【『KAIGOフェス』開催決定】輝く場所は一人一人違う。介護職の既存イメージを変えたい|学校法人敬心学園
- 100年時代のライフデザイン
- 公開日:2025年8月29日
【郡山 2025/9/13(土)】と【東京 2025/9/23(火)】で開催される『KAIGOフェス』の開催背景を中心に、介護業界への取り組みや人材育成について、学校法人敬心学園の小林英一さん、沢田秀樹さんにお話しを伺いました。(以下、小林さん:K・沢田さん:S)
この記事の目次
3年に渡って行われる、文部科学省の委託事業に参画
――「KAIGOフェス」を開催する、経緯について教えてください。
K:私たちが文部科学省の委託事業である、「専門職業人材の最新技能アップデートのための専修学校リカレント教育(リ・スキリング)推進事業」に参画したのは3年前です。3年計画で実施されるプロジェクトで、今年度で最後の年を迎えます。
文部科学省の委託事業ということで、採択された団体が予算をいただき、研究や事業を推し進めていきます。介護業界のイメージは、世の中的にマイナスな要素が多いのが現状です。そこで、まずはイベントで介護の学びなおしやスキルアップデートの講座を用意し、体験してもらうことで、介護職の魅力を知っていただきたいとの想いで始まった経緯があります。
S:私は、約半年前からプロジェクトに参加しています。新参者ですが今回の「KAIGOフェス」の中心メンバーとして、本番に向けて企業様との打ち合わせを行ったり、広報活動をしたりしています。
当日は、この文部科学省委託事業で作ってきた9つの講座を体験していただけます。さらにスペシャルイベントとして芸人さんによる「介護トーク」など楽しみながら介護に触れていただく内容が目白押しです。体験するごとにスタンプを集めていただくスタンプラリーも行います。スタンプ5個を集めていただくと、景品をプレゼントする企画をご用意していますので、ぜひ多くの人に足を運んで欲しいなと思っています。
――スタンプラリーは、今年からの取り組みですか?
K:はい。協賛企業(マルコメ株式会社)から各会場200名分もご用意いただきました。楽しみながらプログラムを体験してもらうために、スタンプラリー企画を考案しました。また、協賛企業が出展している企業ブースもあります。そこでは企業ごとに介護職についてよく知ることができるスキルや、最新鋭の学びができるスペースの展開が予定されています。
S:本番に向けて各企業と調整中ですが、来場者や体験する方が楽しんでいただけるものになっていますので、私どもも今からワクワクしています!この委託事業では、多角的な視点を大切にしています。メンバーも多彩なんですよ。会社の社長や大学関係の方、ソムリエ、元アナウンサーなど本当に様々な方々に参画いただいています。
そういった方の中には、社会人になって大学院を出た方もいるので、まさにリカレント教育を経験してきているんですよ。ご自身の経験から語られる言葉はやはり説得力があり、自由闊達に意見が出し合える環境が整っています。その代わり、出た意見をまとめるのには悪戦苦闘していますが(笑)、この意見をそれぞれの見識者が交える場が大事だと改めて感じています。
今後の介護業界を担う人材への教育に、力を入れる日々
――これまでに行ってきた介護への取り組みや福祉分野でのご活動には、どのようなものがあるのでしょうか。
K:VRを用いて介護・福祉人材の育成に力を入れてきました。現代のZ世代、α世代の子たちに共通するのは、失敗したくないという考え方です。でも、現場で通用するレベルになるためには、学校にいるうちにたくさん失敗を重ねておくべきなんです。それなのに、失敗しない方法を教えてくれという子があまりにも多いと感じます。
そこで、VRを用いて介護補助などをシミュレーションできるようにしました。VRではいくら失敗しても安心です。失敗の経験がないから現場に出てから事故が起こってしまう、その点を教育側としては何とかしなくてはと思い、開発に至りました。
それに、実技で先生が学生に教えても、見られる角度は自分が立っている方向からのみで、後ろから観察することはできません。でも、本来は後ろの手の添え方が大事なポイントだったりします。そこで、VRでどのような動きをしているのかを確認してもらいながら学んでもらっています。今では、リハビリテーションの学校や研究室等でVRの普及が進んでいます。
S:VRのように、今回の9つのブログラムもいずれ現場で実装化させようとしています。
K:2040年には、介護職で約60万人もの人材が不足すると言われています。もちろん、介護従事者を多く創出することも大切ですが、一方で実現可能性を模索しなくてはいけないなと、介護や福祉の人材を育てる身としては切に思っています。
外国人労働者を増やしたり、業務の効率化にICT(介護ロボットなどの情報通信技術)を活用したりするのはもちろん、重要なことだと思います。ただ、私がもっと目を向けないといけないと思っていることはマルチタスクな介護・福祉人材の育成です。
S:日本の介護人材はマルチタスクではなくて、専門職ということもあり、介護のことのみという方が意外に多いです。これって他業種で考えてみてもおかしいことだなと思うんですよ。
私は以前旅行会社で働いていましたが、ある有名なホテルで働いている人たちは受付、ベッドメイク、食事の配膳...というように何でもやれるマルチタスクな人材がほとんどです。マルチタスクな業務ができれば1日8時間労働でも人によっては1.5~2倍の生産ができますよね。
K:もし、1.5~2倍の生産量となったら介護業界で働く方々の収入も上がるとは思いませんか?新たに人材を育てることも重要ですが、今いる既存の介護従事者のスキルを底上げしたいなと考えています。そしてプラスαを学ぶことで、収入も増やして欲しいと私たちは願っています。
それが介護業界の人材不足を改善できるヒントにもなると思いますから。私は介護職に従事する方にこそ、お金を稼いでほしいと思うんです。介護だからって慈善事業ではないので。その循環ができることで業界自体がよくなると思っています。
▲文部科学省委託事業・事業責任者 学校法人敬心学園 職業教育研究開発センター 事務局課長代理・研究員 小林英一さん
輝く場所があれば離職をしない。その場を作ることも私たちの役目
――学校側から見て、介護や福祉の教育現場の課題はありますか?
