすいといえます。
シルバー人材センター
シルバー人材センターでは、地域密着型のシニア向け人情報を中心に揃えています。収入を得ることはもちろんですが、地域に貢献できる仕事の紹介をしてもらえます。公益社団法人が運営しており、60歳以上で会員になった人が利用可能です。年間費は自治体によっても異なりますが、1,200〜3,000円程度です。
起業やフリーランス
自営業はすでに家業がある方のほかに、専門的なスキルを持っている方にもおすすめです。定年がないため、長く働けるのが魅力です。稼働時間などの働き方も自由に決められるので、ご自身の生活リズムや体調に合わせて働けます。近年はシニア起業も注目されています。
なお、起業と似て非なる働き方にフリーランスがあります。フリーランスとは企業と雇用契約を締結せずに仕事を請け負う人のことで、1つの仕事ごとに契約を結び、報酬を受け取ります。フリーランスとして独立して働けば年齢も関係ありません。まさにエイジフリーWORKの代表例とも言えるでしょう。
ボランティア活動
報酬を重視しないエイジフリーな働き方もあります。それは町づくりやイベント運営、清掃活動など、地域社会の活性化に貢献するボランティアとしての活動です。ボランティア活動では、社会貢献への実感を得ることができ、人の役に立つ喜びを感じることができるでしょう。また、普段は関わることのない様々な年代やキャリアを重ねた人との出逢いもあるため、人脈を広げたり、新たなコミュニティを作る機会にもなります。
企業に属して働く
定年制度のない企業で働くことも、エイジフリーWORKでの働き方の一つです。高年齢者雇用安定法により、徐々に定年制度を廃止する企業が増えています。これまで慣れ親しんだ会社で長く働くことも、エイジフリーWORKな働き方にはぴったりです。70歳以上も働ける環境が整備されている会社に勤めているのであれば、継続雇用を選択して働くこともできます。
エイジフリーWORKのメリットや注意点とは?
エイジフリーWORKのメリットには次のようなものが挙げられます。
健康維持に役立つ
働くことで、規則正しい生活リズムが生まれ、食事や睡眠の習慣をきちんと整えることができます。歳を重ねると運動不足になりがちでも、通勤や仕事中の移動で適度な運動をすることも期待できるでしょう。さらに、働くことで得られる達成感や自己肯定感は、精神的な健康を促進します。
特に、高齢者の場合、働くことで社会とのつながりを保ち、生きがいを見つけることができる大切な役割になります。このように、働くことは身体的や精神的な健康維持に役立つのです。
人脈が広がる
職場を通じて、新たな友人や知人を得ることができます。人とのつながりを多く持っていれば、人生は多角的になります。さらに、人との交流を通して孤独になることも防げます。人と会話したり共感したりできる環境がある方が彩り豊かな人生になるのです。味気ない人生よりも幸福な人生にしたいと思っている人は多いはず。そんな中で人脈を築くことは幸福感を追求するために重要なのです。
社会貢献ができる
もちろん、仕事をする意義には単に収入を得ることも含まれるでしょう。しかし、働くことはこれまでの重ねてきたスキルを活かして社会に貢献していくことでもあるのです。特に年齢を重ねれば重ねるシニアほどその意味合いは強くなるかもしれません。
ミドルシニアの働く理由の上位にも必ず「社会貢献をしたいから」という理由が挙げられることからも、年齢を重ねた私たちは徐々に利他に繋がる生き方を目指しているのかもしれません。
エイジフリーWORKの注意点とは?
ただし、エイジフリーな働き方には注意点もあります。定年以降も業務に従事できるというのは一見メリットが多いように思えますが、注意していかなくてはいけないポイントもあります。それは、エイジフリーな雇用という考え方の背後には、能動性が必要になるということです。
定年制度は、ある意味雇用を守る観点でみれば「ここまでは働けますよ!」という保証を与えてくれていると言い換えることもできるのです。これまで受動的な働き方をしていた人にとっては、エイジフリーWORKでは自らが主体となって働きかけていかなくてはなりません。
そのため、働くことに前のめりになれなかったり、そういった心積もりがなかったりする方からすると、エイジフリーWORKが広まれば長く働くためにどうしたらいいか迷子になってしまうこともあるかもしれません。
まとめ
全世界で年齢の枠を設けずに働くことが賛同を得るようになってきた現代。寿命が延びたことで私たちは"働く"を根底から見直してみる帰路に今、立っているのかもしれません。