K:今一番の問題は、生徒たちは"卒業すること"が目的になってしまっていること、でしょうか。専門学校での本来の目的は、現場で即戦力になるための学びをすることでしたが、近年は卒業することや国家資格に合格することが一番の目的になってしまっています。
そうした考えで卒業しても、現場では通用しないことが多いです。それに悩まれている施設も多くて。当学園としては、目的と目標を間違えないよう、生徒たちの指導に力を入れたいと思いますし、もっと介護は楽しいよと伝えないといけないなと感じているわけなんです。そのための「KAIGOフェス」にしたいなと。
S:イメージで介護って大変、と思っている方に今回のイベントで「介護って楽しいんだよ」と伝えることができたらいいなと思っています。介護の対象は高齢者という印象が強いですが、子どもや障がい者の介護もあるし、非常に幅の広い仕事だということを知ってほしいですね。
K:介護現場は一つとして同じものはなく、日々感動や驚きに満ちています。ある時、介護施設でお寿司屋さんを連れてきて振舞った際、入居者の中には涙を流す方もいたんですよ。「お寿司は二度と食べられないかと思った」と。マグロを目の前で切って職人さんが握って...と、一つのエンターテインメントですよね。このように感動や驚きを届けられるのも、介護職の魅力だと思っています。
もちろん、家族の同意を取ったりと様々なハードルもありますが、創意工夫ができるかどうか、こちらのやる気次第ですよね。家族の方も大変喜んでくださいました。その姿を見ていると現場って温かいなと。介護現場は楽しいんです、だからそんな楽しい実態と大変だというイメージのギャップを埋めていきたいですね。
S:中高生にとっては、介護に触れるきっかけがない場合が多いんです。裾野を広げるためにもまずは"知ってもらう"ことから始めたいなと。職業を知ってもらい、介護の魅力に触れないと次世代の担い手不足に歯止めがかからないと思います。
そう言ったことも含め、このフェスをやる意義や目的があるんですよね。文科省の委託事業として、リカレント教育を今の介護職の方に促そうというのは大前提ですが、若い世代の担い手不足は業界全体の先細りにも繋がってしまいかねませんから。
K:私たちの使命は、誰もが活躍できる場をつくることです。介護の現場では、そうした場が十分に整っていないことが、離職率の高さにもつながっていると感じています。そこで私たちは、「音楽」「介護予防」「アロマ」など、9つのプログラムを用意しました。
選択肢があることで、自分の興味に気づき、主体的に取り組むきっかけになります。たとえば、「○○さん、アロマ講座やってみてよ」と任されると、人は自然と頑張れるものです。やらされる仕事ではなく、自分の興味から始まったことだからこそ、強みとして育ち、やりがいにもつながっていきます。
プログラムは、動画と実地の両方で構成しています。動画で知識を何度でも復習できるようにし、実地で経験を積むことで、やがて「アロマ講座は○○さんの担当」といったように、その分野の責任者として活躍する場が生まれていくのです。そのため、プログラム自体も理解しやすく、現場で活かせる内容にこだわって設計しています。
実際にプログラムを受けた方が、自分の言葉で語れるようになれば、すぐに現場で講座を開くことができます。アロマオイルのスターターキットも用意しており、学んだことをすぐに施設で実践できるようにしています。
国とタッグを組む、委託事業を行うことで相乗効果がある
――文科省の委託事業を行うことによってどのような作用があるのでしょうか。
K:国で研究をさせていただくというのは、何よりもバックアップが強いです。金額面でも優遇されているなと感謝しています。大学でも年間研究費が足りない話をあちらこちらで聞きますから。委託事業では3年に渡って予算をつけていただいていることもあり、必ず世に役立つためのプロジェクトにしなくては、と思っています。
S:文科省から承認されたプロジェクトとして、認知してもらいやすいという点も大きいと思います。採択されるまでに審査がしっかりとありますから、本気でプロたちの英知を結集しながら進めているプロジェクトなんだと伝わることが多くあります。
民間主導だと、協力を仰いでも難しい顔をされることもありますから。文科省の委託事業だと説明すると、興味を持ってもらえることが多いですし、初めてお話をする際にも先方にスムーズに対応してもらえる印象です。「文科省の事業なら、私たちにもぜひ協力させてください」という方もいて大変心強いです。
▲文部科学省委託事業・事務担当者 学校法人敬心学園 職業教育研究開発センター 研究員 沢田秀樹さん
――今後の動きとしては、どのようなことをお考えなのでしょうか。
K:様々なところで今回のプログラムの実装化を目指しています。介護施設や専門機関で実習が広まるためにはどうしたらいいのか、という点を重点的に取り組んでいく予定です。実際に公的機関での問い合わせもあり、研修に私どものプログラムを使いたいと進言してくださるところもあります。
S:自治体や介護福祉士の養成施設、施設協会や大手企業の研修でも使っていただくために会議を重ねているところでもあります。付加価値を付けながら、当学園の研修を日本中に広めていきたいなと考えているんです。
K:「介護は未来のある仕事だ」と感じてもらうために、どうすればよいか。それは私たち自身の課題でもあります。だからこそ、9つのプログラムを提示することで、「やってみたい」を見つけるきっかけをつくりたいのです。漠然と「何がしたい?」と聞かれても答えづらいですが、「この中で何が気になる?」と選択肢があれば、人は自然と選び、動き出します。
自分の強みや可能性に気づいていない方は多くいます。教育の側も「マルチタスクな人になりましょう」とだけ伝えるのではなく、「この中からやりたいことを見つけましょう」と寄り添うことが、介護人材のリカレント教育への近道だと考えています。
S:若い世代も「これやりなさい」と言われることに抵抗を感じています。そのために、私どものプログラムは9個という幅を持たせて実装化に向けて動いているんです。この委託事業でも、ここまでメニューがあるのは当学園くらいだと聞きます。
K:介護を志す方や、現場で働かれている方は介護について自信がない方がほとんどです。こういったプログラムをきっかけにして「これならできそう」とか「やってみたいな」という気持ちの芽を育むのも私たちの役割だと思っています。得意なことがあれば、自信に繋がります。その自信が実際の現場では輝くスキルになるんです。人に必要とされる人材になれば、辞めるという選択肢は自然と排除されるとも考えています。
介護では離職問題が話題になりますが、どうして辞めてしまうのかといえば、福利厚生の面ももちろんあるでしょうが、やりがいの部分も大きいと私は思っています。ステータスを上げていける場を増やしていくことも、介護業界にとっては課題だと思います。だからリカレントなんです。
これまでのキャリアが新たなキャリアをつくるヒントに
――読者に向けてメッセージをお願いします。
S:「KAIGOフェス」で、介護人材の皆さんにとって新たな得意分野をつくっていただくきっかけづくりにしていただきたいです。いきなり「マルチタスクな人材になろう!」と呼び掛けてもイメージは湧きませんから、まずはこういったフェスで介護業界の可能性を知るきっかけにして欲しいなと考えています。
そして、スタンプラリーを楽しみながら介護業界のことを少しでも知ってくださると嬉しいなと思います。当日は、来訪者の方に楽しんでいただけるイベントが盛りだくさんです。ぜひ、9/13(土)は郡山、9/23(火)は東京の方でお待ちしています!
K:マイナビミドルシニアの読者の方にお伝えしたいのは、自分がやってきたキャリアを活かせる仕事が意外と"介護である"ということです。経理をやってきた方がいるとしたら、介護業界でも経理として従事できます。それでも、利用者さんと接する機会があるので、介護業界のことを知らないではスタートがきれないんですよ。だから介護業界のことをまずは知っていただきたいです。
また、人事をやっていた方は介護業界で人事として活躍できますから。ご自身が積み重ねてきたキャリアや、やってきたことが活かせる職種が介護職なんです。それを知るという意味でも、一度足を運んでいただき、プログラム体験や企業さんが出展しているブースで介護の魅力に触れていただきたいと思っています。
人は知ることで行動を変えることができます。行動が変われば未来が変わってきます。そして、「介護業界への興味が湧きました!」という方は、実際に足を踏みだして欲しいなと思います。
まとめ|『KAIGOフェス』開催概要
郡山会場
■日程:2025年9月13日(土) 10:00~16:00
■会場:郡山健康科学専門学校(福島県郡山市図景2-9-3)
■アクセス:JR郡山駅 徒歩10分
■出展ブース
〈スタンプラリー開催〉出展ブースに参加してスタンプを5個集めると、素敵な賞品をプレゼント!
東京会場
■日程:2025年9月23日(火) 10:00~16:00
■会場:日本福祉教育専門学校 高田校舎(東京都豊島区高田3-6-15)
■アクセス:高田馬場駅 徒歩7分
■出展ブース
〈スタンプラリー開催〉出展ブースに参加してスタンプを5個集めると、素敵な賞品をプレゼント!
■主催:学校法人敬心学園 職業教育研究開発センター 文部科学省研究事業事務局
■協力:学校訪問こおりやま東都学園 郡山健康科学専門学校/学校法人敬心学園 日本福祉教育専門学校
■後援:郡山市/新宿区
〈本イベントに関する問い合わせ先〉kaikare@keishin-group.jp








